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KREVA

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「HIP HOPの世界において『フレッシュであること』が廃れることって、今後もなさそうでしょ?今は動き全体で『フレッシュであること』を見せる時代だよね。俺の場合も、インストを先に出すとかも“フレッシュ”ってことだと思うし。新しいことをどんどんやっていく、というのは自分でも求めてるんだよね」

 KREVAほどセルフ・コンテインドで、ともすれば密室的で閉鎖的な方向に陥りそうなスタンスなのにも関わらず、毎作アルバムでフレッシュな提示が出来ているHIP HOPアーティストを、筆者は他に知らない。最新作「SPACE」は、そんな彼の緻密さと、確かな経験値に基づいた大胆さ、そして「フレッシュであり続ける」というB・ボーイ的感性が結びついた、これまでのKREVAらしくありながらも、一方でこれまでと確実に印象の異なる、非常に興味深いアルバムに仕上がっている。
 
 だが、そんなクリエイターとしての感性が迸っている作品なのにも関わらず、そんな作品が生まれた出発点が「自分の中にスペースを作る」=「余裕を持たせること」だった、というのもまた興味深い話だ。今回のインタビューではその辺りの話はもちろん、今作で意識したラップ面/音楽面でのテクニックの話や、最近の日本語ラップ観まで、幅広く語って頂いた。
 
 
インスト・アルバムを本作リリース一週間前にリリースした意図は?
「まず、アルバム・タイトルが『SPACE』っていうのは先に決まってたんで、『自分がいなくなる=スペースが空いている』ものが盤としてあると面白いんじゃないかな?という考えがあって。プラス、先に出すことで、スタッフがいつも感じてることと似たようなことをみんなに感じてもらえるんじゃないかな、と思った。俺の場合、まずトラックが先に出来るから、(アルバム収録曲の)候補トラックをパックしてスタッフに聴いてもらうんだけど、スタッフがこのトラックの上にどんなラップが載るのか想像して待ってる、そういうのをスタッフが楽しんでるところもある。だから、それをファンのみんなにも楽しんでもらいたいな、と。加えて、タイトルも決まってる、トラックもマスタリングされたものがある、(アルバム・リリースまで)一週間ある……気合い入ったラッパーだったら俺より先に『SPACE』を出せるな、と思って、これは面白いんじゃないかな、と。最近の音楽って、ただリリースしてそれで終わりというより、その後のリアクション込みで楽しんでるとこって結構あるでしょ?だから、そういう意味で先にインスト盤を出してみて、どんな動きがあるのか見てみたい、っていうのがあったね」
 
■クレさんのファンにとっては、“未完成”のものを楽しむひとつのきっかけであり、プレイヤーにとっては一種の“挑戦”だと。だけど、ラッパーにとって、オリジナル・ヴァージョンのラップを聴いてない状態で行なうビート・ジャックって、基本的にはないわけじゃないですか?そういった部分に面白さを感じてたりはしますか?
「最終的なゴールは、後で俺のラップが載ったものを聴いたときに、俺のラップがよく聴こえてくると思うんだ。『この人はこういうことを言ってるんだ』っていうのもあるだろうし、トラックだけ聴いて待ってたファンはよりよく俺の言葉が聴こえてくるかな、って」
 
■先にトラックだけ聴かせることで、逆にラップを意識する、と。
「ラッパーたちにしてみれば、言ってみればひとつの“勝負”であって、『同じこと言ってた!』っていうのもあるだろうし、『この人こんな切り口だったんだ』って、更に俺のラップが際立ってくるんじゃないかな、って思ったんだよね」
 
■だけど、今作のトラックって、小節数だったり展開だったり、結構トリッキーなのが多いから……だから、意地悪いなぁ、って(笑)。食いついたら「あれ、意外と難しい」って思うラッパーもいそうだな、って。
「(笑)そうなんだよ、9小節ループとかね」
 

