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AKLO

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「言葉さえ面白ければ、いろんな音楽を流行らせることが出来るのがラップで、だからHIP HOPはヴァリエーションがあるし、とんでもないトラックが超売れたりとかする。『なんでUSであんなヘンテコなトラックが売れてるのか分かんない』ってよく訊くフレーズだけど、『それはラップが面白いからなんだよ』っていう話で、それって俺も日本語として伝わる言葉でやらないと日本のリスナーにも伝わらないし、そこまで行きたいから、っていうのはありますね。ただ単に、USっぽいビートでUSっぽいフロウでやってるだけだったら、一番重要なところを見逃してしまう。だから俺も日本語ラップにこだわってるんです」

 
 重厚感とキャッチーさを両立させたラップとサウンドで、10年後にガイド・ブックが出たとしても重要作としてリストアップされることになるであろう、問答無用の名作「THE PACKAGE」を送り出したAKLO。「THE PACKAGE」では、自身に対する評価の低さに対するフラストレーションがラップ面での勢いに好作用したわけだが、正に「待ち望んだ展開」の中で生きていることを本人が最も自覚しているであろうこのタイミング--2ndアルバムでは、「THE PACKAGE」の成功によってある程度解消されたフラストレーションの代わりに、何を“燃料”として作品のクオリティにフィードバックしていくのか--そこが筆者にとっての「THE ARRIVAL」の注目ポイントだった。
 
 そして、正に“arrive”した今作を聴いてまず筆者が感嘆したポイント、それは、彼の“ラップ啓発者”としての意識の高さだ。もちろん、「THE PACKAGE」でもそれ以前の作品でも、USラップの奥深さと日本語ラップの面白さを巧みに融合させてきたが、今作では「THE PACKAGE」に比べて、分かりやすくポップなサウンドが減少している分、よりハッキリ彼の意志がラップを通して伝わるし、また、彼のラップに耳を引かせるために敢えて分かりやすく配置されたギミック的要素が豊富なため、「凄いことを簡単(そう)に伝える。だけど、その先には奥深さがある」という、AKLOがラッパーとして目指している方向が前作以上に明確だと思う。
 
 例えば、“dumb down”という言葉が英語ではあり、これは簡単に言うと「スキルがあっても、分かりやすくするために敢えてレヴェルを下げる」という意味で、3rdアルバム「VOL.2… HARD KNOCK LIFE」をリリースして以降のJAY-Zを表現する際によく使われる言葉だ。また、日本語ラップにおいては、Zeebraが「BASED ON A TRUE STORY」期に実践していたこととも通じる行為だと思う。このように“dumb down”は、そのラッパーが成功し、自分にとっての市場規模が拡大すると、多かれ少なかれ試みるプロセスなのだが、今作のAKLOはまったく“dumb down”を試みた気配がなく、ラップ表現的にはかなり突っ込んだ内容だと思う。一聴しただけで大筋を理解することはできるが、その更なる本質を理解するためには(それこそRapgenius的な)もう一歩踏み込んだ理解/解釈をリスナーに要求するというのは、KENDRICK LAMARやNAS、RAKIMといった新旧数多くのリリカル・ジャイアントたちが提示してきたことだと思うが、AKLOはそういった立ち位置に自らを置くという意思/決意表明を今作で示したと思うし、その点において特に、今作は「THE PACKAGE」を超えていると思う。
 
 
■なんやかんや、「THE PACKAGE」から2年経つんだね。
「そうですよ、2年」
 
■“The Arrival”で「アルバム出なくてF**kだったな」って言ってるけど、コレはAKLO君自身の感情?
「いや、それは(リスナー)みんなに言ってるんですよ。『俺のアルバムが出なくてファック(な気分)だっただろ?』って」
 
■「待たせてごめんな」っていう意味ね。
「そうですね。それをもっと……変な目線から(笑)」

■AKLO君にとって、「THE PACKAGE」がもたらした“成果”って何だったと思う?
「成果か……自分にとっては、(HIP HOPゲームの)“マップ”に名前が思いっきり載ったと思ったし、色々大きなステージに立つことも増えて、新しい経験も出来て、自分の人生としてもすごく楽しくなった一枚ではある。HIP HOPシーン/アルバムとして考えると、ああいう、ある意味王道でストレートなHIP HOPを通して、リスナーを増やせる可能性が見えたし、実際増えたと思うんです。そういう意味ではシーンにとっても成果があったんじゃないかな、って思ってます」
 
