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ANARCHY

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「『自分が楽しむこと』をもっと真剣に頑張ろう、って。俺が楽しんでへんかったら誰もラッパーになりたいと思わないですもんね。あと、ただ俺自身が一番楽しんでいたい(笑)。それを見てみんなも楽しんでくれたり刺激になったりしてくれたらいいですよね」

 毎作、着実に成長を果たし、人気も増してきているANARCHY。彼は、恐らく多くのリスナーが考えている以上に「新しいことに挑戦する」という欲求が強い。前作「DIGGIN' ANARCHY」で全曲のプロデュースをMUROに依頼したことや、BILLBOARD LIVEでフル・バンドのワンマン・ライヴを敢行したことも、彼にとっての「新しい挑戦」だった。
 
 そして、先日リリースされたニュー・アルバム「DGKA (DIRTY GHETTO KING ANARCHY)」では、その「新しい挑戦」が、様々な意味で今まで以上にリスナーに分かりやすく提示されている。既に話題になっている通り、今作はANARCHYにとって初の試みである、フリー・ダウンロード作品として無料で公開された。もちろん、オリジナル曲だろうとビート・ジャック物だろうと、フリー・ダウンロード作品がリリースされること自体は、現在の日本のシーンでは最早決して珍しいことではない。だが、特定のレコード会社/レーベルと契約しているようなビッグ・ネームなアーティストにとっては、契約内容や権利的な問題から、現在でもそう簡単に手を出せる表現方法ではないし、作品を売って稼ぐこと自体がプライドとなっているアーティストもいるだろう。そういった意味では、ANARCHYほどの知名度/人気を誇るアーティストがこういった形態のアルバムを出したことは、やはり画期的なことだ。
 
 そして、今作はフリーという、文字通り“自由”なフォーマットが、ANARCHYのラップ/音楽性自体に大きな変化を与えているのも特筆すべき点だ。これまでは比較的オーセンティックなアプローチが多かったトラック選びも、より時流に沿ったモノになっているし、そういったトラックに乗るANARCHYのラップも、これまでの「ANARCHY節」な力強いラップから一転、より“遊び心”の感じられるスタイルとなっている。この「ラップを通して遊んでいる」感じは、正に現在のANARCHYの恵まれているアーティスト活動/環境が反映しているからであり、彼がどれだけ現在の人生を謳歌しているかの反映でもあると思う。未聴な方は(なんせタダだし!)積極的にダウンロード/ストリーミング再生して、彼の“今”を感じ取ってほしい。
 


 
■日本では、ANARCHYぐらいの知名度があるラッパーがフリー・ダウンロードでアルバムを出すというのは画期的なことだと思うんだけど、今回こういう形でリリースしようと思った理由は?
「今回は、A&Rからフリーで出そうっていう案があったり、DGK(USのスケーター/ストリート・ウェア・ブランド)のSTEVIE WILLIAMSってヤツが『フリーでやれば?』って言ってきたり。彼がR-RATEDの事務所に遊びに来たときに、提案というか『なんでフリーでやらへんねん?フリーでやったらみんな聴くし、お前も有名人になれるやんけ』みたいに言われて、アメリカ人的な発想をそのまま受け入れた感じです(笑)。『なんでPVに女の子出てへんねん?女の子いっぱい出して、みんな欲しがるスニーカー映したらお前はスーパースターや!』みたいな、ホンマそんなノリなんですよ(笑)。俺も『確かになー』って思ったし、そういう部分を意識しだして。そういうモノに対する憧れもあったりするじゃないですか?だから、もうちょい入口を広げてみよう、と。ただ、最初はフリーで出来ると思ってなかったですね。フリーで出すっていうことは、お金をバラ撒くみたいなモンじゃないですか。でも、スタッフとか周りが『やってみれば?』って言ってきて、『出来るんなら、やりたい!』って」
 
■パッケージ作品にこだわりのあるアーティストも多いだろうから、フリーでオリジナル作品を出すことに関しては、今でも賛否があるところだと思うんだけど、ANARCHY自身もこれまでの作品から、パッケージ作品で出すことのこだわりを出してたよね。
「初めは確かに、自分の音楽に価値を付けたかったし、タダっていうのは考えられなかったんですけど、でも、それ以上のモノもあるかな、っていう期待もあるし、今まで聴かなかった人も聴いてくれるかもしれないし」
 