■そういうところからも、今作は“ラップ・アルバム”としてすごく意欲的な作品だと感じました。アルバム・タイトル「SPACE」はいつ頃思い浮かんだんですか?
「(昨年9月に開催された)『908 FESTIVAL』が終わったぐらいにはもう決まってたと思う。KLOOZと“IT'S MY TURN”のレコーディングをしていたぐらいから、彼やKEN THE 390に『次のタイトルは「SPACE」で行く』って話してたし、結構早い段階で決まってたと思う。今回のアルバムは、『908 FESTIVAL』が終わってからほぼ毎日スタジオに入って曲を作ってたんだよね。“音楽100%”みたいな生活をしてたんだけど、唯一、音楽のことを完全に忘れられる時間っていうのが、習い始めた水泳の時間だった。水泳があまりにも大変すぎて、フォームのチェックとか手の角度とか、もう、水泳してるときは水泳のことしか考えられないんだ。で、水泳の時間が終わると“音楽100%”に戻って来ようとする。そのときに出来た“スペース”に新しい考えや歌詞の切り口が生まれることが本当に多かったから、このタイトルにしようと思ったんだよね」
 
■オン/オフする重要性に改めて気づいたんですね。
「今までは、洋服を買うのが一番の気分転換だと思ってたけど、店で流れてる音楽を気にしちゃったり、『(この服を)着たらあの番組で使えるな』とか、考えちゃってたんだよね」
 
■完全に音楽と切り離すのは難しいですよね。
「そうそう。だけど、水泳は耳栓もして水に入ると音を遮断できるっていうのもあるし、自分の性格にも合ってたんだろうね。腰を悪くしててトレーニングでジムに行ってたんだけど、運動量を上げるにあたって他のトレーニングをすることになって、ジムの先生に自分から水泳を提案したんだ。水泳は苦手だったんだけどね。でも、本当に水泳が終わると面白い考えが出て来るし、ある時期から泳いで一回リセットされれば出来る、って決めてたっていうか。で、本当に出来るんだよね」
 
■無我夢中で泳いだ後の疲労困憊の状態から新しいアイディアが浮かんでくるというプロセスをもう少し説明して頂けますか?
「余裕が必要なんだと思うんだ。“音楽100%”って言うのは大袈裟かもしれないけど、実際、いっぱい考える。新しい何かを生もうとしても、そこから飛び出るスペースもないから、それが必要なんだと思った。一回離れようと思ってもスペースがないと動けないでしょ?固まった考えの中から離れる場所、というか」
 
■普通に生きてたら常に情報過多な時代ですしね。既に氾濫している情報から整理していくのではなく、一旦リセットしてから整理していくということですかね。
「そうそう。一個だけスペースが空いてて、カチャカチャ組み替えていくようなパズル、あるでしょ。その一個の“スペース”が必要なんだと思う」
 

■「SPACE」ってタイトルや、ジャケットのアートワークからは、静かなイメージも思い浮かんだりしたんですが、実際はアグレッシヴな曲が多いですよね。
「そうなんだよね。それは前作『GO』を出した後ぐらいから、『次はイケイケで楽しい感じのアルバムにしよう』って決めてた。それで“OH YEAH”作って、あれが評判良かったからその調子で全体も作ってきたというか」
 
■それはやはり、前作の揺り戻し的な?
「本当にそう。前作はシリアスというか、『ラップを聴かせるぞ!』っていうことに集中しすぎてたところがあったというか」
 
■当時の背景的に、必然だったんでしょうけどね。
「震災直後だったからね。だから、そういうのを経て、次はみんなを楽しくさせたい/自分も楽しみたいって考えになったんだ」
 
■ノー・フィーチャリングにした理由は?
「それも『SPACE』ってタイトルが決まってたからそうしたって感じだね。“フィーチャリング●●”って部分もスペースを空けとこうっていう。『イケイケで楽しい感じ』のアルバムにしようと思ったら、どう考えたってフィーチャリングいっぱい呼んでやればそういう感じは出るだろうし、実際自分もそう思って何人かに声をかけてたんだけど、作っていく内に『そうじゃないかな』って思うようになって。気づいたら、自分のアルバムでフィーチャリングなしのアルバムって今までやったことがなくて、今までやったことないことにチャレンジするのは、自分のモティヴェーションのひとつだから、やろうと決めたんだ」
 
■実際に完全ひとりで作ってみてどうでしたか?
「作業量は増えたよね。そこは大変だったけど、それ故に意識的に“SPACE”って言葉をいろんな曲に入れてったり、同じことを言ったりとかが出来て、アルバムとしてのまとまりがすごく出たかな、と。最初はそんなコンセプチュアルにする気は全然なかったんだけどね。ひたすら勢いを出すことばっか考えてた(笑)。でも、作っていく中でどんどんまとまっていったね」
 