■じゃあ、内容面/世間の受け入れ方に関しては、自分が思っていた通りになった?
「本当だったら、もっとメインストリームになるべきだ、っていうぐらいの勢いがあるから、そういう意味ではまだ全然だけど、HIP HOPのアルバムとしてはすごく評価が高かったし、そういった状況に対していつまでもビッチング(愚痴)してられないし。今回のアルバムでは『なんで俺のこと認めてくれねぇんだよ!』っていう感情は一切なかったと思います」
 
■前作では、アルバムを出す前の自分の葛藤やストラグル--リスナーにとっては“陰”な部分が結構入っていたけど、そういった部分は今作ではないよね。むしろ、全体的な押し出しはかなり自信マンマン。
「前作時のインタビューでも言ったと思いますけど、『コレで成功したら更なるSWAGを手に入れる』みたいな。まあ、そういうことですよ」
 
■「THE PACKAGE」があったからこそ、「THE ARRIVAL」の内容のベースが出来上がった、と。
「そういうことですね。説得力がないと面白くないから」
 
■アルバムを作り出したのはいつ頃から?
「『THE PACKAGE』の制作が終わってから『次も作ろう』って話はしてたんですよ。で、なんとなくやってたんですけど、ギアが入ったのは“NEW DAYS MOVE”出した頃ですね。その辺りから始まったけど、結局“NEW DAYS MOVE”もアルバムに入ることなく、あの曲から1年ぐらい経ってやっと出せた」
 
■ということは、最初は“NEW DAYS MOVE”の流れを汲んだ作風をイメージしてた?
「そうですね。“NEW DAYS MOVE”が入ってても違和感ないアルバムにしたいな、というのはありました」
 
■そこをなんで方向転換したの?
「今回、やりたかったことが出来たんで、結果的にその方向はやりたいことじゃなかったのかな、って」
 
■今作の方向性はどういう風にまとまっていった?
「BL君が上げてくるトラックで自分がピックしたモノが、なんか“高級感”があるな、って思ったんです。例えば“Break The Records”とかもそうだけど、その方向のカッコ良さをやりたいと思って」
 
■“Break The Records”のトラックは“高級感”という印象なんだ。
「高級感もあるし、アルバム全体にも高級感+スペーシー感というか、そういうのがあると思ってて」
 
■アルバム・タイトルは「THE ARRIVAL」だけど、AKLO君自身は「THE PACKAGE」で既に“arrive”してるワケで、この言葉には自分自身の“到来”以外にどんな意味が込められてる?
「コレは、自分たちの中での流行り言葉で『降臨~』ってよく使ってて。すごいビートが出来上がったときとかに『降臨~!』みたいな感じでBL君からメールが来たりしてて、『神がかってる』的な意味で『今のヴァース、降臨してるわ』みたいな使い方をしてたんですね。で、物凄い量のトラックとリリックがあったけど、最終的に『降臨したな』って思った曲だけを集めたからこういうタイトルにしたかった。あと、自分の中での遊び心で、タイトルにCD屋用語を使いたいというのがあって。『THE PACKAGE』もそうだし『THE ARRIVAL』もそう」
 
■“新入荷”みたいな?なるほどねー。僕の中では「次の時代のラップが“到来”した」みたい意味だと思ってたんだ。
「あー、でもある意味そういうことですよね。俺らが“降臨”している限り(笑)」
 
■大まかなイメージはAKLO君主導で決めていった?
「リリックに関しては、一切『こうした方がいい』ってディレクションはなかったから完璧に主導権を握ってました」
 
■例えば、前作で言うと“YOUR LANE”のような、分かりやすくキャッチーな曲がほとんど無いと思うんだ。“The Arrival”や“I Don't Care It All”はキャッチーな部類の曲だと思うけど、“YOUR LANE”のようなポップ・ロック的アプローチではなく、よりコアなブラック/アーバン・ミュージック的な曲だと思ったし。敢えてポップなサウンドを避けたという意識はあるの?
「それはないんですけど、『THE PACKAGE』でやったことをもう一度やるつもりはなかった。『THE PACKAGE』では、『認められてない内にこんなにラップ上手くなっちゃったよ』ってアルバムなんですけど、ある意味(笑)、それはそれで消化されたから、『今回は進化するしかない』って思った。『THE PACKAGE』の上にラップの“レイヤー”があるっていうのを見せたくて、そうなると段々とビートのBPMとかやりたいことが決まっていったんです」
 