■着実に知名度や人気も上がってきてると思うけど、更にもう一段階上げたいという思いも強いわけだよね?
「もちろん」
 

■今作の収録曲は、フリーで出すことが決まってから作ったの?それとも、作っている内にフリーで出すことが決まった?
「最初は(フィジカル用の)アルバムを作ってたんですよね。で、途中で『フリーにしよう』ってなって、フリーには入れられないと思った曲はもちろん外したし、フリーで出すってなってから考え直しましたね。それだったら今まで自分が溜めてた、やりたかったことを詰め込もう、って。自分が今思うHIP HOPを作りたい、って感じやったんですよ。今までは逆にそういう意識はなかった。特に2nd『DREAM AND DRAMA』と3rd『DIGGIN' ANARCHY』の頃は。1st『ROB THE WORLD』がある意味一番HIP HOPやと思ってて、あのアルバムは、やりたいことをそのときの気分で言葉にしていったんですよね。それが、2ndと3rdではコンセプトを立てて作ったからなかったし、ある意味その頃はHIP HOPの枠から外れたかったと思ってたんです。HIP HOPというより、ANARCHYというジャンルを作ることに必死になってた。でも、このアルバムは俺の思うHIP HOP。今クラブでガンガンかからなアカンのはコレや!って初めて思えたアルバム」
 
■フリーで出すと決めた以前に作った曲は今作で入っているの?
「“FOR MY LADIES”と“SUPER BAD”ぐらいですね。フリーで出すというコンセプトにこの2曲は合ってたと思うんで」
 
■今の話はすごく腑に落ちたな。やっぱり一番最近のアルバムが一番印象に残るものだから、「DIGGIN' ANARCHY」と今作のANARCHYを聴き比べると、意外に感じる部分も少なくなかったんだ。ANARCHYの「新しい/違う顔」を感じたリスナーは多いんじゃないかな、って。ANARCHYの中では、今作の曲は今までと違う意識で取り組んでいった?
「うん。全曲ベロベロで作ったっす」
 
■ああ、酔っ払ってたんだ(笑)。
「だから、ある意味無責任。そういうモノもHIP HOPやったりするな、と思ったりしたし」
 
■以前取材したとき、リリック書くときはひとりで部屋にこもって黙々と書くって訊いたことがあるけど。
「それ自体は変わらないかもしれないですけど、もうちょっと楽に書いたかもしれないです。ていうか、楽に書けるようになったのかもしれないです。スキルが付いたかも。俺が出す言葉が“ライヴ”になるときが来た感じがして。言葉を探してないんですよね。言いたいことがあればすぐ書ける気がする」
 
■今作は、ライミングも今までと比べて砕けた感じだし、より話し言葉に近くなってる感じがあるよね。
「そうですね。HIP HOPを意識した結果、こうなったんだと思います」
 
■改めてそういう意識に立ち返った理由は?
「基本的に俺、同じモノを作るのが嫌いなんですよね。毎回違うタイプのアルバムを作ってきたし、今回はその一個でもあるんです。『HIP HOPをもっとカッコ良いモンにしよう』って意識があったんですよね」
R-RATED福岡「言ってたじゃん、DIPSETの再結成ライヴをNYで観たときに、ラップなんだけどみんなが踊りながら歌ってるのを観て衝撃を受けた、って」
「それ、いろんな雑誌で言い過ぎたし言わんとこ、って思ってた(笑)。そこが一番デカイ」
 
■一昨年ぐらいだっけ?DIPSETが再結成ライヴやったのって。
「ちょうど『DIGGIN' ANARCHY』を作ってた頃でしたね。遊びでNYに行って、たまたまDIPSETの復活ライヴがあったから観に行ったら、自分が思ってたHIP HOPからもう一周回った感じ……『コレやん!』って思って。カッコ付けも何もしんでも、“一緒”に思えたというか。言うたらヤンキーがステージに上がってるだけじゃないですか(笑)。でも、その感じが『渋っ!』と思って。それこそがHIP HOPだっていうことを思い出した。WU-TANG CLANを最初に観たときのような感じ。ライヴでも、観客がほとんどステージ見てないんですよ。下向いたり友達と喋りながらとかしながら合唱してて。でも、そいつらにとっては『自分の曲』なんですよね。自分のことを歌ってると思ってるだろうし、それって凄いし、それがアメリカのHIP HOPのヤバイとこやな、って。自分の気持ちを自分が好きなラッパーがステージの上で歌ってるワケじゃないですか。そういうアルバムを作りたいな、って『DIGGIN' ANARCHY』作ってる途中から思い始めて。でも、MURO君のトラックには既にストーリーがあったから、それは表現しきれなかった。だから今回は、無意識に上がりそうな音を選んだっすね」
 
