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YOUNG HASTLE

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「単純にカッコつけるのだけがカッコ良いとは思ってない。だって、バレるっしょ、そんなの。素でやってた方が良くないすか?って思いがある。本来の自分と違うようなことを上乗せして歌うのは俺にとってはカッコ良くないんです」

 2010年度のAmebreak AWARDSのベスト・ソング部門にてYOUNG HASTLEの“V-NECK T”を第2位に選出させて頂いた際、筆者は同曲を「2010年代の“B-BOYイズム”」と鼻息荒く評させて頂いた。他の人にとってはどうでもいい、だけど、本人にとってはどうでもよくない!つまり「決して譲れないオレの美学」……宇多丸師匠の言葉を借りるなら、そんな「パーソナルな事柄を異常なまでの押し出しで」表現することこそが日本語ラップ、いやHIP HOPの真髄と言えるのではないだろうか。HIP HOP特有の“オレ節”で多くの人の支持を得るためにはそれなりの工夫やスキルが必要だし、このインタビューでも顕になりまくってるYOUNG HASTLEの自分大好きっぷりが、ナルシズムだけに陥ることなくエンターテインメントとして(半分無意識的に!)昇華できているのが彼の強みだろう。
 
 “V-NECK T”や“WORKOUT”、そしてこの2曲のリミックス・ヴァージョンというクラシック曲をドロップしてきたYOUNG HASTLE。シーンからの期待が高まる中リリースされた2ndアルバム「CAN'T KNOCK THE HASTLE」は、上記2曲の路線を更に拡大させた痛快な一枚だ。
 
 
■では、まずは『キャプテンもB-BOY』時代の話からしてもらおうか……。
「フフフ、掘るっすねー。中3のときスケボーやってたんですけど、『OLLIE』にキングギドラの『空からの力』が載ってて、その1〜2ヶ月後にジブさんの1stを買って、そこからジブさんのファンになりましたね。で、高1の秋ぐらいに『BEATS TO THE RHYME』(TOKYO FMで放送されていたZeebra司会の番組)が始まったんですよ。番組の中で『アーバスポーツ』ってスポーツのコーナーがあって毎週クイズ出してて、FAX送って当たるとTRIPLE 5 SOULのTシャツが当たるっていう(笑)。俺、高校の頃野球部で、キャプテンのヤツがHIP HOP好きだったから(FAXネームが)『キャプテンもB-BOY』でした。3回ぐらいTシャツ当たったんですけど、2回目のときは『お前当たりすぎだから次はキャプテンに渡せよ』ってラジオに言われて渡しました(笑)。で、大学行ってすぐキャプテンと一緒にラップを始めました」
 
■ギドラ以降の日本語ラップ遍歴は?
「ひと通り聴いたっすね。RHYMESTER『リスペクト』とか、SOUL SCREAMとか……キャプテンとお互い持ってないCD貸し借りし合って。最初はずっと日本語ラップでしたね」

■正直僕は“V-NECK T”や1stアルバム「THIS IS MY HUSTLE」を手に取るまでハッスルのことはまったく知らなくて。
「全然露出してなかったですからね。イヴェントも超出てるってわけじゃなかったし」

■PVとかクレジットを見て、ハッスル周辺の大体の交友関係とかは分かりはしたんだけど、渋谷周辺で活動してるラッパーにしては珍しいくらい“いきなり”1stアルバムを出したな、と。
「アルバム出す前にSTEAL THE CASH(以下STC)ってクルーがあったんですよ。(ストリート流通で)ミックスCDを2枚出したんですけど、ミックスCDだとやっぱインパクトがなくて『こりゃやっぱアルバム出さないとダメなんだな』って思って。そのタイミングでSTCのボスがやめちゃったんだけど、クルーの名前を消したくなかったから俺ひとりでSTCをレーベルの名前にしてやっていくことになって。Twitterとかも普及してない頃だから、その頃は今よりライヴをやって名前を売っていくっていう方法が(名前を売る上で)主流で、とにかくライヴに出まくって……って感じだったけど、俺はそれじゃないな、って感じがしてたんです。だって、ライヴ超出てる人でもカッコ良くなかったりしたし」

