INTERVIEW[インタビュー] RSS

RHYMESTER

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「とにかく、俺たちの好きなプリミティヴなHIP HOPというか、HIP HOPの野蛮な部分がテーマだった。加えて、80年代後半から90年代初頭的なイメージの音に、“今”の言葉を乗っけるっていうか、野蛮なモノに洗練されたモノをぶつけるっていうコントラストを出したかったんだ」ーーMummy-D

 RHYMESTERが新しく打ち出したアルバム「ダーティーサイエンス」。その言葉通り、サンプリングが重視されたラフでタフな、ダーティなトラックが多く選択され、「マニフェスト」「POP LIFE」と、スムーズに、歪な部分が少なく構成された前二作と比べると、非常にデコボコを感じる作品となっている。しかし、同時に前二作で表現されたようなRHYMESTERとしての態度表明の誠実さと、精度の高いリリックは今作でも健在であり、サンプリングという音楽的化学反応と、野蛮なビートと高精度のリリックという化学反応も含めて、“サイエンス”という言葉がしっくりとハマるアルバムとなっている。RHYMESTER的なHIP HOPの原点とそこから見てきた世界、そしてこれからの視点の詰まった一枚だ。
 
 
Mummy-D「Amebreakの年末座談会読んだよ」
 
■ありがとうございます。
Mummy-D「あれでも書いてたけど、去年はツボイ・イヤーだったんだね」
 
■切り取り方にもよるでしょうけど、あの座談会に参加した人間の意識としてはそうでしたね。その意味でも、このアルバムでのILLICIT TSUBOIさんの大幅な起用は印象的だなって。
Mummy-D「でも、俺らはツボイ君が今、旬だからとか全然考えてなかったんだよね。逆に『今、この音像、俺ら勇気あるな~』ってぐらいで」
 
■勇気(笑)。
Mummy-D「まあ、変な表現だけど(笑)。そしたら、最近ツボイくんがキテるらしいよって話を聞いて。でも、機を見るに敏だったわけではなく、自然の流れでこうなったんだよね。そんなこと言い出したらツボイ君は常にキテるしね(笑)」
 
■アルバムの先行シングルとして“THE CHOICE IS YOURS”があり、そこでのツボイさんのプロデュースという流れがまずありましたが、根本的なところでツボイさんの起用や、サンプリングの重視はどのような流れで?
Mummy-D「今回のアルバムは、アルバムのタイトル通り、『ダーティなHIP HOP』を目指そうというコンセプトがあって。『マニフェスト』『POP LIFE』とフル・アルバムをポンポン出してきたけど、今回は俺たちの好きなことをとことんやっちまうべっていうのが、イメージとしてあったんだ。今なら、そういうダーティなHIP HOPをやっても、懐古趣味にならずに出来るだろうなって。色んなモノが流行ってるし、その中でこういうサウンドが新鮮に響くんじゃないかって思いがあって。それに、RHYMESTERって『そういう人たち』じゃん。ダーティなHIP HOPが得意な。だからトラック・メイカーも、そういうダーティなHIP HOPが得意な人たちに声をかけたんだ。だから『ツボイ君でしょ、DJ VIBLAMでしょ、マキ君(MAKI THE MAGIC)でしょ』ってそういう部分はすぐに決まってった」
 
■“ダーティ”がテーマになったのはどういった流れで?
Mummy-D「やっぱり一番好きなモノだし、RHYMESTERはいつも言ってるけど、それまでに作ってきたモノのカウンターを当てたくなるタイプだから、『マニフェスト』『POP LIFE』のような、洗練されたようなモノに対して、ワイルドなモノがやりたくなるっていうタイミングだったのかな。コンセプチュアルに、俺らが持ってる色んな側面の中でどこかにフォーカスを当てて、そのキャラクターを強く出してアルバムを作るとなると、その制作の後半では、それとは違う部分も出したくなるからさ」
 


