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L-VOKAL & KREVA

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「KREVA君がフル・プロデュースって時点で面白いと思うし、そこに俺がラップを乗っけてアルバムを作るってこと自体が面白いと思った。冒険的な感覚もあるのかな。ひとりのプロデューサーとやってみたらどうなるんだろう?っていう」--L-VOKAL
 
「ラッパーとしてアルバムを何枚も出してると、自分で『この曲はアリ/ナシ』って決めていくんじゃなくて、他人に選んでもらいたい、って気持ちも出て来ると思うんだよね。そういう意味で言うと、Lが俺を選んだっていうのはベスト・チョイスだったんじゃないかな、って」--KREVA


 L-VOKALは、これまで自身のアルバム/ミックステープで、常にフィーチャリングやプロデューサーの起用に独自の嗅覚を発揮し、興味深いコラボレーションを実現してきた。そのコラボレーション相手のひとりであるKREVAとは、過去にお互いの作品/楽曲で数度に渡って共演経験があり、その共演数の多さからもふたりの関係の良好さ/リスペクトの深さを窺うことが出来る。
 
 そして、これまではラッパーとしての共演に留まっていた両者だが、今回リリースされたL-VOKALのニュー・アルバム「別人Lボーカル」では、KREVAはプロデューサーという立場でクレジットされている。L-VOKALにとって1プロデューサー体制で制作された初めてのアルバムであり、KREVAにとってもひとりのラッパーをトータル・プロデュースした初のアルバムとなる今作。そのフレッシュな試みの行程を両者に訊くことが出来た。
 
 
■世間的には、二人の初邂逅はL君の"STEP UP"(08年)という認識だと思うんですが、実際に初めて会ったときはどんな感じだったんですか?
L-VOKAL「渋谷NUTSですね。俺が外で撮影してたらちょうどNUTSで『FG NIGHT』をやってて。『じゃあ、KREVA君もいるのかな?』と思って入ってみたらいきなりいて(笑)。そこで話しかけたんですけど、いきなり曲の話になった気がするっすね。なんか、勢いがすごいあった」
 
■じゃあ、元々会いたいと思ってたんですね。
L-VOKAL「そうですね。一回、VERBAL君が紹介してくれるって話になってたんだけど、ちょうどそのとき、俺の曲でKICK THE CAN CREWをちょっとディスってるような曲があって、それをKREVA君が聴いて『ガッカリだよ』みたいな感じになってるって訊いて。まあ、やったことはやったことだし、それは仕方ない、って思ってたんですけど、すごい会いたいって気持ちはあったんです。で、その後すぐ『新人クレバ』をゲットして、ある意味そのとき初めてKREVA君の音楽を聴いたんですよね。それまでディスってたのも、ラジオでチラッと聴いてたぐらいで、まあ、完全に売名行為?大きなモノをディスらないと意味がないと思うし、俺はアメリカのラップみたいに、遊びの延長でやってたから。だけど、KREVA君がブログで俺のアルバム紹介してくれたりして」
KREVA「そうそう。で、特典の曲聴いてたらひたすらいろんなグループをディスってる曲があって、その中にキックの名前があって。ブログで紹介したらいきなりディスられてるってどういうことだよ?っていう(笑)。残念だな、ってVERBALに伝えた後、すぐLが話に来てくれて。ちゃんとお詫びみたいのも言ってくれて。ディスりっぱなしのこの世の中で、そういう風に言ってくる人っていないじゃない?だから、ちゃんとしてるなー、って」
L-VOKAL「謝ったかどうかは憶えてないですけど、起こったことは仕方ないし、だけど次があるし」
 
■「新人クレバ」を聴いてどういうところが良いと思いましたか?
L-VOKAL「俺は基本的に、『オリジナル日本のHIP HOP』っていうものを評価するし、そういうものが好きで。俗に言う『アメリカのマネ』が苦手だったから、『新人クレバ』を聴いたらスゲェ“和”だな、と思って。『日本人がHIP HOPをやるとこうなる』っていう音楽性にすごい共感したんですよね」
 
■“STEP UP”はL君的にも、日本のHIP HOP的にも重要な曲だと思うんですけど、制作時のことは覚えてます?
L-VOKAL「結構覚えてる。SONPUB君のトラックだったんだけど、最初からこのトラックでいこうと思って提案したんですよね。そこからは結構早くて、お互いのヴァースを録って、3rdヴァースはスタジオでふたりで考えて録ったのかな?だから、そのとき『めちゃくちゃ仕事の早い人だな』って思いましたね」
 
