INTERVIEW[インタビュー] RSS

般若

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「当たり前のことを当たり前に言っても俺はつまらないんだ。俺も、自分で自分に苦しめられてるときがもちろんあるし、『人がコレを聴いて果たして楽しいのか?』って思うこともある。だけど、10人いたとしたら、ひとりは俺を見て笑うヤツがいるワケよ。それ以外はドン引いたり『関わりたくない』って思うかもしれないけど。でも、そのひとりはきっとスゲェ『濃い』ヤツなんだよ。別にそういうヤツだけに向けて作ってるワケじゃないし(笑)、出来れば10人全員に楽しんでもらいたいけどさ、そこで変に意地張ったり狙って作ってるワケじゃないからね」

 
 近年は、ほぼ毎年のペースでアルバムをリリースしている般若の強みは、やはりその時々の心情を作品でタイムラグなくダイレクトに表現できることだろう。その点を踏まえると、今作「#バースデー」は、リスナーにとっても般若自身にとっても特に意味の深い作品となるだろう。シンガー:SAYと入籍も果たし、それ以外でも人生上で大きな転機を迎えたこのタイミングは、般若にとっても大きな意味を持つことは、下記の発言からも明らかだ。
 
 そんな、端から見ると幸せの絶頂に思える般若だが、持ち前のシニカルさや屈折した感情描写は今作でも健在……というか、むしろ増幅されている部分もあるのが実にこの人らしいというか、相変わらず捻くれてるというか、天の邪鬼というか……なんせ、入籍を発表したその日にYouTubeにアップされた彼のビート・ジャック曲が“リプニツカヤ”だし、この人はどんなに成功や幸せを手に入れても、“闇”の部分は作品で出し続けるのだろう、というのが今作でよりハッキリしたと思う。今回のインタビューも、これまで以上の手応えを感じている般若の自信と“闇”が混在した、興味深い発言多数だ。
 
 
■前作「コンサート」を今振り返ると如何ですか?
「忙しくてあんま覚えてないんだけど、『コンサート』はヴァラエティに富んだモノを作りたいな、と思ったんだ。だから、客演も新しい人間たち含めやったし、俺の中での新しい挑戦もいろいろあったけど、『#バースデー』を作り終えてみたら、今作は『コンサート』のレヴェルはかなり超えたかな、と正直思ってる」
 
■以前もお伺いしたんですけど、毎作、制作をスタートするときに前作を聴き返すんですよね?
「聴き返すね。前作を否定するワケじゃないけど、まあ、自分の中では『コンサート』は古いな、と。逆に粗が見えちゃうから。もちろん、良いアルバムだと俺は思ってるけど、『#バースデー』は、俺がより納得できるアルバムになったかな」
 
■これまでほとんどラッパーを客演に招いてなかった般若君が、「コンサート」では多数客演を招いて、今作でもKOHHとアスベストが参加してますよね。そこにはどんな心境の変化があったんですか?
「入れることは簡単だったし、人と演ることに否定的な姿勢を取ってたワケじゃないんだ。まだ、般若としての存在をみんながあまり認識してないな、とずっと思ってたから、もうちょい(自分のラップを)聴かせたいという思いが強かったんだよね。『BLACK RAIN』まではずっと1マイクでやってたワケじゃん?アレで良い加減みんな分かっただろ、と。『あの人と演りたい』って気持ちは常に持ってたから、それを『コンサート』で出してみた。俺としては、まだまだ演っていきたい人はたくさんいるよ」
 
■共演で言うと、昨年MACCHO君とシングル“ジレンマ”を出しましたね。あの曲はフィーチャリングというより“共作”という意味合いが強いかもしれないですが。
「アレは、自分の中での約束事というか、彼とは一緒にやらなきゃいけないってずっと思ってたから、『このタイミングかな』って感じだったね。いつかちゃんと1対1でやらないとな、って思ってたし、それはMACCHOも分かってたと思うよ」
 
