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AKLO(後編)

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「やっぱり本当に期待されたりプレッシャーを与えられることって重要だな、って思いました。期待してくれるってことに対して、それに“勝てる”自分っていうのも見つけられた。“本気”であればいいって問題じゃないと思いますけど、『THE PACKAGE』に関しては俺がここまで本気になることってこの先あるか分からないぐらいの気持ちを込めてます」

■「THE PACKAGE」とタイトルに付けてるっていうことは、自分の作品の中でも以前のフリーの作品との差別化を意識してるわけだよね。
「自分を追い込むぐらいの作品になった理由はそこなんです。今までの自分に対して、そこより遥かに高いものを求めた。そこしか自分の出来ることでは差別化が出来ない。今まで出来てたこと以上のことをやるっていうのは努力も時間も必要なわけで、“パッケージ”っていうもののハードルを上げるような作品にしたかったんです。ミックステープのリリースが増えた分、『じゃあパッケージ(作品)はヤバイのにしよう』っていう流れが出来た方が面白いじゃないですか」

■ミックステープもフィジカルな作品もそれぞれの良さがあると思うんだけど、AKLO君の中ではどっちが上とかはある?
「それはやっぱりフィジカルですね。インスタントなものがミックステープだから、ミックステープに関してはフィジカル作品ほどの狙いはなくてもいいと思ってて。いろいろ考えるんですよ、フリーだけで生活できる方法とか。でも、考えたけど現状の日本ではそれはすごく難しくて、それを考えてたらまた時間がかかるから(笑)、取り敢えずはパッケージ作品を出すことで自分の(ここ数年の活動に対する)アンサーにしようと思ったんです。だから、潔くパッケージ作品をアンサーにするなら、パッケージは面白いものにしたいしミックステープより上じゃないといけなかった。今後もパッケージ作品が俺にとって最高な位置のものになるかどうかは分からないですけど、現状としてはそれがアンサーとして出しやすかったんです」

■USマナーにのっとるなら、豪華客演多数でお祭り感あるアルバム、というのもあり得たと思うんだけど、「THE PACKAGE」の客演はNORIKIYOとJAY'EDのみと控えめだね。
「OYWM的には『やっとAKLOを日本のラップ・シーンに紹介するぜ!』っていう感じじゃないんです。目指しているものが日本のラップ・シーンより大きなものなので、それを考えたらフィーチャリングみたいなものはあまり必要じゃなかった。BL君も『1stソロだから、フィーチャリングはあまりない方がええんちゃう?』って言ってて、そこはBL君もフィーチャリングに頼らなくていいっていう自信があったんじゃないですかね」

■大枠としては「THE PACKAGE」をどんなアルバムにしたいと思っていた?
「BL君は最初から“グラミー・テンション”とかいう言葉を使い始めてて」

■なにそれ(笑)?
「『グラミー取るぐらいのテンション』」

■そのままじゃねえか(笑)。
「BL君はそれをすごく言ってて、曲が上がったりする度に『うん、これはすごいグラミー・テンションやな』とか、いまだによく使ってます」

■それに通じる話かもしれないんだけど、今作は“RED PILL”を筆頭に全体的に重厚感を感じるアルバムだな、って。今っぽいんだけど結構クラシカルな要素もあるというか。例えば、いわゆる分かりやすいパーティ・チューンとかないよね?
「そうなんです、ちょっとヘヴィーですよね。自分たち的にはジャストな重さだと思います。差別化できるサウンドこそが重厚感=高級感だと思ってて」

■OYWMで制作するってなった時点でBL/JIGGの2プロデューサー体制でいこうと決めてたの?
「そうですね。だから、すごいシンプルですよね。客演も少ないしトラック・メイカーも二人だし。三人ですごく話し合って作りましたね。BL君のトラックでもJIGG君交えて話し合ったし、ホントに3人の作品ですね」

■「THE PACKAGE」をこれまでの作品より優れたものにするために、ラップ/リリック面の具体的にどういった部分を特に意識した?
「コンセプトですかね。例えば“S.H.O.T.”は、JOHN LENNONの殺害犯についての映画(『チャプター27』)を観てインスパイアされて。犯人は『JOHN LENNONは偽善者だ』って言ってるんだけど、大好きな者に裏切られて殺そうとまで思ってしまう気持ちって、俺がHIP HOPに対する気持ちと変わらないと思ったんです。俺はHIP HOPが大好きでシーンに入りたかったけど、いろんな活動をしても大好きなHIP HOPに無視されてきた……で、俺はついに殺しに来たぞ、っていうストーリーが作りたくなったんです。そういうコンセプトって深くて面白いし、そういう面でのクオリティがこれまでと違うかな。ちなみに、その犯人は『ライ麦畑でつかまえて』(J.D.サリンジャー著)が大好きだったから、それをヒントとして歌詞に入れてみたり。聴いてる人の中で『なんで“ライ麦畑”なんてリリックが出て来るんだろう?』って思って、このインタビューに辿り着いた人がいたら面白いと思ってくれるだろうし、そういう、何層にも渡る楽しみ方っていうのが俺の中の“クオリティ”なのかな、って」