■KREVA氏と出会ったことにより、その後のL君のラッパーとしてのスタンスやラップの書き方って変わったと思いますか?
L-VOKAL「まあ、俺は“ウェッサイ事件”とか、いろんなエピソードがあるんで(笑)。いろいろ考えさせられることがあって、一回ラップやめようと思ったこともあるし、日本にHIP HOPは存在しない、ぐらいに思ってたこともある。だけど、『新人クレバ』を聴いたりして『日本人が表現できるHIP HOPってあるんじゃないのかな?』って思うようになったんです。そう思ったのにラップをやめちゃうのもアレだから、その後ちょっと研究したってところはあるっすよね。日本はやっぱ“ポップス”の国なんですよ。俺も、ブロンクスのゲットーで生まれてるわけじゃないし、だけど、だからこそ違うモノを表現できるな、と思ったんですよね」
 
■少なからずKREVA氏の存在はL君に影響を与えてきたようですけど、今このタイミングでL君のアルバムをKREVA氏が全曲プロデュースするという流れに至ったのは?
KREVA「いきなり来たよね。いつもいきなりスタイルで来るんだよね(笑)」
L-VOKAL「すいません(笑)」
KREVA「『麻天楼』でやったときも、『この曲でラップしたら良いと思うんですけど』っていきなり来たからね。今回もいきなり来て『全曲KREVA君のトラックでやったら熱いと思う』みたいな話になって。“C'mon, Let's go”(01年)のシングルにカップリングで入ってる“マカー(GB-mix) feat. AKLO, L-VOKAL”に参加してもらったんだけど、『GO』が凄い良いって話をしてくれて、その流れで『全曲やってもらったら面白いと思う』ってなったのかな。今までやったことないけど、面白そうだな、って」
LVOKAL「SHINGO★西成さんじゃないけど、俺って“直感”型で。だからホント申し訳ないですけどいつもいきなり(笑)。『LIVIN'』出した後、次は何がいいかな、と考えてたら『コレはKREVA君だな』と思って。ラップだけじゃなくてトラックもカッコ良いから、その上でラップしたいっていう、俺の願望もありつつ」
 
■これまでのL君のアルバムは、いろんなトラック・メイカーが参加しているスタイルでしたけど、今回みたいにひとりのプロデューサーに依頼することで、トータル面でのディレクションを受けてみたいという気持ちもあったんじゃないですか?
L-VOKAL「ああ、それもあったっすね。トータル・プロデュースというものを誰かにやってほしいな、と思ったときに『KREVA君が一番フレッシュだな』と思ったんです。他にそれがイメージできるのはBL君とかSONPUB君ぐらいだったけど、もっとフレッシュなものって考えると、これまでにないKREVA君だったんです」
 
■KREVA氏的にもラッパーのアルバムをフル・プロデュースするのは初となるわけで、オファーを受けたときにどんなことを思いました?逆に、これまでは敢えて手掛けてなかったのかな、ぐらいに思ってたんですが。
KREVA「いや、そんなことはなくて、リアルな話(ギャラが)高くて頼めないんだと思う(笑)。ラッパーとしてアルバムを何枚も出してると、自分で『この曲はアリ/ナシ』って決めていくんじゃなくて、他人に選んでもらいたい、って気持ちも出て来ると思うんだよね。そういう意味で言うと、Lが俺を選んだっていうのはベスト・チョイスだったんじゃないかな、って。良いトラック作れる人で『ラップもうちょっとこうしたらいいんじゃないですか?』って意見も出て来ると思うし、良いディレクションする人もいると思うけど、ラッパーがするディレクションってまた違うと思うんだ。全曲トラック作って、ラップのディレクションが出来るラッパーって、今だと多分俺ぐらいじゃないかな、って思うし」
 
■作り始めの段階ではどんなアルバムにしようと思ったんですか?
L-VOKAL「KREVA君がフル・プロデュースって時点で面白いと思うし、そこに俺がラップを乗っけてアルバムを作るってこと自体が面白いと思った。冒険的な感覚もあるのかな。ひとりのプロデューサーとやってみたらどうなるんだろう?っていう。作りながら色々見えてきたってところもありますね」
KREVA「最初は、もっとメロウなアルバムにしようって話してたんだよね。ライヴではちょっと出来ないぐらいの。そういうトラックもいっぱいあったし、俺もそういうのを作ってみたいって思いつきがあったからオファーを引き受けたってっていうのはあるね。だから、最初に渡したトラックは全部エレピとドラムだけみたいな、そんな感じのを20曲くらい渡したとこからスタートした。でも、結局最初の方に渡したトラックで採用されたのは“Same Ol' Biz”くらいかな」
 