■ラップの“レイヤー”とは?
「レヴェルという意味でのレイヤーです。『THE PACKAGE』を、もし『日本語ラップの最高到達点』と言う人がいるんだったら、『それよりもまだ上があるんだよ』っていうモノを自分自身が挑戦したかった」
 
■自分自身は、「THE PACKAGE」をあの時点での「日本語ラップの最高到達点」だと思う?
「自分の中では『まだちょっと余裕が残ってたかな』って思ってます」
 
■「THE PACKAGE」を聴き込んだ人であればある程、「THE ARRIVAL」でのAKLO君の“次元越え”感を痛感すると思うんだ。より分かりやすく「テクニックとしてのラップ」を提示してるな、って。それって、「THE PACKAGE」では敢えて出し切っていなかった部分を今作で出したのか、「THE PACKAGE」を経て新たに進化した部分だったのか、どっちなんだろう?
「両方ですけど、多くの部分は『THE PACKAGE』後に習得した技術だと思ってます。……それこそ、自分で図を描いたんですよ。今作ではフロウを“デザイン”しようと思って」
 
■ほう、今作では自分のフロウを図面化してみた、と。
「スケボーの技みたいなモンですよ。(図を描きながら)こんな感じです。キックがあってスネアがあって、その間を細かく縦線で分けるんです。で、例えばスネアのちょっと前からラップが入るんだとしたら、その位置から横線引いてどこで落とすかとかが、図的にもキレイに見れたらいいな、と思って。(“人”のような線を引きながら)ここら辺でちょっとトーンを上げてみよう、とか」
 
■リズムの載せ方だけじゃなく、ラップの入り方や韻のポイント、抑揚の付け方を全て図面化したんだ。この図を描いてるのはリリックを書く前の段階?
「いや、書いてます。同時にやってますね。俺はいつもヘッドフォンしてマイクをセットして、自分の声を聴きながらリリックを書くんです。で、そうやってて『アレ?なんでここでスネアが来ちゃった?』みたいに感じたらまた図を描いて、『あ、ここでズレちゃったんだ、なるほどね』みたいな感じで修正していってまた書いていく、みたいな。ただ、こういうことやってる人は世界的にもあまりいないと思うから参考になるか分からないけど」
 
■リリックをノートに書く際、譜割りを確認するために縦線を引いてからリリックを書くとかは訊いたことあるけど、ここまでフロウ面までヴィジュアライズされた図面は初めて見たかも。
「『どうリリックを紙に書くか』というより『その波形にどう言葉を埋め込んでいくか』っていう作業なんです。それは以前からやっていたことなんですけど、『もっと気持ち良いラップが出来る筈だ』って考えることが自然になってくるんですよね。それこそ“時限爆弾”とかもそうやって作ったんです」
 
■やっぱそうなんだ。あのラップのトラックとの絡み合い方は絶妙だよね。最初に聴かせてもらった後、興奮して思わずAKLO君にiMessage送ってしまった(笑)。
「嬉しかったですね。今のところ、唯一指摘した人ですよ(笑)」
 
■リリックの内容的には、他にも良い曲はあると思うけど、テクニカルなラップの凄味という点では、一番インパクトのあった曲だったな。……先ほど僕が指摘したブラック・ミュージック的な部分で言うと、“The Arrival”でいきなりDELFONICS……というかFUGEESの“READY OR NOT”のサビを使っていたことで。イントロでこのスレスレなベタ感を押し出してるのが印象に残って。
「『THE PACKAGE』中のパンチラインをいっぱい言ってから、『どんなハスラーよりパケは捌いた/On To The Next AKLO The Arrival』っていうラインで終わるヴァースが出来て、『それって超イントロなリリックだね』って話になったんです。それで、BL君が『歌も入れたい』って言い出して、そこで俺っぽいと思ったフレーズが“READY OR NOT”のリリックだったんです。『お前らが準備出来てても出来てなくても、俺は来たぞ。隠れても無駄だ』っていう意味なんですけど、超ハマって。だから『コレ、ギリギリじゃね?』みたいな感じじゃなく、BL君とノリノリで作りましたね。ただ、もちろん許可は取りましたよ(笑)」
 