 
■だから、“THE CHOICE IS YOURS”でサンプリングを打ち出したのはすごく意外な感じもあって。やっぱり「マニフェスト」「POP LIFE」は構築的な作品だった印象があって、サウンドの生み出し方や構成も含めて、着地点までの見据え方がロジカルな作品だったと感じたんですね。だけどそれとは対照的に、今回はサンプリングという、掛けあわせたときに何が起こるか分からない、“化学反応”を起こす形のサウンド作りに向かったのが、活動再開後のRHYMESTERの流れとは大きく変わってたので、そこに意外な感じを受けて。
Mummy-D「でも、そこまで確信的ではないよね、作ってるときは。とりあえず、RHYMESTER側としては良いトラックを集めてってことがまず第一だったし、化学反応であったり、“事故的”なことはトラック・メイカーに任せたって感じかな」
宇多丸「そうやってダーティなHIP HOPってイメージの元にトラックを集めて、その中でツボイくんのトラック集が来て、それを聴いたときに『これだ!』っていう感じだったんだよね。俺らとしても、ちょっとした迷いはあったんだよ。そういうイメージだったり、トラックで作っても……」
Mummy-D「『オッサン臭い!』って言われるかもって(笑)」
宇多丸「だから、探り探りでもあったんだけど、ツボイ・トラック集を聴いて『このバランスだ!』って。だから、ツボイ君が正解を教えてくれたって感じもあったね」
Mummy-D「ツボイ君のトラック集が8曲入りのデモだったんだけど、トラックが全部繋がってるんだよ」
 
■え、つまり一曲になってるってことですか!?
Mummy-D「そう(笑)」
宇多丸「トラック毎に頭出しのしづらいことこの上なし(笑)。トラック集なんだけど、ひとつの世界観が提示されてるっていうすごい代物だったね」
DJ JIN「しかも、その上にEPMDの“PLEASE LISTEN TO MY DEMO”の『DEMO』って声ネタがずっと乗っかってて(笑)」
 
■無断使用対策に。
DJ JIN「というコンセプチュアル・デモ作品集があって」
宇多丸「それが単純にカッコ良かったんだよ。弾きかサンプリングか云々、っていう理屈より」
 

■「RHYMESTERがサンプリングを必要としてた」とかって意味合いより……。
Mummy-D「単純に好きってトコだよ。だって、あんまりマーケティングしてもしょうがないからさ、RHYMESTERは」
宇多丸「したところで売り上げは変わらないし、RHYMESTERは(笑)」
Mummy-D「だから好きなモノを優先したし、高木君が言ったみたいな、化学反応的な、何が起こるか分からない部分は、後から起こったっていう感じだよね。だってツボイ君は何をやってくるか分からないからさ、もう受け入れるしかないんだよね(笑)。イントロの前に更にイントロが入って来たり、アウトロがすごい長くなって戻って来たりするから、諦めてツボイ色に染まるしかないっていうかね(笑)。とにかく、俺たちの好きなプリミティヴなHIP HOPというか、HIP HOPの野蛮な部分がテーマだった。加えて、80年代後半から90年代初頭的なイメージの音に、“今”の言葉を乗っけるっていうか、野蛮なモノに洗練されたモノをぶつけるっていうコントラストを出したかったんだ」
宇多丸「“フラッシュバック、夏。”の制作が終わったあたりから、“THE CHOICE IS YOURS”や“IT'S A NEW DAY”ってコンセプトやイメージはもう浮かんでて。もちろん、個々の曲では煮詰まる部分もあったけど、結構、最初に浮かんだコンセプトやサウンド・イメージは、いま言った通りのまま来てるって感じかなって。次出すならこういう形しかないって思ってたし」
DJ JIN「最初の呑ミーティングのときには『HIP HOP!』ってイメージがもう出てたし」
Mummy-D「でも、『HIP HOP』って言ったときに、『HIP HOP(俺らのね)』って感じではあるよね。だから、すごくパーソナルな部分でもあるなって。外に向けて『これがHIP HOPの美学だ』って感じはまったくない。今のHIP HOPのスタイルの広がりを考えても、その全ては誰も体現できないだろうしね」
DJ JIN「でも、80~90年代を通過してるから、無骨なモノが『HIP HOP(俺らのね)』ではあるよね。且つ、より自分たちのHIP HOP観を濃縮して、提示した部分はあるし、それが今の時代に効果があるんじゃないかなって」
宇多丸「やっぱり、今現在の状況に相応しいと思ったのが、キラキラしたモノより、そういった野蛮さであったり、ダーティさだったのかなって。元々HIP HOPって、キツイ時代にキツイ場所から生まれてきたモノだし、だからこそ、こういう表現になったって部分があると思うんだ。それと近いモノを“今”に感じてたんじゃないのかな。『こんな時代やさかい』っていうかね。もちろん、この理由は後付けで、原点的には、もっと感覚的に思いついたわけだけど。ただ、“THE CHOICE IS YOURS”や“IT'S A NEW DAY”のイメージは、さっきも言った通り、早い段階で出てるんだよ。だから、『今言えるメッセージはこうなんじゃないか』っていう確信は、最初期から持ってたっていうか」
 