■作り始めたのはいつ頃なんですか?
L-VOKAL「最初にトラックをもらって、ワン・ループ物にちょっと苦戦したっていうのもあって、実際に動き始めたのは去年の夏ぐらいですかね」
KREVA「俺のイメージだと、Lは言葉が湧いてくるタイプの人だと思ってたんだけど、意外とトラックから感じ取る世界観からストーリーを作る人なんだってことに気づいて、『だから苦戦してるんだ』と思って、違うトラックを渡していって」
L-VOKAL「で、今年の1~2月くらいには大体出来てた。あとは、そこからアレンジしたりフックに磨きをかけていったり。プリプロは全部自分の家で録ってましたね」
KREVA「やりとりしながら。トラック選びというか、どれにするかっていう絞り込みにはちょっと苦戦したかな。そういうのを何回かメールのやりとりして進めていって。レコーディング自体は、まさかの3日で録り終わるっていう。やれば出来るっていうことが分かった(笑)」
L-VOKAL「俺も相当作り込んでからスタジオに行ってましたからね。歌詞カードいらないレヴェルで」
 

■今作はノー・フィーチャリングで、それこそKREVA氏のヴァースもないですけど、客演は敢えて入れなかったんですか?
KREVA「最初は入れようっていう話もあったんだけど、俺はいらないな、と思って。Lの歌詞の面白さ一本でいいんじゃないかな?って。あと、せっかくトラックは俺がひとりで作ってるんだし、ガチでやってる感じの方がいいんじゃないかな、っていうのはあったね」
 
■歌フックの入れ方とか、そういった部分にもこれまでのL君の作品とひと味違う感覚を受けたんですが。
KREVA「むしろ逆で、最初はもっと歌っぽかったから『もっとラップのフックにして』って言ったんだ。で、俺がメロディ作ってる曲は一個もない」
L-VOKAL「“YO! YOU!”だけ、MIKE MATIDAにメロディ考えてもらったんだけど、それ以外は全部自分が作って。結構絞り出した感じですね。フックが一番時間かかったし、フックの作り方次第で曲が更に面白くなるなって、俺も勉強になりましたね」
KREVA「テーマになってる一言を連呼してるみたいな感じっていうか、そういうフックが多かったんだけど、俺はLが書くラップのフックがカッコ良いと思ってたから、それをもっと出して欲しい、って伝えたね」
 
■それ以外にはどんなディレクションを?
KREVA「俺が聴いてるLの作品は、ミックステープ含め、ラフな感じを楽しみにしてるところがあったんだけど、それだと歌詞が散漫になるところがあったから、録りは被せに至るまでかなりタイトに録っていったね」
L-VOKAL「俺にとっても初めてのやり方で。けど、『このプロデューサーはそれを求めてるんだな』と思ったから、それをやりました(笑)。 俺がやってるMATENRO系のラフな感じは、アレはアレでいいんですけど、ここでKREVA君にトータル・プロデュースを頼むなら、彼が見えてるゴールがあると思うから、そこは任せた方がいいと思ったんです。別に『ラップをこうしろ』とかってことじゃなくて、『ちゃんとここ(声を)重ねて』とか、そういうことです。整理をするというか。俺のスタイルを変えるとかそういうことじゃなくて、録る行程が違うってだけで」
 
■“EUROPE”では、去年行ったヨーロッパ旅行のことについて歌っていて、実際充実した旅だったことはブログからも伝わってきてましたけど、ミュージシャンとしてあの旅が与えた影響は大きいですか?
L-VOKAL「いや、みんな行った方がいい(笑)。『なんだよ、羨ましいな』って思われたい(笑)。海外に行ってそこの匂いを嗅ぐと、すごい財産になって帰って来れるから、自分の制作にも活かせる。だから、みんなもっと海外に行ってほしい。で、いろんなモノ経験して帰って来たら絶対利益になるし日本も更に豊かになると思う。深い意味ではそういうことだし、『何ひとりで旅行に行ってるんだよ(笑)』ぐらいに思われてもいいと思ったんですよ。自分が『いいな』と思ったことをそのまま出したかった」
 
