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KOJOE

「今の自分は、生きていくことと音楽を作っていることでグルグル回ってる状態だけど、自分や周りで食わさなきゃいけないヤツもいるから、最終的にはカネだよね、って思うよ。自由に音楽を作るのはもちろんだけど、カネを稼いでナンボだと思うし、そこには勝ち負けはあるんだと思う。結局、何もないヤツが悔しい思いをするんだし、周りはそういうヤツばっかだからさ。だから、自分が勝たないといけないな、って」

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

 
 今夏は、質/量ともに充実したラップ・アルバムが多くリリースされたシーズンだったと思うが、そんなラインナップの中に絶対外してはいけない作品が、KOJOEがOlive Oilと組んで発表した「blacknote」だ。筆者は、ここ数ヶ月のリリース量の多さによって、否応なくある程度の音楽を“消費”せざるを得ない状況だったが、このアルバムはどうしても折に触れて聴き返したくなる、そんなアルバムだ。
 
 まず、Olive OilのトラックとKOJOEのラップの相性が、これまでKOJOEが関わってきたビート・メイカーとの作品と比べても一番なのではないか、という印象を受けたし、時にトリッキーに打ち込むOlive Oilのビートに載るKOJOEのラップ/歌も、実に生き生きとしている。が、その生き生きとしたフィジカル面から発せられる言葉が、彼がここ数年感じてきたフラストレーションや憂いがベース(と、そういったストラグルを通して感じた優しさや暖かみ)になっているが故に、無意識に彼の言葉に引き込まれていく。これは、是が非でも彼の今の言葉を訊きたい、ということで本ロング・インタビューが実現した。本インタビューの公開がリリース時期からズレてしまい、その意味でKOJOEには申し訳ない気持ちがある一方、一枚のアルバムの話だけには収まらない、KOJOEの「今の考え」が、より深く本文で押し出すことが出来たのはではないかと思う。
 


 
■昨年もアルバム「51st State」が出ましたけど、ここ最近の動き的にはどんな感じだったんですか?
「最近の動き……まあ、のんびりやってるよ。のんびりっつっても、曲は相変わらずたくさん作ってるけど、曲をいくらたくさん作ったところで、宣伝とかそういうところにお金を使ってちゃんとやらなかったら、ただ『出すだけ』だし。だから、とにかく溜めて溜めて、っていうのをやりつつ……スゲェ自由だね。自由にやってるから、鹿児島に営業行った後、気が向いて沖縄に2~3週間行っちゃったりとか」
 
■だいぶ気まぐれですね(笑)。
「っていう感じなんで、自由には生きてる、って感じかな」
 
■「Mixed Identities 2.0」の頃、どれだけ現行のトレンドとかを意識してたのかは分からないですが、よりそういった感覚はなくなってきている感じはしていて。それも最近の生活の仕方の影響なのかな?って。
「そうなのかな。まあ、あの頃から(トレンドは)まったくシカトしてるけどね(笑)。あの頃やってた『KOJOE TUESDAYS』とかは、自由な感じでリミックスとかやって、そのときそのときのモノを作ってたから、トレンディっぽいことはしてたけど」
 
■確かに、アルバムという単位で見るとトレンドの要素はこれまでも薄いですね。
「そう、アルバムだけはもう“自由”だね」
 
■今作では、Olive Oil氏との共作という形になっていますけど、彼と知り合ったのはいつ頃なんですか?
「一番最初は、道(TAO)がやってた『GHETTO』ってイヴェントでOlive君を呼んでて、そこに遊びに行ったのが最初に顔を合わせたとき。その前、2~3年前に沖縄に行った前の週にOlive君が行ってて、同じフライヤーの表裏に俺らの写真が載ってたんだけど、俺はそのときOlive君のことは知らなかった。でも、周りで一緒にやってるヤツがいて『ヤバイ』って話は訊いてて。その後、『51st State』のリリパを福岡でやってもらったときにDJとして出てもらって、そこでちゃんと話して。ウマも合ったし、福岡も気に入っちゃったから、10日間ぐらい延泊して曲を作り始めたっていう」
 
■自然と?「アルバム作ろう」とか、そういう目的も考えず?
「『アルバム作るまで帰らないっすよー』なんて言ってたし、ホントそのつもりで一ヶ月ぐらい福岡にいようと思ったんだけど、やっぱり帰って来なきゃいけない用事があって」
 