■全体的なイメージですが、「POP LIFE」はそのときのインタビューでもお話し頂いたように、曲同士が対になる部分であったり、補う部分も含めて、綺麗にまとまった作品だと思いますが、今作は、曲毎のカラーが強く、デコボコした部分が強いなと感じて。
Mummy-D「今回は、今までだったら消しちゃうゴミでも残しておこうとか、体裁をあまり整えないようにしようっていうのはあったかな。『POP LIFE』や『マニフェスト』は整合性は高かったなって改めて思ったし、もっと荒い部分があってもよかったかなとも思って。でも、そういう発想も音が引き出してくれたって部分があったんだよね」
宇多丸「前は、『手持ちにはあるけどあえて使わないスパイス』みたいに、『これを使っちゃうと雑味が出ちゃうから使わないでおこう』っていう判断によって、全体の統一感を出したりもしたんだけど、今回はそういう部分もなしにして。例えば、HIP HOPについて言及したとしても、HIP HOP用語は使わないで、それを表現したりしてたのが前2作だったけど、でも今回は、そういう部分も全然やっちゃうとか、賞味期限の短そうなワードも使っちゃうとかね」
 
■例えば宇多丸さんは“ダーティー”でTwitterのことを内容にしたり、N'夙川BOYSの曲タイトルを引用したり、5年後に今と同じように届くかは分からないワードも使ってますね。
宇多丸「『Time waits for no one』(細田守監督の映画『時をかける少女』に登場する、作品のテーマとなるワード)とかね。まあ、俺のチョイスだけど、あえて使ってるっていうよりは、そういうワードの使い方って、HIP HOPっぽいんだよなって。そういう迂闊な部分も含めて」
 
■HIP HOPへの言及という意味では、“ダーティーサイエンス”にはそれが一番顕著に出ていますね。例えば“BORN TO LOSE”だったら、HIP HOPに魅了される心性を一般性をもって書くことで、「何かに惹かれる」というより普遍的で広いテーマに結びつけたわけですが、“ダーティーサイエンス”はワードの選択も含めて、モロにHIP HOPへの言及ですよね。
Mummy-D「間口を大きくとって歌うことで、無関係な人にも自分のモノとして受け取ってもらう方法もあるけど、自分とまったく無関係なことを歌ってる歌でも、そこに人は共感する場合もあるわけだから、今回は後者のような手法でもいいかなって思ったし、それも吹っ切れなのかな。それから、あの音にはHIP HOPタームが入って来ないとおかしいと思うしね。あのさ、斉藤和義さんの曲って彼が影響を受けたようなアーティストの名前や事柄がすごく入ってくるのね」
 
■タイトルからして“僕の見たビートルズはTVの中”って曲もあるぐらいですからね。
Mummy-D「そういえば俺も、好きなアーティストの曲に出て来るワードを掘り下げて、何かを知っていったってこともあったし、それがカッコ良いなとも思ったことがあった。だから、“ダーティーサイエンス”でサンプラーや機材の名前を上げ連ねてるけど、そういうことで生まれるカッコ良さもあるだろうと思ったからなんだよね」
 
■“ダーティーサイエンス”だと、Dさんのラップの入りが、ビートの入りとズレてるじゃないですか。
Mummy-D「そうだね。あれは、頭にカウントがなくて、急にビートが始まるから入れなかったんだよ(笑)」
 
■ハハハ。でも、ProToolsを使えばすぐに直せるような部分をあえて直さなかったのは?
Mummy-D「ちゃんと入れてたり、これよりも上手く録れてるテイクもあったんけど、エンジニアの村田君(Daimonion Recordings)と話して、『こういうイビツなところが、HIP HOPだけじゃなくてロックやファンクも含めて、若者が熱くなる音楽のエッセンスなんじゃないかな』って。それでこのテイクを最終的に採用したんだよね」
 
