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PRIMAL

インタビュー:高木“JET”晋一郎

 「眠る男」以来、6年ぶりとなるアルバム「Proletariat」をリリースしたPRIMAL。彼らしい独特の言葉遣いや、幾通りにも解釈が出来る、具象性と抽象性が絡まった言葉の連なりは、まさにPRIMAL節といった感覚を覚える。同時に、家庭や経済といった「自分を取り巻くモノ」と「自己表現としてのラップ」という、その関係性の中で、いかに思考し、言葉を発し、ラップするかという、非常にスリリングなチャレンジも感じさせられ、自分自身を改めて考えさせられるような仕立てになっている。「生きること」と「ラップすること」のPRIMALからの現状での回答、しかと耳に刻んで欲しい。
 
 
■前作から今作まで6年というスパンが開きましたが。
「確かに6年経っちまって……結婚だったり、いろいろ生活の変化があったんで、そういう流れであんまり動けなくなってて」
 
■ただ、その間にはSHINGO★西成さんとのユニット:鉄板BOYZだったり、客演仕事はされてましたよね。その意味では、求められれば動くけど、ソロとしてのモティヴェーションはそんなに高まってなかったという感じですか?
「確かに。前ソロを出してからしばらくは、ソロ作って部分でのテンションは上がらなかったですね。それよりもバンドで動こうかなとも思ってたり--そのバンドで作った曲が“共倒れ”なんですけど--してて。で、ここ3年ぐらいで、もう一回ソロで動こうかなって思い始めたんですよね」
 
■「眠る男」を出してソロとしては満足してしまっていたという感じですか?
「満足……なのかな。でも、1stのときに作った曲が、今やっと馴染んできた感じもあるんですよね。……ちょっとまずいですけど(笑)。ただ、『自分がやるべき場』ってことをあんまり考えて来なかったっていう感じはありますね。だから、いろんなところを彷徨った6年間なんだと思います」
 
■では、ソロとして6年ぶりに動き出したキッカケは?
「鉄板焼き屋で働き出して、金銭的にも人並みに安定して、空いた時間は少ないけど、その中で制作が出来るんじゃないかなって思ったんですよね。だから、金銭と時間を活用すれば、他のアーティストに比べると動ける時間は少ないかもしれないけど、アルバムを作ることは出来るなって。手探り気味ですけど。ウチの場合は奥さんも働いてくれてるんで、何とかなるかなって」
 
■僕もフリーランスなんで、今の話は身につまされます(笑)。でも、実際に金銭の不安があったりすると、それが気にかかって集中できなかったりするじゃないですか。
「それはありましたね。予想しちゃうじゃないですか、『ここで無理したら後できついな』とか。でも、いま働いてる店は、結構ラップしてることを応援してくれてるんで、アルバムの制作に向かえたって部分もありつつ。それで心の安定が生まれたって部分もありますね」
 
■6年は決して短くないとは思うんですけど、それによって時代に遅れてしまうとか、忘れられるって不安はなかったですか?
「辞めてるつもりはなくても、そう捉えられるかもしれないなとはちょっと思いましたね。でも、誰かのフィーチャリングではやってたんで、そこまで不安はなかったかもしれない。かといって安心もしてなくて、イヴェントをやったり、客演でシーンを賑わせてたわけでもないんで、もう一回、ソロでのアルバムを出してからが勝負だとは感じてました。だから焦ってもしょうがないっていう思いでしたね」
 
■6年間はHIP HOPを追っかけてましたか?
「洋楽はクラブで聴いたぐらいでしたけど、日本語ラップはすごく聴いてました。SIMI LABは面白かったですね。DINARY DELTA FORCEとかもカッコ良いと思ったし。内容も含めて、超多様化してるんだなっていうのは感じましたね。サウンドも変わったのが多いし、表現が本当に自由になってるなって。そういう部分から刺激も受けますね。その意味では、それまではけっこう同じようなモノが多かったんだなとも思ったりもして」
 

