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ZEN-LA-ROCK

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「意識としては音楽的な捉え方はすごく広くしてるんだけど、超HIP HOPだと思ってます。だから、HIP HOPの基本に超忠実にやってるから、こうなってるんだと思いますね。こういうアルバムが作れるのはHIP HOPだからだと思うし。聴いてくれる人がどう捉えてくれてもいいし、CD屋さんの棚のどこに置かれててもいいんだけど、基本精神は誰よりもHIP HOPだと思ってますね」

 新しい作品をリリースする度に、これまでとまったく違った世界観を展開し、リスナーに新鮮な空気を送り込んできたZEN-LA-ROCK。新作となる「LA PHARAOH MAGIC」は、ZEN-LA-ROCKの原点的イメージであるエレクトロから、2ndで大きく舵を切ったメロウ・ファンクネス、そして“SUMMER VACATION”以降のダンサブルでポップなアプローチまでをZEN-LA-ROCK流にパッケージし、今までの彼の活動を総括するような密度の濃いの内容となっている。オリジナルとしか言いようのない趣味性を突き詰めることでシーンの中心に躍り出た彼の動きは胸がすくような爽快感を感じるし、その充実を感じさせる作品だ。
 
 
■ここ最近、注目度が上がってるって実感はありますか?
「ん〜、でもそんなにないかも。ライヴが増えたとかボンヤリした実感はあるけど」

■僕が選んだメディアの中で目にする機会も増えたってことかもしれないんだけど、「THE NIGHT OF ART」以降、ZEN-LA-ROCKって名前を見る機会が増えたなって。
「そうっすか。でも、いきなりガンと仕事が増えたってこともないから、そこに手応えはそんなにないかも。ただ、ジワジワとだけど右肩上がりではずっと来てると思いますね」

■ZEN-LA君の作品にはこれまでにも80's/90'sのエッセンスがあったけども、今回のアルバム「LA PHARAOH MAGIC」にはそれが強く出てるし、ZEN-LA-ROCKってアーティストの総合作って感触を受けました。
「作品作りに要領を得たっつうのがあるかもしれないですね。作品作りのスキルが上がったかなって。それから、今まで一緒に関わってきてくれたLUVRAW & BTBやSTRINGS BURNの恐ろしいスキル・アップも大きかったのに加えて、新しいトラック・メイカーの登場も大きいかもしれないですね。今までに携わってくれてたメンツに加えて、grooveman SpotとかYASTERIZEとかOKADADAだったり、そういうプロデューサーが自分の思った通りな上に、その想像を超える音をブレなく上げてくれるっていうのが、作品に良い影響を与えてくれましたね。そういう部分で、作品イメージを具体化するのがスムーズにいくようになったのが大きかった」

■その意味ではZEN-LA君を取り巻く状況が良くなった、と。
「そういう側面もあるかもしれないですね」

■やっぱりZEN-LA-ROCKって異端だったと思うんですよ。特に「ROVO POP」の頃とかって、その当時の日本語ラップのスタンダードからはハッキリ言って外れてたし、不遇な扱いもされてたと感じるんです。それはBTBが参加してたレッキンクルーもそうだと思うし。
「いやあ不遇でしたね(笑)。でも俺たちも若かったっていうのもあるかもしれないっすね。『これが分かんないんだったらいいや』とか、『聴かないんだったら別にいいよ』みたいな感じだったから、生意気だったし、バカだったし。でも、あれがなかったら今日はないなって。趣味が変わったとかは全然ないし、やり続けてたらこうなったというか」

■そういう存在たちがシーンの中心に来たのは凄く幸福なことだなって。
「90年代後半から音楽始めて、状況的には2012年現在が一番良いっていうのは感じますね。でも流行もあると思いますよ。80's〜90'sリヴァイバルの波が来て、そのサイクルともリンクしたっていうか」