■毎作、制作を始める時点でのモティヴェーションは違うと思うんですけど、今作に関してはどうでしたか?軸になる部分は最初から固まってたのかな?って。
「(今年の1月に)渋谷AXでワンマンをやったときに、『「#バースデー」というアルバムを6月に出す』ってアナウンスして。まあ、一月遅れて7月になってはしまったんだけど、そんぐらいだったらしょうがねぇじゃん、っていう(笑)」
 
■そこは誰も文句言わないと思います(笑)。
「こんだけやってんだからさ(笑)。AXの時点で『#バースデー』を出して日比谷野音でワンマンをやると公言したんだけど、その後結婚発表もして、子供が出来てたっていうのも分かって。『コレで「#バースデー」か……じゃあ、今しか出来ないことって何だろう?』って思って(妻でシンガーの)SAYと話して、生まれてくる子供に向けた曲を作って、それを“#バースデー”にしないか?ってなって。しかも、出産予定日が9月18日で日比谷ワンマンの3日後なんだ。人生においてそんなタイミングってなかなかないじゃん?今回、8枚目のアルバムで、自分の人生における道筋が見えたというか。そこから作っていったんだよね」
 
■ということは「#バースデー」というタイトルは子供が出来たことを知る前に付けたんですね。すごい偶然だ。
「そういうことよ。『#バースデー』というタイトルは、誕生日っていう意味もあるけど『ヴァースで(勝負したい)』っていう意味も含まれてたんだ。結果的に、両方とも強い意味合いになったかな、って思ってる。俺も初めてのことだし、なかなか経験できないことだから、後々振り返ってもコレは良い作品になってると思うんだよね」
 
■且つ、般若君自身にとっても思い入れの強いアルバムに後々なっていくでしょうね。
「そうだろうね。ファッションがどうこうとかHIP HOPがどうこうとかじゃなくて、みんなが普通に生活してる上で『あぁ』ってなるようなことが今作には含まれてると思うんだよね」
 
■生活感ということともまた違うんだけど、日々のライフスタイルの反映ですよね。
「そうなんだよ。そういうアルバムなんだ」
 
■だから、すごいパーソナルですよね。これまではそういった部分をあまり出してこなかっただけに、興味深いんですよね。
「出してこなかったね」
 
■自分の中で踏ん切りがついた?
「うん。そんなに切り売りとかしたくないんだけど、『コレは(このタイミングで)やろう』って思った」
 
■前作もかなりフィジカルなアルバムだったと思うんですけど、今作も更にその部分を研ぎ澄ませてきている印象を受けました。
「良いヴァースが良いテンションでラップできたな、って思ってるよ。あとはみんなが判断してくれたらいいけど、現時点では完璧に近いモノが出来たかな、って思ってる。あまりフロウがどうとかは、実は昔からあまり考えてはいないんだけど、良い意味で“仕掛け”というか、ラップに対して攻撃できたな、って思ってるね」
 
■ラップ面での緩急やメリハリは、特に「BLACK RAIN」以降前面に出て来た印象があって、今作でも「抑える」部分を以前より意識してるのかな?って気がしたんですけど。
「そうだね。まあ、そこはね、分かってきたんだよ。それもやっぱトレーニングの賜物だと思うし、トレーニングがあった上でステージやって、っていう。ステージとかって、どうしても力が入ってしまうモンだと思うんだ」
 
■アドレナリンも出てるでしょうからね。
「そう。その力をどれだけ抜けるか、っていうのが難しい。昔は4速ベタ踏みでやってたと思うんだけど、今は2速ぐらいのところで出していって、いきなり走れる状態をずっと保ってる。それが録音物でも上手く取り入れることが出来てきたのかな、って」
 
■そういった加減が出来るようになったことで、ライヴの構成も変わってきましたか?
「変わってくるよね。オン/オフだったりとか、いろんなブロックを(構成面で)作れるようになってきてる。自分がイメージしてるモノがちゃんと出せるようになってきたんだ。すごい時間がかかったと思うんだけど、8枚目にして。だから、俺はラップが下手でよかったんだよ。最初からあまりにも上手すぎるヤツじゃなくてよかったんだな、っていう。出す毎に少しずつ成長していけてるから」
 
