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LBとOtowa

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「LBとOtowaでも、もっと分かりやすくチャートに入るようなサウンド作りをしたいなって。ただ、今までチャートに入ってたHIP HOPとはまた違うことをやって評価されるっていうのがやってみたいんですよね。売りに行くんじゃなくて、自然に入っていくモノを作りたいなって」--Otowa

 ビート・ジャックを中心としたフリー・ダウンロード/ミックス、もしくは単発でのオリジナル楽曲が中心だったダウンロード界隈において、アルバム・サイズで全曲がオリジナル楽曲だった「FRESH BOX(β)」を発表し、大きな注目を集めたLBとOtowa。彼らが初の流通盤(フィジカル盤)となる「インターネット ラブ」を完成させた。
 
 当時の現行のUSシーンを大きく意識した「FRESH BOX(β)」に比べると、エレクトロ色が強くなり、リリック的にも物語性が増し、よりポップなアプローチを強く感じさせる「インターネット ラブ」だが、インタビューでも語られる通り、それは“実験”であり、“過渡期”なのだと話す彼ら。その貪欲な制作欲求はこの先どこに向かうのか、興味を持たずにはいられない。
 
 
■まず、どこでも訊かれることだと思うけど、LBとOtowaの出会いは?
LB「ネットですね。僕が地元の新潟にいたときに、東京に出る資金を作るためにCDを作ろうと思って、それでネットでトラック・メイカーを探したんですね。そこでMySpaceでOtowa君を見つけたんですよね。とにかくクオリティが高かったし、誰もまだOtowa君を使ってなかったんで、僕からコンタクトをとって。それが3年ぐらい前ですね」
 
■そこで繋がっても、結局“面識”はしばらくなかったんだよね。
Otowa「そうですね」
LB「まだそのときは二人でまとまった作品を作ろうっていうんじゃなく、1曲2曲作ろうかって感じだったから、お互いにデータのやりとりだけで曲を作って」
Otowa「僕はそのときまで人にトラックを“提供”するっていうのはほとんどやったことがなくて、LBさんに声をかけてもらったんでちょっとやってみようかなって感じで」
 
■もっと以前のことを訊くと、出会う前は二人はどんな活動を?
Otowa「僕は自分で作ったトラックに、例えばJAY-Zのアカペラだったりを乗せて曲を作ってましたね。そういった作品をまとめて自主で盤を作って手売りしたり」
LB「僕は新潟でラップやってたんですけど、その東京に出るためのCDを作る前は、1年ぐらいラップ辞めてましたね。でも、あまりにもグダグダに生きてたんで、とりあえず盤を作って、売れたら東京に出る、売れなかったら諦めるって気持ちで賭けてみて」
 
■二人が実際に会ったのっていつ?
LB「2年前ぐらいですね。サムライコスメチック(トラック・メイカー/LBとOtowaやRANLの広報担当。LBとOtowa結成初期からのアドバイザー的存在とのこと)主催の呑み会でやっと会って。でも、初対面だけどそれまでに連絡は取ってるし、音も知ってるって状況だったから、初めて会ったときはちょっと照れましたね(笑)」
 
■音とかラップっていう、メンタリティのよく表われる部分まで見せた上での初対面っていうのは確かに照れそうだね。
Otowa「複雑な気持ちになりましたね(笑)」
LB「でも、会って話してみても、聴いてる音楽や好みが似てたんですぐ意気投合して。音楽の好きなラインが似てたんですよね」
Otowa「その当時はLIL WAYNEとかNICKI MINAJとか、お互いにメインストリームを聴いてたんで、そこで話が合って」
 
■では「FRESH BOX(β)」を作ることになったきっかけは?
LB「僕がOtowa君に車で送ってもらったときに、『一枚作ってみようか』って軽い気持ちで話して。なんかいける気がしたんですよね」
Otowa「お互い音源は聴き合ってたし、僕はLBさんのラップは天才的だと思ってたんで、この人と作ったら面白いモノが出来るなって自信はありましたね」
 