■宇多丸さんもかなり口悪いですね。
宇多丸「Dが音の話を主にしてるから、俺は歌詞の話でよろしくっていうディレクションがあって、それに基づいて書いた感じだね。例えば“余計なお世話だバカヤロウ”の『バカヤロウ』とか、“肉体関係part2 逆featuring クレイジーケンバンド”の“SEX”ってワードみたいに、普段大声で言えないことを叫べるっていうのも、HIP HOPの良さじゃん。そういう流れだよね」
 
■HIP HOPが嫌いな人にとっては、この曲ってそういう人がHIP HOPを嫌う理由がすごく集まってるって思ったんですね。音は荒っぽいし、口は悪いし、矢継ぎ早に色んなワードが飛び出してくるしっていう。
Mummy-D「ハハハ、確かに。ツボイ君もこのトラックでどんなラップが乗るのか楽しみにしてたし、『アルバム・タイトル曲になりそうだよ』って話したら、『心配だなあ』とか言ってて。そのくせ、戻って来たら、最後にとんでもないスクラッチ・パートくっつけて来てるし、もう、なんじゃこりゃって思ったね(笑)。でも、これが(正調の)HIP HOPかって言ったら、明らかに違うよね。明らかにダーティ過ぎるし、それをデフォルメしすぎてる(笑)。でも、嫌いな人にも、『なんかすごい』ってことだけは伝わるだろうね」
 
■ちなみに、ツボイさんからディレクションは?
Mummy-D「結構明確にあったね。サブジェクトに関してはなかったけど、フロウとかビート感とか、『音としてのラップのあり方』に関してはディレクションがあった。例えば“ゆめのしま”だったら、高速ラップだけじゃなくて、ビートを半分でとって、遅くラップしたりもしてほしいとか。でも、こっちは『そうじゃないんだよ今回は』って言って、全部倍速で歌い切ったけど(笑)。そんな感じに、ツボイ君なりのヴィジョンがあるみたい。でも、それにあまり摺り合わせても、ツボイ君ワールドになり過ぎちゃうから、こっちもツボイ君の想像を超えるモノを提示したり」
 
■“ONCE AGAIN”“WALK THIS WAY”と、活動再開後のシングルではBACHLOGICの起用がありましたが、彼からのディレクションとはまったく違いましたか?
Mummy-D「そうだね。やっぱりBLやDJ WATARAIもそうだけど、彼らは俺らの作ったラフ・テイクの延長線上で、それをさらに盛り上げる感じのブラッシュ・アップをしてくれるんだよね。でも、ツボイ君は簡単にいうと我が強いし(笑)、俺らのイメージとはまた違う音が鳴ってるタイプだから、意見がぶつかる場合もあって。でも、そこでマジックが起こった部分もあるし、それが今回の肝になってるかもしれないね」
 
■ツボイさんもメンバーであるキエるマキュウを、今回“ドサンピンブルース”で客演に迎えられていますね。プロデュースもMAKI THE MAGICさんですが。
Mummy-D「フィーチャリングは今回も全然当初は考えてなかったんだけど、作ってる最中にマキュウの『HAKONIWA』が出て、あのアルバムにすごく感銘を受けたんだよね。やっぱ同じことをやり続ける人って、すごく輝くときがあるなって。9年間『HAKONIWA』作ってたっていうのもすごいし(笑)。マキ君とCQはやっぱりカッコ良かったし、ツボイ君にもお願いしてるってこともあって、この曲はマキュウ色に染めてもらおうと。マキュウ・ワールドに遊びに行くような曲があっても良いかなって」
 
■この時代劇的なテーマは?
Mummy-D「これは、トラックが黒澤明の映画っぽいなと思って、侍っぽい感じで歌詞を書こうと……思った(笑)」
 
■ハハハ。意外なほど単純ですね。
Mummy-D「いや、そのレヴェルで歌詞を書くことだってあるよ!楽しませてくれよそれぐらい(笑)。『俺の好きな侍や歴史的なワードで書いちゃうぞ~』ってぐらいで始めたんだよね。で、そこに爆弾が欲しくなって、マキ君は歴史好きだからこういう内容は楽勝だろうし、クリちゃん(CQ)は良い感じに外してくれるだろうなと思って、フックだけってお願いしたんだ」
 