■Olive Oil氏と話してみての印象は?
「“天才”だと思うね。民族としての日本人というか、アイランドのソウルも持ちながら、一番ニガーな人だな、と思った。俺がUSに住んでて感じてたモノと同じ匂いを持ってる。すごい繊細な感じ--どっちかというとnujabesっぽいようなメロディアスなヤツもやってるけど、リズム感が死ぬ程“黒い”んだよね。ちょっとズレてオフなんじゃないか、って思う人も多分いると思うけど、アレは超ドンピシャで、向こうのヤツらに聴かせると飛び跳ねて喜んじゃうぐらい。それがスゲェ良いな、って。だからって、向こうを意識してるかって言ったら全然してないし、そこも面白いな、って。そんな人に会ったことなかったし」
 
■昨年末にリミックス・アルバム「REMIX TAPE」も出ましたよね。アレはどういう流れで?
「いや……気づいたらOlive君が作ってたよね」
 
■「blacknote」の制作もしながら?
「制作のスピードも早い人だし。こっちも送られてきたビートにラップを載せるのは早い方だから、1~2日で録って送ったりするでしょ。そのまた次の日にそれがリミックスになって返ってきたりする。多分、ビョーキなんだよね。録ったモノをすぐ作り直さないと気が済まないビョーキ、みたいな(笑)」
 
■それぐらい前のめりに制作する人だからこそ、KOJOE君的にもやる気は出たんじゃないですか?
「うん、やりやすかったね。逆に俺がハッパかける意味でバーっと曲送ったら、その倍の数返ってくる、みたいな」
 
■今作は、Popy Oil氏が手掛けたジャケット・アートワークも印象的です。
「アイディアとしては俺の中に漠然としてあって。『blacknote』ってタイトルは『一緒にアルバム作りましょう』って話になったときには出来てた」
 
■“note”というのは、“音符”という意味もありますが。
「音符でもあって、本、ノートブックでもある。ブラック・ノートって、例えばグラフィティ・ライターが何か描いたりするノートもそう呼んだりするし。ブラック・ノートっていうモノがあるとしたら、それはブラック・リストと一緒で、人には見られたくない/聴かせたくないこと/みんなが思ってるけど言ってないようなことを書き綴ったモノが、俺の中でのブラック・ノートの解釈。アートワークに関しては、Popy君はOlive君の弟なんだけど、その兄弟とメシ食ったりして仲良くなって、それこそOlive君そっちのけで先に絵の話から話し始めたぐらい。Popy君も仕事が死ぬ程早い。アートワークに出て来る子供は、Popy君が作ったキャラクターで、アレを使って今まで何個も作品描いてるんだよね。福島原発をモチーフにして、その子供が出て来るドデカイ作品が福岡のお店にあるんだ。それを見て『このガキのキャラ、良いな』って思って、白人のオッサン座らせて、その子供がオッサンの頭をぶっ放して何か飛び散ってるような絵を描いてほしい、って伝えたんだ。頭をぶっ放すってことは『殺す』ってことだけど、殺した後に飛び散る中身には色々入ってる。その中には“闇”があったり“光”があったり……そういうのを描いて欲しいな、ってお願いしたんだ」
 
■“Gunpoint”で「Fukuoka where I'm at」とラップしていますけど、全曲福岡で制作したんですか?
「いや、全曲じゃない。最初の数曲だけ録って、行ったり来たりはしてたけど、基本は東京で録った」
 
■じゃあ、一緒に録りながら作るというより、トラックが上がったらそれにリリックを載せてという、HIP HOP的にはオーソドックスな制作行程だったんですね。
「そうだね。全部一緒に録りたかったんだけど、現実的に無理だったから。会えるときは福岡でも東京でも会って、そういうときに全部(アイディア等を)合わせたりはしたけど」
 
■Olive Oil氏と一緒にスタジオに入る際、ディレクションはする人なんですか?
「まったくしないね」
 
■ちなみに、KOJOE君はあまり人にあれこれ言われたくない方ですか?
「どっちだろうな……曲によるとは思うけど、全然オープンだよ。『Mixed Identities 2.0』なんて、その頃いたNYのマネージャーやラッパーもみんな日本に呼んでたから、5~6人あーでもないこーでもないって言ったりするヤツもいたし、全然大丈夫だよね。普通に言い合いになったりはするけど、基本はオープン。逆にOlive君にはもっと言って欲しいな、っていうのはちょっとあったぐらいで」
 