■実際はどう制作していったの?
LB「ホントにデータのやりとりだけですね。トラックが来たらそれに乗っけてっただけで、サクッと作って」

■例えば、ビート・ジャックものだったらラッパー主導でできるし、アカペラをトラックに乗せるんならトラック・メイカー主導で出来る。でも「FRESH BOX(β)」はフリー・ダウンロードだけど全編がオリジナルだったのがまず新しかったし、オリジナル故に、どちらかが作品のイニシアティヴをとらないといけない場合もあったと思うんだけど。
LB「……そこらへんもノリですね」

■真面目に訊いて損した(笑)。
LB「ハハハ。『こうしてこうで』って話よりも、Otowa君が送ってきたビートに俺もラップを乗っけて帰すって感じで、ぶっちゃけ難しいことは全然考えてなかった」
Otowa「ボツった曲もなかったですもんね」
LB「『こういう曲作ったから、次はこういうのを』ぐらいの話はしたけど、ホントにその程度で、Otowa君の出したトラックに順番に僕がラップ乗っけてったって感じで。ま、『フリーだからそんなもんかな』って思ってたし。だから、そうやってふわっと作ったのが一万近くダウンロードされるっていうのは、正直驚きでしたね」
Otowa「でも、流れやタイミングは良かったと思います」
LB「出すのを急いでたっていうのはあります。“フリー”で“オリジナル”でっていうのは、いずれ誰かがやるだろうなって思ってたから、それまでには出さなきゃなって。でも、『FRESH BOX(β)』を出せば絶対評価されるって自信はありましたね」
 
■他に出てたフリー・ダウンロード作品から考えても……。
LB「俺らは行くでしょうって」
 
■それはどういう部分で優位に立ってると?
LB「単純に『こういうのは今までなかったでしょう』ってトコですね。且つ放送禁止用語とかダーティな言葉は使わないで、クリーンなイメージで作ったし、Otowa君のビートも新しかったから、新鮮に受け入れられるだろうなって」
Otowa「でも、僕は結構不安もありましたよ(笑)」
LB「そうだったんだ。今知った(笑)」
Otowa「でも自信の方が大きかったですね。そのときのベストを尽くしたし、大丈夫だろうなって」
 
■クリーンな言葉って発言があったけど、これはザックリとした分け方になるけど、例えばビート・ジャックもののようなUSの流れを汲んだ受容のされ方でもなく、CHERRY BROWN君のような内容的に批判的な意味ではなくネット的なセンスをも汲んだ文脈での受容のされ方っていうのでもなく、「FRESH BOX(β)」は凄くフラットな世界観を提示したなって思うんだけど。
Otowa「それは狙いましたね。トラックを作るときもバランスを考えたし」
LB「ネットでリリースする分、更にネットに寄りすぎるとオタクっぽくなり過ぎちゃうから、そのさじ加減は大事だなって」
 
■「FRESH BOX(β)」を出したことによって取り巻く状況は変わった?
LB「変わりましたね。聴いてくれる人も増えたし、ネットやコアなリスナーだけじゃなくて、それ以外のリスナーも注目してくれるようになった。それにはやっぱりKREVAさんのフックアップも大きいと思うし」
Otowa「個人的にもトラックを作る量が増えたし、応援してくれる人も増えて。僕はあんまりクラブとかに行かないんで、シーンと繋がってるって感覚は薄かったんですけど、ちょっとずつ応援してくれてくれる人も増えて……嬉しいです(笑)」
 


 
■純粋(笑)。では流通盤となる「インターネット ラブ」の制作のキッカケは?
Otowa“ハイ!注目”を発表したときに、環ROYさんからメールを頂いて、お会いする機会があったんですね。それでPOPGROUPを紹介してもらって、制作に至るって感じでしたね」
LB「でも、制作の進め方は「FRESH BOX(β)」と変わらなかったよね」
Otowa「データのやりとりで。僕も東京に住みだしたんですけど『インターネット ラブ』を作り終えてから来たんで、全然制作とは関係なくて(笑)」

■作品全体の原初的なイメージは?
LB「音的にはヴァラエティがあってっていうのは『FRESH BOX(β)』と変わらなかったんですけど、より聴きやすく作ろうっていうのはありましたね」
Otowa「『FRESH BOX(β)』のバランス感覚は、自分たちの作品なんだけど参考にしましたね。あの偏りのない感じをこのアルバムでも形にしたかった」
LB「俺もOtowa君もいろんなモノが聴きたいタイプなんで、単純にヴァラエティのある作品を作れば飽きないかなって」
 