■ディレクションの段階でCQさんはサビだけという指示だったんですね。
Mummy-D「そう。そういう外しがないと、ただ侍のことだけいってる曲になっちゃうからさ。で、結果、クリちゃんが大変なことにしてくれて」
 
■宇多丸さんの侍論も面白いですね。随分昔に観たラップのイヴェントで、「侍の精神」って言った後に「ファック・バビロン」って言ってる人がいて、「でも、それどっちも体制側なのに……」ってずっとすごいモヤモヤしてたんですけど、そのモヤモヤがスカッとしました。
Mummy-D「フハハハ。侍が仕事としては役人だって分かってないんだ」
DJ JIN「でも、いそうだな~」
宇多丸「侍って存在の都合の良い解釈は多いよね。俺らも“マイクの刺客”みたいな曲をやってるから、その落とし前はつけなくちゃいけないなと思って、侍否定のリリックにしたんだけど、マキュウが入って肩の力が抜けたから、この内容も効果があるかなって」
 


 
■JINさんプロデュースの“Deejay Deejay”もサンプリングですか?
DJ JIN「そうだね。コンセプト的には7インチをかけてその上でラップをするっていう、昔ECDが下北沢SLITSのライヴでやってたようなスタイルで。そんぐらいのファンク直球って感じだよね」
 
■後半、宇多丸さんとDさんで細かく掛け合いするじゃないですか。そのディレクションもJINさんから?
DJ JIN「いや、D主導でそこは決めていって」
宇多丸「まあ、三番でもうひと盛り上がりっていうのと」
Mummy-D「音に要請された部分もあるね。オールド・スクール感というか」
 
■風営法の話も入って来ますが、まるまるそこにフォーカスするわけではないですね。
宇多丸「普通に生きてるのに、そういう話が自然に入って来ちゃうっていう空気感を形にしたかったのかな。クラブで遊びに行っただけなのに、法律の話が出て来なきゃいけなくなるような、そういう状況性というか」
 
■“サバイバー”はSWAGという文脈でも捉えられると思うんですが、単純なSWAGとはまたちょっと意味合いが違いますね。
宇多丸「俺たちにしか出来ないSWAGって感じだよね。プラス、日本人の琴線に触れるSWAGというか。SWAGって、HIP HOPが苦手な人は一番抵抗を感じる部分だと思うんだけど、その部分も日本人の感性と一致させるというかね」
 
■謙遜の入ったSWAGというラインですよね。
宇多丸「それから、今イケてるって奴でも、いつまでもつか分からないっていう、そういう俺らしかできない最低な発言とかね(笑)。あと、ビートが始まったから、ぬるっとラップを始める感じもやりたかったんだよね」
 
■“グラキャビ”と“ナイスミドル”という、このアルバムの中でも非常に情緒的な曲が続く構成も印象的でした。
Mummy-D「この二曲に通じるのは『時は経ったな』ってことだし、もうそれを感じるキャリアなんだよね。色んなHIP HOPの、色んな時期を観てきたし、冬も春も夏も秋も、一度だけじゃなく見てるっていう」
 
■RHYMESTERは、フェスのようなイヴェントにも常連であるわけだし、その意味では『大きな舞台』が現在の活動の中心ですよね。でも、“グラキャビ”ではクラブ・サーキットのような現場を描いているし、その内容も決して明るいばかりではない。そういった情景を描いたのは?
Mummy-D「だって、それも俺らの現場だもん」
宇多丸「多分、これを書いてたときにはクラブ・サーキットをやってたんだよ(笑)。富山とか福井とか岡山とか行って楽しかったんだよね」
Mummy-D「街の風景を見て、それを自分のキャリアとか、HIP HOPのイメージに重ね合わせちゃう部分があって、それをそのまま描いたって感じかな」
 
