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R-指定

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「自分のバトルのイメージはイケイケだけど、アルバムだと内省的だったり、暗い内面を面白おかしく自虐的に言ったり、負の感情や劣等感を攻撃の方向や笑いの方向に持って行くっていう方向性の曲が多いんで、そこが受け入れられるのか?っていう不安はありました。でも、逆にアルバムを出すことで自分を知ってもらいたいし、『ホンマはこういうヤツやったんや』みたいに、こういう根暗なヤツがああいうバトルをしてるって思ってもらえたら更に面白いかな、って思って。アルバムを聴いてもらえれば、俺がなんでああいう攻撃的なフリースタイルになっているのかの理由が分かってもらえると思うから、正直に自分の内面を出していこうと思ったんです」

 MCバトル・シーンも成長/成熟し、数年前では考えられなかったようなスキルを持つMCが絶えず出て来ている中、R-指定を2010年代のバトルMCの象徴と捉えている人は多いだろう。フリースタイルが上手い人は、そのスキルが必ず地道な鍛錬と努力を重ね続けた結果であることは間違いないだろうし、R-指定も例外ではないだろうが、彼ほどあらゆる意味で“天才的”な側面を多数見せてくれるフリースタイル/バトルMCは、やはり稀有な存在だ。バトルでやり合う上での頭の回転の早さ、ウィットに富んだ言い回し、そして言いたいことを言葉に発して伝える際のフィジカルの高さ……そこには、努力だけでは説明出来ない卓越したセンスがある。
 
 そして、ご存知の方も多いかもしれないが、バトルのステージを下りたときの“素”の彼は、実に内向的で人見知りな青年で、その激しいギャップもR-指定というMCを興味深い存在にさせるひとつの理由だ。『ULTIMATE MC BATTLE』(以下UMB)2連覇という輝かしい戦歴を経て、満を持してリリースされた1stアルバム「セカンドオピニオン」は、そんな二面的な顔を持つR-指定のマインドの深部を覗ける作品で、予想以上にディープな一枚となった。
 
 “オピニオン”という曲でR-指定は「この通りI'm a g.o.o.d. k.i.d.」とラップしていて、それはゲットーのハードな環境下でも“グッド・キッド”として優れたリリシストに成長したKENDRICK LAMARのアルバム「good kid, m.a.a.d. city」からの引用だが、KENDRICKがコンプトンのハードな土地と自分との対比を作品で表現したとするなら、R-指定の場合は「good kid m.a.a.d. mind」と形容するべきなのかもしれない。何故、彼がラップに情熱を燃やすのか、そしてそこにはどんな心理が反映されているのか。ありふれた、退屈で面倒な日常にコミットしきれない、不器用な男が溜め込んできたルサンチマンは、ラップという才能を得たことによりポジティヴな方向に転化された。
 
 
■本取材前日に『高校生RAP選手権』が新木場で催されてたけど、R君も会場に行ってたみたいだね。
「そうなんですけど、取材とか諸々終わってから行ったんで、着いた瞬間に『優勝は~』って言ってて……」
 
■DJ松永君が、ヘッズたちに囲まれてるR君の写真をアップしてたね。
「でも、申し訳ないけど俺観れてないし……主役あっちやねんけど、っていう……(笑)」
 
■過去の大会は観てるよね?どういう印象を持ってる?
「単純に、いいな、って思いますね。本音を言うと羨ましい。俺が高校生のときはああいう風に(高校生MCを)盛り立ててくれる人もいなかったし、俺ら自身も(高校生ラッパーを)全員で盛り上げていこうという意識はなかったですね」
 
■もし、R君が今高校生だったら出てたと思う?
「俺は出てないと思います。(現在は活動休止中のユニット:コッペパンでタッグを組んでいた)KOPERUが『BBOY PARK』の『UNDER 20 MC BATTLE』で優勝したりしたじゃないですか?アレで先越されたから俺は出んとこ、みたいな。10代のチャンプはKOPERUに先越されたから、俺は年齢関係ないところでやってみよう、というか」
 