■「51st State」はかなりコンセプチュアルな作品でしたけど、今作に関しては全体像は余り考えないで曲を作っていった?
「もう、導かれるままに。あの人自身がビートを死ぬ程持ってるから、その中から渡された中で普通に言葉が浮かんで来たビートの上に録っていった感じ。それで自然にまとめていった」
 
■今作からは、ペシミスティックであり、無常感のようなモノをこれまでの作品より強く感じたんです。それは、KOJOE君が今現在思っている心境そのものなんですか?
「少なからずあるんじゃないかな。ぶっちゃけ言ったら、日本に帰って来て4年ぐらい経って、100曲以上リリースしてるんだ。まあ、不器用なヤツらばっかり周りに集めてやってるからさ、ビジネスなんつーのはよく分かんねぇけど、俺なりに野望や希望を持って日本に帰って来たワケだ。でも、日本もそんな甘くねぇよ、ってトコもあるワケだよね。上手く行く筈だったことも行かなかったり、音楽だけが人生じゃないから、他のことでも色々あるワケじゃん?そういったこと全ての歯車が合ってない時期はあった。でも、歯車が合ってなくても音楽を出し続けることは出来る、ってことを自分で証明しつつね、それはUSにいたときも一緒だったけど。後は、音楽自体に対するフラストレーションももちろんあった。例えば向こうのヤツに聴かせて『スゲェ良い』って言われるような、ブラック・ミュージックとして認められるようなモノが、逆に日本では全然分かってくれなかったりとか、そういうフラストレーションはスゲェあるよね。だけど、そこをこっちの都合に合わせて簡単にしちゃうっていうのも、俺は逆に日本人に対して失礼だと思ってる。俺には俺の役割分担があると思ってて、それはHIP HOP/ブラック・ミュージックをやっていくことで、それはジャンルとして生き残らなければいけないモノだと思ってる。HIP HOPというモノが、文化として根付くために必要なコミュニティが、本当の意味で向こうのコミュニティと繋がってるワケではないから、そういう意味ですごい悔しい思いをしてるっていうのはあるよね」
 
■実際、そういったジレンマは今作ですごい出てますよね。出してきた作品のクオリティに関わらず、自分が本当に伝えたいことがリスナーにまだ伝え切れてないという思いはありました?
「伝わり切らないと思うし、今までの俺の人生を0から10まで説明したところで、共感できるヤツらっていうのは多分すごい少ないと思うんだ」
 
■まあ、異例づくしの人生ですからね。
「いろんなこと経験してるから。ガキの頃は運動をさせてもらった経験もしてるし、楽をした経験もしてる。苦労して一日100円しかなくて、電気もロウソクもないような生活をしたこともあるし、殺害現場を見たこともある。いろんな経験をしてきてはいて、その全てを分からそう、って多分今まではしてたんだと思う。あと、黒人のコミュニティにいたからこそ、アイツらとも約束してるからさ。今までのジャズやロックだって、全部白人に取られてるワケよ。ヤツらは日本人っていう民族に対して多少リスペクトは持ってると思うし、彼らから『頼むから俺たちの文化をミス・レプリゼントしないでくれ』って言われたんだ。4~500年間虐げられてきたヤツらの音楽を、元々チンチクリンでリズム感ない俺ら日本人がそんな簡単に出来るワケないじゃん?だって、英語が日本に入って来たのだってここ100年ぐらいなワケでしょ?ブラック・ミュージックが入って来たのがそれより後だって考えると、それを100~200年でそう簡単にマスターできるモノではないと思うよ。でも、ジャマイカ人だって最初はイギリス英語を喋らされてたけど、長年かけてパトワが出来てきた。そのプロセスを急ピッチで俺ら日本人はやろうとしてると思うんだ。これだけテクノロジーがいっぱいあると、勘違いするヤツも出て来ちゃうし……なんだろうね、ただの音楽として捉えて自分の人生だけに当てはめてくれるんならいいんだけど、もうちょっとヒストリーという、ちょっと重かったりディープになってしまうけど、そういうところまで繋げてあげないと、俺の役割は果たせない。伊藤君は、こんだけいろんな曲を聴いてクリティックしまくってるから、音楽に対するありがたみも持ってると思うけど、そんなこと何も気にしなかったら、日本だと家に帰っても音楽なんて絶対鳴らないし、ただヴァラエティ番組がずっと流れてて、って状態の生活をガキの頃から毎日することになると思う。歌うときはカラオケに行くときで、クルマに乗ったときにちょっと音楽聴くぐらいの、普段は音楽がない生活をしてる人たちで、9時~5時の仕事したりハッスルしたり、いろんな人たちが音楽を必要としていないながらも頑張って生活してるんだけど、最終的にそういう人たちが音楽を買うワケでしょ?そこに(自分の思想/主張を)落とし込むのって、死ぬ程難しいと思ったりもするんだ(笑)。そういう意味で、ブラック・ミュージックって難しい。向こうのまんまのモノを日本で提供しても難しいと思う。そこを上手くやってるのがK-POPだったりするんだろうけど、K-POPも所詮芸能だし、見た目とか歌の感じ/内容とか全てパッケージは一緒じゃん?USやヨーロッパなら、キャラの濃いポップ・アーティストは元々多くて、例えばMICHAEL JACKSONとか、キャラ濃いじゃん(笑)?ポップ・スターの割にはあり得ないぐらいキャラが濃い」
 