■“ナイスミドル”はCOMMONの“I USED TO LOVE H.E.R.”を想起するリスナーも多いと思いますが、この構成でリリックを描いたのは?
Mummy-D「トラックのイメージを元に、宇多さんが『老いらくの恋』的なイメージを出したんだよね」
宇多丸「老いらくってお前らいくつなんだって話だけど(笑)。で、『いい歳こいてときめいてるんだけど、おじさんだしみっともないからガツガツは行かないけど……』みたいな内容に、DがHIP HOPメタファーをくっつけたら面白いんじゃないかって話になって」
Mummy-D「“I USED TO LOVE H.E.R.”的なことはみんな死ぬほどやってるけど、年の功って言うか、実際に自分たちが背負ったり、通ってきた長い道のりがあるから、今なら出来るかなって」
宇多丸「『もう、最先端のHIP HOPとか俺らは分かんないのかな』とか思いつつも、風の噂で、イケてるHIP HOPの話を聴くと盛り上がって、『やっぱり俺はまだHIP HOPが好きなんだな……』っていうね。『恥ずかしながら……俺、まだ、スゲえ好き……』っていうさ。『奴の呪縛からはもう離れたはずなのに、噂だけでも胸をかき乱されるな……』関係っていうかね」
 
■老いらくの恋といい、なんか弘兼憲史の『黄昏流星群』っぽいですね(笑)。
Mummy-D「弘兼さんはそういうテーマのマンガ多いよね。オヤジのセックス・シーンとか、タマらんモノがある(笑)」
DJ JIN「『課長島耕作』とかでも、ガンガンそういうシーン出てくるしね(笑)」
Mummy-D「それを思い浮かべて、同時に宇多丸のガウン姿が頭に浮かんできた(笑)」
宇多丸「俺、家だとガウンだよ(笑)」
 
■ちなみに、「今のHIP HOP」をRHYMESTERはどういう風に捉えてますか?
宇多丸「『間(あいだ)』がない感じがするよね。EDM調のポップなモノか、檄遅いモノかのどっちかっていうか。90年代に日本でHIP HOPが流行ったのって、そのときのUSのトレンドと、日本人の感性が一瞬だけ合ったからだと思うんだけど、今っぽい激遅いビートって、日本では“外部の人”を取り込めるような広がりを持ちづらい気がするんだよね。それか誰でも入れる四つ打ちの二極化になってるから、外に向けて何かやるときの難しさというのはあると思う」
 

■“ゆめのしま”はリリックでも「BPM143」とありアルバムの中で最速ですが、この曲以外は、王道のRHYMESTERらしいビート帯だと思うんですが、そのさじ加減ってどれぐらい意識的に選択されてますか?
Mummy-D「……でも、BPM140台が一番イヤだね(笑)」
 
■イヤって(笑)。
Mummy-D「経験から言って、倍速でとったり、半分でとったりするビートって、ライヴであんまり盛り上がらないんだよね」
宇多丸「でも、“ゆめのしま”は半分にしないで、そのまま乗ったからライヴでもちゃんと盛り上がるよね。BPMに関しては、『これ位のBPMで』って選ぶことはなくて、カッコ良いビートを自然に選んでったらこうなったって感じかな」
 
■RHYMESTERがカッコ良く聴かせられるビートを選んだら、結果的にこのビート帯になっていたというか。
Mummy-D「でも、俺らは基本的に速いよね。BPM100以上を自然に選ぶし、それが今、HIP HOPに一番ないビート帯かもね」
Amebreak伊藤「昨今の日本語ラップと今作との関連性は、頭の中にあったりはしましたか?現状を踏まえてRHYMESTERは何をどう出すかとか」
宇多丸「現行のHIP HOPは聴いてるし、気にはしてるけど、だからそのシーンに合わせてどうこうってことを、俺らがしても無駄っていう気がするんだよね」
Mummy-D「関係はなくはないし、『こう作るのか』とかは考えるけど、チェックしてるからこそ、RHYMESTERは勝手にやるって道を選んでるというかね。それこそ、若い子とコラボしたくてしょうがないのよ、ホントは」
Amebreak伊藤「例えば?」
Mummy-D「いや、もうあらゆる若い子だよね。ひとりとか選べない。RHYMESTERとしてもそうだし、メンバーそれぞれでもそれは思ってる」
 
