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SUPER SONICS

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「ターンテーブリズムとラップが組むのは他のターンテーブリストがやってないことだし、ラップがあって、曲が出来てってことを考えると、ターンテーブリズムが伝わりやすくなると思って。TAROには良いメッセージとラップを、俺はターンテーブルをって、お互いの部分を突き詰めればいいかなって」--DJ IZOH

 
 TARO SOULとDJ IZOHが結成したユニット:SUPER SONICS。2009年よりタッグを組んできたが、2012年に正式にユニットとして出発した二人は、TARO SOULの変幻自在でソウルフルなラップと、DJ IZOHの卓越したスキルフルなターンテーブリズムの組み合わせによって、数々のライヴで、オーディエンスに刺激を与えてきた。
 
 そして、結成から2年目にして、遂にアルバム「SCRATCH YOUR WORLD」をリリース。SHIMI(BUZZER BEATS)をメイン・プロデューサーに、BACHLOGICやCHIVA(BUZZER BEATS)、ALI-KICK(ROMANCREW)などがトラックで参加した本作は、当然のことながらスクラッチ/ターンテーブリズムによって再構築されたトラックや、二人のタイトな掛け合いによる化学変化など、ライヴに直結した、フィジカルな内容となっている。彼らがどう世界を引っかき回すのか、楽しみなアルバムだ。
 


 
■まず原点的なところで、SUPER SONICSの結成の経緯は?
TARO SOUL「その経緯もあやふやになるぐらい前なんですけど(笑)、ソロとしてのTARO SOULの活動の中で、5年ぐらい前からIZOHにライヴDJをやってもらうことになったんですね。その中でライヴの作り方が、ガラッと変わったんです。それで、『あ、こんなことが出来るんだ』って気付きがあって、そのライヴでやってることを作品に落とし込みたいと思ったし、ライヴがとにかく楽しすぎて、音源とライヴが別って地平から、同じ地平にしたくて。だから、TARO SOUL & DJ IZOHじゃなくて、心機一転、タッグを組もうと」
 
■IZOH君をDJ として起用した理由は?
TARO SOUL「最初はDJ HOTCHI(現SUPER SONICSマネージャー)がバックだったんですけど、別にそれでも出来たんだけど、マネージャーがDJっていうのはどうなんだという疑問もあり(笑)。で、IZOHを迎えたのは、最初に組んだときは俺がメジャーにいた時期だったんで、HIP HOP現場以外のライヴも多くて。それで、そういうHIP HOPリスナー以外の人が、パッとライヴを観たときに衝撃を与えたかったり、自分の音楽の表現の仕方だったり、ポン出しのライブとは違うっていう差別化を図りたいなって思ったときに……つまり『分かりやすくHIP HOPのライヴを観せたい』って思ったときに、それにはIZOHのスキルが欲しかったんですよね」
 
■TARO君は歌もラップもっていうフレキシブルなスタイルだから。それを活かせるのはスキルフルなDJだったと。
TARO SOUL「フレキシブルだからこそ、ストレートなHIP HOPを表現したかったんですよね。それには、これだけ強力なDJがいたら、それが可能になるなって」
DJ IZOH「俺としては、ちょうどその時期が、DJ的にも人生的にもキツイ時期だったんですよね。だから、俺の中ではその話が来たときに、もう『やるしかない』って感じだったんですよね。もともとTAROとは友達だったし、スキルも知ってたから、面白いことが出来そうだとも思ってたし」
 
■じゃあ、お互いにちょっと新しいことがしたいって思った時期に、タッグを組んだというか。IZOH君はそれまでにラッパーと組んだことは?
DJ IZOH「地元のラッパーとはありましたね。KIZAKURAってグループを組んでて」
 

■SUPER SONICSとしての一番最初のライヴは憶えてる?
DJ IZOH「憶えてますね。あれは最低だった(笑)」
TARO SOUL「ひどかった(笑)。メッチャ練習したし、ライヴまでに色んなことを試して、曲の中にジャグリングを入れたり、今と構成はそんなに変わらない内容のことをやってたんですよ。だから、お互いに練習の中で、『これはヤバいことになる!』って思ってたんですよね。だけど、それをいざライヴでやったら、ひどいひどい(笑)」
 