■PRINCEとかもそうですね(笑)。
「PRINCEもそうで、ポップのレジェンドがあんな感じだけど、日本は突出したキャラクターが出て来ると、最初は多少持ち上げるけど、ちょっとめんどくさいことしたらすぐ切っちゃうよね。もしPRINCEやMICHAEL JACKSONが日本で活動してたら、あんだけデカくならなかったと思う。『人間として、お前どうなの?』っていうことやっちゃうと日本では終わりだよ」
 
■確かに、今作のリリックでも出て来ますけど、R.KELLYとかホントそうですよね(笑)。
「『R.KELLYはしょうがないよ』ぐらいな感じになっちゃってるよね。流石に『ヒドイなー』ぐらいはみんな言ってると思うけど」
 
■不祥事だったりヘタ打ちが、才能の否定にまでは繋がらないですよね、特にUSは。
「それをしないんだよね。ネガティヴなことも向こうは全てプロモーションにしちゃうけど、日本だと全て終了。異例の人はいると思うけどね、長渕剛とか」
 

 
■今作では、KOJOE君自身の音楽の伝わり方に対するフラストレーションも感じるし、KOJOE君以外の音楽のあり方についてもフラストレーションを滲ませてますよね。でも、KOJOE君は日本で音楽活動することを選んだ。KOJOE君の存在によって、日本の状況を変えたいという思いはあるんですか?
「いや、色々考えたよ」
 
■今作では「変えたい」とまでは言ってない気がしたんです。
「変えることが出来る程、自分は偉くないと思うし、業界だったり人間のマインドに影響を与えるぐらいの音楽を作りたいとは思うけど、この日本をどう変えるって言っても、人によっては日本はすごい幸せな国だって思ってる人もいる。そういった状況に対する、ちょっと空虚な気分を感じながらも、押し殺すワケでもなく、無意識にそういったことはシカトすることを覚えてしまった。そんな中で、何かを変えるという風にはまったく思ってない。日本に帰って来たことで、音楽に対する感覚、信じてきたモノをもう一度見直すことになってるよね」
 
■それは良い意味で?
「俺は良いことだと思ってる。俺はアメリカ・コンプレックスを持ってると思うから比べちゃうんだけど、やっぱり向こうに住んでて悔しい思いをしたし、日本に悔しい思いをした上で戻って来て、日本が向こうの流れに踊らされてるのを見ると、逆にもっと悔しい。踊らされてるけど、マネしきれてなかったりとか、なんかうだつのあがらない状況だな、と思ったりするワケ。向こうは“スキル”があるんだけど、日本は音楽においては“スキル”がないって考えていいと思うんだよね」
 
