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KGE THE SHADOWMEN & HIMUKI

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「前作が良い意味で遊び半分で作ったアルバムだったとしたら、今回はまったく逆で、結構マジになって作ったアルバムですね。それは、2ndだから前作より良いモノを、っていう意識もあったし、周りに良いラッパーも増えてきたし、ふたりともガキが産まれたりとかもあったり、色々状況も変わってきた中で今回は前作と気合いが違いましたね。だけど、“遊び心”って意味では今作の方があるかな、って」-- KGE THE SHADOWMEN

 
 シーン屈指のフロウ巧者であるKGE THE SHADOWMENと、KGEと同じく千葉を拠点にし、多くのMCたちから“教授”と呼ばれ信頼されているビート・メイカー:HIMUKI。両者とも、現在のシーンにとって欠かせない声/音を作り出すクセ者だが、そんなふたりが2010年にリリースした「LOCAL FAMILY」以来、約3年振りとなる2ndアルバム「2nd IMPACT」をリリースした。このユニットとしてふたりが活動し始めてまだ数年しか経っていないが、今作を聴くと彼らがユニットとして行動を共にする理由と必然性が前作以上に顕わになったと思う。インタビューでも明らかなように、90年代からHIP HOPを追い続けていて世代的にも決して若くないふたりだが、この組み合わせはまだまだフレッシュな音楽を生み出し続けてくれそうだ。
 
 
■ふたりが実際に知り合ったのっていつぐらいなんですか?
KGE THE SHADOWMEN「高校出たてだから10年以上前ですね。渋谷FAMILYで『PENETRATE』ってイヴェントに俺とHIMUKI君が出てて、そこが初めての接点です。そのイヴェントが終わってからは別に遊んでたりはしてなかったんですよね、ふたりの音楽性も分かれてた時代だったんで。俺とかは当時のメインストリーム物、JAY-ZとかRUFF RYDERSとかDIPLOMATSが好きで」
HIMUKI「俺はSTONES THROW、ABB、MO' WAXとかに流れてって(笑)」
KGE「一時期、日本のHIP HOPシーンもそういう感じに分かれたっすよね」
HIMUKI「一気に分かれた」
KGE「で、日本語ラップは日本語ラップで分かれていったし。俺はそれこそドゥーラグ巻いたりサイズはXXXLで全身色合わせてナンボみたいな感じで」
HIMUKI「かたや俺はSUPREMEとか(笑)。今でこそ流行ってるけど」
KGE「『PENETRATE』が終わってからはまったく会ってなかったですね。で、俺の1st『NEWGIGANTE』とHIMUKI君の『FERTILE VILLAGE』が同じ発売日だったんですけど(2009年)、その頃に地元のクラブにいたらHIMUKI君がDJで出てて」
HIMUKI「その前にMySpaceでKGEを見つけて連絡してたから、KGEが俺の営業に来てくれたんだよね。ちょうどその頃、自宅でレコーディング環境が整ってきたから彼をレコーディングに誘って。そこからはほぼ毎週会うようになったよね」
KGE「俺もレコーディングしたかったし」
HIMUKI「で、何週間かして産まれたのが“TIC TAC”
 
■それがふたり名義では1stとなる「LOCAL FAMILY」に繋がる、と。
KGE「『一緒にやるならアルバム作っちゃおうよ』みたいな感じで」
HIMUKI「でも、多分“TIC TAC”で手応えを感じたからだよね」
KGE「自然な流れでアルバムを作る流れになってましたね」
 
■HIMUKI君は昔から国内外のラッパーを呼んでソロ・アルバムを出してましたけど、日本のラッパーとグループを組んでたとかはあるんですか?
HIMUKI「あるっすね。THINSULATEって1MC & 1DJのグループやってました」
 
■じゃあ、免疫って言ったら変ですけど、昔からグループを組むことに抵抗はなかったんですね。初期のHIMUKI君の音源を知ってる人は、所謂ジャジーHIP HOP的なアプローチから徐々に日本語ラップ側に寄ってきたようなイメージがあると思いますけど。
HIMUKI「もっと言うと、MOTOYと一緒にやってましたしね。彼のアルバムのプロデュースもやってたし、元はそういう感じなんですよね。初期のソロ作は、その頃自分的にヤバイと思うラッパーがいなかったから外国のMCと曲作ってたっていうのはありますね」
 