■悪い意味でヤバかったんだ(笑)。
DJ IZOH「何が失敗したっていうよりも、単純に噛み合わなかったんですよね。お互いの技の出し方のバランスも悪かったし、コンビネーションの部分も、お互いに合わせようとするんだけど、その合わせることすら、ままならなくて」
TARO SOUL「納得がいくライヴが出来るまで、3ヶ月ぐらいかかりましたね。練習は良い感じなのに、ライヴがダメっていう……すごく言い訳めいた話ですけど(笑)」
 
■それが解消したのは?
DJ IZOH「とにかくライヴ/実地経験しかなかったのかなぁ」
TARO SOUL「いきなり出来るようになったんですよ。だから、一回のライヴは練習10回分に相当するぐらい、経験値を高めてくれたんだなって痛感しましたね」
DJ IZOH「幾ら練習で上手くいっても、ライヴで決めるのは別だなって、改めて思いましたね。あと、一回の成功がどれだけ大事かっていうのも感じて。成功の感触を掴むっていうか。それが大事でしたね」
 
■ライヴの仕方が変わったって話があったけど、それは具体的にはどういうことになる?
TARO SOUL「リスク……かな」
DJ IZOH「間違いない」
TARO SOUL「ポン出しDJの場合は、機材の不調がない限り、そのまま曲は進むじゃないですか。でも、ターンテーブリズムを挟むことで、IZOHのスキルをもってしても、ビートがズレたり、音が止まったりする場合があるわけですよ。だから、バンドの演奏と同じように、“生もの”になるんですよね。そういう感覚の中でラップするって感覚は、味わったことがないものでしたね」
DJ IZOH「ホントに緊張しましたね。それから、組んだ直後にSERATOを導入したんで、その慣れにも時間がかかりましたね。SERATOの操作ミスによる失敗もあったし。導入して一ヶ月未満で初ライヴだったから」
TARO SOUL「そうだったね」
DJ IZOH「ものっ凄い緊張ですよ!ロベルト吉野君もSERATO導入しての初ライブはホントに緊張したって言ってたし、アナログからSERATOへの変更は、本当に変化が大きくて。最初の頃は、客席が見れないんですよ」
 
■それは緊張で?
DJ IZOH「それもあるんだけど、ターンテーブルとパソコンの画面しか見れなくなるんです。曲順がちゃんと並んでるか/パソコンがちゃんと動いてるかっていう、デジタル・トラブルが心配でパソコンばっかり見ちゃうし、今まではターンテーブルと舞台で良かった視線に、もう一個パソコンっていう視点が入るから、前見ることが出来ないんですよね。吉野君も上野君に『前見ろよ!』って怒られてたんだけど、あれは気持ち分かるな〜って(笑)」
 
■ターンテーブリズムとラップを組み合わせるって、本当に難しいことだと思うんだよね。バンドでリズムがズレたら、全員がズレに合わせればいいし、ドラム/ベースの所謂リズム隊に沿わせればいい。だけど、ターンテーブリズムでズレるってことは、元になる曲の流れは変えられないけど、ビートの感覚だけが一瞬ズレるわけで、体感としてつんのめる感覚があるよね。最初の頃のライヴを観て、そのつんのめる感じは、リスナーとしては結構違和感があった。
TARO SOUL「でも、それを感じながら、それも含めてグルーヴさせるのが正解だと思うんですよね。その感覚がスパソニだと思うしそれが出来るようになってると思う。でも、最初はその一瞬のズレだったり、一瞬の音の抜きの違いで、やっぱりドキっとしてましたね。練習と違うと、それに対応できなかったり。でも、それをライヴの現場で、お互いの感覚を合わせていくことが出来るようになったなって」
 
■ターンテーブリズムって、リズムがズレるのが前提な部分があると思うんだ。それは正確性の問題じゃなくて、単発音を鳴らすことひとつをとっても、ドラムだったら打ったら鳴るわけだけど、ターンテーブルの場合は、ターンテーブルとミキサーで、両手でまったく別のアプローチをして、初めて綺麗なコスりの音が鳴るって意味では、物理的なストロークの問題と、ふたつの行動でひとつの音が鳴るってことでも、他の楽器よりも音の構築が難しいわけで。
TARO SOUL「レコードと針の位置が一ミリでも違ったら、それは別の音が鳴るわけですからね」
 