■DIPSETにヤラれただけじゃなくて、その全体の雰囲気/空間にヤラれたってことか。
「そうですね。この空気を作り上げたいと思って」
 
■ANARCHYや般若、OZROSAURUSくらいのアーティストになると、ライヴやってもガッツリ盛り上がるだろうけど、今の日本のお客は、確実に90年代後半とかに比べると大人しいよね。ANARCHYはそういう雰囲気をまた作りたいってことだよね。
「そういうことですね」
 
■確かに、それを考えると当然、自分の音楽を聴いてる人が多ければ多い方が盛り上がるだろうから、フリーでライヴ向けの曲をぶち込むというのは有効な手段だよね。
「だから、出来るだけ簡単な内容にしたかった。みんながヴァースも歌えちゃうような。今までは俺にしか書けない/歌えないラップを書いてたと思うけど、逆に誰でも歌えるラップを作りたかった。だけど、そこでこだわったのは『俺がラップするからカッコ良い』ってことで、それは全部やってるつもりですね」
 
■今作は、これまで以上に“今”のHIP HOPだったり、“今”のANARCHYを強く感じさせる内容だよね。
「そうですね。俺は逆に変わっていかないとリアルじゃないと思ってるんです。じゃなかったらソイツはいつまでも変わってないってことでしょ?俺はそういうラッパーになりたくない」
 
■変化を恐れてないってことだね。
「うん」
 
■変化を恐れた結果、何枚出しても同じような内容になりがちなラッパーは、少なくないかもしれないけど、そういう風にはなりたくないと思った?
「そうやし、自分自身がHIP HOPになった、っていう意識が昔より高い。何言われても別にいいわ、っていう気持ちがある」
 
■それ故に、ちょっとハメ外したような曲を作っても大丈夫だ、と。
「“KONNICHIWA BITCHES”も、昔だったら歌わなかったでしょうからね。でも、いろんな街に行って、楽しませてもらったから、そういう曲も書けるようになったってことですよね。ああいう曲は1stの頃は書けへんかった曲ですよね」
 
■1stの頃は、こういうパーティのりな曲を作ろうと思ったことってある?
「あんまないですね。若い頃はそういう曲が『刺さる』と思ってなかったです」
 
■もっと本能的というか、『もっと楽しませたい』という純粋な欲求が生まれてきた?
「それもそうですね。そうやし、1stの頃のような曲を今作っても、刺さらへんと思うんですよね」
 
■トラック選びはどういう風に?
「このアルバムは、さっきも言ったように『クラブでかかる』ために作ったんで、ノレることを意識しましたね。だから、選び方は前よりもっとシンプルかもしれないです」
 
■東京に拠点を移して以降、クラブに遊びに行く機会がめちゃくちゃ増えたんじゃない?僕が遊びに行くときもかなりの確率で会うし(笑)。
「増えてるっすね」
R-RATED福岡「お酒も飲むようになったもんね」
「酒は飲むようになったっすね」
R-RATED福岡「昔はクラブに行ってもお酒飲まなかったから『何が楽しいんですか?』ってずっと言われてた(笑)」
 
■なるほど(笑)。クラブは今、楽しい?
「うん。楽しいし、クラブにいるときが一番、クラブでかけたい曲が浮かぶ。だから、このアルバムはクラブで遊んで作った。そのために遊んでたから(クラブ遊びは)“仕事”なんです」
 
■そういう言い訳を(笑)。
「正にそうですね(笑)。ヴァイブスにもなるし、クラブで閃いたことが多かった。クラブでずっと携帯いじってリリック書いてるときもあったし、リリックが降りてきて仕方なかったから『俺、帰るわ』って帰ったり」
R-RATED福岡「『こういう曲、作ろうと思うんですけど』ってクラブで閃いてたよね」
 