■確かに、天才型より努力型の方が長いキャリアという意味では充実したモノになるかもしれないですね。
「俺は天才じゃないからね。最初の方は40点ぐらいだとしたら、今は70点ぐらいかな」
 
■先ほどもトレーニングの話が出て来て、今作でも“HALEO TOP TEAM”という曲がありますよね(HALEOはサプリメント・メーカーで、般若のスポンサーである。般若は、HALEO所属の三﨑和雄氏によるトレーニングも受けている)。先日、『日比谷野音への道』でトレーニング風景を取材させて頂きましたが、あの壮絶なトレーニングを映像で100%伝えられるか正直自信がないです(笑)。最近やっているトレーニングはどういうモノで、それを始めたことによって自分のラップにどんな変化があったと思いますか?
「まず、TEAM HALEOの三﨑和雄さんとDAVID HALTON社長にこの場を借りて頭を下げたいし、常日頃お世話になってる。細かいこと言ったらキリがないんだけど、とにかくライヴでのステージングにおいて一番理に適っているトレーニング・メニューを組んでもらってるかな。要は、4〜5種目のトレーニングのルーティン、例えばスクワット/デッドリフト/ベンチ/ジャンプ/懸垂/ボールスラムとかをバーッとやっていって、60秒の休憩を入れるっていうのを、慣らし2セット+本番5〜6セットぐらいやる。そこから後は“走り”だね。15秒間、時速15kmで走って15秒休んでを10〜20分繰り返す。だから、ライヴとかでは疲れないんだ。俺はタバコ吸わないから、会場によって空調の問題で身体的に苦しくなってくることもあるけど、普通にやってったらライヴの方がトレーニングより楽。気の入れ方というか、スイッチの切り替えがバンっと出来るようになった。要はスーパーサイヤ人みたいに瞬時になれたりとかするんだ」
 
■確かに、あのトレーニングはスイッチ入れないと出来ないでしょうね……ボーっとしてたら絶対出来ない。
「でしょ?三﨑さんも分かってるんだよ。あの人もあんだけ選手生活が長くて、死に近い状態で試合をしてたワケだから、辛いとこが分かるワケよ。だから、人間の“際”の部分をあの人は見てる。よく『(ライヴの)最初の曲と最後の曲だと思ってやれ』って言われるんだ。『コンディションが完璧じゃないときのライヴだってあるぞ』って、俺が死にそうになってるときに言われる(笑)。まだちょっとやれそうなときは飛ばしてくるし、でも、その通りだよな、って。俺の心を読んでメニューを組んでるんだよね」
  
■ライヴにおけるフィジカルという意味では、どんなトレーニングが理想なんですか?
「多分ね、極論言うとダッシュしとけばいいと思う。長距離の中にダッシュを入れていった方が、ラップの場合、フロウのことを考えたらいいんだと思う。俺もよくやってたんだけど、2km走るとしたら、400〜500mぐらいのときに100mダッシュをするんだよね。で、後半でもう一回ダッシュ」
 
■実際、音源やライヴでその成果が出てるから、説得力がありますね。
「そういったことを全てラップや曲に変えていくというかさ。今日はジムに行けなかったんだけど、昨日もしっかりやってきたし。コレはあくまで俺の考えだから違う考えの人もいるけど、やんないよりやっといた方が絶対良い、って話だよ」
 
■前作でも公募で起用したトラック・メイカーがいましたが、今作は更に増えてますね。
「前作はあまりいなかったね。公募でトラックを選ぶというのは、今回の俺の波長に物凄く合ったんだ。タイミングも良かったし、みんな熱意を持って物凄い数のトラックを送ってきてくれて。毎日というか、朝と夜に送ってくるようなヤツもいた」
 