■実力とは関係なく客を呼べるか否か、っていう側面はクラブ・イヴェントのショウケースでは正直よくある話だよね。
「そこには気づいてたから、そのやり方ではないな、と。で、オフィシャルのアルバムを出してる人たちを当時見てて、正直レヴェル的に『コレぐらいだったら俺でも出来るな』っていう人がアルバム出したらチヤホヤされてたから、『とにかくオフィシャルのアルバムを出さなきゃ話になんない』って気づいて作りましたね。でも、アルバムの作り方なんて全然分からなかったからタメのLUCK ENDにいろいろ教わって。ヤツらはライヴも超やってたけど作品も早くから出してましたしね。『THIS IS MY HUSTLE』のビートはほとんどがLUCK ENDのDJ ATSUSHIだし、エンジニアのTAKE-Cさん(元UBG、Zeebraのエンジニア)もLUCK ENDがきっかけで紹介してもらって。で、マスタリングどうしようかな、って思ってたらTAKE-Cさんが『TONY DAWSEY(JAY-Zをはじめ、US HIP HOPシーンの大物の作品を多数手がけてきたマスタリング・エンジニア)いいんじゃない?』って言ってくれて、ググって辞書引きながらメールしてみて」

■ほとんど素人/完全自主でそこまで動いたのが凄いね(笑)。
「1stの最大の目的はリスナーというより、同業者に名前を覚えてもらうことでしたね。アルバムを出すことがプロモーション、みたいな」

■今作でも“I'M NOBODY”で歌ってるけど、“V-NECK T”だったり「THIS IS MY HUSTLE」出した後の反響についてはどう感じた?
「Twitterが盛り上がり始めた時期とちょうど被ってて、エゴサーチしたら全然知らない人が『“V-NECK T”良い』みたいにつぶやいてるんですよ。そんなの初めてだったからまずそこにビックリして。口コミで広がったと思うからTwitterの存在はやっぱ大きいかな。(“V-NECK T”のPV公開後の反応は)予想してなかったですね。コレでいいんだ、って(笑)」

■「意外と簡単だな?」みたいな(笑)?
「いや、結構真面目なことだったりメッセージ的な曲をメインにアルバムを作ってたんだけど、それだけだとつまらないから“V-NECK T”や“WORKOUT”を作ったんです。そしたらそっちの方がウケたから『あ、みんなこっちの方が好きなんだ』って」

■今作の“I'M NOBODY”では“V-NECK T”を出した後の葛藤について歌ってるけど、そもそも当時そんなに天狗になってたっけ(笑)?
「俺、チヤホヤされるのが好きだから。ホメられると良い気分になっちゃって舞い上がったし、もっと曲を作るべきでしたよね。2010年は1st出してから全然リリック書いてなかったし、去年出したEPも書き直したヴァースは3つとかってレヴェルだから。“V-NECK T”も3年前に作った曲なんですよね。2010年にアルバム、2011年にEP出してもっと営業とか増えるかな?って思ってたんだけどそれほどでもなくて。ってことはもう一発なんか出さなくちゃダメなんだな、って思ったのが去年の夏ぐらいで、般若さんからも『(“WORKOUT REMIX”を夏に出してからの勢いで)冬には2ndアルバム出せるといいよね』って言われてて、分かってたんだけどなかなか作業が進まず……『早起きしてジム行ったから今日はいいっしょ』みたいな(笑)」