■「LOCAL FAMILY」を今振り返ると?
KGE「HIMUKI君とまた知り合ってすぐ取り掛かったから、お互い探り探りな部分もあったから、良い意味でノリ/遊びでやって出来たアルバムなんですよね。だから、割と時間もかからなかったけど、一方で『まだまだだな』と思う部分もあるし」
HIMUKI「俺も結構気に入ってるっすね。いろんな曲が入ってたし、実験的な曲もあって。今作の場合は、俺はプロデューサーに徹して、お互い慣れてきたからラップ面でも自分から意見を言ったりしたし。俺、やっぱアナログ世代だからか曲のイントロを超重要視してて、最初聴いたときにバーンとこないとすぐ他の曲に変えちゃうから、そういうのとか結構口出させてもらったりしましたね」
 
■確かに、今回の方がよりグループ感が強いですね。
KGE「前作が良い意味で遊び半分で作ったアルバムだったとしたら、今回はまったく逆で、結構マジになって作ったアルバムですね。それは、2ndだから前作より良いモノを、っていう意識もあったし、周りに良いラッパーも増えてきたし、ふたりともガキが産まれたりとかもあったり、色々状況も変わってきた中で今回は前作と気合いが違いましたね。だけど、“遊び心”って意味では今作の方があるかな、って」
HIMUKI「それは俺らのリアルな部分を出したというか、俺とKGEがいるときってホントくだらない話しかしないし」
 
■本気度は今作の方がより強く感じるけど、歌詞の内容的には今作の方がくだらない曲が多いかも(笑)。今、ふたつのアルバムを聴き比べるとよく分かるんだけど、前作はまだKGE君のラップにもよそよそしさが感じられたのが、今回はふざけるところは全力でふざけてて。
HIMUKI「“JUST WANNA CHILL PT.3”とか、KGEはクールな感じで決めてるけど、3rdヴァースでは俺とKGEが喋ってふざけ倒すみたいな、俺らほんと普段からこんな感じなんで」
 

■大枠としてはどんなアルバムにしようと思ってたんですか?
KGE「ビートに関しては、ハードなものをやりたいと思ってましたね。前作とかは『もうちょっとキャッチーな曲があった方がいいんじゃないか』とか考えてたけど、B.D.君の『ILLSON』とか聴いて『全然余裕で全部ハーコーだな』って思って、気にしないで俺の好きな音の色でお願いして。その中で、歌詞に合ったフレイヴァーを出してもらうようにHIMUKI君にお願いして。全体的なコンセプトをこうしよう、とかはあまりなかったですね」
 
■子供が産まれたりとか、三十路フレイヴァーというか……バック・イン・ザ・デイ物しかり、いろんな意味でこの世代だから歌えることを歌っている気がして。特に前半~中盤にかけてのボンクラ・ノスタルジーというか……(笑)。
KGE「“INTO DREAM”から“B-BOY”あたりまでの流れって、俺の中で結構大事にしてて、“INTO THE DREAM”では産まれたときから小~中学生ぐらいのときに思ってたことを語ってて、その次の“CHIZU”では高校生の頃のことを歌ってるんです」
HIMUKI「その次の“B-BOY”は完全に俺のリクエストで、コレはCROWN CITY ROCKERSの同名曲のパクリなんですよね(笑)。敢えて今、この曲をやりたくて」
 
■……今言われてその曲思い出しましたよ(笑)。
KGE「俺もPVをHIMUKI君に見せてもらって、俺なりの解釈でRAKIM/NAS/WU-TANG/雷/BUDDHA BRANDといった俺の中のB・ボーイ観を入れて。だから、年齢がバレるっちゃバレるっすけど、スゲェ共感してくれる人もいる」
 
■僕もKGE君と同世代だからこの視点はすごい分かる。こういうレミニス系の曲で今でも印象に残ってるのって、イケてる人から見た“表側”のバック・イン・ザ・デイ物だったりするけど、こういう“裏側”且つ大部分のヘッズが感じてた視点から描かれてるのがいいな、って。
KGE「俺自身もB・ボーイとか昔のことについて歌ってる曲ってそういえばなかったな、って。ラッパーって、一回はそういうこと歌った方がいいな、って作って思いましたね。こういう曲を歌ってまたひとつ突き抜けられたな、って」
 
■KGE君はアルバム前半の曲で自分のルーツについて語ってるけど、HIMUKI君は当時どんなB・ボーイだったんですか?
HIMUKI「さっき話したみたいに、STONES THROWとかRAWKUSとかも好きでDJでかけてたけど、実はRUFF RYDERSとか“SUPER THUG”とかも好きで聴いてたんですよね。だけど、俺の周りが好きだったものに合わせてたっていうのがあって。最近も、JUSTIN TIMBERLAKE聴きつつ、BLACK MILKの新譜が気になってるみたいな感じで。ただ、日本語ラップは正直あまり聴いてなかったです。何故かジブさんの“真っ昼間”とか“証言”とかは12インチ持ってたけど、それぐらいで。あまり日本語ラップとかを意識してなくて、ディグの方面に没頭してたんでしょうね。ちなみに、今回のジャケに、その頃に買ってたレコードを載せてるんですけど」
 