■最近そういうコラボはないですね。
Mummy-D「忙しいと思われてるのかな」
 
■それはあるでしょうね。
Mummy-D「(ギャラが)高いと思われてるのかな」
 
■それもあるでしょうね(笑)。
Mummy-D「高くないよ、俺たち(笑)。常に一緒にやりたいとは思ってるけど、最近のアルバムの流れだと、一曲の完成度とか整合性を重視してるから、客演をほとんど呼んでないけど、常に一緒に遊びたいとは思ってる。オファーもお待ちしてます(笑)」
DJ JIN「でも実際、昭和ツアーに呼んでもらったのとか、ホントに楽しかったしね。そういう絡みはナンボでもしたい」
宇多丸「般若に『RHYMESTERが一番気合い入れてくると思いました』って言われたし、実際にそうだったしね。下手打てないから」
 
■“IT'S A NEW DAY”が顕著ですが、夢の見れない時代であるっていう現状認識があると全体を通してあると思うんですね。でも、だからこそ、希望をどう持つかっていうテーマも同時に提示していますね。
Mummy-D「今が最高だぜっていう歌は絶対嘘になるし、でも、希望を与えたいとは思ってるんだよね。それがピカピカの明日じゃなくても、一筋の光を感じさせたいっていうか」
宇多丸「あと、不景気とか、状況が悪いって現実をHIP HOP的視点から見ると、『HIP HOPが相応しい時代になってきてるな』って思うんだよね。HIP HOPにハマったときも、やっぱりキツイ環境からそれが生まれて来たってことにロマンを感じたし、今のような閉塞的な状況が、HIP HOP的な舞台に感じられるんだよね。HIP HOPが嘘くさくなく響くのは、今なんだろうなって感じるんだ。だから、大変な時代だけど、それを『タフな時代だぜ……(服の襟を立てる)』っていう風に、カッコ良く切り取るのもひとつの提示かなって」
 
■最後に、これからの動きはもう見えてますか?
Mummy-D「見えてない」
 
■毎回同じ質問をして同じ答えが返ってくるって気もしますが(笑)。
Mummy-D「でも、何通りかもうイメージは浮かんでるんだよね。それのどれを選択するかがまだ決まってないから、見えてないって答えになるんだけど。ただ、何らかの形で常に動いてるグループになるとは思うね」
 
TOUR INFO
KING OF STAGE VOL. 10~ ダーティーサイエンス Release Tour 2013 ~
3月10日(日)@札幌:PENNY LANE24 
先行リンク:http://www.wess.jp/rhymester

3月15日(金)@福岡:福岡国際会議場 メインホール 
先行リンク:http://pia.jp/t/rhymester-k/

3月23日(土)@横浜:パシフィコ横浜 国立大ホール 
先行リンク:http://www.kmmusic.co.jp/news/RHYMESTER.html

3月27日(水)@名古屋:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール 
先行リンク:http://www.sundayfolk.com/go/rhymester/

3月29日(金)@大阪:NHK大阪ホール 
先行リンク:http://eplus.jp/rms/

3月31日(日)@高松:MONSTER 
先行リンク:PC、スマホ:http://www3.d-ticket.net/inet/servlet/event_detail?d_cd=19911
モバイル:http://www.d-ticket.net

4月2日(火)@広島:CLUB QUATTRO 
先行リンク:http://eplus.jp/rhymester-hs/

4月5日(金)@新潟:Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE 
先行リンク:http://hokurikuticket.com/event_detail.php?id=4395

4月12日(金)@福島:club SONIC 
先行リンク:http://pia.jp/t/rhymester-i/ http://eplus.jp/rhym-iwaki/

4月14日(日)@沖縄:桜坂セントラル 
先行リンク:http://pia.jp/t/rhymester-k/

4月17日(水)@鹿児島:SR HALL 
先行リンク:http://pia.jp/t/rhymester-k/

ツアーに関する問い合わせ:(株)チッタワークス/CITTA'WORKS CO.,LTD
TEL:044-276-8841

 
 

Pickup Disc

TITLE : ダーティーサイエンス
ARTIST : RHYMESTER
LABEL : Ki/oon Music/KSCL-2194/5(初回生産限定盤)
PRICE : 3,360円(初回生産限定盤)
RELEASE DATE : 1月30日
※初回生産限定盤はCD+DVDの2枚組