■正にKOPERU君が『UNDER 20 MC BATTLE』で優勝して、その副賞としてKOPERU君のドキュメンタリー映像をAmebreakで制作したときに、梅田サイファーで制服姿のR君と初めて会ったんだよね。
「そうですよね。歩道橋の上、来てくれましたよね。学校帰りにあそこ行ってましたね(笑)」
 
■あれが5年ぐらい前だったかな。アルバムの中ジャケでも梅田駅前で撮ってる写真が載ってるけど、梅田サイファーという“現場”はR君にとってやっぱり大きい?
「だいぶデカイですね。梅田サイファーは、元々は梅田周辺に住んでた人たち--あきらめんって人が始めたんですけど--そこからKZやふぁんくって人たちが入ってきて、そういう人たちが毎週来るようになったんです。今は俺やふぁんくさん、DOIKEN(コッペパン/TINY TITAN BOX)とか、大阪に残ってるメンバーがおるっていう感じで。梅田サイファーは『みんな上がって行こう!』的な思考の人たちではなく、ただラップが好きでやってて、クラブのような“現場”が苦手な人らの集まりというか。表現の場が唯一サイファーだった、っていう。俺も、大阪おるときは今でもなるべく行くようにしてます。原点に戻れるというか、今でも心の拠り所ですね」
 
■ラップを始めたのも梅田サイファーがきっかけ?
「ラップは中2ぐらいからリリック書いてたんですけど、クラブは怖いし、ラップが好きな友達も周りに1~2人ぐらいしかいなかったから、そいつらの前で披露したりとか、リリック書いて自己満みたいな感じでしたね。梅田サイファーの動画をYouTubeで観たら『どうやら普通の人らっぽいぞ……イカツくない』ってことが分かって、行ってみたんです。そこで知り合った人たちに初めてクラブやライヴ会場に連れてってもらって、現場での活動を高校生のときに始めました」
 
■“イマジン”で「ふと付けたラジオで耳にしたHIP HOPって名前の音楽が 今ではそいつの生き甲斐さ」って歌ってるけど、そのとき耳にしたのは誰の曲だったの?
「それは、SOUL'd OUTだったんですよ」
 
■ああ、今年の4月に解散するという。
「大阪に、隠れキリシタンみたいな感じで隠れファンがいて」
 
■なんで隠れるんだ(笑)。所謂ハードコアなリスナーの目が気になって?
「はい。でも、SOUL'd OUTは実はメッチャラップ上手いし、解散の発表があった後にやった俺ら身内のイヴェントでpekoさん(高槻POSSE)がDJでSOUL'd OUTの曲かけたら会場中が爆発して」
 
■でも、SOUL'd OUTが入り口って人はR君の世代は多そうだよね。R君よりちょっと上の世代になるとKICK THE CAN CREWとかRIP SLYMEなんだろうし。
「入口はSOUL'd OUTやったんですけど、そこから本格的にハマったのはRHYMESTERとかZeebraさんを聴いてからですね。SOUL'd OUTは歌唱法的に面白いと思って、そこからCD屋のHIP HOPコーナーで大きく展開されてる人を聴いてみよう、って思ってRHYMESTERやジブさんを聴いたら、歌詞の面白さがしっくり来て、どっぷりハマっていったんですよね」
 
■じゃあ、R君にとっての教科書はRHYMESTERやZeebraなんだね。確かに、今作でもキングギドラの“見回そう”の引用とかあるもんね。フリースタイル/MCバトルの入口は?
「この頃ラップが好きになった人は、入口近辺に『8 MILE』があるじゃないですか。それを観て『うわっ、(ラップで)戦ってるやん!』って思って、そこから日本でもMCバトルがあるっていうのを知ったんですよね。あと、俺ら世代は圧倒的に多いと思うんですけど、『ULTIMATE MC BATTLE』のHIDADDY対FORK(2006年)を観て『ヤベェ!』ってなったんです。だけど、最初の2年間ぐらいはまったく出来なかったですね。本格的にフリースタイルをやるようになったのは、梅田サイファーに行くようになってからです」
 