■そう。それはターンテーブリズムの中で完結していれば、そのルールを分かった上で見るわけだけど、そうじゃない場所では、単に“ズレ”として理解されてしまう場合もないわけじゃないと思う。だから相当しんどいことをやってると思うんだよね。
DJ IZOH「だから、相当苦しいことやってるんですよ(笑)」
TARO SOUL「『こんな苦しいことやってる』って、読者読みたいかな(笑)」
 
■例えば、BEASTIE BOYSとMIX MASTER MIKEの関係だったら、“3MC & 1DJ”は超絶スキルだけど、あれはターンテーブリズムにビースティーが寄ってるわけで。でも、スパソニはそのターンテーブリズムとラップが拮抗したことを、一曲じゃなくてずっとやってる訳だから、実は異様なことをやってるんだよなって。
TARO SOUL「だから最初はどうやって曲を作ればいいかが分からなくて」
 

■曲はどうやって作るの?
TARO SOUL「最初に作ったのは“SUPER SONICS”でしたね」
DJ IZOH「あの曲はプロデューサーのSHIMIから最初にトラックをもらって、そこからターンテーブルよるエディットをどう入れるかをイメージしたんですね。それで、『こういうジャグリングを入れるから、この部分をドラムだけにしてくれ』とか、『このビートの部分だけ別のデータで欲しい』とか、オケを元に、ターンテーブリズムとしてエディットしていくんですね。その上でもらったデータを元に、トラックとして再構築していくんです」
 
■じゃあ、最初のSHIMI君のビートは、ターンテーブリズムが前提ではないんだね。
TARO SOUL「そうですね」
 
■倍速の部分はIZOH君のアイディア?
DJ IZOH「元のトラックでは倍速になってないんだけど、『サビで倍速のジャグリングをやるから、そうできるように組み直してくれ』って」

■つまり、SHIMI君のビートというベースから、スパソニとSHIMI君でパーツを切り出ししたり足していって、そのパーツを組み直して、新しい曲を作るというか。
TARO SOUL「もっと言うと、ラップを先に録るべきなのか、ジャグリング込みで再構築したものを先に録って、そこにラップを乗せるべきなのかっていう、判断も最初は出来なかった。あと、IZOHがジャグリングするってことは、先にビートもトラック・ダウンしなきゃいけないとか」
 
■何重にもややこしい(笑)。行動としてはターンテーブリズムの方法論だと思うんだけど、そこにラップと一緒にやるっていうのは、IZOH君としてはどんな手応えが?
DJ IZOH「楽しいですよ。ターンテーブリズムとラップが組むのは他のターンテーブリストがやってないことだし、ラップがあって、曲が出来てってことを考えると、ターンテーブリズムが伝わりやすくなると思って。TAROには良いメッセージとラップを、俺はターンテーブルをって、お互いの部分を突き詰めればいいかなって」
 
■確かに、ライヴがエンターテインメントになってるなって。ターンテーブリズムって言い方は悪いけど、特に2000年代中盤ぐらいから、マニアックな世界になっていったけど……。
DJ IZOH「閉じてるし、オタクだし、イナタいし」
 
■そこまで言わないけど(笑)、でも分かる人だけのモノ、やってみた人だけが納得できるって領域になっちゃって。でも、スパソニのライヴは、ちゃんとエンターテイメントとして凄いっていうことが出来てるよね。
DJ IZOH「ポン出しのライヴだけ観に行ってる人は、DJって何する人か分かんない人も絶対いると思うけど」
TARO SOUL「それとの違いをIZOHとやるからには見せたかった、だから、分かりやすく“ショック”を与えたい、ってことでしたね。だから、やってて面白いっすよ。ライヴを作るのが面白いし、スパソニっていう試行錯誤の末に、ようやく音源としてアルバムを作れて、もっと色んなことが出来るなって気付けてるし。この二人だったら、ずっと追求していけるなって思うし、改めてHIP HOPが面白いなって思えるんですよね」
DJ IZOH「ターンテーブリストとしてラッパーと組んで、アルバムまで形に出来たっていうのは嬉しいですね。俺の中で異文化コミュニケーションをずっと続けてる感覚があるし、それが形に出来たのが、他のDJとは違うことが出来てるなって。ターンテーブリズムを広げることが出来るんじゃないかなって。『あなたの知らない世界にようこそ』ですよ(笑)」
 