■クラブ遊びを有効に使ってるねー。前作がクラシカルなアプローチだったから、“ENERGY DRINK”みたいなダブステップ的なアプローチとか新鮮だったね。
「(ラップを載せるのは)簡単に出来ましたね。レヴェルが上がったんちゃうかな?今回は、今までやらなかったオン・ビート系の載せ方をやってて、それが前は苦手やったんですけど、でも『こういう風に書いたらめっちゃ簡単やん!』みたいな感じでした」
 
■さっき話してくれたクラブでリリックがよく思い浮かんだって話が興味深くて、確かに今作は考えこんで書いたというより、閃きとか、一瞬のインスピレーションがラップに反映されてるよね。
「そうですね。逆に、自分が表現したい部分をどう際立たせるか、っていうのが難しかったですね、強いて言うなら。“GANGSTAR”でも、『俺はギャングだ、人のモノを奪って……』みたいな歌にはしたくなかったし、俺の中でのボーダーラインがあって、そういう部分は全部『ANARCHY(のリリック)』って言えるようなモノになってると思います」
 
■USでも、今は普通に全曲オリジナル曲でも“ミックステープ”としてフリー・ダウンロード公開されているけど、ANARCHYはそういう作品もチェックしてるんでしょ?
「そうですね、聴くこともあります。アメリカではCDも出してへんヤツがスーパースターになってるワケじゃないですか。そういう動きはいろいろ見てます。最近はFLATBUSH ZOMBIESとか、(NY・ブルックリンの)フラットブッシュ地区辺りのヤツらがすごい好きですね。UNDERACHIERVERSとか」
 
■“BEAST COAST”と括られている人たちだね。
「カッコ良くないですか?ラップもビートも服も。俺はそれがHIP HOPやと思うんですよね」
R-RATED福岡「ムーヴメントみたいな感じがカッコ良いよね」
 
■そういうムーヴメントをR-RATEDでも作りたいっていうのはあるでしょ?
「もちろん。それはずっと考えてることやし。『あのANARCHYがフリー・ダウンロード・アルバムを』みたいな感じになってるじゃないですか。でも、俺が作ってる感覚は、向こうでフリーで出してるヤツとあまり変わらないと思うんですよ。置かれてる状況が近いというか、俺はまだスーパースターじゃないし、コレをきっかけにそうなれればな、って」
 
■でも、こういう作品は、色々な環境や条件が整わないと、本当の意味でクオリティの高い作品を作るのは難しいよね。今作みたいに、レコーディングからマスタリングまでしっかりやって、オフィシャル・サイトもしっかり作って、プロモーションもして、みたいのは無名のラッパーにはなかなか出来ないことだよね。それはやっぱりR-RATEDがそういうことが出来るまでの状況になったということだと思うんだ。
「こうなることは最初から分かってたし、この環境は積み上げてきたモノなんで、コレを目指してやってきたわけじゃないですか。それに、ここが最終的に目指しているところじゃないし、まだ途中なんですよね。だから、あまり驚きはないし、俺らがそういう環境にいることは当たり前のことですよね。そうじゃないと日本のHIP HOPは多分終わってると思う」
 
■当然、制作費はかかっているわけで、売らないということは、直接的なリターンはないわけだよね?
「そうやし、次に繋げるためにコレを作ったし、『次のCDは買ってや』と思ってますね(笑)」
R-RATED福岡「次のアルバムの宣伝費として考えてます(笑)」
 
■でも、それが出来るレーベルも今はなかなかないと思うんですよ(笑)。
「『それが出来るヤツがいいひんな』って思った瞬間、『やりたい』って思った」
 
■自分たちなら出来るから。
「これから出来るヤツが出て来るかもしれないですよね。実際、こういう形で出来るかどうかは、俺らも分からなかったですしね。ミーティングでも納得してくれへん人はいたし。でも、そこは押し切ったっすね(笑)」
 
■レーベルだとそこの判断が難しいところですよね。宣伝としてこのアルバムがきっかけで広がるのは良いことだけど、メインの収入源であるCDの売上が落ちるリスクももちろんあるわけで。USは、結果的にセールスやアーティストの人気向上に繋がるから一般的になってきた側面があると思うんですけど、日本でもそれが有効かはまだ証明されていない。
R-RATED福岡「だから、賭けですよ(笑)」
「毎回賭けですよね、俺らは(笑)。BILLBOARD LIVEでライヴやったときも賭けやと思ったし。あのときも当日まで客席が埋まるかなんて分からなかったですし」
 