■公募で送ってくる人たちのハングリーさが合ったということですか?
「それはあると思う。あと、俺のブログで常連のLUKA THE KISARAGIとかもこのタイミングで使わせてもらったし、俺の中では道筋があった。常に新しい人と仕事をしていきたいんだよね。刺激を求めてるし、それってお互いにとって楽しいことじゃん?っていう」
 
■今作のパーソナル感に絡めてお伺いすると、結婚したことで人生観だったり音楽に向き合う気持ちで変化はありましたか?
「別に変わんねぇよ(笑)。結婚して変わらない部分も変わる部分はそりゃ出てくるんだろうけどさ。単純に、子供が産まれたら自分の時間の使い方とか全然違ってくるからさ。俺の嫁もアーティストで同じ職業やってるけど、それはそれだし、俺もこの歩みを止めるつもりもないし、むしろ更に走っていかないといけないな、って」
 
■ベタなことを言うと、もう自分ひとりだけの体じゃないというか、そういった部分で心境の変化はあるのかな、って。
「それはあるよ。でも、何年も前からよく分からないようなことやヘンなことはやってないし、夜クラブとかで俺を見る人も少ないと思うんだよね。それこそ、今渋谷GAMEでやってる『ROOTS』ぐらいだしさ。地方に呼んでもらっても、昔と比べてすぐ帰ることの方が多くなってるし」
 
■自分に子供が出来たと分かった日のことを教えて下さい。そのとき率直に感じたことは?
「『ああ、そうなんだ』って(笑)。夜中で俺が寝てたときに伝えられて。いつかそういう日が来るんじゃないかな、ってある程度は考えてたけど、『ついに来たか』ってぐらいの感じだったね。子供が産まれるのは、すごい遅いか早いかのどっちかだと思ってた。まあ、こういうのもタイミングだし、今はむしろ子供が欲しいと思ってても出来ない人の方が多いからさ。俺も年齢的には申し分ないじゃん?だから、そこはもう、走るしかないでしょ」
 
■なんで僕がそういうところが気になってるかというと、やっぱり以前は「孤高のMC」感が強かったからだと思うんですよね。ある意味では今でも変わらないと思うんですが。
「だろうね」
 
■今作が面白いのは、これまでのような自分ひとりが見た上での孤独さもありつつ、一方で自分の最も近いところに大事な人がいるっていう、孤独じゃない部分の両面が混在してるところで。そういう意味だとすごい複雑なアルバムですよね。
「そうだね、それは両方ある。まだ子供が産まれてるワケじゃないからね。だから、次作はもう子供がいるワケだから、きっとまた違う視点で曲を作るんだと思う」
 
■まだ分からない部分が多いからこそ、今作は心情描写が複雑なんでしょうね。
「そうなんだよ。だからこそ、今しか出来ないアルバムなんだ。だいぶ異例なアルバムでしょ、今作は」
 
■“家族 feat. KOHH”では、これまで自分からは外に向けて語ってこなかった、般若君が育った家庭環境について歌われていて、アルバム中最もディープな曲ですよね。自分に家族が出来たことで、育ってきた家庭環境を振り返るという意識が生まれたんですか?
「まあ、この辺のタイミングかな?って思って」
 
■じゃあ、いつかは作らないといけないと思ってた?
「うん。じゃないと、自分の中で消化できないと思うし。もういい大人だしさ。ひとりでこの曲を作ることも出来たけど、いろいろ考えてKOHHを呼ぼうと。彼とはそういう曲をやりたいな、ってずっと思ってたんだ。マジなヤツをやりたいな、って思ってたし、彼ならきっとやれると思ったから、声をかけた。今までの俺ならひとりで作ってたのかもしれないけど、ひと回り世代の違う彼の言ってることも踏まえて、一緒にやってみたかったんだよね」
 
■母子家庭で、幼少期に父親がいなかったということは、今の般若君にどれぐらい影響してると思いますか?
「父親がいたら、俺はきっとHIP HOPにも何にも出会えてなかったんだと思うよ」
 