■音的にはダブステップだったり四つ打ちだったり、エレクトロ寄りになってるよね。
Otowa「そういうのやってみようかって。でも僕もLBさんも全然四つ打ちとか聴いたことなかったんですよね」

■それなのになんで四つ打ちやってみようと思ったの?
LB「一緒にクラブ行ったときにかかってたんだよね。で、『四つ打ちにラップ乗ってるのカッコ良いよね』『じゃあやってみるか』って」

■単純!(笑)
Otowa「LMFAOとかPITBULLを聴いて」

■しかも結構ベタだ(笑)。
Otowa「そこからCROOKERSとかDIPLO、RUSKOとかを聴きだして」

■じゃあ結構ブラック・ミュージック色の濃いエレクトロというか。
Otowa「でも、RASMUS FABERみたいな、キレイめのハウスも聴きましたね。J・ポップとかK-POPも最近は聴きはじめて。K-POPは今回のアルバムのために勉強したかもしれないですね。J・ポップもオリコン10位以内に入る曲は聴くようにして」

■それは何故?
Otowa「LBとOtowaでも、もっと分かりやすくチャートに入るようなサウンド作りをしたいなって。ただ、今までチャートに入ってたHIP HOPとはまた違うことをやって評価されるっていうのがやってみたいんですよね。売りに行くんじゃなくて、自然に入っていくモノを作りたいなって。それには、J・ポップの研究も必要だって感じたんで」
LB「俺もポップ・シーンに食い込むのは大事だなって思ってて。ただ、ハードコアなHIP HOPリスナーだったし、J・ポップなんてダメでしょとか思ってたタイプだったから、ポップスは全然聴いてこなかったんで、今になって慌てて聴いてますね(笑)。でも、単純に多くの人に聴いてほしいんですよ。だから、ポップなアプローチもするべきだなって。そういう“実験”を今回のアルバムではやってますね。そういう展開をすることで自分たちの何かを曲げてるってつもりもないし」
 
■実験的にアルバムを作ったって感じ?
LB「そうですね。だから荒削りな部分もあると思うけど、その分フレッシュだと思う。このアルバムは流通される第一作ではあるけど、完璧な作品を出すって意識では俺もOtowa君もなくて、完璧への第一歩って感じですね。だから、今回こういうポップなアプローチをしたことで叩かれるかもっていうのは想定内だし、『だよねー』って感じです(笑)」
 
■「フリーダウンロード」と「現物を売る」ということの違いについてはどう感じてる?
LB「クオリティの差別化は図りたいと思いましたね。フィジカル盤の方が音も良くなってると思うし。でも多くの人に聴かせたいっていうのは、フリーでもリリースでも変わりませんね」
 
■フリー・ダウンロードはフィジカルへのステップだと思ってた?
LB「……っていうことさえも考えてなかったかもしれない。『フリー・ダウンロードの先はどうしようか』なんてこの二人で話したことはないよね。今回、フィジカル盤になったのも、POPGROUPと繋がったからって言うのが一番の理由だし」
 
■このアルバムや、今までのLBとOtowaの動き方について、凄く考えた上での動きなのかなってイメージがあったから、結構ノリの方が強いって言うのは意外な感じです。LB君のリリックにしても、例えば“GS GIRL”みたいに、万人が笑えるような内容だったり、そういう間口の広さがあるのは、ポップに聴かせたいってことなのかな。
LB「多くの人に聴いてもらいたいっていうのはそこに繋がりますね。でも、凄い体験をしてきたような人生ではないから、あんまり書くことがないんですよ(笑)。だから友達と話してて『しょうがねえなあ』みたいな話を作品にしてて。でもラッパー然とした内容より、普通の友達との会話みたいな内容をラップにした方が、多くの人には届くだろうなって」
 

■“インターネット ラブ”も頭のおかしい内容だなって思ったんだけど。
LB「これも実話っすね。友達の一番ヤバい実話(笑)。ネットで出会いを求めてる友達がいて、『あの子はテキストの言葉遣いと顔文字の使い方、それからアバターのセンスが良いから可愛いに違いない』って言ってて、その感覚新しいなって(笑)。僕らはそこまでネットでの感覚は行きすぎてないんで」
 