■ジム通いはちゃんと続くのにねぇ。
「で、冬が終わって本格的にそろそろヤバイぞ、って焦り始めてリリース日を決めたのが今年の3月」

■2ndアルバムに向けて、“V-NECK T”の反響を見て自分のキャラの押し出し方について気づいた部分はあったんじゃない?
「気づいた。みんなそういう部分は2ndアルバムにあたって求めるじゃないですか。俺は別にやんなくてもよかったんだけど、みんなが欲しがってるならまたやろうかな、って思って。“BLACKOUT”に関しては、今年の1月に新年会があったんですよ。TY-KOH君、SIMON君、Y's君、318君とかが来て。そのときにTY-KOH君が『“V-NECK T”“WORKOUT”と来て、ヤンハスはもう一発なにか攻めた方がいいでしょ!次は日焼けでどうだ!』と。俺は正直そのときは日焼け(の曲)はやる自信がなかったんですけど、そこに318君が乗っかってきて『日焼けの曲なら(トラックは)YAKKOさんに頼むしかないでしょ!曲名は“BLACKOUT”で』みたいになって。で、自信はなかったけど般若さんとかSHINGO★西成さんとかを見てると完全に振り切ってるじゃないですか。そういうのを見てたから俺も振り切ってやる必要があるなと思って決意を固めました」

■今作は前作に比べて全体的にズルムケたと思うけど、やっぱ今話に出た二人と共演したのは大きいの?
「いや、だって“カバディ”のPVとか観ちゃったらそうなるじゃないですか、『俺もまだまだだな』って。それがあったから後押しされたっていうのはありますね」

■Vネック、筋トレと来て、今作では“BLACKOUT”で日焼けについて歌ってるけど、日焼けに関しては他の2要素みたいな思い入れはあるの?
「一応あるっすね。白い自分が嫌いだから、24〜5歳から人工的に焼くようになって。筋トレをガチでやるようになった頃と同じ時期ですね。最初は家で筋トレしてたんですけど限界を感じてジムに通い始めて、ジム選びのポイントも日焼けマシンがあるとこ」

■そもそもなんで筋トレにハマったの?
「元々は部活の一環でやってたんですけど、一人暮らし始めたら食生活が変わるからすごい痩せちゃったんですよ。今と同じ身長で58kgまで落ちて。俺、イケてないな、って。で、当時JIM JONESとかにハマり始めてタイト目なファッションとかマネするじゃないですか。でも、痩せてるとカッコ良くないんですよ!だから、デカくなろう、って」

■なるほど。般若君は筋トレにこだわる理由を全てライヴのためだって言い切ってるけど。
「俺は完全に見た目重視です。だってカッコ良いに越したことないじゃないですか。そこを諦めちゃう人もいるけど、俺はそうじゃないと思ってやってきてる」

■そこの努力は怠らないのに曲は作らなかったのか……。
「俺、結構見た目から入るタイプなんですよ。そっちを優先しちゃうタイプ」

■見た目にこだわる一方、歌詞はあまり二枚目寄りじゃないというか、オモロイ話だったり情けない話だったりも歌ってるよね。
「単純にカッコつけるのだけがカッコ良いとは思ってない。コッチの方がカッコ良いと思う。だって、バレるっしょ、そんなの。素でやってた方が良くないすか?って思いがある。本来の自分と違うようなことを上乗せして歌うのは俺にとってはカッコ良くないんです」

■セルフ・ボーストって、大概自分より大きなことを言っちゃいがちだけど、ハッスルの場合は「俺はこれだけVネックをカッコ良く着こなせる」だったりして、まあ……言っちゃ悪いけどスケール感が小さいというか(笑)。だからこそ面白かったんだけど。
「あー、でもそこは意識してないんですよ。俺は“V-NECK T”に関しては結構カッコつけてる方なんです。でも、そこにみんながウケてるんだからみんなと自分は(カッコ良いことに関する)感覚が違うんじゃないですかね?」

■でも、そこのズレが面白い。まあ、僕はVネックは着ないので、正直“V-NECK T”で歌われてることに関しては本当にどうでもいいんだ(笑)。だけど、ハッスルにとっては本当にどうでもよくないことなわけで、それを熱量高めでラップで語られたらなんか気になっちゃうし、そういう面白さがYOUNG HASTLEの曲にはあるというか。
「俺が、なんでそういう曲がウケたのか不思議に思ったかっていうと、USではこういう曲は普通にあるじゃないですか」