■初めてこういうことをやる、っていうこだわりは強い?
「強いですね。誰かが既にやってたら面白くないじゃないですか。もし他にやってる人がいたら、多分やってないでしょうね。毎回、驚かせたいし、自分も面白がりたいし、それが俺にとってのコンセプトですね」
 
■キャリアを重ねると、どうしても守りに入っちゃう人も少なくないと思うけど。
「そうなっていく人って多いじゃないですか。俺はそうなりたくないんです。『DIGGIN' ANARCHY』を作って、想像力とか色々なモンが一旦自分の思ってるところに辿り着いた気はするんですよ。その後にBILLBOARD LIVEもやって。そこで、『何しよう?』って思ったから東京に拠点を移したんです。30年も地元で住んだし、ホーミーも地元を守ってくれてるワケだから、もっと新しいことをしていきたいな、って気持ちが強いです」
 
■僕はANARCHYとは日頃よく会うから、そのモードはすごく理解できるんだけど、アルバム単位でANARCHYの状況を知る人にとっては、結構な変化に感じる人もいるかもね。
「だから、『ブレた』って言う人がいてもいいんちゃうか、って思って作りましたね。それが次のアルバムへの“フリ”になると思ってるから。俺にとってはこのアルバムの方がお気に入りかもしれないけど、次は確実に“本気”やから」
 
■フィーチャリングの面子も豪華だよね。KOHHとは初絡みになるのかな?
「KOHHはイケてるでしょ、間違いなく。全部好き。フィーチャリングで参加してくれたラッパーはみんな好きなラッパーです」
 

■そういう、ANARCHYの日本人ラッパーへの愛情が出ているのが“LOYALTY”だよね。
「トラックを聴いてインスピレーションが浮かんだんですよね。俺、アルバムには絶対ラヴ・ソングを入れるんですけど、この曲をラヴ・ソングにしよう、って」
 
■日本語ラップへのラヴ・ソング、と。このトラックはSTATIK SELEKTAH作だけど、YouTubeで公開されてる『RHYTHM ROULETTE』(ビート・メイカーがレコード屋に行き、目隠しでディグしたレコードからビートを作るという映像企画)で作ってたヤツだよね?
「彼が日本に来たときに友達になって、彼からビートを欲しいなと思って伝えたら3曲ぐらい送ってくれて、その中のひとつがコレやったんです。そしたらYouTubeで動画が上がってて『ラッキー!』みたいな。あの動画が公開されて、問い合わせが殺到したらしいんですよ。NASとかも『くれ』って言ってきたみたいで、でも『コレは日本人に聴かせてるからコレはアカン』って。『意地でももらう!』ってなりました(笑)」
 
■この曲からはANARCHYの日本語ラップ・シーンに対する愛情が感じられるけど、今までのアルバムでは“自分”が主体だったのが、こういう曲を作るに至ったのは何か心境の変化があったのかな?って思ったんだけど。
「結構、自然でしたね。『あ、書けるんちゃう?』みたいな感じから始まって。こういう曲を書こうと思ったことは今までもあるんですけど、『今やし書けるかな』って。俺はもうルーキーじゃないじゃないですか。下の世代もいるし、上もいる。そういう立場だからこそ歌えると思ったんです。ちょうど良い時期が来た感じですね」
 
■実際、この曲で名前が挙がっている面々も上から下まで幅広い世代のMCたちだよね。
「他にも名前を挙げたい人はいっぱいいたけど、今雑誌を開けて目に付いた人をリスペクトしたかった。今までも凄いラッパーはいっぱいいたけど、『CD売れへん』とか言われてる今でも『コレが一番カッコ良い』って信じてやってた人たち、その人たちが一番正しいことを証明できる気がする。そういう気持ちを“LOYALTY”には詰めたし、みんなスタイルは違うし、好き嫌いはあるかもしれないけど、みんなカッコ良いから、って。自分の人生賭けて、そこから言葉出して歌うわけじゃないですか。選挙で日本中回って演説してるのと一緒じゃないですか。日本中回ってラップして、ファンを増やして……それをずっとやってるヤツらってカッコ良いな、って、素直に思える時が来たんですよね。同時に、自分もイケてるって思えるし」
 