■そこまでバッサリ?
「バッサリ。日本は音楽だったりリズムだったり、最低限の部分でやっぱり劣ってるワケよ。俺は、音楽を使って、人間が言葉だけじゃ伝え切れない部分まで伝えることが出来たのがブラック・ミュージックだと思ってるんだ。隅々まで、言葉に出来ないことをスキルで入っていくっていうか。それを自然にやってるのがアイツらだと思うし、それっていうのは、それだけ苦しい思いをしてきた人種だから出来たことだと思う。そういった受け皿がないこの国でそれをやったところで、そういった部分--スキルに喰らうヤツって本当に少ないワケじゃん?逆にスキルがありすぎると、『上手すぎるから違う』みたいに言うヤツもいたりするし。『日本人っぽくない』とか。本当は好きなのにね(笑)。でも、一方で下手くそなヤツでも上手いヤツでも、同等に伝えようとすることが出来るのが音楽だとも思うから、それでもいいと思ったりもする。でも、俺が信じてるブラック・ミュージック--巧みにリズムと音を使うヤツらの音楽は、本当に“自由”になれると思ってる。ただ単に歌謡曲を歌うよりも、アイツらのスキルをマスターした方が、俺は自由になれるな、って信じただけなんだ。自分の心の中にあるスゲェ痒いモンから、それをやらないと自由になれないんだ。自分はそうなれるために鍛錬するしかないから、今はピアノを練習したりしてる。……アイドルも含め--AKBとかでもいいや--日本の歌謡曲も含め、音楽という行為自体は愛おしいな、って思えるようになってきたんだよね」
 
■AKB的なモノも含めて?
「うん、だってみんな人生があるワケでしょ?AKBとかは、若い子たちが持ってる夢や希望をオジさんたちが上手く利用してカネに変えてるだけだけど、歌うっていう行為や、エンターテインメントを通して少なからず人を幸せにしてるワケじゃん?そういうことを考えると、『やっぱ音楽はいいな』って思えるよね。彼女たちの音楽自体を絶対認めることはないけどね」
 
■先ほどから“自由”という言葉が出て来ますけど、KOJOE君にとっては、音楽をやってるときが“自由”に一番近づける?
「そうだね。ライヴしてるときとか、音楽をやってるときが一番自由」
 
■KOJOE君の中で「自由になる」というのは、どういう感覚なんですか?
「24時間、どんなときでも音色が聴こえてきたとしら、その音色の上でそのときの感情を100%以上表現できる力というか。そして、その周りに人がいたら、そいつらも共感できるようなメロディを奏でられたりとか。その場でそのときの喜怒哀楽の感情が出せるのが『自由になれる』瞬間じゃないかな。だから、今はいくら歌ってもまだ“自由”じゃないんだよね」
 
■まだ「捕らわれてる」感じがする?
「捕らわれてるというか、まだ自分の中で制限されてる。もちろん、『こないだは神がかってたね』ぐらいの歌が歌えるときはあるけど、でもまだまだだね。捕らわれてるということで言うと、ブラック・ミュージックやHIP HOPってモノに捕らわれてる自分が多分いると思う……捕らわれてるってワケでもないか、好きだからしょうがねぇよな。今回はOlive君が世界を提供してくれて、そこにハマった歌詞を落としただけだけど、そういったこと関係なく、まっさらな部屋に自分がひとりで立ったときに出て来る、自分の世界観のマスターになりたい。そこを極めないといけないと思ってる」
 
■そのためには、ピアノなど楽器を弾けなくちゃいけない、ってことですね。なるほど。
「もう、実はセルフ・プロデュースのアルバムを作り始めてるんだ。先にEPを出すと思うけど、そのアルバムはトラックも全部自分で作ってる。でも、Olive君からは『まず300個ビート作らないとね』って言われたから、取り敢えず300個作るよ(笑)」
 