■前作をBL君は「グラミー・テンション」(グラミー賞を穫れるぐらいのクオリティ、の意)と評していたみたいだけど、今作ではそういったキャッチフレーズ的なイメージはある?
「ある意味今作も『グラミー・テンション』な感じはあると思います。って言っても、音楽性が『グラミー賞獲りそうだな』って意味じゃなくて、グラミー賞獲れるような人って、誰かが既にやったことをやろうとしてるワケじゃないじゃないですか。新しいと思うし、ビート的にもUSと並んでもおかしくないドコロじゃないから、今作も俺らなりにカッコ良いと思うモノを提示したかった、って感じです」
 
■BL君/OYWMのビートはラッパー視点で見てどういう風に変化してきてると思う?
「だいぶ変わってきてると思いますね」
 
■具体的に言うと?
「ビートの展開が凄いあったりとかは、今までなかったし。途中でビートが超変わるとか」
 
■というか、ほぼ別の曲になるよね。それぐらいの展開の仕方は今まで確かになかった。
「そういうこともするし、あと、やっぱ凄いこだわりますね。後からすごい修正したりするし。俺からしたら『コレでいいじゃん』って思うようなところも、ディテールにこだわってるから音を一個ずつブラッシュアップしまくってる。クオリティという意味での拘りがすごいあると思います」
 
■こないだのSALU君のアルバムではSaltwater氏がトラックで参加してて、今作でも彼は参加してるけど、更に“RGTO”をプロデュースしたGaius Okamotoなる人物も出て来るね。
「いや、俺はSaltwaterさんにも会ったことないし、Gaius Okamotoさんにも会ったことないんです(笑)。JIGG君とBL君しか会ったことないんですよ。Skypeを通してミックス作業でやり取りしたことはあるんですけど、全部テキスト上ですね」
 

■Gaius OkamotoはMVにもなった“RGTO”を手がけてるね。
「あの曲は、普通だったらスネアのところで韻を踏みがちだけど、敢えてそれをキックに持っていくっていうフロウでやってて、それが上手くハマる、ノリが良いトラックだと思いますね」
 
■「THE PACKAGE」のときも、バリバリHIP HOPだけど、必ずしもモロUSマナーなトラックだったワケじゃないよね?今作は前作より若干そちらに寄ってるかもしれないけど、でも似て非なるモノという印象があって。AKLO君は現行のUS HIP HOPが大好きな人だし、今の音楽的なトレンドを常にチェックしてる人だと思うけど、そういった音楽的なエッセンスをもっと分かりやすく取り込もうという意識はないの?
「ないと思います」
 
■それは何故?
「今、ウチらがやってることが面白いと思ってるんで。『USの流行ってる感じが羨ましい!』って思う余地がないぐらい面白い」
 
■「むしろ俺らの方が面白い」ぐらい?
「(笑)やってる本人としてはそんな感じはしますね。もちろん今の流れは超チェックするし好きだけど、だからって『この人みたいなビートがいいなー』とはならなかったですね、今回は」
 
AKLO君がセルフ・プロデュースにチャレンジすることってあり得るの?
「あり得ないですね。あり得ないとまでは言えないかもしれないけど、間近でOYWMの仕事を見てるから、流石に俺が挑戦して越せるような作業じゃないな、って」
 
■今作はD.O.I.氏がミックスを手がけてるけど、それこそビート・メイクからミックスまで、やろうと思えば全部出来ちゃう人たちだもんね。
「D.O.I.さんはD.O.I.さんでものすごいスキルの持ち主で、自分の憧れのエンジニアですけど、確かにトラック・メイカーの方々は音に関する知識とんでもないですよ。聴く音の環境が良ければ良い程、このアルバムがスゲェって気付くと思うんですよ。それこそみんなD.O.I.さんのスタジオのスピーカーで聴いてくれたらいいな、って思うぐらいで。一個ずつの音に対するこだわりがハンパじゃないんで、圧倒されると思うんです。アイディア勝負とかじゃなくて、とにかくハイ・エンドなんですよね」
 
■ラップ面で、今作AKLO君が達成したと思う部分は?
「それこそ“時限爆弾”って、今までのラップが『タタタタターン/タタタタタターン』だったとしたら、『タタタタタタターン』みたいに、もう一個増やすみたいなことをひたすら一曲通してやってるんですけど、そういったことを複雑にやってて、それをする上で“タタ”って響きのする言葉をいっぱい集めて、『ファイヤッ』とか。“言葉”っていうフレーズだとしたら『コトバ』で3つだから『タタ』ってならないで『コットバ』みたいになっちゃうから、ちょっと変かな、とか。USでは聴いたことあったラップの載せ方の中でも、日本語だと言葉が制限されるし、日本語で出来ない理由も分かった。でも、それを敢えてやったというか。だから、ちょっと無理してる部分--完全に自然ではないけど、なかなか良い挑戦だったな、と思ってます」
 