■個人的には「今気になってるのは田我流」ってとこが熱かったね。
「正直、田我流の曲をそんなに知ってるわけじゃないんですけど、『今気になってる』っていう、素直な気持ちです。それこそAmebreakがやったイヴェント(RAPSTREAM "THE LIVE")のライヴを観に行って、それがむちゃくちゃカッコ良かったっすね。あのときに気になって、自分から電話番号訊きました」

■今作は、ANARCHYの“遊び心”が随所に感じられるし、同時に「この人は今、本当にラップや音楽が楽しいんだろうな」って聴き手にも伝わると思うんだ。
「前より全然楽しくなってきましたね。やっぱ、こういうことをやれてるありがたみっていうのは昔よりあるし、こうやってラップでメシ食えるヤツって一握りじゃないですか?表現をすることでみんなに憧れられたり夢を与えられたり、そういうことに感謝するようになった。前は『しんどいなー』と思いながらリリック書いてたときもあるけど、『それっておかしいな』みたいな気分になってきた。『遊びを仕事にする』のが夢やったのに、いつの間にか仕事にすることが夢になってたっていうか、それっておかしいぞ、って。その意識の変化があったから、クラブで遊んだときや友達と遊んだりしてるときに閃くようになったと思うんです」
 
■1〜2年前にクラブで酔っ払ってるANARCHYに会ったときに、多分僕が「酒飲むようになったね」って話をしたんだと思うんだけど、そのときにANARCHYが「俺は30歳になったときに、これからの人生を目一杯楽しむことに決めたんです」って言ってて、エラく感動したことがあるんだよね(笑)。
「『自分が楽しむこと』をもっと真剣に頑張ろう、って。俺が楽しんでへんかったら誰もラッパーになりたいと思わないですもんね。あと、ただ俺自身が一番楽しんでいたい(笑)。それを見てみんなも楽しんでくれたり刺激になったりしてくれたらいいですよね。その上で今後は“ブルース”を歌いたい気分です、今は。昔は哀しい気持ちでブルースを歌っていたけど、今はブルースを楽しい気持ちに出来る曲とか、ブルースな気持ちで楽しいことを歌うような曲を作りたい。俺はゲットーから抜け出してもゲットーは心にあるし、見てきたモノだから消えることはない。ゲットーにいるヤツらの気持ちも全然分かるし、ソイツらが歌ってほしいことも俺は分かる。だから、そういう歌も今後はいっぱい書きたいし、書く意味がもっと出て来るんちゃうかな?って」
 
■やっぱり今作は次見据えてる動きへの序章と考えていいわけだよね?次の動きについてはどう考えてる?
「ローラと付き合おうかな、と思ってます」
 
■ほう……付き合えそうな気もしないでもない(笑)。
「夢を与えたいし」
 
■次のアルバムはもう取り掛かってるんでしょ?
「はい、半分くらい。良い感じです。良い曲が揃ってきたんですよね。今回は、みんながクラブや車とかで爆音でかけてノってくれたらいいな、って気持ちで作ったけど、次は『刺さる』モノにしたいですね」
 
 

 

EVENT INFO
R-RATED RECORDS presents "THE LIVE"
 
日時:12月15日(日)17:00開場/22:00閉演
場所:渋谷SOUND MUSEUM VISION
料金:前売り 2,000円/当日 2,500円
出演:ANARCHY/RYUZO/LA BONO CAPO/T.O.P./SMITH-CN/GAZZILA/DJ AKIO/DJ 8MAN/DJ LIN 他
(問)R-RATED RECORDS: http://rratedrecords.com//SOUND MUSEUM VISION:http://www.vision-tokyo.com/
プレイガイド:
チケットぴあ http://t.pia.jp/(Pコード:218-781)※12月7日から販売開始
ローソンチケット http://l-tike.com/(Lコード:74301)※12月5日から販売開始
e+(イープラス) http://eplus.jp/
前売りチケットは下記店舗でも購入可能。
GROW AROUND TEL:03-5458-1725
MANHATTAN RECORDS TEL:03-3477-7166
RIGHT STUFF/JUNKMANIA TEL:03-3464-2534
CASTLE RECORDS TEL:03-6240-1190

※未成年者入場可。前売りチケットでご来場の方にはステッカー・プレゼント!
 

Pickup Disc

TITLE : DGKA (DIRTY GHETTO KING ANARCHY)
ARTIST : ANARCHY
LABEL : R-RATED RECORDS/RRR-1018
PRICE : 無料
RELEASE DATE : 11月13日