■そんなに作りながらラップ書けるのか?っていう(笑)。でも、KOJOE君が目指そうとしてることを考えると、それぐらいのレヴェルでやらなくちゃいけないのかもしれないですね。ピアノは独学?
「独学なんだけど、Olive君の繋がりで、パプア・ニューギニア人の超ピアノ上手い人と知り合って、その人とウマが合って今度教えてくれるって話になってるから、イチからやってみてぇな、って。『51st State』でも、自分が全部弾いて作ったトラックもあったから、元々弾けないことはないけど、“ミュージシャン”ではないよね。ただのトラック・メイカーだし、そこに何かムカついたから、“No Country”を弾き語りでライヴやったりとかをずっとやってた。でも、そこをやんなかったら、日本のもっとメジャーなところには食い込めないと思ってる、俺のやり方では。俺は、ブラック・ミュージックだったりHIP HOPは、日本の都合に合わせて安売りは絶対にしちゃいけないと思うんだ。それでもしジャンルとして日本で死滅したとしても、それは日本のHIP HOPの運命だと思ってる。貫いてきた“音”をそのまま提供するべきだと思うんだよね。そこは変えたくないから、KOJOEっていうプロジェクトはそのままのんびり進化しながら続けていくつもり。メジャーでやるんだったら、俺は歌一本で勝負しかないと思ってる。俺たちが大好きな、昭和の歌謡曲とか、そういうところと勝負したい。100%アイツらの畑で、良いモノを作りたい」
 
■“Out of Breath”で「勝ち負けの無い音楽だからおもしれぇ」とラップし、“Rodeo”で「誰がキングとか興味ねぇ偽の冠」とラップしてますけど、KOJOE君はHIP HOPに勝ち負けの要素はないという考えですか?
「HIP HOPで言ったら勝ち負けはあるかもしれないけど、音楽自体に勝ち負けはないと思う。でも、自分の状況だったり、周りのヤツらを幸せに出来るかどうかっていうところで勝ち負けっていうのは決まってくるし、それっていうのはお金だったりして。だから、カネっていう意味では勝ち負けは全然あると思うよ。勝ち上がってカネを掴みたいっていうのはみんな思ってることだから、今更言うことでもないかな、って。そりゃ俺だって億万長者になりたいけど、億万長者になるための『辿り着き方』が大事なんじゃないかな、って思う」
 
■アルバム・リリース前に、“Moment Of Silence”がありましたけど、HIP HOPが持つゲーム性だったり遊びだったり、試合っぽい感じだったりとか、そういった側面に対してはどう思ってますか?
「シカトだよね。だって、俺はUSで、HIP HOPのディスり合いで死んでるヤツ見てるからさ。知らないヤツが勝手に罵ってきてケンカ売ったら、逆に俺が行かなかったら俺がヤラれちゃうよ。そういうところで育ってないから、日本のHIP HOP自体が」
 
■ビーフやディスの話を、今話してた「勝ち負け」の話と簡単に同列には並べられないと思うし、そういったモノは常にネガティヴな側面と表裏一体だからこそ、軽々しく扱えないという思いがある?
「扱えないよね。一回何かがあって、その土台の上でバトルするんだったら『マイクだけで勝負しようよ』っていう話でしょ?全然知らない人間がいきなりイチャモン付けてきたらケンカだよ。そういうモンだと俺は思うよ」
 
■僕は、一連の『FightclubJP』ムーヴメントに関しては決して否定的な立場ではないんですが、主義主張の異なるであろう多数をネーム・ドロップして、同じルール上で競わせるということの難しさも、KOJOE君の“Moment Of Silence”を聴いて思わされました。ルール上では筋違いの理屈だったとしても、あの曲でKOJOE君がラップしてることを否定は出来ないし。でも、この話は「みんながみんな同じことを考えてるワケではない」という意味では、前半で話してもらった、KOJOE君自身の音楽の伝わり方にも繋がるな、と。
「それはもう背負うしかないじゃん?『それ、違ぇよ』って罵倒されてもさ、『でも、俺はこう思うよ』って貫き通して、背負うしかない。例えば俺が“Moment Of Silence”とかで言ったことを勘違いして捉えてる人もいると思うし。俺は、正直あの流れに関わるのもイヤだったし、曲自体を出すのもイヤだった。傷付け合うことって、あまり気持ち良くはないし、それを見て不快感を覚える人もたくさんいる。特に向こうの人でもっと頭の切れる人だったら、俺が言ったことに納得できない人だってたくさんいると思う。でも、そんなこと分かってるんだ。俺が今まで生きてきた中で、俺が知ってる“ラッパー像”を考えると、他の方法が分からなかった」
 