■フリースタイルが出来るようになったきっかけはあったの?
「よく、若い人とかに『どうやったら上手くなれるんですか?』って訊かれるんですけど、俺も分からないんですよね。ホンマに、毎週サイファーに行ってたら知らん間に出来るようになった。俺に関しては、圧倒的にやってる時間が多かった、っていうのが(上手くなった)理由やと思います。最初はおぼつかなかったけど、その内にサイファーの中に無理やり入ろうとするようになって。そしたら日常の中でも目にするモノで韻を考えたりするようになって、頭の回転が早なっていって、得意になってきましたね」
 
■所謂ストリート/不良的な“現場”が怖くて避けてきていたR君が、MCバトルに出ようと思った理由は?
「フリースタイルが自分の中で自信が付いてきたっていうのもあるし、ケンカやアティテュードでは勝てない相手でも、そういう人らをラップで倒せたら気持ち良いやろうな、って思ったんです。一応バトルやし、人前でやるワケやから、殴られたら殴られたでオイシイかな、って感じで初めて出たんですよね。最初のバトルは、怖い反面、アドレナリンがメッチャ出ましたね」
 
■R君がMCバトルを通して名を上げたのは間違いないと思うんだけど、アーティスト的な意識や目標が芽生えたのはどの辺りのタイミングで?
「スタートがリリックを書き始めたところからなんで、最初から曲は作りたかったんですよね。だから、ラップ自体をやり始めた時期から、CD出してライヴしてっていうのが仕事になったら嬉しいな、っていうのは思ってました。フリースタイルするようになって、バトルに出たことでそっちの方が注目されちゃいましたけど」
 

■『ENTER MC BATTLE』やUMBがきっかけで大きく名を上げ始めたのが数年前だということを考えると、1stアルバムを完成するのが早かったとは言い難いよね。そこにはどんな壁があった?
「『アルバムを作ろう』って話になったのが2年ぐらい前なんですけど、実際に『よし、作ろう』って本格的に始動したのが2013年で、初めてUMBで優勝した直後なんですね。だから、1年間みっちり作っていったって感じなんですけど、やっぱりバトルとは全然違うし、優勝して『凄い』とか言われてもスタジオ・アーティストとしてはド素人だっていうことを思い知らされることばっかりでした。勉強になったし、何回も心は折られましたね。今までもリリックは書いてきてたから、表現の仕方とかも自信があったんですけど、それが自分の中では完結してても聴き手に伝わらないっていうことを(本作のエグゼクティヴ・プロデューサーの)I-DeAさんに指摘されて。説明すれば『ああ、そういう意味か』ってなるんですけど、特にテーマのある曲でこねくり回しすぎたらぼやけちゃって意味がない、って。伝えたいことがあるときは聴き手に伝わる方法で書かないと、って言われたんで、(リリックを)簡単にする作業っていうのが自分の中では壁でしたね。元々、梅田サイファーのヤツらも俺もひねくれてるというか、ストレートな表現を避けて通ってきたところがあるんですけど、そこを恥ずかしがらずにストレート且つ痛くならない塩梅で書くっていうのは課題でしたね」
 