■確かに。
「俺はそれを聴いてやってるだけだから。日本人でそういう人がいなかっただけでしょ?って」

■ハッスルは、US HIP HOPのリリックにあるユーモアの感覚を日本語ラップに上手く翻訳して実践しているわけで、確かにハッスルが言う通り本来はそんなに珍しいことじゃないはずなのに、ハッスル的な音楽性を志向している日本のラッパーからは意外な程USのラップのユーモア性を取り入れてる曲が少ないんだよね。
「俺はタイミングが良かったですよね。みんながやってなかったところで俺がそういう曲を出せたのはラッキーだった。逆に、なんでやんないんだろ?って。筋肉に関してもそう。みんなUSのHIP HOP見てるのになんで体鍛えないんだろ?って」

■服装はマネするのに筋肉はマネしない、と。
「そう」

■ただ、別に狙ってニッチな方向に行こうとしてるわけじゃないからね、ハッスルは。曲のアイディアはどういうときに湧いてくるの?
「“I'M NOBODY”とかは、確か去年の9月ぐらいに渋谷のHIP HOP系じゃないクラブに遊びに行って。HIP HOPがかかるクラブだと『あ、YOUNG HASTLEだ』って結構なるんですけど、そのときはまったくモテなくてめちゃくちゃヘコんだっすね。で、俺もまだまだだな、って反省して、そのときは渋谷から駒沢まで歩いて帰ったっす……」

■そういう理由かよ……(笑)。
「結局、一番はモテたいってことでしょ?俺はそれが原点だと思ってる!あと、“SPELL MY NAME RIGHT”とかは、みんな俺の名前(のスペル)間違えるじゃないですか。で、ビギーがちょうど言ってるじゃないですか」

■“GOING BACK TO CALI”ね。K DUB SHINEも“相ライム性理論”でやってたね。
「そうですね、あれ食らったすもん。みんな(元ネタが)ビギーだって分かってるかな?ビギーが歌ってるみたいに『Y.O.U.N.G.H.A/S.T.L.E. That's right, spell』でやってみたらハマっちゃって(笑)」

■“V-NECK T”や“WORKOUT”もそうだったけど、PVにしやすそうな曲が多いというか、映像が思い浮かぶ曲が多いよね。
「それは意識してるっすね。PV出さないとみんな観てくれないじゃないですか。それを“V-NECK T”や“WORKOUT”作って気づいたから、それは自然に頭に入ってましたね。あと、元々俺って起承転結があるようにリリックを書いてるんで、そこも関係してるんじゃないですかね」

■それこそギドラの人たちとかはその辺り意識してヴァース書いてるよね。彼らの影響?
「まあ、俺は根本が超ジブさんだから。今は意識してないけど一番最初がそうだったから多分そうなってるっていうのはあるし。あと俺、分かりにくいリリックはイヤなんです。一回聴いただけで分からないとイヤ」

■今後挑戦してみたいテーマみたいのはある?“V-NECK T” “WORKOUT” “BLACKOUT”と出して、次の一手は?
「こういうタイプの曲に関しては今後は意識しない。今のところコレでいいっしょ」

■ハッスルが普段こだわってるような曲でまだ曲にしてないことはあるの?
「探せばあるかもしれないけど、パッと出て来るレヴェルではないですよね。無理して作るような曲じゃないし、無理して作ったら寒いじゃないですか、こんなの。それはHIP HOPじゃないからやんないっす」

■今後についてはどう考えてる?
「ペースを落とさずに一年に一枚は出したいですね。JAY-Zとか、(ほぼ)毎年夏に出してて、俺も一緒で毎年夏に出したいな、って。あとは、いろんなところにライヴしに行きたいです。なので、全国のプロモーターさん営業 "GIMME" !」
 
 

Pickup Disc

TITLE : CAN'T KNOCK THE HASTLE
ARTIST : YOUNG HASTLE
LABEL : STEAL THE CASH RECORDS/STCYH-0003
PRICE : 2,100円
RELEASE DATE : 7月11日