■「THE NIGHT OF ART」でメロウなファンクネスを形にして、次はどうなるんだろうって思ったら、「MASH-LA-ROCK」でリミックスって形ではあるけど「THE NIGHT OF ART」以前のエレクトロ的な趣味性だったりごちゃ混ぜ感の強いアプローチをして、その次は「SUMMER VACATION」「WINTER GIFT」で、いわゆるエレクトロ的とは違うファンクネスを感じるダンス感を提示してきたから、その流れは凄く面白いなって。
「でもあんまり流れは意識はしてなかったんですけどね。ストックしてたビートの中から選んでいって、それを形にしていく進め方だったから。でも、日常的に聴いてた音楽が反映されたかもしれない。『SUMMER VACATION』前後は山下達郎、THE S.O.S. BAND、DJ QUIKとかをよく聴いてたんで。で、作品をキャッチーにしたいなっていうのはあったんですよ」

■それは何故?
「全然CDが売れないからキャッチーにしないとマズイのかしらって(笑)。でも、それぐらいベタな理由ですよ。より人の目に触れるにはって考えたら、それぐらいキャッチーなモノにした方がいいかなって。でも、マニアックな曲を作ってたつもりはなくて……まあ、悪趣味ってのは分かってましたけど(笑)、その中でも出来るだけポップなモノを作ろうとはずっと思ってて」

■その中でも特に「NEW JACK UR BODY」のニュー・ジャック・スウィングというアプローチは驚きました。
「そのときに身近にJOY & HAMMER(ZEN-LA-ROCKのバック・ダンサー)がいたんで、そしたら『ニュー・ジャックやらなきゃダメでしょ』みたいな」

■ちなみにJOY & HAMMERと繋がったのは?
「JOYとHAMMERの友人たちが、口を揃えて『お前らはZEN-LA-ROCKに会った方がいい』って言ったらしくて(笑)」

■凄い展開(笑)。
「『そんな友達しかいないのかお前ら』って感じだけど(笑)。でも面白い奴らだし、俺としても紹介されて『こんな奴らいるんだ』、そして『これは……どうしたらいいんだ?!』って(笑)。でも、このトリオでライヴをするようになってパフォーマンスは圧倒的に変わりましたね。その評価も凄く高かったんで」

■アイドルのTomato'nPineが主催してるクラブ・イヴェント『PS2U』にZEN-LA-ROCK+JOY& HAMMER+NK-SUNSHINEで登場したのを現場で観てたんだけど、そのカルテットがアイドル・ファンを完全にロックしてたのを見て、この射程の広さは凄いなって。
「それが曲作りにも活かされてきたっていうのはありますね。アルバム曲全部ではないけど、何曲かはJOY & HAMMERとダンスできるようなモノを作ろうとか。BIG DADDY KANEとかHEAVY D&THE BOYZのPVを見直して、それでもいいんだなって改めて思ったり。“SOUND MAGIC feat. BTB (YASTERIZE V_D_C REMIX)”もほぼDJツールみたいな曲だけど、JOY & HAMMERと一緒に振り付けることでライヴでもパフォーマンスできたり、そういう広がりも出来たなって思いますね」

■その意味でもステージのスケール感が大きくなったって感じました。
「自分でも思いますね。でも彼らに頼りすぎると良くないから、自分ひとりでもライヴはやるようにしてて。そういう場合はJOY & HAMMERと一緒のときはやらないような曲をやったり、使い分けてますね」

■「LA PHARAOH MAGIC」の話に戻ると、リリックの書き方が上手くなってるなって。前作もロマンティックだったけど、よりその精度が増したと思って。
「お、初めてラップで褒められた!ビールもらっていいですか(笑)」

■ハハハ。ラップが上手くなったのはもちろんなんだけど、リリックのイメージの喚起力はホントに高いなって。
「妄想力って感じですか」

■例えば「その汗が刻むメモリーレーン」とか「散りばめる音のノクターン」とか、その妄想をすごく詩的に、情景的に表現するなって。
「それ、太字で書いといて下さい(笑)。前回のインタビューでも話したけど、ポール・オースターの作品から引用したりはしてますね」

