日本を代表するHIPHOPサイト! Amebreak[アメブレイク]
  • INTERVIEW
  • KNOWLEDGE
  • NEWS / REPORT
  • COLUMN
  • RECOMMEND
  • MEDIA
INTERVIEW[インタビュー] RSS

竹内朋康 x タケウチカズタケ

インタビュー:高木“JET”晋一郎
写真:cherry chill will


「HIP HOPはファンクの進行形だと思ってるから、自分が形にしたい、ジャストの形を存分に遊べるのがHIP HOPであり、ラッパーと一緒に曲を作るってことなんです。そこが僕が最も好きなところでもある。そして、ワン・ループに加えて、カッコ良いBセクションが作れたら最高なんですよね。それでイケてるヴァースとイケてるフックが載っかったら文句ないから。そんなシンプルでカッコ良いものはないし、シンプルであればあるほど、ライヴが面白くなるし、そこに熱が加わったりすると、化けるんですよね。そうやって遊びやすいのがHIP HOPやファンクの面白さだなって」--竹内朋康

LtoR:タケウチカズタケ/竹内朋康

 
 Mummy-Dと共に結成したマボロシでの活動や、サイプレス上野とロベルト吉野“IT'S MY TURN feat. 竹内朋康”のプロデュースなど、日本屈指のギタリストであると同時に、トラック・メイカーとしても活動を展開してきた竹内朋康。
  
 そして、SUIKAなどの活動に加え、STERUSSとの楽曲制作や、ROMANCREWなどとのセッション、数多のHIP HOPライヴへの参加など、キーボーディストとして、制作に加え、数々のセッションを行なってきたタケウチカズタケ。
 
 サンプリングやラップという、ある意味では“音楽未満”のフォーマットが基調となっているHIP HOPミュージックに対して、敏腕のバンドマン/ブレイヤーであるふたりが、大きな愛情と発展への関与を与えてきたことは、前述のキャリアからも当然伝わるだろう。そして、そこで純粋に知りたいと思うのは、「様々なセッション/スタジオ・ワークを通してプレイヤー側から見たHIP HOPの魅力とは一体何なのだろうか?」ということである。そして、それは下記インタビューでも語られている通り、グルーヴ論であったり、HIP HOPをHIP HOPたらしめる「何か」、セッション論など、改めて、HIP HOPサウンドの魅力を、詳らかにしてもうことが出来ると同時に、「HIP HOPとプレイヤー」という観点から、改めて彼らがHIP HOPに何を求め、何が駆り立てるのかを言語化してもらえる、刺激的な対談となった。改めて、根源的なHIP HOPサウンドの魅力とは何かを考えるキッカケになれば嬉しい。
  
 
■先日のKEN THE 390のワンマン・ライヴでの、タケウチカズタケ・バンドにマボロシとして朋康さんが参加したセッションはかなり衝撃でした。
タケウチカズタケ「(ギターが)吼えてましたよね」
竹内朋康「如何にリハは手を抜いて、本番で遊んでやろうかって狙ってたから(笑)。でも、それが出来たのも、カズタケ君がバンマスやってて、俺の力量が分かっててっていう信頼関係があったっていうのも、かなり大きいかなって。HIP HOPリスナーの前で、あのジャムが見せられたっていうのは、本当に素晴らしいことだったと思うな」
タケウチカズタケ「ギターが竹さん、ドラムが白根佳尚君、キーボードがsumiladyと俺っていう、殆どが『MAGIC NUMBER』っていうレア・グルーヴをカヴァーするイヴェントで一緒にやってきてるメンバーだったんで、“饒舌エクスプレス”(マボロシ feat. TARO SOUL & KEN THE 390)も音源の再現じゃなくて、もう一枚化けることが出来るだろうなって計算が見えてた部分もあって」
 