■“Rodeo”では「日本を捨てた俺がもう一度この地を踏める喜び/でも戻りてぇNY あいつらの所に」と、KOJOE君だからこそのジレンマを覗かせてます。NYにあって、日本にはないモノって何だと思います?NYのどういったところが恋しい?
「やっぱ、地元の人間だよね。場所というより人だね。俺は、ガキの頃から転校ばっかしてるから。もちろん、懐かしい場所だったりはあるけど、仲間だったり家族だよね。だけど、逆に日本に戻って来てから出来た仲間/兄弟もいるからね」
 
■じゃあ、音楽をする上でのNYの環境ってワケじゃないんですね。
「それは、どこにいてもその環境に応じて順応するだけだから。そこは深く考えていないな」
 
■それこそ1stアルバムが「Mixed Identities」というタイトルで、KOJOE君は自分の育ってきた過程が育んだアイデンティティに対する誇りと葛藤を隠すことなく作品に出してきて、今作でもそういった要素が強いです。今でもやはり、KOJOE君への先入観などは帰国直後と変わらないと思う?
「多分、俺と会ったことないヤツはそういう風にしか思ってないんじゃない?『あ、バイリンガル?ふーん』みたいな。でも、金持ちだろうが貧乏人だろうが、良いヤツも悪いヤツも両方にいるし、そんなの(肩書き)は関係ないって、30歳過ぎてきたら分かるじゃん?昔は、先入観で言われることに対して『クソーッ』って思ってたし、そんなのはしょっちゅうで、逆にアーティストでそういった先入観ありきで俺に接してきたヤツとかは、無意識に『負けた』って思ってるんじゃないの?逆に俺も、NYにいたときに俺よりラップも歌も上手くて、カネも持って羽振り良いヤツとか見ると悔しかったもんね。日本に関しては、ただ単に英語と日本語が喋れるっていう帰国子女的な先入観は、少なからずあると思う。でも、日本って面白いのが、“ハーフ”だといいんだよね」
 
■あー(笑)。確かに。
「ハーフだとなんか当たりが優しいんだよ(笑)」
 
■まあ、結局は見た目の問題なんでしょうね。ハーフの人でも日本語しか話せない人は、逆の先入観と向き合ってるわけだし。
「俺は、どうひっくり返しても日本人のツラしてるヤツで、それこそハーフのヤツらよりネイティヴな英語喋るしね。どの英語を“ネイティヴ”と言うかっていう問題もあるけど。でも、ブラック・コミュニティってもう、違う国みたいじゃん?」
 
■社会的に隔離されてるし、アメリカ人でも死ぬまでに行くことなく生きている人がほとんどだと思います。
「カネがあるエリアの人にとっては、『行くな』って言われてる場所だからね。……まあ、ちょっと話が逸れちゃったけど、先入観、あるのかなー。俺、結構鈍感だから気にしてないんだよね(笑)」
 
■KOJOE君にとって、今でも一番大きい“先入観”は、“バイリンガル”であること、なのかもしれないですが、KOJOE君のバイリンガル性って、英語と日本語がチャンポンというだけのバイリンガルとは確実に性質が違いますよね。英語と日本語どちらかだけでもリリックが書けることは、ここ数年の活動で証明してきていると思います。そういった言語の使い分けを通して、自分に対する先入観を払拭したいという意識はあった?
「それはあったよ。日本語“だけ”というか、ほぼ日本語で構成されてるヴァースとかは、なるべく英語で入れたくないとか思うこともあるし。一方、『今日は自由に書きたい』って英語も日本語もごちゃ混ぜに書いちゃうこともある。英語だけの歌詞を書いて、日本語はワン・フレーズだけ入れたりもするし、そういうことは考えてるね」
 
■日本に帰って来て、早5年近くになろうとしてますね。曲でも言ってるけど、NY時代は正に“浦島太郎”状態な、否応なく日本の状況がシャットアウトされてた状況だったワケですよね?そんな状態から日本に帰って来て、ここ数年で見えたモノは?
「漠然としてるね……デカイ括りで?……」
 