■それ以外に、USのラップから影響を受けて取り入れた要素はある?
「『コイツのこのラップ』っていうのはなくて、いろんなラッパーのいろんな部分を総合して混ぜてますね。だけど、最終的に俺のラップを聴いて『コレ、誰かっぽいよね』っていうのは多分ないじゃないかな、と思うし、それはよかったな、って」
 
■サブリミナルにいろんな影響源を散りばめていった結果、なんか違うモンが出来ちゃった、みたいな。
「そうそう(笑)。そこはアルバムが出て、みんなに聴かせてみないと分からない部分だったりするけど、今のところ“オリジナル感”がある気がしてますね」
 
■今作は、前作以上に「日本語ラップとしての面白さ」を意識してるアルバムだと思ったんだ。今回、フレーズ単位で印象に残るラインが多いし、ユーモア性も前作より強い。以前、AKLO君と話した際、「自分は“日本語ラップ”をやってるという意識がある」と語ってたんだけど、そこの部分は変わらない?
「変わらないですね」
 
■だよね。変わらないどころか、よりそこに対してコンシャスになってる気がして。
「うん、そうですね。今回は正直、ちょっと英語は多いと思いますけど、英語のフレーズが来てもその次のラインは日本語で踏むとか、そういった部分は変わらないですね。そこを意識しないと、そのまんま英語で超書いちゃったりとかしちゃうんです」
 
■そこまで“日本語ラップ”のフォームに拘る理由は?
「好きなんでしょうね。あと、USでラップが人気ある理由って、“言葉”が面白いからなんです。それこそトラックとか別に何でもよくて、オモロイこと言ってたら流行っちゃう。言葉さえ面白ければ、いろんな音楽を流行らせることが出来るのがラップで、だからHIP HOPはヴァリエーションがあるし、とんでもないトラックが超売れたりとかする。『なんでUSであんなヘンテコなトラックが売れてるのか分かんない』ってよく訊くフレーズだけど、『それはラップが面白いからなんだよ』っていう話で、それって俺も日本語として伝わる言葉でやらないと日本のリスナーにも伝わらないし、そこまで行きたいから、っていうのはありますね。ただ単に、USっぽいビートでUSっぽいフロウでやってるだけだったら、一番重要なところを見逃してしまう。『何でこんなヘンテコなトラックが流行ってるんだろ?でも、これカッコ良いかも。俺も作ろー』とかじゃないから。リリックさえ面白ければ、自分たちがカッコ良いと思うモノは何でも流行らせることが出来ちゃうのがラップだし、だから俺も日本語ラップにこだわってるんです」
 
■日本語ラップの面白さとUSラップの面白さって、AKLO君の中で共通してる?
「最近、共通してる部分は出て来ましたね。それこそYOUNG HASTLE君とか、共通してる部分があるからその感覚で聴きます。でも、シーン全体で見ると違うかもしれないですね。そういう意味では、自分はUSラップのファンとしてはかなりのヘッズではあるけど、“日本語ラップ・ファン”ってなると微妙っていうか、プレイヤーって感覚が強いですね」
 
■AKLO君のラップが、如何に過去の日本のHIP HOPと繋がっているモノなのか、というのはAKLO君について考察する上ですごく興味深くて、例えば今作でも“Break The Records”で『さんピンCAMP』でMUROさんが発したあの有名なフレーズを使用してるよね。
「最近ライヴしてて、日本語ラップに勢いを感じてるっていうのもあるし、たまたまBL君と『さんピンCAMP』の映像観てて(笑)、MUROさんのそのフレーズが出て来たときに『コレって、つまり当時J・ラップと呼ばれてたモノじゃない、本物のHIP HOPが好きな人が集まって、間違った形じゃなかったからこそ“こんなシーンを待ってたぜ!日本語ラップ!”って言葉になったんだろうな』って思って、その気持ちって俺の中にもすごいあるんです。だから、簡単に俺が“バイリンガル・ラップ”って括られることが苦手な理由はそこにあるのかもしれないけど、“日本語ラップ”の“美学”を俺はすごく理解してるし、あのフレーズはそういう意味で凄い重要だと思ってる。で、自分が今やってることは超カッコ良いと思ってるんで(笑)」
 