■では、そのおふたりの関係性から伺いたいんですが、カズタケさんは朋康さんのことを、まずはSUPER BUTTER DOGを通して知った感じですか?
タケウチカズタケ「それもあるけど、RHYMESTER“THIS Y'ALL, THAT Y'ALL feat. SUPER BUTTER DOG”とか、HIP HOPとの仕事でもっと興味を持ったんですよね。『何だろう、この人』って(笑)」
竹内朋康「最初のコンタクトは、どっかの現場でパッと出会って、喋ったような気がするんだよね。それまでもSUIKAやROMANCREWのサポートとかで、名前を知る機会は多かったんだけど」
タケウチカズタケ「俺の記憶だと、恵比寿のNOSで、ROMANCREWがアンプラグド的なライヴをSUIKAバンドとセッションでやる機会があって、そこに竹さんが遊びに来てたんですよ」
竹内朋康「そうだそうだ」
タケウチカズタケ「そのときが一番最初のコンタクトでしたね。それが2010年とか。一緒に演奏したのは、パーカッショニストのスティーヴ・エトウさんと竹さんがタッグでツアーをやってるときがあって、その全国ツアーの東京ファイナルに遊びに行ったんですよ」
竹内朋康「そのときに一曲弾いてもらったんだよね」
タケウチカズタケ「飛び入りセッションみたいな形で」
竹内朋康「その後にカズタケ君のソロを観に行って、本当に衝撃を受けて。ひとりでキーボード弾きながらサンプラーやエフェクターもコントロールして、しかもスゴく現代的な“解釈”で音楽をやってるってことが、とにかくカッコ良かった。もう、これを例えばCHEMICAL BROTHERSの前座とかでやったら一躍有名になるんだろうし、それぐらいの衝撃はリスナーに与えるよなって思って、俺もカズタケ君と何かを作りたいって思ったんだ」
タケウチカズタケ「観に来てくれたとき、僕の目の前の席に竹さんが座ってて」
 
■それはかなりやりづらいですね(笑)。
タケウチカズタケ「酒呑みながら『イェー!イェー!』って盛り上がってくれるし、メチャクチャ機材周りを覗きこんでくるし(笑)。でも、それでこっちもテンション上がるし、俺としても『やったれやったれ!』って感じで。それに、竹さんもガンガン乗ってくれて。それによる盛り上がり圧がスゴかった(笑)」
竹内朋康「ホントに良かったんだって(笑)。それで、自分がやってる『JAPRIDE』ってイヴェントに連れ回したりして、関係も深くなって」
タケウチカズタケ「ここ一年ぐらいの話ですね」
竹内朋康「え、それぐらいだっけ?もっと経ってるかと思った」
 
■って思うぐらい、濃密な時間だったということですね。では、お互いのプレイヤー/ミュージシャンとしての魅力はどういった部分になりますか?
タケウチカズタケ「楽器を弾く人で、HIP HOPの界隈にいる人って何人もいるけど、その中でも、その立ち位置やスタンスがカッコ良いなって。プレイヤー的な視点はもちろんだけど、トラック・メイカー的なアプローチも出来るし、HIP HOPとセッションしても、(HIP HOP側に)ただ音を提供してるっていうより、『HIP HOPを分かってる人の音』を出せるプレイヤーだなってことを感じてたんですよね。だから、そのポジションは素晴らしいなって」
 
■“トラック・メイカー的”という言葉は重要なのかなと思いました。いわゆる“作曲”とは違う“トラック”という概念があるというか。
タケウチカズタケ「ギタリストが単に弾いてるっていうより、『トラックを作ってる』って感じがあるんですよね。“ザ・グレート・アマチュアリズム”(RHYMESTER)のギター・リフとか、『トラックを弾いてる』って感覚を受けて。プレイヤーとしては、ライヴではグイグイ出るけど、トラックにおいては、曲の一部に音を組み込めるっていう。そういうポジションの人って実は少ないんですよね。それが自分の理想でもあるし、それが出来てるのは、日本だと朋康さんなのかなって」
 
■朋康さんとしてはいかがでしょうか?
竹内朋康「クラブ・ミュージックだったり、音楽的な現代解釈が出来つつ、なおかつファンキーで、なおかつ俺の大好物のオルガンとかシンセを最高な形で弾いてくれて、しかもプレイするときに出る“肉汁感”が俺と一緒っていうか」
タケウチカズタケ「(笑)“肉汁感”は俺も分かります」
竹内朋康「ライヴでどんな曲でも、同じテンションで持っていけるんですよ。セッションするときに『この曲はHIP HOPマナーだよね』『この曲は70’sだよね』っていうイメージが、会話せずにすり合わせられて、遊べるっていうか。そういう最高の仲間ですね」
 
■それは、着地点が同じということですか?
竹内朋康「いや、“到達点”かな。持ってる“マックス感”が同じっていうか」
タケウチカズタケ「振れ幅も含めて、方向が何も言わずに揃うって感じですね」
 