■確かに、JOHN LENNON殺害犯も重ね合わせてこの曲を聴くとまた違うものが見えてくるね。
「もちろん、本当にHIP HOPシーンを殺したいわけじゃなくて、“I'm gonna kill this!!”(ぶちかましてやる!)みたいな感じですけどね」

■テクニカルな面では今作ではどういう部分を意識した?例えば最近では『INSIDE OUT』などを通してAKLO君のUSラップの聴き込みの深さがリスナーにも伝わっていると思うけど。
「こないだ番組で“Super Duper Flow”について説明したんですけど(DRAKE“FOREVER”のリリック“Swimming in money try to find me/Nemo”のように、比喩を強調するために名詞やワン・ワードの同義語をワンテンポ開けて脚韻で踏んだり、倒置法を用いてフレーズにインパクトを与える手法。近年DRAKEやBIG SEANらが流行させたが、それに対してLUDACRISが過去から存在する手法だと批判、ちょっとした論争を呼んだ)、ちょっと間を開けてケツに持っていくみたいな手法って前からすごい意識してやってたな、って思って。“サッカー”が分かりやすいんですけど、1stヴァースは状況を説明するために『ムカついた』とか『火がついた』みたいに、分かりやすい日本語の文章みたいな感じで韻を踏んでいるんですけど、2ndヴァースでは“レール”“ゲーム”みたいに単語で踏むようになったり」

■2ndヴァースでは確かに倒置法や体言止めが増えてるね。
「それってつまり“Super Duper Flow”なんですよ。日本語で面白くラップする=“Super Duper Flow”みたいなことだったから、実は日本語ラッパーがUSより先に編み出してたことなのかも、って」

■ちなみに、サッカーでは芽が出なかったけど、フットサルと出会って道が開けるという内容の“サッカー”って、実体験に基づいた話……だよね?
「いや、実は違うんです。俺にとってのサッカー=HIP HOPシーンだったんです。で、俺にとってのミックステープ・シーン=フットサルで」

■うん、それは聴いて分かったけどサッカーをやってたAKLO君の実体験とラップ・ゲームにおける自分の立ち位置を重ね合わせた曲だと思ってた。だって、この曲だけ『15の頃から〜』とかパーソナルっぽいことラップしてるから、そう思ってもしょうがないでしょ(笑)。
「15の頃にラップを始めたんです」

■ベタなこと言うとAKLO君流の“I USED TO LOVE H.E.R.”ってことだね。
「正に最初のアプローチとしてはあの曲がありましたね。本当は最後にオチみたいのがあったんだけど、それすらなくして完全にサッカーの曲にしてしまったっていう(笑)。でも、単純にサッカーの曲として聴いて気に入ってくれてもそれはそれで嬉しいです。ちなみに、俺はサッカー好きなんですけど、15歳よりもっと前に始めてます(笑)」

■今作のフロウなどのテクニックに関してはどういうことを意識した?
「いろいろ意識しましたね。一個空けたりとか、オシャレな間を進化させたかったし、オンだけで入るのもカッコ良いし途中から早口になったり……例えば“HEAT OVER HERE”とかは、ラッパーが聴いたら『えー、こんな乗せ方なんだ!』って思うと思います、狙いまくったアプローチなんで。“DAY OFF”とかは1st〜2ndヴァースでふざけたこと言いまくって3rdヴァース目でめちゃくちゃテクニカルでネクスト・レヴェルなラップをしてみよう、って。『日本ヤバいらしいよ……聞いてなくね!?』からスイッチが入ったようにラップし出したり」

■“RED PILL”の2ndヴァースでの「We go harder than ever/全額 bet Las Vegas」のあたりとかもスイッチ入れてるよね(笑)。緩急の付け方とそのタイミングが上手い。早口だからラップが上手いってわけじゃないし、「THE PACKAGE」で披露されているテクニックの全てが日本語ラップの手法として新しいわけではないかもしれないけど、スキルの見せ付け方が練られてるからすごく新鮮に聴こえるな、って。さっき話してくれたコンセプトで言うと“RED PILL”も『マトリックス』からインスパイアされた面白いテーマだよね。
「元々自分が『マトリックス』好きっていうのがあって。今さら『マトリックス』かー、とも思ったけど、レッド・ピルって今の日本社会において面白いコンセプトになるんじゃないかな、って思って(映画『マトリックス』では主人公:ネオがレッドピルという錠剤を飲むことによって世界の真実を知ることが出来る)。俺の中でのレベル・ミュージックを“RED PILL”で表現してます」