■バトル出身のMCは、戦績が輝かしくなればなる程、作品を出す際プレッシャーになると思うし、作品でバトル程の成果が出せなかった場合、かなり厳しく見られることもあると思うんだけど、R君にもそういった意味でのプレッシャーはあった?
「ぶっちゃけ、ありましたね。自分で撒いた種なんですけど、自分のバトルのイメージはイケイケだけど、アルバムだと内省的だったり、暗い内面を面白おかしく自虐的に言ったり、負の感情や劣等感を攻撃の方向や笑いの方向に持って行くっていう方向性の曲が多いんで、そこが受け入れられるのか?っていう不安はありました。やっぱ赤レンジャーな感じでいかなあかんのかな、とか思ったり。でも、逆にアルバムを出すことで自分を知ってもらいたいし、『ホンマはこういうヤツやったんや』みたいに、こういう根暗なヤツがああいうバトルをしてるって思ってもらえたら更に面白いかな、って思って。アルバムを聴いてもらえれば、俺がなんでああいう攻撃的なフリースタイルになっているかっていう理由が分かってもらえると思うから、正直に自分の内面を出していこうと思ったんです。もしアルバムを聴いて離れるファンがいるとするなら、最初からあんま俺のことを好きじゃなかった人ってことやし、それでも付いて来てくれる人たちのために作ろうって」
 
■辛辣だったり挑発的なラインは今作でも要所で出て来るとは言え、今作は「バトルMCとしてのR-指定」という側面にはフォーカスしてないよね。
「そこは意識的ですね。バトルのイメージで曲はやっぱり作れない……作れないというか、作れたとしてもそんなん聴きたいか?って自分がリスナーの立場になったら思ったんですね。俺だったらバトルとは違った面を見たいと思うし、特にアーティストのアルバムとなると、その人がどんなことを考えてて、どんなパーソナリティなのかってことが伝わった方が作品として面白いと思うから、そこをバトルの空気そのまんまでやっても無機質になりすぎるかな、って」
 
■I-DeA君の名前がさっき出たけど、通称「I-DeA塾」は日本のMCにとってひとつの登竜門であるわけだけど、実際にI-DeA君と作業して感じたことは?
「さっき言った通り、折られて強くなるというか。体育会系なスパルタでは全然ないですけど、グサッと来ることを的確に言ってくる。ラッパーはどうしても『自分の考えが正しい』『コレでいいんや』って考えがちだから、そこをガッツリ折られると最初は落ち込みますけど、そこを消化したらまた新しい引き出しが広がるっていうのはありましたね。俺は最初、もっとフロウとか音楽的な部分で厳しいんかな、って思ってたんですけど、実はリリックやったっていう」
 
■視点の置き方とかにこだわる人だよね。
「視点の置き方に関しては、元々面白い視点でリリックを書くことを意識してたからか、『なかなか良い』みたいに言われたんですけど、表現の伝え方みたいなところをI-DeAさんからは学びましたね」
 
■今のR君はフリースタイルも出来るし、歌詞を書くことも出来るわけだけど、今はどういう思考のプロセスを経てヴァースを書いてる?それこそ、フリースタイルで1ヴァース作ろうと思えば作れるだろうし、手クセで良くも悪くも韻が簡単に思い浮かんでしまうこともあるのかな、と。
「俺は、ラッパー的なお決まりのテーマっていうのはないんですよ。強烈なアティテュードやバックボーンがある人は、その人が何かを歌うだけでそういうモノが絡んでくるじゃないですか。でも、俺にはそれがないから基本的にいろんなテーマを扱う。で、特定のテーマを扱うに当たって、そのテーマをどう落とし込むか--結構、オチを考えますね。頭とケツをまず考える。それで歌詞を書いていくんですけど、それは普通に、『この箇所にこういうギミックを入れよう』とか、思い浮かんだ言い回しを入れていくって感じなんですけど、フリースタイルが一番役に立ってるのは、口に出してラップをしてみる時なんです。書いてた時点で思い浮かんでいた音の載せ方が実際にラップしてみたら違ってたってときに、フリースタイルが出来るとちょっと端折ったりとか、言い方をすぐに変えられるんです。そういった部分で臨機応変に対応できるのは、フリースタイルが出来るおかげなんだと思います」
 