■話は変わりますが、今作に「Proletariat」というタイトルをつけられた理由は?
「そうですね……とりあえず、自分の考え方とかは、その領域を超えられないのかなって」
 
■労働者階級の発想というか。
「っていうイメージがあったんですよね。実際にそうだと思うし」
 
■先程の、日常的に働いて、金銭的に不安がなくなったから、ソロに向かえたってお話も「Proletariat」ってタイトルとバッチリはまるなって。加えて、“御江戸のArea”や“おむつがとれるまで”で、ご家族やご家庭のことを書かれていますが、そういった部分からもPRIMALというラッパーの変化が感じられますね。
「家族が出来たのは大きいですね。考え方や生き方も変わるっぽいし」
 
■そして、そういった世界観がMSCというグループのメンバーのソロ作から出てくるのが面白かったし、それが変化なんだろうなとも感じて。
「自然に出てきましたね。そういうのもいいんじゃないの?ってイメージもあるし」
 
■家族のことを書くのは、自分でも意外だったりしますか?
「いや、それはなかったですね。何でもトピックにしたいと思うんで。俺も結構ケチなんで、『それなりに養ってんだから歌詞にさせてもらうよ』って(笑)」
 
■ハハハ。MSCの曲はやっぱり強い曲だったり、家族や家庭というモノからは非常に距離のある曲が多かったと思うんですが、10年経つとこういうリリックが出てくるんだなって。今回のアルバムに対して、全体的なテーマはありましたか?
「なるべく分け隔てなく聴いてもらえる内容は意識しましたね。トラックも今回は自分で選んだんで、それに対してどう載せるかっていうのが今回のテーマだったと思います」
 
■分け隔てなく、というのはどういった意味で?
「ラップ/HIP HOPが好きな人だったら誰でも聴いてもらえるような、ラップとトラックのバランスというか」
 
■その意味では、“子供とママと家庭”のような家族モノもあれば、“地下プロRUN”や“血”のようなハードな内容も、と内容でもバランスは取られてますね。
「ちなみに、“地下プロRUN”の『地下プロ』っていうのは、地下プロレスのことなんですよ。知り合いのレスラーがそれを運営してて、この曲のフックも彼のことを歌ったりしてるんですけど。僕もそこに出してもらってて」
 
■え!地下プロレスに選手としてですか?
「いや、ラッパーとしてですね(笑)。地下プロレスの会場で、ライヴさせてもらってて。音響施設がないときはフリースタイルだったりアカペラでやったりしてて」
 
■ラップするにもけっこう過酷な現場ですね。地下プロレスってどんな内容なんですか?どうしても『グラップラー刃牙』に出てくるような、アンダーグラウンドな何でもありのプロレスを想像してしまうんですが。
「確かに、3カウントじゃなくて、ギブアップまで勝負だったり、多少ガチな部分もあって、普通のプロレスとは違いますね。その会場で、この曲も売れてくれればいいなという目論見もちょっとありつつ(笑)」
 
■“地下プロRUN”もそうですが、タイトルの付け方がやはり秀逸ですね。“性の容疑者”ってタイトルも凄いなって。
「もう、なんかすいませんって曲ですね。内容的には、もう自分は『性の容疑者だな』ってことですね(笑)。ディスられ覚悟で作ったんですけど、それも人生経験かなって。このアルバムの中では、最初の方に出来た曲ですね」
 
■この曲も含めて、書きながら自分の中の感情を整理したり解消していくのかなって思ったんですが。
「まさしくそうですね。それがあるんで、出来上がるまで時間がかかったんだと思います」
 
■“MS PRIDE”ではSATELLITEを、“日本”ではO2を、“岐路”ではRUMIに加えてTABOO1と漢を迎えられていますね。その意味では、“MS PRIDE”も含めて、MSCに対する思いを感じる部分でもあるんですが。
「そうですね。何とかMSCとして動きたいと思ってるんですけどね。出来るとは思ってるんで」
 