■笑いながら言うな(笑)。
「そういうモノが前作で受け入れられて、ライヴに人が集まることってそういうことだな、って思ったんで、自分の中で勝手に『さんピンCAMP』の頃とリンクしてると思って使わせてもらいました」
 
■確かに、今作は英語の比率が増えてるかもしれないけど、その一方、日本語のフレーズのパンチは強くなってるな、って。ユーモア性が強くなってることもその印象に繋がってると思うんだけど。
「“伊佐坂先生”とか出て来ますしね」
 
■江頭2:50も(笑)。良い意味でギミッキーな言葉の取り入れ方なんだけど、ここは「THE PACKAGE」ではあまり感じなかった要素で。
「そうですね、うーん……」
 
■僕は、「日本語ラップとしての面白さを、より分かりやすく伝えようとしてる」と思ったんだ。やり方としては難しいやり方じゃないんだろうけど、時々「えっ?」って思うようなフレーズが入ってくると、ラップに詳しくないリスナーでもリリックに入り込みやすいと思うんだ。
「そうですね、その部分は今回勇気を出した。普段は、友達と一緒にいると何か面白いこと言いたくなっちゃうキャラだし、リリック書いてて『面白いの思いついちゃったなー』って思うと書きたくなる。今作は、『THE PACKAGE』の頃よりもBL君たちと打ち解けてたっていうこともあり、前回よりも書きやすかったな、って(笑)」
 
■なるほど、前作ではBL君たちに気を使ってたんだ(笑)。
「気を使ってたというよりは、『お前、何“江頭”入れてんねん』って怒られたらどうしよう、みたいな(笑)」
 
■BL君は関西の人だからそのノリは分かりそうな気もするけど(笑)。
「“ZUWAI”で『一生食ったるタラバやズワイ』って言ってる部分とか、スタジオで大爆笑で。『お前にとっての豪華なご飯ってカニなの?』って超ウケてて、シリアスな曲で緊張感あるトラック/ラップなのに、仮タイトルが“ZUWAI”だった。で、その後普通のタイトルにしてみたんだけど、普通すぎちゃって……戻したっていう(笑)。だから、そういう、面白いこと言ったら『AKLO節出た~』みたいに面白がってくれる雰囲気にはなってきましたね」
 
■文字通りカニ道楽をしたいんだろうけど、痛風には気を付けて下さい。
「ありがとうございます(笑)」
 
■“ZUWAI”もそうだけど、突拍子もないフレーズやネーム・ドロップを入れるのは、USのラップがヒットする上で重要な要素だったりするよね。そういったUSとのリンクは?
「それはあります。最近、ネーム・ドロップ物が多かったし、そこは自然に入れたかった。“Break The Records”の『Call Me Mr. Nice Watch 2:50江頭』ってラインは、俺の中で結構理想で」
 


 
■どういう意味で理想?
「落差があるラインが好きなんですよ。『Call Me Mr. Nice Watch』まではカッコ良く聴けるけど、その時計(Watch)を見たら2時50分だったから“江頭”って言って、そこから江頭2:50と自分がリンクする部分--『問題児 Crazy 全然効かないブレーキ』--だけを抜き取ってヴァースを進めて行って」
 
■連想を重ねてヴァースを展開していくわけだね。他に、パンチライン単位で気に入ってるラインは?
「いやー、結構いっぱい気に入ってるんですよね。……例えば、“Break The Records”だと『尖った音楽 Like Christian Louboutin/俺がKickすりゃWackはすぐRun』って言ってて。俺は前やってたブログのタイトルを“TOGARI”って付けてたように、イケてる=尖ってるっていう風に表現するんですけど、Christian Louboutinの靴ってスタッズがいっぱい付いてるんですよね。で、そのスタッズの付いた靴で“キック”すればワックなヤツらは逃げ出す、っていう。つまり、俺がヴァースを“キック”すればワックは逃げ出すスキル」
 
■もう一個、他に教えて!
「全部、面白いと思うんだけどなぁ……」
 
■でも、今回のアルバムはリリカルだけど淀みなくラップが展開していくから、一部のインパクトあるフレーズ以外は結構聴き流しちゃうリスナーもいるんじゃないかな、と。
「あー、なるほど。そうなんですよね。だから、今回は歌詞カードのためにCDで買ってほしいですね。……“ZUWAI”で『めくったページ埋め尽くす名人/外れたネジで抜けだしたケージ/Cause I'm Crazy And Amazing/Gotta Hustle Can't Be Lazy/この現代ってヤツに未来を提示』っていうラインがあって、ここは“ページ”で韻を踏んでるんだけど、『“ネジ”が外れてる=クレージー』ってことじゃないですか。クレージーでネジが外れたおかげで、俺は“ケージ”(檻)を抜け出すことが出来たんですよ。だから、『俺はクレージーだから、自由を手に入れたんだ』って意味なんです。“ページ”ってフレーズから韻を踏み続けてるけど、実は結構上手く言えてるぜ、っていう(笑)」
 