■エクスタシーに達するタイミングが同じというか、「イく」「イかせる」リズムがお互いに近いというか。
タケウチカズタケ「それはスゴい重要で、ミュージシャンそれぞれが持ってるバイオリズムみたいなのがあるんですけど、セッションするときって、それを摺り合わせるために、言葉で説明したり、参考になるような曲を聴いたりするんですよね。それでも、グルーヴを揃えたり、温度を調整するのは難しくて。でも、竹さんとだと、そのやりとりをする時間がいらないというか、なくても合うんですよね」
竹内朋康「そういう人ってなかなかいないんですよ! セッションしてても『いや、タケちゃん行き過ぎだから』とか言われて、内心『お前が来いよ!』みたいなに思うときがあるんだけど(笑)、カズタケ君とはそういうのがないんだよね。『俺も行くから行っちゃいな!』っていうリズムが、会話せずに揃う」
 
■その感覚は言葉で説明するのが非常に難しいと思うんですが、それは音楽的な観念なのか、それとも生まれ持った感覚なのか、それとも……。
竹内朋康「う〜ん……二人とも甲殻類が苦手っていうところじゃない?(笑)」
 
■食べ物ですか(笑)!
竹内朋康「でも、カズタケ君は日本酒大好きだけど、俺はあんまりっていう違いがあるかな」
タケウチカズタケ「ハハハ。でも、竹さんと組む前から、周りの人に『カズタケと竹さんは絶対合うよ』って言われてたんですよね」
 
■周りでも感受できるような、醸し出す感覚みたいなものが似ていたというか。それは、『HIP HOPを理解している』っていう部分は関係ありますか?
タケウチカズタケ「理解してるというより、お互いに単に好きなだけなんだと思うんだけど、でも、その入っていく角度とか、感覚が一緒の気がする。ミュージシャンがHIP HOPに入って行くときの、ミュージシャンらしい入って行き方じゃなくて……」
竹内朋康「うんうん」
タケウチカズタケ「竹さんも俺も、『HIP HOPが好きな人の角度でHIP HOPに入っていく』というか。だから話せる気がするんですよね」
 
■こういう風に言うと、非常に排他的に聴こえるかもしれませんが、ロックやバンドの人がHIP HOPについて話すときに、「そういう部分に影響を感じるんだ」って新鮮に感じる部分と、やっぱり共感覚的な、根本の感覚はちょっと違うのかなって思うときがあって。
タケウチカズタケ「一時代前だと、バンドでHIP HOPっていうと、ミクスチャーになったり、それか『THE ROOTSとか大好きなんです』みたいな。THE ROOTSっていつのTHE ROOTSやねんっていう(笑)」
 
■確かに、時期によってTHE ROOTSは全然切り口が違いますからね。
タケウチカズタケ「だから、『HIP HOP好きです。THE ROOTSとか』って、そうやって話しかけてくるミュージシャンを俺は信用してない!」
 
■(全員爆笑)
タケウチカズタケ「悪気はないのは分かるけど、『それってどこ?』っていう」
 
■角度っていうのは言葉にするとどうなりますか?
竹内朋康「『HIP HOPらしい解釈』『HIP HOPならではの解釈』ってトコだと思う。あの不器用な音の構築具合だったり、歪さを良しとするかってトコなのかなって。例えば、角度が違う人がHIP HOPの曲をカヴァーすると、スゴく綺麗にしちゃうんですよね。HIP HOP的な、露骨な部分を整理しちゃう」
タケウチカズタケ「そうそう!」
竹内朋康「露骨な部分を削ぎとって、ハーモニーにまとめちゃったりすると、『え〜……』って思っちゃうよね。『そこがいいのに!』って(笑)」
タケウチカズタケ「そうなんですよね。音楽的な整理と説明が出来ちゃう人は、HIP HOPのゴリッとした旨味みたいな部分を整えちゃうんですよ。例えばBUDDHA BRANDの“人間発電所”も、よく聴くとベースラインの一部が半音ズレてるんです、理屈で言えば。でも、その感じがカッコ良いワケで、それによってあの曲は素晴らしい曲になってると思うんですね」
竹内朋康「でも、優等生なタイプは、その間違いを正しちゃう」
タケウチカズタケ「だけど、竹さんとはHIP HOPに対する角度が同じだから、その感覚が分かるんですよね」
 
■ループの切り取り方で生まれるグルーヴや、コード/ディスコードみたいな理屈じゃなく生まれる、ある意味では音楽未満の楽しみ方が享受できるというか。
竹内朋康「そういうことかもなって」
 