■なるほど、「書いているとき」じゃなくて、推敲の段階でフリースタイルが役に立つんだね。ちなみに、「セカンドオピニオン」というタイトルにはどんな思いが込められてる?
「そもそもの言葉の意味があった上で、『バトルでの俺とは違う意見を集めた』っていう意味もあるし、『世間一般の考え方とは違う視点からの意見』っていう意味もありますね。1stアルバムやったら、SALUさんの『IN MY SHOES』みたいに、『俺の言いたいこと/意見』みたいなタイトルが多いと思うんですけど、そんな感じで俺も付けましたね。あと、1stアルバムなのに“セカンド”って入ってたら面白いかな、って(笑)」
 
■今作は、個人的には予想以上にディープな方向に持って行ってるな、と感じたんだ。コッペパンでやっていたような明るい曲調は皆無だし、アルバム後半に差し掛かると暗い曲も多くなってくるよね。
「今回のアルバムはそういう感じになりましたね。1stアルバムだし、名刺代わり/自己紹介ってことを考えたら、自然とその(明るい)部分がごっそりなくなった。I-DeAさんと作ってたっていうのもあるかもしれないです。バトルのイメージを良い意味で払拭するには、リリックが良いアーティストやっていうのを知らしめないといけない、ってI-DeAさんが言ってくれて。でも、パーティな部分はなくてもふざけたりする部分は自分の中にあるんで、そういう部分は今回のアルバムというより、DJ松永さんとクルーみたいのを組んでるんですけど、そこでアホな感じの曲とかは作っていこうかな、って」
 
■R君も重々承知の上だと思うけど、このアルバムだけ聴くとすごい暗いヤツって思われちゃうかもしれないよね(笑)。R君は自己分析すると自分はどんな性格だと思う?
「暗い……ことは間違いないんですけど(笑)。友達とおったり人と喋ったりするときは、関西人なんでやっぱ笑かしたいっていう部分が出て来るんですけど、全ての根底には“暗さ”があるというか。笑わせるときも、自分の暗い内面やゲスい内面を出して自虐的になったりするんで。“暗さ”をいろんな方向に向けているだけの人間なのかな、って。MCバトルとかで『勝ちたい』って気迫は、ホンマに“僻み”から来てるし」
 
■僻みだ。
「僻みとか妬みとかがああいう(攻撃的な)方向に出る。高校生ぐらいのときから、バトルに出て負けてもいいからオンナ連れて来てるヤツだけはボコボコにしたろ、って思ってたんで(笑)。『彼女の前で恥かかそう』って」
 
■ひねくれてるなー(笑)。でも、その僻み感や嫌がらせ感は、R君が影響を受けてきたRHYMESTERの、特に初期のメンタリティに通じる部分かもしれないね。
「俺は、ホンマにRHYMESTERの影響はデカイと思いますね。宇多丸師匠の思想とかは、自分の人格が形成されていく上ですごいデカかったと思います。思春期にRHYMESTERをすごい溜飲が下がる思いで聴いてたというか」
 


 
■アルバムを聴き進めていくと、前半は歯に衣着せない挑発的なラップが目立つけど、後半に行くにつれ、「そもそも何で自分がこういうラッパーになったのか」っていう原点が炙り出されていく構成になっていて、そこが巧みだな、と感じて。その“理由”は、R君が幼少期に味わっていた孤独感だったりフラストレーションがベースにあるから、っていうのも曲を聴くと分かるようになってるよね。
「染み付いてしまった自分のヒネた性格はそういうところに原因があるんだと思いますね」
 