■KGE君は、渋谷には90年代中盤からよく来てたの?
KGE「いや、全然っすね。97年くらいまでは、ほとんど柏で遊んでました。DJ TOMIKENさんとかYAKKOさんとかMARS MANIEもいたし、その辺りの人たちに教わった部分が大きいです。TOMIKENさんが定期的に出してたミックステープで初めてフリースタイルを録って、それをDJ NOBU君が聴いてくれたんですよね。そこからJBMとかともリンクするんですけど、それが24歳ぐらいで、その辺りからですね、渋谷にしょっちゅう行くようになったのは。その頃に仲良くなったヤツらがたまたまその時期に渋谷で働いてたんですよね」
 
■ 今作は、そういった部分も含め、言い方は悪いけど「おっさんであること」を隠さないというか、最早開き直っているところがSWAGだな、と。スキットの感じとかも。
HIMUKI「等身大ですよ(笑)」
KGE「俺は元々そうなんですけど、若い子たちはホント見た目もバシッとしてたり上半身裸だったりとか、そういう人はそういう人で盛り上がってるんで。俺がYOUNG HASTLEみたいに毎日のように日焼けサロン行っても面白くないし。俺は昔から先輩たちに『お前はダサいのが売りだからな』とか言われてたし(笑)」
 
■リスナーとしてのHIMUKI君についてはさっき語ってもらったけど、KGE君はどんな感じだったの?
KGE「HIMUKI君はいろいろ聴いてたみたいだけど、俺は子供のときから、ある人にハマるとそれしか聴かなくなっちゃうんですよね。で、俺の場合(90年代後半)はEMINEMだったすね。ひたすらEMINEMが言ってることとか、フロウとかも音符に置き換えて聴いてたり。“MY NAME IS”のリリックを聴いて、初めてラップにリアリティを持てて、『あ、これだったら俺なりの表現の仕方があるのかな』ってヒントになった」
 
■アルバムに話を戻すと、HIMUKI君は以前からの作品を考えると、やはりサンプリングにこだわりが強いというイメージがあるんですが、今作に関しては?
HIMUKI「サンプリングありきではあって、常にネタは探してますけど、最近はサンプリングしてないトラックも面白いな、と思ってて。例えば“K&H ANTHEM”に関しては(上ネタは)ノー・サンプリングなんですけど、それがカッコ良いと言われるのは、やっぱりサンプリングだけで作った曲をそう言われるより気持ち良いですね、正直(笑)。自分で浮かんできたトラックなんで。今作に関してはサンプリング/生演奏の半々が多いです」
 
■ジャケにもmicroKORGが写ってますね。
HIMUKI「俺、ハードの機材を結構持ってるんですよ。鍵盤の付いてる、ヴィンテージ系の。ラックとかソフトだと使い方分からないんで、全部自分で弾いて録音してます」
 
■アルバム前半は、前述したようなボンクラ・フレイヴァーが程よく入っているけど、後半になるとふたりの子供について歌った“LIKE A HAYABUSA”があったりと、キレイな感じに終わらせようとしててズルいな、って(笑)。
HIMUKI「俺の4thアルバムもそうだったんですけど、人はギャップにヤラれるというか(笑)。“K&H ANTHEM”でもKGEが歌ってるんですけど、子供が産まれたから何か変わったかというのは特になくて、更にダーティになってますね」
KGE「一般論的には、子供が産まれたからもっと売れる音楽を作ろうって思うところを、どうせ売れないから好きなようにやっていこうよ、って(笑)。子供のことを歌うっていう案はHIMUKI君からも出て、お互い同じタイミングで産まれたし。題材としてはすごくやってみたかった曲ですね。この曲に関しては、ラップを書くというより、普通に子供に対する思いをひたすらノートに関して、それを抜粋してハメていったんですよね。だから、あまり韻が踏めてない。子供が物心ついたときに聴いていろいろ思ってくれればいいな、っていうぐらいの感じで書きました」
HIMUKI「ズルいっすよねラッパーは、そういうこと出来るから(笑)」
 