■ヴォーカリスト/シンガーとセッションするのと、ラッパーとのセッションでは違いがありますか?
タケウチカズタケ「俺のイメージだと、ラップが載ると『曲が化ける』んですよね。リズム的だったりフロウ的だったり、色んな要素があるけど、載ったときに曲が一気に『跳ね』て、それが面白い。その跳ね方も、どう言葉がデリヴァリーされるかとか、ラッパーの持ち味でも当然カラーが変わってくるし。見えなかった休符が見えたり、新たなグルーヴを書いてくれる感じがあるんですよね。歌の人が入った瞬間に跳ねるのも当然あるし、近いとは思うんだけど」
竹内朋康「俺はシンプルでカッコ良いものが好きなんです、結局。それを一番活かせる歌唱法がラップなのかなって。歌を作るときに『AメロあってBメロあってサビがあって』……面倒くせえなあ!って(笑)。『いちいちそこまで作んなきゃいけないの?』って思っちゃう」
 
■ハッハッハ!最高ですね。
竹内朋康「やっぱりどうしてもファンクが好きなんですよ」
 
■ループ構造が基準になるというか。
竹内朋康「で、(同じくループしたトラックが基準になる)HIP HOPはファンクの進行形だと思ってるから、自分が形にしたい、ジャストの形を存分に遊べるのがHIP HOPであり、ラッパーと一緒に曲を作るってことなんです。そこが僕が最も好きなところでもある。そして、ワン・ループに加えて、カッコ良いBセクションが作れたら最高なんですよね。それでイケてるヴァースとイケてるフックが載っかったら文句ないから。そんなシンプルでカッコ良いものはないし、シンプルであればあるほど、ライヴが面白くなるし、そこに熱が加わったりすると、化けるんですよね。そうやって遊びやすいのがHIP HOPやファンクの面白さだなって」
 
■ループであったり、ある種のミニマリズムから生まれるグルーヴというか。
竹内朋康「ポップスはしまいには転調したりして……めんどくさいわーって(笑)。大きな展開があることで、『グルーヴの醍醐味』が下がってくってことがあるんですよね。もちろん、展開が多いことで楽曲として耳当たりが良かったり、聴きやすい曲になるのかもしれないけど……」
 
■グルーヴという点では……。
竹内朋康「大袈裟に展開すればするほど、グルーヴしなくなっていく。プレイヤーは、曲に対して覚えることが多ければ多いほど、グルーヴしなくなっていくんですよ。ただ、コードがいっぱいあったり、展開が多い曲の方が得意っていうプレイヤーもいるから、どっちが正しいとかじゃなくて。でも、グルーヴするかしないかっていう基準ではそう思う」
タケウチカズタケ「俺はハウスも作るんだけど、ハウス・ミュージックもそういう感じがあって。躍らせるのに必要な要素だけでいいっていうか。カッコ良いドラムとベースがあればほぼ大丈夫っていう」
 
■ただ、朋康さんはサポートとしてポップスの方のバックにも参加されてますよね。
竹内朋康「そういうときはホントに体に染み込ませないとダメで。譜面見ながらだとひとりで置いてかれちゃうから」
 
■朋康さんはマボロシ、カズタケさんはSUIKAと、“HIP HOPグループ”を組まれたわけですが、そのキッカケは?
タケウチカズタケ「SUIKAは『SSWS』(『新宿スポークン・ワーズ・スラム』。新宿MARZで2000年代中盤から開催されていたイヴェントで、詩人からラッパーまで、言葉を武器とするアーティストが数多く出演していた)があったときに、そこに集まってた面白い奴らと曲を作ってみようっていうのがキッカケで。だから、自然な出会いと流れでっていう」
 