■いじめられっ子だったとかはあるの?
「いや、完全に自分の被害妄想やと思うんですよ。子供の頃は結構不得意なことが多くて、ひとりっ子やったし家の周りに友達もあまりいなくて。田舎なんで青年団とかもあったけど入らなかったし、草野球のチームにも入らなかったからずっとひとりで遊んでました。遊び方とか、流行ってるゲームとかも知らなかったし、頭も良かったわけでもないし、スポーツもすごい苦手やったりして。小~高校生の頃って、そういう部分やコミュニケーション能力がないと、みんなの中心には入れないじゃないですか。俺は『コイツらと何の差があるんやろ?コイツらはゲームを買ってもらえて、ちょっとスポーツが上手いってだけなのに、なんでこんなに差を感じてしまうんやろ?』って。今でも明確に言葉には表わせないんですけど、『自分の方が下やな』と思ってるヤツには分かるというか、何故か学校の中に明らかな差があるっていう。クラス替えの度に『あ、コイツ俺より上、俺より下やん』っていうのがハッキリするのが不思議に感じてたし『イヤやな』って思ってました。そこで完全に“ひとり”を気取れたらよかったんですけど、無理して友達を作ろうとしてみたりして、『俺、何やってるんやろ』って思ったり。でも、RHYMESTERとかHIP HOPに出会ったことで『あ、別にこのまんまでもエエんや』ってハッとさせられた。一生懸命、環境に適応しようとせんでもええんやな、って」
 
■文字通りHIP HOPが救った、と。
「ゲットーから這い上がってきたような人からしたらお笑い草かもしれないですけど、心の中ではすごい救われましたね」
 
■“オピニオン”で「お前の『これしかない』と訳が違うで」ってラップしてて、こういうことは不良でもオタクでもラッパーはつい言いがちなフレーズだと思うんだけど、今の話を訊くと説得力があるね。
「取り柄と言えるモノがなかったし、人並みに出来ることがホンマになかったんです。ラップをして初めてみんなが反応してくれた。『お前、上手いんちゃう?』『お前、なかなかやるやん』って言われたのが、生きてきてラップが初めてだったんです。だから、この思いはホンマに切実ですね」
 
■音楽としてのラップは簡単に順位付けすべきものではないかもしれないけど、バトルは必ず結果が出るモノなわけで、それを考えるとR君がいくら謙遜しても現時点で日本一のラッパーであることは間違いないよね。その男がこういう道程を経て、っていうのは……すごく感動的な話だね。もし自分がラップに出会ってなかったらどうなってたと思う?
「引きこもりになってたか、ネットですごい有名人の足を引っ張ってるような、すごいイヤなヤツになってたと思います(笑)。今は自分の中のイヤな感じをラップで出して面白おかしく出来るけど、それが出来なかったらと思うと、恐ろしいですね」
 
■現実に、そういう方向に陥ってしまう人や陥ってしまいそうな人もたくさんいるわけだけど、R君は曲でそういう人たちにエールを送ったり訴えかけたりまではしていないよね?
「直接的に言うのが恥ずかしい性格なんかな、っていうのがあるし、バトルで優勝できたし嬉しいことやけど、『俺はこうなれた』的な、成功とはまだ言えないんです。この程度……って言ったら言い方悪いですけど、今の感じで『俺もこうなれたからお前も~』って言われるのは、俺やったら一番ムカつくな、って(笑)」
 
■今作を聴いてると、R君が自分を俯瞰して見ていたり、客観視している表現が多くて、極端に言うと「別の人格」がR君のことを見ているようにさえ感じることもあったんだけど。
「何でなんですかね……もし俺がみんなの輪の中心におる人間やったら、何も考えなくても楽しいだろうし、友達も彼女も出来て最高やったと思うんですけど、自分は輪の外やったから、そういう光景を見てて『コイツ痛いな―、オモロないなー』みたいなことをずっと考えてたんですよね(笑)。だから、いざ自分が何かをやる立場になったときに『俺、どう見られてるんやろ?』みたいに思う自分が絶対にいる。クセになっているというか。あと、梅田サイファーがデカイですね。俺は『マジメに学校行って、就職するのが正義』っていう、典型的な考えで育ってきたんですけど、サイファーに行くと中卒のヤツもおるし、エリートもおって……そういう人たちとディスカッションしていく内に、いろんな考え方があるってことが分かったし、考え方を断定しないように生きよう、多角的に物事を見ようって意識するようになったんです。そこはいろんな面で出ているかもしれないですね」
 