■アルバム制作期間のクレさんの生活サイクルは具体的にどんな感じだったんですか?
「朝は子供と遊んだりジム行ったりして、午後イチにスタジオ行って夜8~9時くらいまで制作する、って感じだった。夜通しの作業とかはやっちゃいけないと思ったんだ。作業がノリノリになってやり続けるのは別にいいと思うんだけど、ありがちなのは、スタジオにずっといる内の数時間は迷ってたり後に形にならないものに力を使ってることが多くて。そこに関するジャッジはすごい出来るようになったね。コード進行を思いついて始めてみて、『イマイチだな?』って思ったらパッと止めれる。大体の人は『いや、コレはカッコ良い筈』って思って作業を続けちゃうんだけど、『コレはハネない(=曲が出来ない)』と思ったらパッと止めて違うものに取り掛かったりしてたね。敢えて他人の曲を作ったり、敢えて“ハネない”曲を作ってみたりして、忙しいのに(笑)。でも、そうすると次やりたいことや、やるべきことが見えてきたんだ」
 
■なるほど……なんでアルバム制作期間なのにこんなに外部プロデュースやってるんだろ、って不思議だったんですよね(笑)。
「それは敢えて、だね(笑)」
 
■最終的に自分の音楽に還元されるという意図の下、だったんですね。
「そういうこと」
 
■今作は、ラップ面ももちろんですが、トラック面もかなり重要だな、と思って。パッと聴いた感じ、ビートのヴァリエーションが多いのも印象的でしたし、全体的にはっちゃけてますよね。
「そうだね。ザックリ言うとやりたかったことが二個あって、一個は“OH YEAH”で出来た、レコードからサンプリングしたブレイク・ビーツやレコードからサンプリングされた“風”のビーツの上に、EDMで使われてるようなシンセを合わせたものをやりたい、っていうのがあったんだよね。そういう音楽はなかったし、EDMってもうシカトできないくらい流行ってるでしょ?HIP HOPはいろんなところに影響を与えていろんな音楽を変えてきたと思うけど、最近はEDMがいろんな音楽に影響を与えていて、だったら敢えてEDMを飲み込んで使っちゃった方がいいな、と思って、HIP HOPとEDMを合わせたものとして『ブレイク・ビーツ x シンセ』っていうのを考えた。もう一個は、“俺はDo It Like This”や“Link”とかそうなんだけど、すごくミニマムな一小節ループがずっと続くんだけど、そのループを活かしたまま後ろにコード進行が付いてきて展開する--狭い世界から急に開けるみたいな、そういうのはやりたいなと思って、そのふたつは実際今作でやったね」
 
■“Feel It In The Air”や“言ってなカッタカナ?”あたりのトラックに顕著なんですけど、クレさんの仰る“ブレイク・ビーツ感”は、僕には“ライヴ感”に聴こえたんです。打ち込みのドラムでも生ドラムっぽいアレンジにしてると思うし、例えばフィルを多用してたり。USで言うと例えばNASの「LIFE IS GOOD」とか、最近の彼が生バンドでライヴを演ってることも影響して、これまで以上に展開がついてて抑揚のあるトラックが多いと思うんですよね。
「ライヴを意識してたっていうのは本当にそうで、今度のツアーは“半生”バンドで回ろうと思ってるんだ。熊井吾郎のMPCもいるんだけど、時に全部生演奏、時に完全にエレクトリック、時に半分ずつ同期したりとか、そういう内容でやろうと思ってたからそういう作りにしようっていうのは意識してたね」
 
■以前、MTVの企画で生バンドのライヴをやった後にクレさんと話した際、クレさんの完璧主義的なスタンスでいくとターンテーブル主体のライヴの方が向いていて、生演奏というある種予測不能な部分は怖かったりもする、というようなことを仰ってたのを覚えてるのですが。
「自分が一番バンド演奏で気にしてたのって“BPM”だったんだ。BPMの違いによってラップのフロウの質やハネ方も変わってくるんだけど、意外とそういうところにみんな注目してなかったし、後ろノリのラップをするとドラムも一緒に滑ってっちゃって曲のノリが出ない、っていうことがあって。だけど、それは(MIDI機材と)“同期”すればいいんじゃないか?ってことに気づいて。で、『オトナの!フェス』でそれをやってみたらすごく良くて、バンドの方もストレスなく出来てたみたいだったから、だいぶ意識は変わってきたね。自分のやりたいモノは残していいんだな、って気持ちが生まれてきた。曲の良さを出すアレンジをそれぞれの曲で思いつくようになってきたね」
 
