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ZONE THE DARKNESS

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「基本的には、自分が“表現”と呼べることをやりたいなって。それが自分のスタンスではありますね。パーティ・ラップとかSWAGってことが、自分にとってはそんなにカッコ良いモノだとは思わないし、それよりも自分の内面だったり、身の回りのことを書きたいなって」

 倍音成分の多いハイトーン・ラップと、ネガティヴさも希望も、ストリートも内面性も全てを綯い交ぜにして、独特の世界観を構築していくZONE THE DARKNESS。19歳で手売りでリリースした1st「心象スケッチ」からコンスタントにリリースを続け、1枚のミニ・アルバムをはさみ3枚目のアルバムとなる「DARK SIDE」を完成させた。
 
 時に希望をあからさまに歌い、時に自分の原点を語り、時に裏路地に座りこみ低い視点でストリートを眺めるような、様々なリリックに彩られたこのアルバムは、彼の現在を遺憾なく写し取った作品だろう。作風的にシリアスに捉えがちな彼だが、インタビューの最後では相当ボンクラかつ正直な言葉も飛び出し、更に彼の多面性を感じさせられ、これからの動きにも期待せざるをえないアーティストだ。
  
■まず、ZONE君がラップを始めたのは?
「15歳の頃なんで、今から8年ぐらい前ですね。中学卒業して始めました。最初はミクスチャー・バンドをやりたかったんですけど、そういう友達がいなくて、でも、HIP HOPを聴いてる友達は多かったんで、自然にそっちに流れて」

■そういう“表現”がやりたかったのは?
「ラッパーは自分の体ひとつで出来るし、一番カッコ良く思えたんで。金もかからないし(笑)。バンドでもヴォーカルでラップしたいと思ってたし、歌いたかったんですよね」

■結構、前に出たい派?
「そうっすね。とにかく目立ちたいっていうか(笑)。で、高校はメディアとか表現系の学校に進んで。音楽で成功したいってヴィジョンがもうあったんで、そっちに進んで。それで、学校でもラップをしてるサークルがあったんで、そこに入ってラップしてましたね。その当時書いてたのは『自分がナンバーワンだ!』みたいな、色んなトコからパクったようなリリックでしたね」

■憧れてたラッパーはいましたか?
「雷家族、その中でもRINOさんが好きでしたね。それからNITRO MICROPHONE
UNDERGROUNDとかはよく聴いてました。でも、そういう時期って、人がより知らないモノを探っていくじゃないですか。その中で降神とかTHA BLUE HERB(以下TBH)も聴くようになって、そこにも影響をすごく受けました。そうやって日本語ラップは網羅するぐらい聴きましたね」

■ZONE君の都市的ハードコア性も、文系的な部分も両方とも感じるリリックは、そういうところの影響もあるんですね。
「その両方を出来る人はいないなって思ったし、自分は両方いけるって思ったんですよね。で、そういった降神やTBH、SHINGO2にモロ影響を受けて、もっと彼らのように内面を表現したリリックはどうやったら書けるんだろうって部分を、ホントに研究したんですよね。でも、『自分がいる場所』はストリートだったから、その狭間にいた影響で、今のリリックになっていったんだと思いますね」

■降神やTBHにフィールしたのは?
「内容よりまずはスキルの面でしたね。特に志人さんの韻の踏み方や描写力って部分には本当に影響を受けて。だから、彼らの内面性に共感したっていうよりは、『内面性をどう描くか』って表現スキルの方に影響を受けました」

■さっき「いた場所はストリート」って話が出たけども、それは地元ですか?
「そうですね。新小岩で。地元の先輩にいろんなクラブに連れてってもらったり、フリースタイルを教えてもらったり」

■学校ではいわゆる発表するラップをしながら、地元ではもっと生のラップを習得したというか。
「そうですね。それもあって学校でのラップがつまらなくなって。『これホントにラップなのか?』って思えて。だけど、ダンスの授業があったんですけど、そこに講師に来てたROCK STEADY CREWのKATSUさんに、『お前、フリースタイル上手いから毎日一時間やれ』って言ってもらって。ちゃんと見てくれる人はいるんだなって分かったのは嬉しかったですね。でも結局、学校でラップは真剣にやらなくなっちゃったし、学校をクビにもなっちゃうんですけど。で、クビになってから、MCバトルにガンガン出始めて」