■ハードライミングだけど意味もガッツリ通してる、と。今作って、韻を踏んでいる量は「THE PACKAGE」より多いよね?
「はい、今言ったラインもかなり多いですしね。4つとかどころじゃない」
 
■それは、先ほど言ってた「フロウを“デザイン”」した結果?
「まあ、今言ったラインとかは結構“短い”韻じゃないですか。だからこそ韻の数を増やすことは可能だったんだけど、確かに“堅い”トコは堅いし、“長い”とこは長い。で、今言ったようなラインは確かにそうで、図面で描いたときに『ココとココとココで踏んだ方が気持ち良い』みたいに考えましたね。ちなみに、俺しかやらない“技”で『こんな日本語とこんな英語で踏む』みたいのもいっぱいあって。例えば“ZUWAI”だと『Too Hot Too Hot 半袖/もしもカルマがあるならI'm So Dead』ってラップしてるんですけど、“半袖”で最初に思いつくライムが“I'm So Dead”なんです。この思考回路の人は少ないと思う(笑)。そこは俺の強みだと思うんですよね」
 
■“韻”ということで言うと、今作ではKREVAとKダブシャインという、日本語ラップのライミングにおけるパイオニア的な人たちが参加してるよね。この二人を起用した理由は?
「クレさんは、ライヴに誘ってくれたりとか、一緒に呑みに行ったりすることもあるし、よく音楽の話をするんですけど、OYWMのことも応援してくれてたから、『ちょっと変わったビートでオファーしてもやってくれそうだな』と思って誘ってみました。『どういう風に来るかな?』って」
 
■僕は、SWAGなラップは「自分が如何にイケてるか=自分以外が如何にクソか」ということを表現することだと解釈してて、「性格が悪い」とほぼ同義だと思ってるんだ。そういう風に考えると、この曲のKREVAのラップ--特に後半はかなり性格が悪い(笑)。もちろん、良い意味で、なんだけど。だって、自分が着てる服に関して「桁が違うんだよお前と0三個」とか、めちゃくちゃイケてるラインだけど、「か、感じ悪ぃ!」と思ったし(笑)。
「ヘッズだー。ここにヘッズがいる(笑)。クレさんは韻の堅さもハンパなかったし、ラップの参考書があったらこの曲入れるべきですね」
 
■KREVAは以前から交流があったから自然なコラボに感じたけど、“RGTO”でのKダブシャインの起用は、トラック・リスト見た人はみんな驚いただろうね。
「一番最初に書いた曲が“RGTO”だったんです。2ndヴァースも最初は自分が書いてたんですけど、『自分に都合良い“質問”をして、それに都合良く答える』というのがコンセプトの曲で、コンセプト的にリミックスしやすい曲だと思ったし、それはつまりフィーチャリングも入れやすいと思ったんです。で、SALUに頼んだら速攻でヴァースを送ってきて、彼はその時期、とあるインタビューでたまたまフラストレーションを感じててすぐ書けたみたいです。で、このコンセプトをKダブさんに伝えて書いてもらったんだけど、最初のラインが『“動機?”そんなの知らねぇ』で、自分自身に質問してるのに『そんなの知らねぇ』って言ってるのがヤバすぎる(笑)。(ニヤリとしながら)今回の起用は完璧でしたねー」
 
■AKLO君は、確か以前からKダブシャインが好きだって公言してたよね。
「言ってましたね。それこそ『日本語で韻を踏むのって楽しいな』って思ったきっかけは、Kダブさんがきっかけですね。例えばキングギドラの“スタア誕生”とか、ストーリーテリング且つ韻もすごい踏んでて、『凄い話だなー』って思ったし、当時一緒にいた女の子が『何この曲?やめてよー』みたいな感じで、それぐらい内容的に思わせるのは凄いなー、って当時思いました(笑)」
 