■所謂THE ROOTS的なアプローチとは違ったし、非常にオリジナルなグループだなって改めて思いますね。
タケウチカズタケ「エレピ+ウッド・ベース+パーカッションっていう構成だったし、曲自体、トラックで作ったものをバンドで作り直すっていうスタイルだったから、メンバーもリスナーも想像力が必要なグループですよね。俺も、THE NEPTUNESのビート感をジャンベでやったらどうなるんだろうとか、『そのまま再現』するっていう方向性を排除して、今のメンバーの生楽器で、どう再構築していくかっていうイマジネーションを働かせたバンドですね」
竹内朋康「マボロシは、俺がMummy-Dの仕事が好きだったっていう原点があって。それで、SUPER BUTTER DOGの“COMMUNICATION BREAKDANCE-MR.DRUNK REMIX-”とか、RHYMESTERの“THIS Y'ALL, THAT Y'ALL feat. SUPER BUTTER DOG”だったりで繋がっていって、その延長で『Dとなんか出来ればな』っていう流れで出来た。あと、当時はHIP HOPのメインストリームがスゴく刺激的だったから、それをやりたかったのもあって」
タケウチカズタケ「僕もマボロシはスゴく好きで聴いてたんだけど、自分の置かれてる状況も含めて、それに対しての“カウンター”という意識はありましたね。“ファンキーグラマラス PART 2 feat. KREVA”とか、そのときの流行を取り入れてたし、楽しそうだけど、自分はちょっと違うことをやろうって。だから、N.E.R.D.とか、俺も竹さんもお互いに面白いと思いながらも、その表現の仕方がちょっと違ったというか」
 

■なるほど。話は変わりますが、カズタケさんは「UNDER THE WILLOW」シリーズの5枚目となる「UNDER THE WILLOW-BLEND-」を9月にリリースされましたが、形式的にはライヴをモチーフとした作品になりますね。
タケウチカズタケ「去年、『-SUN-』『-RAIN-』の二枚をリリースしたんだけど、DJ TOKNOW君(ROMANCREW)の参加はあったけど、基本的にはトラック・メイカーとしてひとりでフィニッシュしたアルバムで。ただ、その二枚を作ったときには既に、今回入ってもらったラッパーにはオファーをかけて『このトラックにラップを載せてもらってセッションしたい』って話を進めてた。それも、こっちでトラックを割り振って決めるんじゃなくて、全曲を渡した上で選んでもらったんですよね。だから、ラッパーによってトラックが被るのも当然あったんだけど、それでも、そのまま自分の解釈でリリックを書いてほしいってオーダーして。それで、それから一年掛けて、その人たちとライヴを重ねていって、その繰り返しの記録が、今回のアルバムに収録されたんですよね。だから、ライヴ一発勝負ではなくて。『ラップが載るとこう跳ねる』『人によってこう違うよ』っていうのを表現したかったんです」
 
■スタジオ録音ではなく、ライヴという形態になったのは?
タケウチカズタケ「スタジオで演奏してるのと、セッション/ライヴで演奏してるのでは、自分でも弾き方が違ったりするんですよね。それはブレイクの入れ方だったりもそうだし、他のプレイヤーとアイ・コンタクトしながら展開を変えていくような有機的な部分でも。それはラッパーも同じだと思うし、そこには、スタジオでは出ない“肉汁”が出る感じがあるんですよね。“肉汁”はやっぱりひとりじゃ出しづらいんですよ。人とぶつかったときに出る汁って感じだから。その“肉汁”が込めたかった」
 
■トラック・メイクという、基本的にはひとりでの作業とセッションは当然感覚が違うと思うんですが、どういった違いがありますか?単純な疑問で恐縮ですが。
竹内朋康「人と作るときは、さっき出た“肉汁感”もそうだし、人がありきって部分もあるから、全部を自分でやる必要がない。でも、ソロ・ワークだと、自分ひとりで好きな音を構築できるって感じかな」
 
■みんなでピラミッドを作るのと、ひとりで寄木細工を作るかの違いというか。
竹内朋康「そうかな。団体競技と個人競技みたいな」
タケウチカズタケ「今回の竹さんのソロ『COSMOS』は、個人的な感想だけど、密室ファンクというか、ひとりでじっくり作った部分が随所に感じるんですよね。それが本当にカッコ良い。竹さんのイメージとして『バンドでセッションしてる人』っていうイメージがあったから、このアルバムのひとりで構築してる部分が新鮮だったんですよね」
 
■“密室ファンク”という表現は「COSMOS」を的確に表わしていますね。
タケウチカズタケ「初期のPRINCEみたいな感じというか」
 
■自分の世界の中で過剰に研ぎ澄ましていく感じは似ていますね。その意味では、カズタケさんのアルバムは、やはりライヴでありセッションという部分で、拡散的なカラッとした空気感があるんだけど、朋康さんのアルバムは密室的な部分からくる粘りがあって、そこは大きく違いますよね。
タケウチカズタケ「その二枚に椎名純平さんが入ってるのが面白いなって。竹さんの“Musical Massage”は、『みんなが聴きたかった椎名純平』という部分を朋康さんが引き出したと思うんですよね。ふたりでやってるのに、なんとも言えない密室感があるというか。かたや、俺のアルバムでの“Ordinary Joe feat. 椎名純平, Cello a.k.a Massan, DJ TOKNOW”は、フラっと入って歌ってくれたっていう感じで」
 