■スパソニのやってることって、1MC+1DJを突き詰めるっていうことでも、HIP HOPのフォーマットそしては非常に保守的だと思うんだよね。ただ、表現やサウンドは革新っていう、そのバランスも面白いなって。
TARO SOUL「頭と感覚なのかな。ターンテーブルとラップっていう部分は突き詰めたいと思うけど、それは頭で考えてることだと思うんですよね。だけど、サウンドや表現っていう部分では、感覚にフィットするもの、ハマるものを形にしたいなって。だから、あえて新しいことをっていう感覚より、今面白いものを形にしてる。だけど、構成だけ保守的って感じなのかな。でも、TARO SOULのソロはこういう形にならなかったし、IZOHのソロもこの形にはならなかったと思う。だから、スパソニの表現がこれだと思うんですよね。ただ、その表現がアルバムになるまで、丸二年かかってしまいましたが……」
 
■もっとリリースが早いかと思ってたから、ちょっとリリースに時間がかかったのは意外だったな。
TARO SOUL「俺も意外でした(笑)」
DJ IZOH「俺はミックスは作ってたけど、オリジナル・アルバムは作ったことがなかったんで、完全に手探りだった部分もあって」
TARO SOUL「この間にIZOHのDMC世界チャンプの獲得があったり、ミックス『SUPER SONICS MIX TAPE』シリーズを出したり、色々動きはあったんで、止まってるつもりはなかったんですけどね。でも、『スパソニとして何を歌うか/何を作るか』で悩んだ部分はありましたね。加えて、最初の頃のリリックは“俺たち”とか“俺ら”みたいな人称が多くて、スパソニに対して気負いすぎてる部分もあって。そこをそのままにしちゃうと、後々大変だから、その部分を変えようとか、小っちゃい部分にもこだわりましたね。そういうスパソニとしての細部を決めることが、よりスパソニらしい部分を産むんだ思ったし」
DJ IZOH「スキルの部分では、難しいスキルを外すかは考えましたね」
 
■分かる人だけ分かるスキルじゃなくて。
DJ IZOH「それは曲にしたときには必要ないんで。バトルのスキルは、そのときの世界最高のスキルだったり、構成/魅せ方/技術が必要なんだけど、音源で聴かせるには、聴こえの良いスクラッチ/ジャグリングっていう方向の意識になりましたね」
TARO SOUL「視覚的な分かりやすさにも頼れないから、より音楽的な部分を目指すっていう感覚はありましたね」
 
■後半はメッセージ性が強いけど、全体的に“現場感”というか、乗らせる音楽/ラップになってるよね。
TARO SOUL「根本的な思いとして『ライヴがなければ果たして曲を作ってたのか?』って思ったんですよね。昔は、今みたいにすぐ録音が出来る環境はなかったし、ライヴがしたいから曲を作ってたんですよね。僕は少なくともそうで。『人前で披露してこそスタート』って意識が一番強く感じる部分なんですよね。だからこそ、そういう内容に寄っていったし、生で体感する価値のあるライヴを目指してきたからこそ、その空間の空気を、作品にも再現してパックしたかったんですよね。だから、ライヴに向けた、直結した曲が多くなってると思いますね」
 
■それは今のモード?
TARO SOUL「いや、スパソニの基本スタンスですね。メッセージも、生で歌って初めて届くメッセージが一番いいのかなって。それは自分がリスナーとして感じることでもあるし。だからこそ、メッセージ性がある曲こそ、ライヴで伝わるようにって思うし、ライヴで観てほしいって思うんですよね。音源を作るってことと、ライヴをやるってことの地平をひとつにしたい思って来たし、そのひとつの結実なんで、その流れをより太くしていきたい。そうやって、自分らのライヴ、音楽を共有したいんですよね。IZOHとルーティン作るのがとにかく楽しいし、その楽しさみたいなものが、もっと形になったり、共有できるような表現が出来ればなって」
DJ IZOH「映像も含めた動きも出来ればって思いますね。ライヴもそうなんだけど、映像としても表現できればなって。TAROは本でも書いたら?」
TARO SOUL「それスパソニ関係ないじゃん(笑)」
 
 

Pickup Disc

TITLE : SCRATCH YOUR WORLD
ARTIST : SUPER SONICS
LABEL : starplayers/SPULT-001
PRICE : 2,625円
RELEASE DATE : 3月5日