■サンプリングの仕方やビートの打ち込み方に関して、マイブームみたいのはあったりしましたか?
「打ち込みにマイブームっていうのは別になかったけど、サンプリングするときは、MPC4000のエフェクトをかけ録りして、かなりパンチの効いた音にしてから取り込むっていうのが流行ってた。ドラムだけ入ってるようなレコードをいっぱい持ってて、そこからサンプリングすることが多いんだけど、そういう鳴らせ方で録ると余韻も含めて録るような感じになるんだよね。前はキックやスネアを単発に分けることが多かったけど、今回はキックの後のスネアとハットまで使っちゃうというか。そういう意味ではザックリしてきたっていうのはあるね」
 
■“俺はDo It Like This”とか、2002~3年頃のDJ SHADOWみたいなアグレッシヴな打ち込みですよね(笑)。最近で言うとAraabMUZIK的な、家でプログラミングしてるのに超ノリノリで打ち込んでるみたいな、そういうモードがあったのかな、って。
「あったねー。“俺はDo It Like This”とかは、とにかくあのグラインドの効いてるシンセを弾きたくて、ああいうドラムにしたんだよね」
 
■他のトラックだと、“調理場”とかでTRAPを取り入れてるのが印象的でした。
「TRAPはすごい好きで自分でもやってみたかったんだ。それこそYASTERIZE(SMOKIN' IN THE BOYS ROOM)に頼もうかと思ってたんだけど、熊井吾郎がすごい良いトラックを作ってきて。彼は“No More Mr. Nice Guy”を作った頃からああいうのを作るのが上手いね。あの細かく打ち込んでいく感じが彼の性に合ってるんだろうね」
 
■先ほど話に上がったEDMとの融合で言うと“SPACE”とかモロにそういう感じですよね。最初、イントロを聴くとモロ4つ打ちなのか、と錯覚するんだけど、ラップが入るとオーセンティックなHIP HOPビーツが鳴る、っていう。
「意外とそういうの、ないでしょ?それが自分なりのEDMの消化の仕方だね。でも、やっぱり“OH YEAH”の評判が良かったのがデカかった。ライヴでの反応もそうだし、曲作ってる人たちの食いつきも良かったから、自信になったね」
 
■制作環境的な面で前作と比べて変化はあったんですか?
「一番変わったのは、『リターン・オブMPC』って感じじゃないかな。今までMPCを使ってるときは、既に取り込んでる自分のドラム・キットからチョイスして組み合わせていたけど、今回はそのときの気分に合ったレコードからサンプリングしていったね。あと、シンセに関してはほぼソフト・シンセになっていった」
 
■ハード・シンセ派だったのに。
「なんか、そっちの方がよりEDMっぽいギラギラ感が出ると思ったんだよね。デジタルが持ってるギラギラ感が出た方が、ブレイク・ビーツがより後ろに行ってくれてより存在感が出る。ハードのシンセでも、一回音を出したものを録るわけだから、質感的にサンプリングに近くなっちゃうんだよね」
 
■今回の音を聴いて、以前より“直感”に忠実に作ってるのかな?と思ったんですけど、その辺りはどうですか?
「そうだね。でも、それだと天才がパッとスタジオ来てパッと作ったみたいに聞こえちゃうかもしれないから言うと、さっき言ったみたいにひたすら作っていく中で、自分が本当にやりたいことに関して迷いがなくなってるからこそそういう音が出来てるんだと思う。ここに辿り着くまでに切り上げた曲だったり作ってボツになったトラックは無数だね。スゲェ上手いサッカー・チームで、選手の意思の疎通がスゲェ取れてる、とか言うけど、それもほぼ練習の結果じゃん?」
 
■直感を引き出すために基礎を高めるということですね。
「そうそう。そのためにいろんな曲を作っていったね」
 
■ラップ面では、技法だったり表現面で意識したことはありますか?
「とにかく“抜け”を作る。変な声を出すとか。例えば、『切りたい!』って言葉を言うのでも、本当に芝居みたいに切りたい気持ちになって言うとか。“Feel It In The Air”の叫び声みたいな声を一生懸命録ってみたりとか」
 
■いびつさみたいのを出したかったんですか?
「いや、“余裕”だね、そういう意味での“抜け”。面白いアルバムを作りたいって気持ちもあったから、声の出し方とかで“抜け”が出来れば面白く聴こえるのかな、って。カッコ良いと思われたいけど、ひたすらカッコ良いのじゃなくて」
 