■父親がいなかったからこそHIP HOPに出会えたという意識があるんですか?
「あるね。母親が住み込みの職場にいて、それが三軒茶屋だったんだけど、そこから俺の人生が始まってるから。そこで巡り巡ってこうなってる、って考えるとそうだよね。父親といたら、結構どうしようもないヤツにもっとなってたんじゃないかな、って」
 
■この曲は、最終的には亡くなったお父さんに向けて「天国で一緒に酒を飲もう」という風に締め括ってますけど、全ヴァースを聴くとすごい愛憎が入り混じってますよね。コレは今の般若君の素直な気持ちですか?
「そうだね。溜まってた気持ちがあるからね」
 
■今も憎んでいる一方、感謝している、と。
「彼がいなかったら俺が存在しなかったってことは紛れもない事実だしね。だいぶ歳が離れてる父親だったんだけど、俺が成人になるまでは生きていたいって言ってて、そのときに一緒に酒を飲みたいって言ってたのがすごく印象に残ってる。そうなる前の、俺が15〜6歳のときに死んでしまうんだけど。でも、母子家庭だとか片親だとか、ハナっから両親がいなかった人とか、両親がいても酷いことになってる人もたくさんいるじゃん?だから、この曲が一概に凄まじい曲とは俺は言えないんだよね。全ての人にリアルがあると思うんだ。ただ、俺はこのタイミングでコレを言っておきたかった、っていう。それに『ラップでここまで言っても別にいいんだよ』って思ったってだけだね」
 
■“家族”から“#バースデー”への流れは今作のハイライトだと思うし、多くのリスナーも感動すると思います。“父性”をほとんど感じることなく育ってきた般若君が、自分自身が“父親”になることと向き合っている様がよく伝わってきます。やっぱり、いざ自分が父親になるということに対しては怖さはありますか?
「俺だって一年生だもん(笑)。そりゃ怖さはあるよ。あるけど、所詮男なんて出産の際に痛みなんかひとつもないんだから、どうしようもねぇ生き物なんだよ。そこで言うと女には勝てっこないんだしさ。でも、そこでふんぞり返ってもらんないから、俺もやることはやりますよ、ってことだしさ。『両親といて楽しいな』って思うようにしていきたいしさ、それはみんなもそうでしょ?誰だって離婚したくて結婚するワケじゃないし。そういった、大切なことはちゃんとやっていかないとな、とは思ってる」
 
■こんなこと訊いて申し訳ないんですけど、もし子供が「ラッパーになりたい」って言ったらどうします(笑)?
「どうするんだろうなあ。個性は伸ばしてあげたいし、何になりたいか尊重はするけどさ、『やめた方がいいよ』って言うだろうね(笑)。まず、そいつに才能があるかどうかだよ」
 
■でも、般若君自身は才能じゃなくて努力でここまで来たという自負がありますよね?
「だから、そこは分かんないワケで、『やめた方がいいけど、やりたきゃやってみ』って、それぐらいの話でしょ。『無理だな』と思ったら『無理』ってハッキリ言うと思うよ。『コイツ、イタイな』とか、ちょっとやったら分かるっしょ(笑)」
 
■“叶わねぇ”ではアスベスト君が起用されてますね。彼は『昭和レコード presents 乱 THIS TOWN』にも出演してましたが。
「まず、何故この曲を作ったかというと、どいつもこいつもテレビとかで『夢は必ず叶う』とか言うじゃん?でも、あんなの全部ウソじゃん。8〜9割のヤツの夢なんて叶うワケないんだ。俺だって、今更『これからW杯出るぞ』って言っても叶うワケがない。俺は、『夢なんて叶わねぇ』ってことを切実に歌いたかったんだよね。で、書いてたら『……これって、アイツ(アスベスト)じゃね?』って思った。ぶっちゃけ、アスベストというラッパーというか人間は、一般常識はもちろんあるんだけど、狂ってるヤツだと思うんだよね。アイツの曲、“四捨五入”とかさ、マトモじゃないじゃん?もちろん良い意味で、だよ。俺がアイツの曲を聴いたとき『コイツ、俺と一緒だ。頭の中で人殺してるな』って感じたんだよね。この曲だって、自分ひとりで作れたけど、このテーマでのアイツの言い分を聴いてみたかったんだよね。ひとつ言っておきたいのは、俺はネーム・ヴァリューで客演を選んでるんじゃなくて、曲単位で(内容を踏まえて)人を選んでるんだ。ZeebraでもAKでもANARCHYでもMACCHOでもなく、この曲に関してはアスベストだったんだ」
 