■アルバム二枚作って思った、HIMUKI君から見たMC:KGEのラップの魅力は?
HIMUKI「やっぱりフロウですね。フロウ巧者だと思います。『LOCAL FAMILY』の頃より格段にレヴェル・アップしてるのをレコーディングのときも感じて。僕、レコーディングのときにエンジニアもやってるんですけど、昔よりどんどん声が出て来てるから、ゲイン(録音時の音量)をどんどん下げてるんですよね。いろんなラッパーのレコーディングをウチでやってるけど、一番声が出てるラッパーですね。まあ、でも、それを引き出してるのは僕かな、って(笑)。一方で、他の人の曲でKGEがラップしてるのを聴くと、自分の曲では引き出せてない部分が出てたりしてジェラシーを感じたりもして、そういう風に思い続けてたら多分3rdアルバムも出来るだろうし、もっとレヴェル・アップしたものが出来るんじゃないかな、って」
 
■逆にKGE君から見たトラック・メイカー:HIMUKI君の魅力は?
KGE「初めて言うんですけど、トラックを聴くとき内心『え?』って思うところから始まるんですけど、レコーディングして最後ミックスが終わったときに『やっぱHIMUKI君の言ってることは正しかった』って思うんです」
HIMUKI「確かに、俺が自信ある曲とかはKGEにワンクッション置かれるかもしれない」
KGE「『このトラックはKGEに合うし、この曲は化ける自信がある』って渡されるビートって、『ほうほう……え?』って最初は思うんですけど、でも、HIMUKI君だから間違いないだろう、って曲を書いてる内にノッてきて作り終えると『あ、やっぱスゲェな』って。予想してたものの倍のモノが返ってくる感じですね。自分が『このビート良いな』って選んだトラックでラップしても、最初に思っていたもの以上のものにはならなかったりするんですよ。大概のビート・メイカーは『KGEの好きなトラック選んでよ』って言いますけど、HIMUKI君は唯一『いや、KGEはコレでしょ!』って押して来る。良い意味で我が強いトラック・メイカーですね」
 
■今後のふたりの動きはどう考えてますか?KGE君は既にJBMとのBANG BLACKSのプロジェクトを始めてるけど。
KGE「BANG BLACKSは、俺とJBMがBANG STAYSTONEDを母体にしてずっとやってきたから、ひとつの形としてふたりで何か残したくて。で、どのレーベルから出そうか考えてた中で、MEGA-Gのアルバムを出したCREATIVE PLATFORMから、店頭には並ばない形で敢えてやってみよう、って。BANG BLACKSは、(予約限定盤リリースなので)どれくらい俺らのことを好きな人がいるのか?っていうのも分かるし。この形で買ってくれる人は確実に俺らのことを好きな人たちだし。MEGA-Gの動きを見て思ったんですけど、競争原理からちょっと離れたところから見えるモノもあるんじゃないかな、って思ったすね。KGE & HIMUKIもガシガシやっていくし、BANG BLACKSも潜りながらやっていくって感じですね」
 
■HIMUKI君は、先日会ったとき酔っ払いながら「俺、ラップするっす」って言ってたのが衝撃だったんですけど。
HIMUKI「ラップは……ラップってカッコ良いな、って単純に思ったし」
 
■最近思ったんですか?(笑)
HIMUKI「やっぱりビート・メイカーは金がかかる。機材もレコードも買わなくちゃいけないし。ラッパーだったら、紙とペンと才能でイケる、と……俺、もし両方(トラックとラップ)備わってたら……俺は食えるんじゃないか?って思うし(笑)。単純にラップしてみたいんですよ。だけど、ラッパー気質じゃないからぶっちゃけ言いたいことがない(笑)。そんなことより俺の本当の今後のこと訊いてもらっていいですか(笑)?」
KGE「ぶっちゃけ、HIMUKI君がラップやるとか、本気にしない方がいいっすよ!」
HIMUKI「でも、最近サイドMCもやってるし、マイクを握ることに対する違和感はなくなってきたというか……」
 
■じゃあ、トラック・メイカーとしては?(笑)
HIMUKI「BANG BLACKSの企画でも何個かトラック提供する予定だし、某アーティストのアルバムのフル・プロデュースも頼まれてますね。地方の人とかからも話が来てるし、おかげさまで良い感じで出せそうですね。ソロで7インチ出すっていう話をもらってたりもするし、そういった企画もどんどんこなしていければな、って……でも、ラップは絶対その内に(笑)」
 
■ちなみに、MCネームは何でしたっけ?
HIMUKI「パンプキン横澤です。流石に本格的にやることになったら名前変えると思いますけど(笑)」
 
■DIAMOND Dみたいになるのを期待してます(笑)。
 
 

Pickup Disc

TITLE : 2nd IMPACT
ARTIST : KGE THE SHADOWMEN & HIMUKI
LABEL : P-VINE/PCD-24291
PRICE : 2,520円
RELEASE DATE : 4月3日