■ROMANCREW言うところの“2.5”枚目感というか。確かに、“王者の休日”のPVとかにも顕著ですけど、カッコ良さ一辺倒じゃないひと捻り入れたSWAGを出してますよね。
「その方が“素”に近いと思うんだよね。くだらないことばっか言って笑わせたりするし、実際ライヴでもそういう部分出したりしてはいたけど。『GO』のライヴではMCもほとんど無しとかにしてたからね」
 
■確かに、“基準”とか、怖かったもんなぁ……(笑)。
「『ふざけんじゃねぇ!』ってね(笑)」
 
■“王者の休日”のシングルが出たときに、ラップからPUNPEEあたりの影響を個人的に感じたのですが。
「それ、(Amebreakの年末座談会で)書いてたのを読んで『あ、そうかぁ』って思ったんだよね。でも、PUNPEEの『MOVIE ON THE SUNDAY』はすごい聴いてたね」
 
■具体的に言うと、ライミングは相変わらず堅いんだけど、語尾の「かな」の上げ方とか、発音の濁らせ方とか、そういった部分が特に耳に入って。
「なるほど。それはやっぱりPUNPEEを聴いてたからかもしれないね。PUNPEEは『CONCRETE GREEN』に入ってた“お隣さんより凡人”聴いた頃から上手いな、って思ってたんだ。影響ってことで言うと、たくさん聴くものがスゲェ減ったっていうのもあるかもしれないね。PUNPEEのミックステープとかは、本当に回数聴いたから残ったのかもしれない」
 
■PUNPEE以外に最近気になってるラッパーやトラック・メイカーはいますか?
「トラック・メイカーだとYASTERIZE。さっきも言ったけど今回呼ぼうと思ったぐらいだしね。KLOOZのアルバムのトラックも、今のTRAPをちゃんと聴いて消化してるな、って思ったし。ラッパーだと、Fla$hBackSとか鬼上手いなー、と思ったね。あと、影響ってことで言うと、AKLOのアルバムは大きかったかもしれない。スタンダードを作ったというか。本人もライミングに関して問題意識みたいのがあって、『基礎が上がらないとヤバい』みたいな気持ちを持っててそれを自ら実践したっていうのが良いなぁ、と思って」
 
■ラッパー視点で見ると、今作のどの曲に手応えを感じてますか?
「スキルって、フロウとか韻踏むとかだけじゃなくて、やっぱり『上手いこと言ってる』方のスキルもアップさせないといけないな、とは今回思ったんだよね。(サイプレス)上野とかさ、ラップが上手くなってる、っていうのは聴いてる人も思ってると思うけど、もちろんテクニック的な部分もあると思うけど『上野が言ってるからちゃんと聴ける話』とか、あるじゃん?そういうのってひとつのスキルだと思うし上手さだと思うんだ。だから、『KREVAが言ってるから良い』みたいのはすごく考えて今回は作った気がする。そういう視点で言うと“王者の休日”の、ひたすらラップの話してるんだけどサビで一気にラヴ・ソングに行っちゃうみたいなのが出来たことによって、他のアルバムの曲たちを面白い方向に力を注ぐことが出来た気がするね」
 


 
■“王者の休日”が面白いのって、ラヴ・ソングなんだけど、すごい“HIP HOP的文法”で書いてるところだと思うんですよね。
「シングルを作ってるとき、『俺、スゲェだろ』みたいなラップをしたかったんだけど、一方でラヴ・ソングを聴きたいっていう声も周りから上がってて。俺は、ただ自分がやりたいことだけやってればいいわけじゃないっていうのは、自分でも分かってるから、みんなの声や期待も含めて形にして出すっていうのが仕事だと思ってるんだ。今までの考えだともっとラヴ・ラップな感じだったかもしれないけど、むしろ今回はやりたいこと同士を繋げられたら面白いんじゃないか、と思って、ひたすら(ヴァースは)自分自慢をする、っていう作りになった」
 
■日本語ラップをメジャーで見せる上で、HIP HOP的文法を極力排して普遍性を高めるというのもいち手法としてあると思うんですけど、HIP HOPをHIP HOPそのままでポップスとして成立させる強さも重要だと思ってるんです。そういう意味で、偉そうで恐縮ですが“王者の休日”はかなり成功してる、と個人的に思いました。
「そういう風に思ってもらえたらよかった。女子は『良い歌ですよねー』って言いつつ、男子は『いや、ラップのとこが面白いんだよ』みたいな、両方楽しめる感じというか」
 