■バトルに出た理由は?
「今みたいに、音源をアップしてっていう流れの前だったから、バトルで名前を上げるのが成功への近道だったし、そこで名前を上げたいっていうのと、勝てる自信もあったんで。一番最初は千葉のBELTでやってたMCバトルに出場したんですけど、そこでいきなり優勝できたんですよね。で、二回目に出たのが、2006年のUMBの東京予選で。それが17歳のときだったんですけど、メシアTHEフライさんに勝ったりして、決勝まで残って。最後はPUNPEEさんに負けて準優勝だったんですけどね。そこで『これはイケるかも』って自信になったんですよね。バトルに出る中で色んな繋がりも出来て。ただ、UMBに出たときに、漢さんに『デモないの?』って言ってもらったんだけど、デモ作ってないから渡すことも出来なくて。それが悔しくて音源を作ったっていうのはありますね」

■それが19歳でリリースした「心象スケッチ」?
「そうですね。2006年のUMBの後に、少年院に入ることになっちゃって。で、院の中で『この時間を取り戻すために、出たら音源を作って形にしたいな』って。で、出てきてすぐ作った感じですね。でも、当時どうやって出したらいいか分からなかったんで……」

■誰にも方法は聞かなかったの?
「まずやっちゃおうって(笑)。でも、手売りで1,000枚売ったら、これは凄いんじゃないかと思って」

■1,000枚っていう量的な意味は?
「完全に何となくですね。『1,000だったら凄いでしょ』みたいな(笑)。それを半年ぐらいで売り切って。それが2009年の『B-BOY PARKの『UNDER 20 MC BATTLE』に出る前ですね」

■あのバトルでZONEくんのことを知った人も多いでしょうね。
「ただ、バトルでは決勝でKOPERUに負けて準優勝だったんで、それは本当に悔しかったですね」
Amebreak伊藤「俺はあのバトルの手伝いしてたから見てたんだけど、ステージ裏で号泣してたもんね」
「そうっすね。自分のミスで失点したっていうもあったから、本当にショックで。で、泣いてたら、晋平太くんに謎に抱きしめられるという(笑)」

■ハハハ。青春だなー(笑)。
「ZEEBRAさんにも初対面なのにバトルについて声かけてもらったりとか」

■色々起こりすぎてるね。
「ドラマ多すぎましたね(笑)」

■バトルを通して名前が上がったって実感はあった?
「あったし、それがあったからこそ、『ラッパーになってきた』って実感できたっていうか。『心象スケッチ』を出す前後には、月に10本ぐらいライヴに呼んでもらえるようになってたし、自分でイヴェントもオーガナイズしてて。そこにはRAU DEFとかBRGKさん、ZEUSさん、PUNPEE君も出てくれたりして、基本同年代に近い面子でやってましたね。そこでひたすらバトルもフリースタイルもやってました」

■2010年に「THE N.E.X.T.」は流通に乗る形でリリースされますが。
「これは自主レーベルを立ち上げてじゃなく、『心象スケッチ』を聴いたCASTLE
RECORDSがバックアップしてくれたんで出せたんですよね。やっぱり流通に乗ったせいか、反響は1stより大きかったですね。PVでもアップした“奮エテ眠レ”も評判が良かったし、ネットも含めて『心象スケッチ』よりも盛り上がってくれたって実感はありました」

■一年にほぼ一枚のリリース・ペースに加え、客演も多いですね。
「自分の最新の興味にすぐ飛びつく性格なんですよね。だから常に新しいモノを作りたい。それに、シーンの流れとしても、若手はバンバン作らなきゃいけないみたいな時期があったじゃないですか」

■一昨年前後からそれはありましたね。
「そういう謎の風潮にも煽られて」

■そういう空気感にも急かされたんだ(笑)。
「『若手は年に2、3枚は出せ』みたいな(笑)」

■若手は若手で大変だったんだね。
「でも、自分のやりたいように作ったら今のリリース・ペースになったって感じですね」

■マイペースという意味では、ZONE君のリリックって、今の流行とか流れにそんなに与しない、自分の視点が強いと思うんですね。
「基本的には、自分が“表現”と呼べることをやりたいなって。それが自分のスタンスではありますね。パーティ・ラップとかSWAGってことが、自分にとってはそんなにカッコ良いモノだとは思わないし、それよりも自分の内面だったり、身の回りのことを書きたいなって」

■昨年の「ロンリー論理」は趣味性や内面性の強い作品になりましたね。
「そうですね。あのアルバムもそのときに興味のあったことにフォーカスした、やりたかったことを全部込めた作品でしたね」

■その意味では、新作「DARK SIDE」まで、作品ごとにカウンターを打ってるとも感じるぐらい、方向性はどれも大幅に変わってると思うんですが。それはカウンターなのか、興味の移り変わりでそうなっているのか、どちらが強いですか?
「単純に興味ですね。そのときに自分がやりたいこと、例えば『ロンリー論理』だったら自分の内面を抉ることがやりたかったし、その目標を消化して、それでスッキリするっていうか。だから、作品を作り終えると、もうそこでやったことには興味がなくなるんですよね。作り終わったらまた新しいインスピレーションを集めて、その刺激によって新しい作品を作るっていうか」