■そういった表現に加えて「ド鉄なエスコート」や「ピラミってる瞬間に口づけ」とか、ZEN-LA-ROCK語も鋭くなってて、その“組み合わせ”が見事だなって。且つ、そういうよく考えると「?」って思うような言葉や展開でも、ラップとして表現することでそれが整合性があるように聴かせるのが、今回は上手いなって。
「日常会話に近いのかもしれないですね。人と話してるときに、誰かがパッと言った面白い言葉とか、凄いメモしますね。だから自分から出てきた言葉じゃなかったりもするんだけど、そういうワードは意識して使うようにしてますね」

■言葉の詰め方も今までよりは抜き気味で、かつ抽象性が高いから、今までよりもっと詩に近いなって。それによって耳当たりも良くなってると思って。
「意味が分からなくても踊ってくれればいいなっていう意識はありますね。ラップもトラックの一部ぐらいの気持ちでいますからね。『キック/スネア/ベース/ラップ/リリック』って感じで。あと、自分の歌をライヴでお客さんが歌ってくれたり、友達が歌ったりするのを聴いて、自分の曲のどういう部分が伝わりやすいのかを、そういう部分で感じたのも大きいですね。パンチラインていうか、言いたくなるポイントが分かったからそこに注力するというか。その意識はあったし、それが良いレヴェルで出せたんなら嬉しいっすね。あと、特にgrooveman Spotなんですけど、自分の声のコードに合ったトラックを出してきてくれるんですよね。それも聴感の良さには大きく影響してるかもしれない」
 
■客演的にはJOY McRAWが大活躍ですね。彼は声はムチャクチャ良いけど、ただスキルがすごく高いってわけではなくて。その良い意味での天然感というか、ヘタウマ感がすごく良いアクセントになってるなって。
「もともと歌いながら踊る、マジでBOBBY BROWNを目指してる男なんですよ。今後はボイス・トレーニングにも通ってもらうんで、これからそういうショウも見せられると思うし、こんなにポテンシャルの高いヤツがいるのかってぐらいの存在だから期待しててほしいっすね。そしてHAMMERにはニュー・ジャックなノリのラップをやってもらいたいと思って。絶対オンでラップを入れて、裏から(リズムを)刻んだらペナルティだぞみたいな(笑)」

■もうひとつ思ったのは、この作品は果たしてHIP HOPとしてカテゴライズするべきモノなのかなって。
「お、というと?」

■もしこのアルバムを宣伝するなら、見せ方としてもっとアーバン・ポップ的なモノとして打ち出せば、非HIP HOPリスナーも手に取りやすいのかなとも思ったし、実際にそういう感触のある作品ですよね。その意味では、自分のやっていることはHIP HOPだっていう確固たる意識っていうのはZEN-LA君の中でどれくらい強いのかなって。それとも、もっとジャンルレスな意識なのか、どっちが強いですか?
「意識としては音楽的な捉え方はすごく広くしてるんだけど、超HIP HOPだと思ってます。だから、HIP HOPの基本に超忠実にやってるから、こうなってるんだと思いますね。HIP HOPの基本精神にはすごく忠実に則ってると思う。こういうアルバムが作れるのはHIP HOPだからだと思うし。聴いてくれる人がどう捉えてくれてもいいし、CD屋さんの棚のどこに置かれててもいいんだけど、基本精神は誰よりもHIP HOPだと思ってますね。4つ打ちやってたとしても、LMFAOみたいなモノじゃなくて、HIP HOPだから出来る4つ打ちだって自分では思ってますから」

■アルバムの展開として“GREAT SUMMER VACATION feat. LUVRAW & BTB”から“GET IT ON!!!!!”っていう、「今のZEN-LA-ROCK」というビートから、“T/O/U/C/H feat. 鎮座DOPENESS”という「初期のZEN-LA-ROCK」をイメージさせるトラックっていう展開は面白いなって。
「“T/O/U/C/H”は海外でも受けるんじゃないかっていう感じはありましたね。あと、ロボ声用の機材を5万出して買ったんで、これはどっかで使わないと元がとれないなと(笑)」