■ソウル・クラシックでもあり、それ故の肩の力が抜けた椎名純平そのままのカラーという部分がありますね。
タケウチカズタケ「そういう、まったく違うカラーの椎名純平が形に出来たのが面白いんじゃないかなって」
 

■「COSMOS」は竹内朋康名義では初めてのソロになりますね。
竹内朋康「今まで、マボロシのデモだったり、人に渡すためだったりでひとりでトラックを作ってきて、自分ひとりで完結したソロ・アルバムがあってもいいんじゃないかなって思ったんですよね。当初は客演も入れる予定もなく、ラップが聴こえるようなトラックだけど、敢えて入れないぐらいの気持ちでいて。そんな形で進めてたんだけど、やっぱりラップを入れたほうがいいのかなと思って、自分が声のかけやすい人にお願いしたっていう」
 
■(笑)「声がかけやすい」って言っても、Mummy-D/Full Of Harmony/椎名純平/DABOと相当なメンバーですよ。
竹内朋康「自分で声がかけられるメンバーがよかったんですよね。無理しない範囲の(笑)」
 
■“Bitch!!!”から、今までの竹内朋康のイメージとは違うビート感の提示もあって、まずそこから驚かされて。
竹内朋康「そのときにダブ・ステップみたいなのも好きだったから“Bitch!!!”が生まれて。だから、そのときの気分で作ってったらこうなっていったというか。このアルバムで最初に出来たのが“Nude”“7th Delic”とかなんだけど、『あ、これじゃ暗い奴って思われちゃう』って思って、ブギー的な“Step by Step feat. Full Of Harmony”が生まれて(笑)。Full Of Harmonyを呼んだのは、去年の彼らの復活ライヴのときに、YUTAKAに駐車場代2千円を借りてたんで、返す口実として彼らに来てもらって、ついでに録ってもらったという」
 
■駐車場代借りてなかったらこの曲は生まれなかったと(笑)。
竹内朋康「そうそう。話は相当盛ってるけどね(笑)」
 
■ホントにそうでも困りますよ(笑)。
竹内朋康「アルバムをひとりで作ったのは、『ひとりで出来る逆の不器用さ加減が欲しい』と思ったからで。“LOOK BACK”にはスクラッチが入ってるけど、それも出来るだけ自分でやろうと思って。だから、フェード・アウトのときに針が飛んでる(笑)」
 
■おふたりのソロ以降の動きは如何でしょう?
竹内朋康「ソロが出来終わってすぐに、イヴェント『MAGIC NUMBER』とか、バンド:竹内朋康カルテットを始めるんですよ。だから、すぐにバンドがやりたくなったんですよね。ソロをやるとバンドがやりたくなって、バンドをやってるとソロがやりたくなるから、『COSMOS 2』もその内出来るんじゃないかなと。いろんなプロジェクトを進めてるのは、ひとつのユニットやバンドで、全部のやりたいことをやろうとすると、絶対仲が悪くなるから(笑)。それよりは、自分の引き出しと相手の引き出しで、どれぐらい面白いものが出来るかなって、余裕を持って遊んでるぐらいがいい。それで、また別のことがやりたいと思ったら、そのアイディアは溜めておいて、別のユニットで出すのか、それとも……って考えておくというか。でも、それは今だから思えるようになったのかな。20代の頃だったらいろいろ大変だったと思うし」
タケウチカズタケ「俺のソロは、あと二枚分ぐらい曲があるんで、それがソロとしての次の動きになるのかなって。でも、俺と竹さんで曲を作ったりはまだないんですよね」
竹内朋康「そうなんだよね」
タケウチカズタケ「だから、『MAGIC NUMBER』のメンバーとは作ってみたいなって。だから、お願いしますね」
竹内朋康「あのメンバーで出来たらいいよね。自由なことを同じメンバーで出来るのは、そんな最高なことはないよ」
 
 

Pickup Disc

TITLE : COSMOS
ARTIST : 竹内朋康
LABEL : origami PRODUCTIONS
PRICE : 2,484円
RELEASE DATE : 12月10日

TITLE : UNDER THE WILLOW -BLEND-
ARTIST : タケウチカズタケ
LABEL : 42-music records
PRICE : 2,186円
RELEASE DATE : 9月3日