■現状のところでは、MSCというグループでの活動は停止してますが、MSCは現在のところどういう状況でしょうか?
「作品作りに関しては、ある程度纏めてくれる人がいれば出来ると思うんですね。でも、より良い物って考えると、もっとプライヴェートから遊んだりして密にならないとダメかなって」
 
■今は密には会っていない、と。
「そうですね。遊ぶ相手がみんな変わっちゃってるんで……微妙に家が遠いんですかね(笑)」
 
■ハハハ。そんな理由ですか(笑)。
「仲間割れとか喧嘩別れじゃないんですが、だから不思議な感じですよね。自分の感情なんですけど、結成の当時はそれぞれバラバラで動いてた連中が集まることで、それぞれ足りない部分を補えるんじゃないかなって思ってたんですよね。集まって、みんなでひとつになって表現することで、注目されるんじゃないかって」
 
■実際にそうだったと思います。
「でも、そこから前進してないのかもしれないですね。クルーとしての意識は」
 
■次の展望がそこまで見えなかったというか。
「『LIBRA』っていう形でその次の動きはあったんだけど、そうするとMSのメンバーだけで考えて動けるわけじゃないし、やらされるって部分もなくはなかったから。だから、仕事と捉えて、大人の付き合いって部分では出来るのかもしれないけど……」
 
■初期の頃のような感情では難しいと。
「そうですね。でも、大人の付き合いもやればやったで面白いと思うんで、そこはあんまり白黒つけずにいこうかなと(笑)」
 
■アルバム・タイトル曲である“Proletariat”で、PONYを迎えたのは?
「このトラックは、先にPONYのトコに渡ってたんだけど、このトラックを使いたかったんで、相談の上こういう形になって(笑)。でも、気になってたラッパーではあったんで、ちょうど良いタイミングでしたね。MCバトルでも会ったりしてたんで。だから、この曲を作って、今は密になりかけてるって感じですね」
 
■“おむつがとれるまで ”の中に「サクセス」という言葉が出ますが、現在の想定するサクセス像は?
「結構、現状維持だったりするかもしれないですね。生活は変わらないけど、仕事は増やしていければなっていう。子供がもし大きくなって、いろんなことから解放されたら、また違う、本格的な活動が出来るのかなとも思うんですけどね、トチ狂ったおじさんとして(笑)。でも、未来予想図が決まってないんで、その時々の思いになるんですかね」
 
■“武闘宣言2.0”はMAKI THE MAGICさんとの最後のお仕事になった曲になると思いますが。
「この5年ぐらいは、本当にMAKIさんにお世話になってて、精神的な師匠が亡くなってしまったっていう思いですね。本当に急だったんでいまだに信じられなくて。このアルバムも、MAKIさんが後押ししてくれたし、レーベルとの交渉にも同席してくれたりしたんです。それから、一緒にユニットをやろうよって話もあったんですよね。そのときに残ってるトラックがあるんで、今後はそれを出したいですね、ILLICIT TSUBOIさんのスタジオに、流し込みは出来てるらしくて」
 
■それはどんなユニットだったんですか?
「MAKIさんとMEGA-Gと俺で、DJにはDJ JINさんを呼ぼうかって話をしてたんですよね。いつもお酒飲みながら話してたんで、やる気次第だったんですけど(笑)。でも、キエるマキュウの動きも一段落したんで、そろそろ動こうかって感じだったんですけどね」
 
■それは本当に残念です。最後に、この後のPRIMALとしての動きは?
「やっぱりライヴが洗練されないとダメだなって思ってるんで、このアルバムをひっさげてライヴがもっと出来ればなって思ってますね」
 
 

Pickup Disc

TITLE : PROLETARIAT
ARTIST : PRIMAL
LABEL : P-VINE/PCD-25159
PRICE : 2,625円
RELEASE DATE : 8月21日