■トラックを作ってるMAJOR DUDEとはどんな人ですか?
「彼はVERBAL氏の音とかを作ってるヤツで、彼から何十曲かトラックもらった中にこのトラックがあったんですよね。トラック・メイカーで言えば、grooveman Spot様はもう言わずもがなというか。彼の音は外人ぽいって感じがしますね。海外とかでやったらすげー受けると思うんですけどね。メジャーとかそれこそアイドルとかやっても普通に受け入れられるとも思うし」

■LUVRAW & BTBもそうですが、同じPAN PACIFIC PLAYAのSTRINGS BURN a.k.a. KASHIFもトラックにギター・アレンジにと大活躍ですね。
「KASHIFさんは最近ヒット曲請負人みたいになってますね。一十三十一だDORIANだのって。メールの返りも速いし電話も出てくれるし、真面目だからやりやすいっすね」

■人としての部分も重要だと(笑)。
「あと今回重要だったのはOKADADAかな。“SUMMER VACATION”の頃から“GET IT ON!!!!!”のビートはあって、それを形にしてったんですけど、PV曲に出来るぐらいの曲に最終的には仕上がって。tofubeatsもそうですけど、OKADADAも若いのに音楽をムチャクチャ知ってるんですよね」

■あ、OKADADAって若いんですか。
「20代中盤ですね」

■え!そんなに!今回の“GET IT ON !!!!!”もそうですが、彼の「When The Night Falls」などの作品を聴くと、サウンドの隅々に気を使ってる安定感があるからもっと歳上なのかなって。
「いやあ全然若いっすよ。でも彼らから受ける刺激はホントにすごい。もう『勉強になります!』って感じで。曲もすごいしDJもすごいしラップも出来るし歌も歌えるらしいから……もう意味が分かんないです(笑)。OKADADAやtofubeatsの自由度はホントに感心しますね」

■その二人はそれこそHIP HOPもやれば、グライムやエレクトロみたいな曲も作るし、アイドルのプロデュースやリミックスまで手がけられてて。それだけ才能が溢れてるし、それの意欲をセーブしない自由さはホントに感心させられますね。
「それこそ、レッキンクルーと俺が一緒にやってた頃に感じてた葛藤感って、彼らにはないと思うんですよね。俺らが若い頃のような、クラブ行ったら恐ろしいぐらい恐ろしい目に遭うようなこともないだろうし(笑)、もう自由にやっていいって土壌が今はある。こないだもiTunesのチャート見てたらtofubeatsの売れ方とかも半端なくて、既にそういうシーンが出来てるし、彼らはそういう世代の代表者なんだなって。トラック・メイカーに関しては、grooveman Spot/YASTERIZE/BTB/OKADADAっていうメンツで俺の作品の基本は任せられるのかなって今は思ってますね。そこを軸にまた新しい出会いがあれば、その出会いを作品に落とし込んでいこうかなと」

■このアルバムに関しての今後の動きは?
「リミックス・コンテストを全曲でやろうかなって。特典CDにアカペラが入ってるんですけど、店ごとに内容が違ったりするんで、『CD買った』っていう証明を何らかの形でした上でTwitterやらFacebookやらホームページでコンタクトしてくれれば、アカペラを送ろうと思ってて。で、それをリミックスしてSoundCloudなどに上げてくれれば、ウチのTumblrとかに上げるんで好きにやってくれっていうのをやろうかなって。それからJOYのシンガー化計画も本気でやってくし、落ち着いたらワン・コイン作品を作ろうかなとも思ってるし、帽子ブランドのNEMESもあるしライヴもあるしDCTVもあるし……充実してますね、俺(笑)」
 
 

Pickup Disc

TITLE : LA PHARAOH MAGIC
ARTIST : ZEN-LA-ROCK
LABEL : ALL NUDE INC./ANI-013
PRICE : 2,400円
RELEASE DATE : 7月18日