■まあ、確かにジブさんとかは“STREET DREAMS”とかを歌ってる人だし、どちらかというと「夢は叶う」って言うタイプの人だし、そういう人も多いですよね。
「それもひとつの正論なんだよ。ANARCHYが『もう夢は叶ってる』ってことを言ってるけど、それもひとつの正論なんだと思う。でも、俺はふとひとりになったとき、『やっぱ夢なんて叶わねぇんじゃないか』って正直に思ったんだ」
 
■じゃあ、般若君の“夢”は叶ってないんですか?
「半分叶ってて、半分叶ってないんじゃないかな。現状には全然満足してないしね」
 
■“夢”のひとつは「ラッパーとしてメシを食う」ってことでしたか?
「そこの部分ではちょっと叶ったかもしれないけど、まだいろんな意味で到達してないな、って。毎日悔しい思いするしさ。俺は大衆寄りじゃないと思うし、きっと少数派の方にぶち込まれてるワケだから、ハナからイメージだけで(リスナーに)食わず嫌いされてる部分ってまだまだあると思う。別にそこを払拭したいってワケじゃないけど、音楽に対しては真摯に向き合ってると堂々と言えるし、それだけなんだよね」
 
■ちなみに、“コンプレックス”で「スマン オレはもう疲れた 一昨日人生にフラれた」って歌っていますけど、コレはどういうことですか?
「ハハハ、一分ぐらいで書けたラインだね。『その通りだね』って。昔、母親に『お前は絶対に病院行くな』って言われてたんだ」
 
■それは何でですか?
「『精神科医に行ったら絶対出れなくなるぞ』って言われて。そのときの自分に向けて書いたラインだね」
 
■じゃあ、メンタルのことについて歌ってるんですね。だけど、“あの世でLINE”では「鬱にでもなりてーけどさ オレは普通」ってラップしてますね。
「そうなんだよ、そこなんだよ。良くも悪くも鈍いんだよ。だから、そう(鬱に)なりかけるんだけど、やっぱり普通なんだよな、って」
 
■じゃあ、最終的には“普通”っていう意識なんですね。
「普通でしょ。まあ、普通だよ。機嫌悪いときもあるし、いろいろあるけど、普通なんだよね」
 
■今作の感情面で感じたのは、すごいポジティヴさを感じる一方、すごいリアルな部分を突き刺してきますよね。
「そう、闇深いよ」
 
■闇、深いですよね(笑)。そういう意味では「ドクタートーキョー」に近いかもしれないけど、より闇が出てますよね。
「俺もどっかで狂ってさ、ASKAさんみたいになったりとかすれば、大変なんだろうけど、ある意味壊れることは楽だよな、って思っちゃうときもあるんだよね。だって、そいつはもうイッちゃってるんだから。でも、そうじゃないシラフは結構キツイぜ。どシラフな中で闘ってきてるからさ。でも、そんな中、俺はトレーニングとかで自分を律してるワケよ。そういう意味でも、結局自分とすごく向き合ってる結果ってことなんだと思う。ふんぞりかえったりとかさ、そこら辺で悪いことしたりとか……おセックスしたりとかしてたりじゃなくて(笑)」
 
■「せっくすしてる時は頭の中で九九」(“あの世でLINE”)という最低なラインもありますね。
「最低なラインでしょ?」
 
■それで子供出来たとか、最低すぎます(笑)。
「最低なラインかもしれないけど、みんなが思ってても絶対言わないことってあるけど、そういう部分を堂々と言えてるワケじゃん?……まあ、そういう生き物でいいんじゃねえかな、って思ってるよ」
 