■Kダブシャインは、AKLO君と同じく英語が堪能で、英語のライミング構造を理解した上で日本語表現にどう置き換えるか、という試みを続けてきたという意味ではAKLO君と共通してるし、AKLO君とっては先駆者でもあるよね。
「だから、今回の起用で『Kダブって“バイリンガル・ラッパー”嫌いなんでしょ?』とか言う人もいるかもしれないけど、そこに関しては自信があったんです。俺が思ってる“バイリンガル・ラッパー”像とKダブさんが思ってる“バイリンガル・ラッパー”像は一緒だと思ってたから、『お前はバイリンガルだからダメだよ』とは言われない自信があった。Kダブさんは、俺のラップが持つ魅力を理解してくれてたと思う」
 
■“Break The Records”で「Rapの大学ならとうのとうに博士号」と仰ってるAKLO教授に、自分以外の日本のラップに対する印象をお伺いしたいのですが。
「そうだなー……例えばRapgeniusにリリックが載ったときに面白いかどうか、っていう意味だと、あまり面白いリリックというか解説し甲斐のあるリリックは少ないのかな、って。ストレートな内容はそれはそれでいいし、自分の人生を語ったりするのもいいんですけど。今、USラップのリリックがRapgeniusにアップされると、死ぬ程解説できるワケですよ、『このラインは実はこういう意味だ』って。だから、USのHIP HOPはそういう意味でスゲェ奥深いと思うし、だから『INSIDE OUT』とかで俺も解説し甲斐がある。そこで言ったら日本語ラップにはそういうリリックが凄く少ない気がするんです」
  
■AKLO君は、セルフ・ボーストなリリックを通して「自分が如何にベストか」というのを表現しているけど、そんなAKLO君が自分自身の音楽において「まだ足りない」と思ってる部分は?自分は“パーフェクト”だと思う?
「そこまでは思わないですね。実は、今作は全曲コンセプトのある曲にしたかったんです。例えば“BGM”は彼女とケンカして最終的に死ぬっていう、ストーリーテリングの曲なんですけど、ボースティング系の曲を減らしてそういった曲をもっとやりたかった。だけど、音楽的にやりたいアプローチが多すぎて、ボースティングじゃないと出来なかった。時間があればもっと出来たかもしれないけど、流石に2年経っちゃったし、やっぱりボースティング系が得意だから、そういった曲がどうしても増えてしまった。もうちょっと凝ってて、コンセプトがあって、話が面白いっていう曲ばっかりのアルバムにも挑戦してみたいけど……まあ、ついつい……カッコ良いこと思いついちゃって言いたくなっちゃう(笑)」
 
■セルフ・ボーストに偏ってたとしても、そのボースティングの引き出しがめちゃくちゃ多いから、リスナーは余り不満に感じるポイントではないと思うけどね。じゃあ、次作以降は今話してくれたような幅広さを目指したい?
「今回は、ある意味で“複雑”なアルバムだと思うんですよ。でも、自分が進化するためにはどうしても必要なステップだった。だから、次はもうちょっとシンプルなモノ--シンプルにすればする程、センスって光るじゃないですか--そういった意味で現時点ではぼんやりとシンプルさを次は目指したいな、って思ってますね。やっぱ、そういう“目標”がないと俺はアルバムが作れないんで」
 

 
EVENT INFO
AKLOもMCを務める、block.fmの人気HIP HOP番組『INSIDE OUT』のオフィシャル・パーティが、9月26日(金)になんとageHaのARENAで開催!AKLOのオフィシャル・リリース・パーティでもあり、当然AKLO(+客演にあの人とかあの人とか!)も出演!DJ陣の布陣も最強のラインナップで、洋邦HIP HOPの最先端を味わうことが出来るイヴェントになりそう!
 
EVENT INFO
ALL "INSIDE OUT" EVERYTHING
x AKLO NEW ALBUM 「THE ARRIVAL」 RELEASE PARTY
 
日時:9月26日(金)23:00開場
場所:新木場ageHa
料金:男性 3,000円/女性 2,000円(ageHaメンバー 500円OFF)
SPECIAL LIVE:AKLO/SALU/Kダブシャイン/KOHH 他
LINE UP:DJ HAZIME/DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!/DJ TY-KOH/HABANERO POSSE/FLYING SPURS/DJ KM
(問)ageHa@STUDIO COAST:03-5534-2525/http://www.ageha.com

 
 

Pickup Disc

TITLE : THE ARRIVAL
ARTIST : AKLO
LABEL : LEXINGTON CO.,LTD., ONE YEAR WAR MUSIC
PRICE : 2,916円
RELEASE DATE : 9月3日