■DRAKEなんて、フックで甘い歌歌っておいてヴァースはえげつなかったりしますからね。
「そういう表現がやっと出来た、って感じだね。自然とそういう曲が出来たという意味で」
 
■「GO」では、キラキラした明るめなトラックが多くても、リリックでは葛藤やフラストレーションを感じさせたのに対して、今回はテンション高い感じが全体の清々しさに反映されてると思うんです。“言ってなカッタカナ?”のような、実はドキッとすることを歌ってても、トラックはポップで明るかったりとか。大雑把に言うと、「GO」が慎重なアルバムだとしたら、「SPACE」は大胆なアルバムだな、と。
「そうだね。でも、それも『大胆に見えてる』って感じかな」
 
■先ほど仰ってた、蓄積があってこそ、ってことなんですかね。
「ストックしたトラックとかは今までっぽさがあったんだけど、今回は15曲作ったとしたら1曲出て来るような明るめなトラックを作れるように自分から持って行ったし、選んだ。過去の曲で言うと“THE SHOW”みたいな、『早くて強いんだけど切ない』感じはどんどん排除して、躁状態に聴こえるような明るいコード進行を出すようにしたし、出るまで頑張ったね」
 
■クレさんから見た日本語ラップ、という話も伺いたいのですが、最近はSKY-HI、KLOOZ、KEN THE 390、AKLOといったMCたちと交流を深めてますよね。それこそ「愛・自分博」の頃から、自分が面白いと思うMCたちとは積極的に絡んできたと思うのですが、最近は“フレッシュ感”を感じるMCたちに共鳴してるのかな、って勝手に思ってて。
「最近はKENとかSKY-HIとか、“動き方”のフレッシュさに目が行ってるのはあるかもね。KLOOZも最初『KLOOZ MOVIE DAY』で『映像!?』って思ったし、面白い動きをしてるヤツを応援したい、っていう風に変わってきたのはあるね。ラップを聴いて『上手い!ヤバい!』よりも、『FLOATIN' LAB』みたいにSKY-HIを追ってないと日本のHIP HOPの“ある部分”を聴けない、みたいなさ。追わないと分からなくなるから、追わざるを得なくさせてるみたいな動きにHIP HOPを感じて面白いと思ってるんだよね。で、そこをサポートしたいという気持ちも出て来た。今までは全然そういう感覚なかったんだけど。『韻踏合組合、面白い』と思って一緒に演るとかさ」
 
■以前はもっと音楽的な部分に注目していたということですね。
「そう。それよりも動きが面白いヤツらが気になっちゃうね。HIP HOPの世界において『フレッシュであること』が廃れることって、今後もなさそうでしょ?今は動き全体で『フレッシュであること』を見せる時代だよね。俺の場合も、インストを先に出すとかも“フレッシュ”ってことだと思うし」
 
■クレさんがヴェテランでもそういう考え方になれるのって、やっぱり多作家だからなんですかね。
「そうだね。やり続けることでどんどん分かってくるし。ライヴとかも、こないだ『オトナの!フェス』でいとうせいこうさんとユースケ・サンタマリアさんにインタビューされる機会があって、『KREVAはライヴでいつも面白いことやってるけど、どうやってモティヴェーション保ってるの?』って訊かれて、そのときパッと答えたのは『毎回新しい機材を買ってる』ってことだったんだよね。フレッシュな機材が入ってくると、その使い方を覚えながら、その機材でしか出せない音の出し方をやってみて、そういうことをやることでモティヴェーション保ってると思うんだ。新しいことをどんどんやっていく、というのは自分でも求めてるんだよね」
 
■確かに、そういうマインドにならないと多分煮詰まりますもんね。
「うん。あと、最近の機材って面白いんだよね。なんでも出来ちゃうっていうと語弊があるかもだけど」
 
■何でも出来ちゃう故に難しい、ってことはないんですか?先日、某プロデューサーと話してたら「ProToolsだと出来ることが多すぎて止め時が分からなくなってくる」って言ってたんですけど。
「あー、でもそれは“やり”が足りないんだと思うよ。いっぱい作れば止め時は絶対分かってくるし。あと、ちゃんと出来上がったものの結果を受け止めるのもスゲェ大事だと思う。それこそKICK THE CAN CREWの『MAGIC NUMBER』作ってた頃って、ひたすらスタジオにいるのが美学みたいに思ってたけど、全然そんなことはないんだよね」
 