■自分の性格を自己分析ってします?
「あんまりしないね」
 
■リリック書く上でそういうことを考えたりしないのかな?って思って。
「難しくは考えないかな。あんまり自分のことを決めつけすぎると、自分の考えが狭くなってくるし、固くなっちゃう。自分に対して否定的な部分は物凄くあるけど、俺が尊敬する荒木飛呂彦大先生が『ちょっと満足してまた次のステップに行く』や『拘りがないのが拘り』って言ってて、ホントにそうだな、って思う。結局は、楽しくやりたいだけなんだよね。俺の中でのしがらみは別にないよ。良い曲/良いアルバムを作りたいだけなんだよね」
 
■“あの世でLINEで”「愛情って何? 答えは無えから耐え難い」ってラインがあって、それがちょっと意外で。それこそ結婚や子供が産まれるということを考えると、人生で一番“愛”というモノを感じてるタイミングなんじゃないかな?と思ってたのですが。
「でも、愛情っていうのも、ふとしたときになくなる瞬間が絶対にあるワケよ。『答えはA 金じゃない』って言ってるんだけど、Bの答え『金だ』っていうのもあるのかもしれないし、それも違うのかもしれない。だから、答えがないんだよね。だから『耐え難い』って俺の価値観で言ってる。そいつと一緒にいてやることが愛情になるのか、今距離を置くことが愛情なのかとか、答えがない」
 
■もっと人生の歓びを目一杯出した内容にしようと思えば出来ると思うんですけど。例えば最近のANARCHYとか、曲聴いてると本当に楽しそうじゃないですか。
「ああ、スゲェ良いと思うよ」
 
■でも、般若君の場合はそういう感じにはならないんですね。
「性格悪いんだよ、俺」
 
■ハハハハ。
「やっぱ歪んでるんだと思う。でも、歪んでるけど幸せはすごい感じてるよ。めちゃくちゃ幸せだよ。でも、やっぱり……俺、長渕剛さんにも言われたけど『お前は人格破綻者だ』と(笑)。でも、その通りだと思ってる。誰を否定するつもりはないけど、当たり前のことを当たり前に言っても俺はつまらないんだ。俺も、自分で自分に苦しめられてるときがもちろんあるし、『人がコレを聴いて果たして楽しいのか?』って思うこともある。だけど、10人いたとしたら、ひとりは俺を見て笑うヤツがいるワケよ。それ以外はドン引いたり『関わりたくない』って思うかもしれないけど。でも、そのひとりはきっとスゲェ『濃い』ヤツなんだよ。別にそういうヤツだけに向けて作ってるワケじゃないし(笑)、出来れば10人全員に楽しんでもらいたいけどさ、そこで変に意地張ったり狙って作ってるワケじゃないからね」
 
 


 
LIVE INFO
般若 8th ALBUM「#バースデー」
ワンマンライブ in 野音

日時:9月15日(月・祝日)16時開場/17時開演
場所:日比谷野外大音楽堂
料金:アルバム購入者対象 早割前売価格 ¥2,000(税込)
※詳細・申込方法は「#バースデー」CD封入チラシをご覧下さい。

前売り 3,000円/当日 4,000円
(問)SOGO TOKYO:03-3405-9999 http://sogotokyo.com/
※雨天決行/荒天中止
 
 
EVENT INFO
般若 presents “ROOTS”

日時:7月29日(火)23:30 OPEN
場所:渋谷THE GAME
料金:2,500円(1D)/w/FLYER 2,000円(1D)/女性 1,000円
GUEST DJ:DJ 8MAN/DJ田我流
SHOT LIVE:ISH-ONE
DJ:TURBO/FUMIRATCH/KUSH/REDBLOOD/REIKA/11zero
LIVE PAINT:鬼頭(ACC)
MC:DARTHREIDER

 
 

Pickup Disc

TITLE : #バースデー
ARTIST : 般若
LABEL : 昭和レコード
PRICE : 3,024円
RELEASE DATE : 7月30日