■でも、そういう考え方だと永遠に結論が出ないっていう怖さはない?
「出ないんです。でも、そもそも何事にも結論って出ないんじゃないか?っていうのが今のところの考えで、何に関しても、『“白”か“黒”』は絶対になくて、あるのは『より白に近いグレー/より黒に近いグレー』ぐらいしかないんやろうな、って思ってた方が面白い視点でいれたりとか、柔らかい頭でいれると思うんですよね。『俺は宗教がマジで嫌いや』って言ってるヤツがいて、その理由もちゃんとあるんだけど、その理由の核の部分をパッと崩されたら宗教にハマってもうた、みたいな。グレーでいた方がひっくり返りにくくて、バランスが取れると思うんです」
 
■正にRHYMESTERも「グレーゾーン」ってアルバムがあったしね(笑)。話は変わって、R君はやはりバトルのイメージが付いて回るだろうし、それによって得られるリスペクトも当然ある筈だけど、UMBを2連覇して今後はバトルとどう向き合っていくつもり?
「どうなんですかね……俺もまだそこは分からない。UMBは計4回決勝に立ったんですけど、ま~心臓に悪い(笑)。控室とか……俺は酒もやらないですけど、シラフじゃいれない気持ちも分かる。一日でタバコ3箱吸ってしまうぐらいの緊張感で……体には悪いんですよね(笑)。だから、今後に関しては冷静に考えたいな、と……責任が付きまとわないバトルやフリースタイルなら気楽で楽しいんですけどね(笑)。自分で撒いた種ですけど、自らが付けたイメージによってハードルが上がるし、そこが難しい」

■優勝するまでは観客から応援されるけど、一回チャンプになると「アイツ誰に敗けるのかな?」って期待する空気になっちゃうものだしね。途端にアウェーになる。
「昨日の高校生RAP選手権に出てたような子と俺が当たったら、どう考えても俺を倒す空気になるだろうな、と(笑)。民衆の意識としてそうなるのは当然のことだし」
 
■民衆(笑)。じゃあUMBに関しては今年出るかはまだ白紙ってことか。
「何かしらの理由があって出るかもしれないし、何かしらの理由があって出ないかもしれないです(笑)。俺も、優勝するまでは『いや、ずっと出続けるでしょ!』みたいな感じやったんですけど、優勝してみてこの怖さが分かりました(笑)。華やかで嬉しい分、こんなに責任があって息苦しいモノやったのか、って」
 
■では、バトル以外で言うと、今後はどういう曲を作っていきたい?
「今回のアルバムは俺の名刺代わりになると思うんですけど、このアルバムを踏まえて『こういう人間がメッチャふざけたらこうなる』とか『この人間がエロいこと歌ったら/恋をすればこうなる』っていう方向に持って行きたいですね。そう思ってもらえるようにいろんなテーマに手を出していきたいですね」
 

EVENT INFO
UMB OPENING GAME 茨城予選A 
日時:4月19日(土)19:00開場/開演
場所:古河 Spider(茨城予選)
料金:2,500円/w/FLYER or APP COUPON 2,000円
MASTER OF CEREMONY:晋平太
LIVE:晋平太/R-指定/DOUGH BOY(from 広島)/GRANDSLAM/WATARU/OLD RIVER STATE
DJ:HM/YELLOW BOBU/C-MEN
(問)Spider:http://www.live-spider.com/

 
 
 
 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : セカンドオピオニオン
ARTIST : R-指定
LABEL : Libra Record
PRICE : 2,700円
RELEASE DATE : 4月1日