■音楽に限らず、HIP HOPアーティストとして向こう1~2年はどういう風に動いていきたいですか?
「さっき言ったみたいに、面白い動きをしてるヤツは勝手にどんどん応援していこうかな、と思ってて、一個実際に動こうと思ってることがあって話も進めてる。だから、面白い人たちとの絡みは今後増えるんじゃないかな?って気がしてる」
 
■最後に、読者/リスナーへのメッセージがありましたら。
「今回のアルバムは『心にスペースを持て』みたいのをすごく言ってて、今回みたくインタビュー受けたりして毎日忙しくしてると、『確かに、心に余裕があるといいよね』ってみんな分かってくれるんだけど、『俺の心なんか、スペースだらけだよ。やることねー』って人もいると思うんだ。ネットを見続けてて、ふと外見たら周りは畑ばっかりだったりとか、そういう人に『心の中にスペースを設けろ』って言ってももしかしたらフィットしないかもしれない。だから、“Space Dancer”って曲で『俺がスペースを埋めるフィラーになるから』って言ってるんだけど、このアルバムを聴くことで一回君の時間を100%もらえたら、その後そこにスペースが出来て変わるんじゃないかな、って思うんだ。一回でも二回でも、このアルバムにガッと集中して聴いてもらえると、何か変わるんじゃないかな、と思ってるね」
 

INFO
『908 FESTIVAL』 Blu-ray & DVDが3月20日リリース!

 昨年9月8日(クレバの日)にさいたまスーパーアリーナにて開催された『908 FESTIVAL』の映像がBlu-rayとDVDでリリース。KREVAのライヴ映像はもちろんのこと、当日参加したスペシャル・ゲストたちとのコラボ曲(“I REP”も!)や、同イヴェント内でソロ・ライヴを披露したSONOMI/AKLO/サイプレス上野/KEN THE 390の映像もアリ!……と、かなりヴォリューム満載な内容です。
 
 
TITLE:908 FESTIVAL
ARTIST:V.A.
LABEL:ポニーキャニオン/PCXP-51908(Blu-ray)PCBP-57908(DVD)
PRICE:5,800円(Blu-ray)/4,800円(DVD)
RELEASE DATE:3月20日


 
TRACK LIST
00. dj908+熊井吾郎
[OPENING SE]
01. PROPS feat. KEN THE 390, LB, HI-SO, KLOOZ, サイプレス上野
02. マカー GB-mix feat. AKLO, L-VOKAL(BETTER HALVES)
03. ハヒヘホ feat. SHINGO★西成
04. 挑め Remix feat. MCU & LITTLE
05. I REP feat. DABO, ANARCHY, KREVA
■SECOND STAGE / SONOMI
06. SUMMER
■雅-MIYAVI-
07. WHAT’S MY NAME?
08. DAY 1 with KREVA
09. STRONG with KREVA
■SECOUND STAGE / AKLO
10. RED PILL
■[全員座ってみましょうコーナー]音楽劇
11. 中盤戦 feat. Mummy-D
■SECOND STAGE / サイプレス上野
12. よっしゃっしゃっす〆
■KREBand
13. パーティーはIZUKO?
14. 瞬間speechless
15. 音色
16. ビコーズ
17. ひとりじゃないのよ feat. SONOMI
18. NO NO NO feat. SONOMI
■SECOND STAGE / KEN THE 390
19. DREAM BOY
■KREVA
20. OH YEAH
21. Have a nice day!
22. 成功
23. No More Mr.NiceGuy feat. KEN THE 390, AKLO
24. くればいいのに feat. 三浦大知
25. 蜃気楼 feat. 三浦大知
26. Your Love feat. KREVA
27. Na Na Na
28. KILA KILA
29. 基準
■ENCORE
30. C’mon, Let’s GO

 
 

Pickup Disc

TITLE : SPACE
ARTIST : KREVA
LABEL : ポニーキャニオン/PCCA-06910 (通常盤) PCCA-06909 (初回限定盤) PCCA-06000 (インスト盤)
PRICE : 2,800円 (通常盤) 3,300円 (初回限定盤 CD+DVD) 2,000円 (インスト盤)
RELEASE DATE : 2月27日 (インスト盤は2月20日先行発売)