■過去や現在に対する怒りや敵意?そういった感情も全面に出てるアルバムだよね。
「そうですね。やっぱラッパーってとにかく自分のスタイルとか思想について書くから、普通の人より考えが固まっていくんです、怖いことに。自分の中で答えが出ちゃうんです。そうすると、自分の中で“怒り”がいっぱい生まれてくる。例えば、世界的に日本ほどHIP HOPが流行ってない国ってないし、それって超ダサイと思うんです(笑)。USやUKのポップ・チャートなんてHIP HOPばっかじゃないですか。操作されてるモノなんて超時代遅れだと思うし、そういう、自分の意思で動いてない、操作されて売れてる音楽に対するカウンターがラップだと思うんです。ラップがカッコ良いっていうことには世界は気づいているんだけど、日本だけいまだに歌詞に対して何も意思がないような人だったり、K-POPみたいにそもそも日本語が喋れないような人たちだけがトップ・チャートにいるって異常なんじゃないかって、そういうところに怒りを感じてて。あと、『日本って良い国だね』とか今まで言ってたけど、3.11みたいな一大事が起こったときの政府の対応のダサさが明るみになって、『なんてダサいヤツらがトップにいるんだ。こんなダサいヤツらがいればそりゃ全てがダサくなるよ』って。社会に抵抗できないヤツはダサくなるしかないんで。カッコ良さこそがこの社会における反社会的/“rebel”なんです。真面目にカッコ良いモノをやるっていうことはすごく大切なことだと思うんですよね」

■それってすごくクラシカルな考え方というか、HIP HOPの根本的な思想に通じる考え方だよね。
「そうそう。だけど、“発言”の内容自体が“rebel”っていうわけじゃないんですよ。『政府なんてウゼェよ!』ってそのまま言うんじゃなくて、ダサいモノに対してカッコ良いモノで戦うっていう」

■何かを言って変化を促すんじゃなくて、イケてるスタイル全体で世の中を変えるっていうことね。
「そういうことです。明確な違いを実力で出して気づかせていくしかない」

■「AKLOと空」としてのアルバム・リリースはあるけど実質的なソロ作としては初めてとなるわけで、特別な作品になったと思うけど、作り上げて得たものだったり感じたことは?
「やっぱり本当に期待されたりプレッシャーを与えられることって重要だな、って思いました。『AKLOと空』の頃とはそこが大きな違いですよね。プレッシャーは自分にとっては良い作用をしたと思います。期待してくれるってことに対して、それに“勝てる”自分っていうのも見つけられた。“本気”であればいいって問題じゃないと思いますけど、『THE PACKAGE』に関しては俺がここまで本気になることってこの先あるか分からないぐらいの気持ちを込めてます」

■さっき“責任感”って自分で言ってたけど、具体的に何に対して責任を感じてる?
「やっぱりHIP HOPがここまで日本で流行ってないことに対して責任を感じてるんです。例えば『INSIDE OUT』でMCをやってるのも、最初は自分のキャリアにおいてはマイナスになると思って始めたんです。AKLOっていう人がラジオに出ていろいろ歌詞とかを説明するのって、アーティスト像としてはあまり好きじゃないんです。だけど、USのHIP HOPがどれだけ面白いかってことを理解してもらいたいし、洋楽リスナーと日本のHIP HOPリスナーは別、っていうのが一般的な考え方だけど、洋楽リスナーの人が番組を通してもっとパワーアップできるんだったら俺は自分の身を削ってでもやりたい。HIP HOPって宗教みたいなモノだから、俺がHIP HOPに対して出来る限りのことをやりたいんです。だから、日本語ラップ・シーンにおいて日本最高のプロデューサーと組んで作品を組むのであれば、そこに対して責任を感じるし、せっかく良い流れで注目を受けてるんだったらここでかましとこう、っていう、そういう責任ですね。あと、何のコネクションもないヤツがミックステープを通して俺みたいに出て来れたら最高じゃないですか。今まで成功例としてそういう人は出て来てないから、ここで自分が見せとかなきゃいけないな、って」
 
 

Pickup Disc

TITLE : THE PACKAGE
ARTIST : AKLO
LABEL : LEXINGTON CO.,LTD., ONE YEAR WAR MUSIC/OYWM12004
PRICE : 2,835円
RELEASE DATE : 9月5日