■「51st State」で歌われてることは、前々から思ってたことですよね?
「そうだね。日本に帰って来て感じたのは、『平和な国だな』って思う反面、いろんな犯罪が闇に葬られてたりもするし。生きてく上ではすごい便利な国だと思うけど、音楽に関してはフラストレーションでしかなかった。こっちは一攫千金狙って来てるワケだから。背負ってるモノはどんどん重たくなっていくし。だけど、常に変化は求めてるし、今はまた新しい変化に来てるかな、自分が日本に帰って来た結果。逆に、日本に帰ってきたことで日本語に100%毎日触れられるっていうのは、すごいありがたい。素直に、言葉を覚えるのは楽しい。漢君の歌詞とか聴くと、すごい楽しいもん(笑)。『どうやってこんな言い回しになるの?!』って。でも、思ったのは、日本のラッパーは“オヤジギャグ”と紙一重のところで闘ってるな、って。大袈裟に言ったら、オヤジギャグをカッコ良く言ってるな、ぐらいのノリなのかな、っていう。でも、それがもっと巧みになってきてる。……日本に帰って来て何が見えたんだろうなー。クソだとも思うし。それは政府のことであったり、ヤツらの対応がナメてるな、とか思うけど、それはどこに行っても同じだろうし。USは、人種に関連した問題が大きかったけど、日本はまた違う“怪物”がいるというか」
 
■日本の方がそういった構図が見えづらいですよね。だからこその怖さがある。
「一般庶民が、立ち上がって一緒になって戦おうっていう、明白な“敵”がいない。全部、小さい規模で潰されていく。福島の今の状態だってありえないワケだけど、福島のことをアレコレ言ってるとちょっと頭悪い人に思われたりクレイジーだって思うのが一般市民の考え方なんだと思うよね。そういう、日本が抱えてる問題で知らないことはたくさんあったから、そういうことを知ることは出来た」
 
■そういったことは、今後も曲で書き続けていくと思う?
「書くというより、もっとカネを稼いで結果を出して、俺が信じてるNPOのグループに寄付したりとか、もっと“行動”したい。今の自分は、生きていくことと音楽を作っていることでグルグル回ってる状態だけど、自分や周りで食わさなきゃいけないヤツもいるから、最終的にはカネだよね、って思うよ。自由に音楽を作るのはもちろんだけど、カネを稼いでナンボだと思うし、だからさっき言ったように、そこには勝ち負けはあるんだと思う。結局、何もないヤツが悔しい思いをするんだし、周りはそういうヤツばっかだからさ。だから、自分が勝たないといけないな、って」
 
 
RELEASE INFO
既にCDではリリースされている「blacknote」が、本日iTunesでも配信開始!
https://itunes.apple.com/jp/album/blacknote/id924937270?l=en

 
 

LIVE INFO
Factory No.079 5TH ANNIVERSARY PARTY!
meets
KOJOE x OLIVE OIL "blacknote" RELEASE PARTY!! 
日時:10月3日(金)22:00開場
場所:姫路Fab-Space(兵庫県)
料金:2,500円(ドリンク代別)
SPECIAL GUEST:KOJOE x OLIVE OIL/POPY OIL
GUEST:Arμ-2/CAMPANELLA/HONDUB HIROAKI (SAIKO-ONKYO LABEL)
LIVE:FReECOol (SOULPOT REC.)/marsh (SPP/NL)/HAQA
GREENWORKS (SOULPOT REC./Factory No.079)/JAH-SOCK (SOULPOT REC./Factory No.079)/Babalicious/Carey
(問)Fab-Space:http://www.club-fab.com/

 

KOJOE x Olive Oil『blacknote』 RELEASE PARTY OSAKA 
日時:10月4日(土)22:00開場
場所:心斎橋TRIANBLE(大阪府)
料金:2,500円(ドリンク代別)
SPECIAL GUEST:KOJOE x OLIVE OIL+POPY OIL (VJ)
GUEST BEAT LIVE:Ogiyy (CASCADE RECORDS)/Arμ-2
GUEST LIVE:CAMPANELLA/勝
TURNTABLE SHOWCASE:DJ S2 (PLANTRECORDS)
BEAT LIVE:TOYOMU (DRIP)
Tell (BuddhaSmogRec)/NAGA (BUGPUMP)/水軍
VJ:Tetsuya Fujimoto (endleapss)
(問)TRAIANGLE:http://www.triangleosaka.com/

 
 
 
 

Pickup Disc

TITLE : blacknote
ARTIST : KOJOE x Olive Oil
LABEL : LION
PRICE : 2,700円
RELEASE DATE : 7月2日