■インスピレーション源はどんなモノが多いですか?
「もう様々ですね。曲単位、下手すればヴァース単位で、インスピレーションは変わって。だから、自分でも自分が分からなくなるときがありますね」

■だから「ルービックキューブの面より多い人格」ってラインは象徴的だなって。ZONE君にとっては、色んな面を統一するよりも、そのバラバラな面をそのまま出すっていう方が自分にとって正しいという感じですか。
「そうですね」

■その意味では、自分はどんなラッパーだという自己認識がありますか?
「もう、そのときそのときで違っていいのかなって。だから、自分のファンにならなくてもいいんですよ。自分の曲の中の『どれかが』好きになってくれればいいって」

■「どれかが」という意味でも、今作はより曲毎の方向性がバラバラですね。
「そういう意図でしたね。ワン・プロデューサーで作ったんですが、シンプルなビートにシンプルなラップとリリック、っていう、自分の王道を形にしたいなって。リリックもシンプルに、内面の奥深くよりは、日常だったりストリートを『なんとなく』描きたいなって。だから、これまでにないくらいシンプルに書きましたね。ポエトリー性やストーリーの構築性は全部排除して、とにかくラップっていう」

■ちなみにプロデューサーは?
「M.U.D(ムード)くんっていう北海道のトラック・メイカーですね。今回の全体の構想が浮かんだときに速攻声かけて」

■構想が浮かんだってことは、制作は一曲毎じゃなく……。
「大まかなアルバムの全体像を基に作っていきましたね。こういうアルバムにしようってイメージを作ってから、そこに相応しい曲を作っていって。作りながらそのイメージに足りない曲を加えたり、重複する内容が出来たら削ったり」

■「嫉妬はエナジー」というリリックもありましたが、ZONEくんのリリックって、ネガティヴから発生する何かがリリックのテーマになってる部分があると思うんですが。
「それもかなり自然ですね。それでいいとも思ってるし。それは今回はシンプルに出てると思いますね」

■ただ、「初期衝動は忘れない」みたいなポジティヴさも同時にしっかり打ち出すから、そのどっちにも寄りかからないバランスが面白いなって。
「特に今回はそういったシンプルな感情を全部詰め込もうって。日によって、時には一時間単位で気分なんて変わるじゃないですか。それをそのまま形にしようって。リリックを書く原動力も、お金のためだったり、好きな子のためだったり、内面性だったり、その時々で自分にとっては違うし」

■その意味では、これからどういうアーティストになっていくかは自分でも分からないって感じですか。
「そのときに、自分が楽しめることを書くと思いますね。ただ、誰かのためにはリリックを書かないと思います。……でも、それも“多分”ですけど(笑)。あの、“誰だ 〜佐々木のぞMIX〜 feat. BRGK”って曲を『THE N.E.X.T.』のときにYouTubeにPVをアップしたんですけど、これは冗談じゃなくて、佐々木希のフィーチャリングにホントに呼ばれたいって気持ちがあるんですよ!」

■力説してるなー(笑)。
「もう超ポップなリリックとラップを書くと思うんです、そのスタイルを望まれれば、ホント(笑)。でも、もしそれが本当になったとして、その変化を周りになんて言われていいと思ってて」

■凄いなー、それ。それは自分のイズムみたいなモノを佐々木希が超えちゃってるってことだよね。
「そうなのかな。別に、これまでのキャリアを台無しにしても、佐々木希と一目会えればいいかなって(笑)。というか、一番興味があることが佐々木希だから、そことフィーチャリングするのに相応しい表現があるんだったら、それをやりますって感じで。それをやっても『DARK SIDE』みたいなことは出来ると思うし。とにかく、自分のやりたいことを出来ればいいんですよね」

■それはそれでブレてないってことだよね。
「だって、これだけ言い続けて、ホントに佐々木希に客演出来たらストリート・ドリームじゃないですか(笑)」

■それが、ZONE THE DARKNESSのアーティスト性なんだろうね。
「『ZONE』って名前も、この名前を付けた中学校の頃、アイドル・バンドのZONEが好き過ぎて(笑)、この名前で有名になれば、結婚できるんじゃないかなって。それが原点ですから」

■いやあ、ブレなさすぎる!(笑)。
 
 

Pickup Disc

TITLE : DARK SIDE
ARTIST : ZONE THE DARKNESS
LABEL : "S"Muzik/SMUZIK-001
PRICE : 2,400円
RELEASE DATE : 9月19日