■“TOKYO MARATHON”で使われてる初音ミク的なヴォーカル処理は?
KREVA「あれは、YAMAHAのiPhoneアプリ:iVOCALOID-VY1ってやつなんだよね。このトラックとあのフックが元々あって、それで俺の中で完結してたんだけど、『コレでLが東京のことラップしたら間違いない』と思って渡したんだ。3~4年前に作ったトラックなんだよね。(L-VOKALの声ネタを使っている)イントロは、思いついたらすぐLのアルバムの歌詞カードをチェックして“東京”って言ってる部分全部ピックアップして、ちょっと足りなかったから『CONCRETE GREEN』とかも聴いてみたりとかして(笑)。でも、思ってた程“東京”ってリリックで言ってなかったのが意外だったね。すごい“東京感”あるイメージだったんだけど」
L-VOKAL「そこまでディグってくれたし、そのイントロを聴いたときはラヴを感じてブチ上がったっすね(笑)」
 
■こうしてアルバム一枚作ってみて、KREVA氏が感じたL-VOKAL君のラッパーとしての面白さ/魅力は?
KREVA「やっぱ歌詞でしょ。面白いと思う。『視点が面白い』っていうのはみんな気づいてると思うし気づいて頂きたい部分だけど、彼のラップは歌詞カードを読みながら聴く方が断然面白いんだ。スムーズにフロウしてるから、良い意味ですり抜けていくときもあるけど、一個一個言葉を意識してキャッチしながら聴いてるときの方が面白いし、その面白さっていうのは彼の表現が独特だからだと思うんだ。だから、みんなには是非CDで買って歌詞カード見ながら聴いてもらいたいね」
 
■一方、L君から見たプロデューサー:KREVAの魅力は?
L-VOKAL「俺はラップでも何でもそうなんですけど、『コレは外国人が聴いたらどう思うだろ?』とか、よく考えるんですよ。例えばブロンクスのヤツらが聴いたらどう思うか、っていうのはいつも最初に考えてることで、ブロンクスのヤツらに面白い/カッコ良いって言わせたいし、そのためにはNYにある今のサウンドをやってても響かないと思うんですよ。それよりも、日本独自の面白いサウンドを聴かせた方がいいと思うし、そういう意味でも今回のトラックはすごい良いですね。あと、俺の場合は周りの仲間がナチュラルに外人だから、普通に彼らがフィールしてくれるモノが正解だったりするし、そこはラッキーだと思う」
 
■“次の時代”という曲があるので敢えてお訊きしたいのですが、ふたりが考える日本語ラップの“次の時代”はどんなものだと思いますか?
L-VOKAL「次の時代って、物凄い波でいつも襲ってきますよね。それを入れてあげないとダメだと思うし、それに乗らないとダメだと思う」
 
■「入れてあげる」というのは?
L-VOKAL「閉鎖的になりがちなんですよね。『新しすぎる』『分かんない』とか、自分のことみんな守りたいわけだし。俺は次の時代がすごい気になるし、歳を取れば取る程それを感じるし、だけど、それをナチュラルに受け入れられたらカッコ良いのかな、って思います」
KREVA「このまま行くと、“次の時代”の人がどんどん出て来るのは間違いないけど、規模はどんどん縮小していってると思うんだ。もっとライヴ・ベースなヤツ……一個も作品出してないけどライヴはメチャクチャ人入ってるってヤツがいないとイカンな、と思ってるね。さっきも『アメリカのマネ』みたいな話が出たけど、それで言ったら正規リリースはないけどメチャクチャツアー廻ってるヤツらがいっぱいいるじゃん?その感じを受け入れてる人がまだいないから、そういう時代が早くやって来てほしいね。でも、ワンマン・ライヴとかに意識が向いてる人も増えて来てるよね。それは良い流れだと思ってる」
 
■最後に何か言い残されたことがありましたら。
L-VOKAL「今回のアルバムは、マスタリングがTOM COYNE(STERLING SOUNDS)なんですよ」
KREVA「あー、そうだ。かなりゴツい音になってるね」
L-VOKAL「“YO! YOU!”の配信シングル・ヴァージョンは熊野功雄さん(PHONON)なんですけど、日本のトップと世界のトップの音の違いを聴き比べられるかな、って」
KREVA「あと、Lは、例えばtofubeatsとか使うの早かったじゃん。(プロデューサーを)選ぶ目がすごいあるから、その彼が今、俺が全曲プロデュースって流れになってるっていうのは、自分的には面白いかな、と思ったね」
L-VOKAL「BL君もSONPUB君もtofubeatsも、俺は最初の方に仕事してるから、だからこそKREVA君と最初にアルバム一枚作れることは自分的に超価値があると思いますね」
 
 

Pickup Disc

TITLE : 別人Lボーカル
ARTIST : L-VOKAL
LABEL : くレーベル/KLCT-0004
PRICE : 2,800円
RELEASE DATE : 9月11日