■今回のアルバムに「インターネット ラブ」というタイトルをつけたのは?
Otowa「“インターネット ラブ”が最初に出来たから……」
 
■ガッカリ(笑)。すごく皮肉っぽいタイトルだなと思ったんだよね。LBとOtowaってベタな惹句をつけるとすれば「インターネットから飛び出した!」的な言い方をされると思うし、そういう切り取られ方をすると思う。そういう見られ方に対する皮肉なのかなって。
LB「でもそれもありますね。痛烈にそれに対して不満があるわけじゃないけど」
 
■そういう見方をされることに関してはどう思う?勝手に言っとけって感じ?
LB「いやあ、それも何にも思わないっすね。カテゴライズされることに特に何も感じないし、言うほどネットにそこまで詳しくはないから。ネットはプロモーション・ツールとしてって感じなんで」

■その意味では「現場に出てナンボ、顔をつきあわせたコミュニケーションとってナンボっていう世界」と、「ネットの中で成立して消化されるネット・ラップ的な世界」との二つがあるとしたら、ネット・ラップ的なところにはさほど興味がないってことだよね。でも、LBとOtowaは基本的にライヴも現状ではしてない。だから、立ち位置としては面白いところにいるよね。
LB「(現場至上主義に対しては)そんなに向かい合う気がないし、謝るしかないっすね(笑)。相手にしないって意味じゃなくて、何となくのちょっとした負い目があるけど、まあしょうがないなって。タイミングが来たらちゃんとライヴもやりたいと思うし」

■ライヴをやる予定は?
LB「タイミングっすね」
Otowa「時期が来れば」

■その時期ってどんな?
Otowa「どんなんでしょうね?」

■俺に訊かれても(笑)。そこも適当なんだな。
LB「徹底的に適当なのかもしれないですね、俺ら」

■ライヴとしてはLBくんは『908 FESTIVAL』に出るけどそれも顔出しなし?
LB「その予定です」

■顔出ししないと、KREVAさんにフックアップされても顔分かんないからモテには繋がりにくそうだね。
LB「いや、もういざとなったらなんでもしますよ!」

■(笑)でも、ネットが出発点ゆえの、そしてジャケでもお面をつけてるように、ある程度の匿名性をLBとOtowaは保持してるけど、それは今後どうなりそう?
LB「今のところは匿名性を持ちたいけど……」
Otowa「まあ、どっか良きタイミングで」

■ふわふわし過ぎでしょ(笑)。
LB「ただ、『外したら超イケメンだった』みたいなことは残念ながらないから、引っ張るとそれだけ自分たちの首を絞めそうなんですよね(笑)」

■LB君もOtowa君も元々ソロだし、今でもソロとして動く場合があるけど、ソロの集合体って意識と、ユニットからソロが派生してるっていうどっちが今の意識は強い?
LB「……話したこともなかったな(笑)。でもお互いソロかもしれないですね」
Otowa「ライヴァル的な部分もあるし、負けられないなって」
LB「まあ、今のところ僕は惨敗ですけど」
Otowa「いやいや、LB君は天才ですから」

■……謎の褒めあいというかイチャイチャを見せられたけど(笑)、タッグだけどそこに意味合いは強く置いてないというか。
LB「でも、ソロや外部での動きの集大成が『LBとOtowa』だといいなって思いますね。このユニットに100%落とし込みたいなって」

■ちなみに次の動きは?
LB「売り物のアルバムももちろんだけど、ダウンロードやミックスはやりたいと持ってますね」

■その制作は顔を合わせて?
Otowa「極力合わせたいっすね」

■極力(笑)。
LB「音楽制作以外は一緒に遊んでるんですけどね。でも今は次は何をやったら面白いかっていうのを探してる最中ですね」
Otowa「ガラッと変わってサンプリングしてるかもしれないし」
LB「俺がトラック作ってOtowa君がラップしてるかもしれないし(笑)」
 
 

Pickup Disc

TITLE : インターネット ラブ
ARTIST : LBとOtowa
LABEL : POPGROUP RECORDINGS/POP-136
PRICE : 2,000円
RELEASE DATE : 8月8日