日本を代表するHIPHOPサイト! Amebreak[アメブレイク]
  • INTERVIEW
  • KNOWLEDGE
  • NEWS / REPORT
  • COLUMN
  • RECOMMEND
  • MEDIA
INTERVIEW[インタビュー] RSS

tha BOSS(ILL-BOSSTINO) x 般若

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)
写真:cherry chill will


「BOSS君はいち早く『自分で動く』ってことをやっていた人だった。それって、日本においては絶対BOSS君が最初だったと思うんだよね。まずそこっしょ。正直、ジャンルがHIP HOPとかじゃなくて、THA BLUE HERB/ILL-BOSSTINOというジャンルでやってる人だと思うし、だからこそ今もここにいて、俺もここにて、それでふたりがここに一緒にいるっていうのが現段階での答。いろんな人が出て来ては消えていったけど、残ってる人にはやっぱりそれなりの理由があるよ」--般若

 
 90年代にリスナーとして日本のHIP HOPシーンを知り、00年代から物書き/編集者としてシーンに関わり始めた筆者からすると、ここ1年は、10数年前では信じられなかったような出来事が数多く起こった期間だった。2000年代初頭〜中盤の東京アンダーグラウンドを盛り上げたDa.Me.RecordsのDARTHREIDERとMSCの漢が手を組むことになるなんてまったく想像もしてなかったし、2004年にTOKONA-Xがメジャー・デビュー後初のワンマンを渋谷クアトロで敢行したちょうど10年後、彼のイズムを受け継ぐ当時は無名だったANARCHYが、まったく同じ会場でメジャー・デビュー後初のワンマンを成功させるなんてことも、正直想像していなかった。また、2000年代初頭〜中盤はSD JUNKSTAとして良い意味で“身内ノリ”を提示していたNORIKIYOが、Zeebraに噛みつくなんてことも、10年前は思いもしなかったことだ。
 
 そして、90年代後半に、THA BLUE HERB(以下TBH)、妄走族として現行シーンへのバチバチの対抗心と新たな価値観を提示したILL-BOSSTINOと般若がついに邂逅を果たすというのも、(当時の彼らが纒っていた緊張感を当事者として知る立場からすると)ものすごく感慨深い出来事だ。そんな両者が、12月26日に恵比寿LIQUIDROOMで開催される『One Mic』で、ツーマン・ライヴを敢行し、それに先駆け初の共演曲“NEW YEAR'S DAY”をリリースした。
 
 “NEW YEAR'S DAY”は、師走の忙しなさの隙間にふと感じる、「一年やりきった」という感慨を楽曲に落とし込んだ一曲で、このポジティヴィティを感じる上では筆者が前述したような前置きはさほど意味のあるモノではないだろう。だが、この曲の完成に至るまでには、両者ともに10数年間このシーンをサヴァイヴしてきた重みと誇り、「乗り越えた」者同士のリスペクトなくしてはあり得なかったのも事実だろう。取材現場での空気が予想以上に和やか且つピースフルだったため、大袈裟なことも書きたくないが、でもやはり、本記事は歴史的な対談なのは間違いない。乗り越えて来た者同士のプライド/愛/挑戦し続ける姿勢の一端を、読者の皆さんにも感じて頂けたら幸いだ。
 
 
■おふたりがお互いの存在を認識した頃はいつ、どんな形だったか覚えていますか?
般若「俺は、BOSS君が1stアルバム(『STILLING, STILL DREAMING』)(98年)を出したときから認識してた。北海道からマジで凄い人が来たぞ、と。しかも売れてるぞ、って。当時、アルバムも買ったね。まだいないタイプのラッパー/音だと思った。『コレはみんな捲くられるぞ』みたいな感覚は俺の中であったんだ。今振り返るとあの頃、BOSS君のフォロワーみたいのが超溢れてたよね。だから、俺もあまり聴きすぎると影響されすぎちゃうから、途中から聴くの止めたりしてたね」
tha BOSS「俺が初めて認識したのは、妄走族がFRONTかBLASTに載ってたのを見た頃だね。当時、俺が勝負してたヤツらっていうのは『さんピンCAMP』世代のヤツらで、それは的をかけてたってワケじゃないけど、ヤツらと市場が被ったから“勝負”してたんだ。そういう、一連の流れが一段落した後に来た次の波が妄走族の世代だったから、『面白いのが出て来たじゃん』って思ってたけど、その頃の般若はまだ妄走族の一員っていう認識だったね。俺は1MC+1DJだけど、いつしか般若も1MC+1DJスタイルになり、自分でワンマンも回してレーベルも運営して、しかも作品量も多く、ライヴに対する姿勢もストイック。そういう認識が出て来たのはここ4〜5年ぐらいのことだよね。本当の意味で1MC+1DJでやってるヤツって、俺らの同世代でもほとんど残ってなかったし、そういう意味で同じスタイルの人たちとライヴで勝負したいと思ってたんだ」
 
■世代も地元も異なるふたりですが、BOSSさんは90年代後半、当時の東京シーンやHIP HOPシーンを“敵視”し、闘っていましたよね。一方の般若君は、キャリア初期に日本のHIP HOPシーンで初めて“世代間闘争”を繰り広げた世代だと思うんです。そういったスタンス面において、お互い意識していたことはありますか?
tha BOSS「そういう意識って、“入門編”として誰もが通るとこなんだよ。それが、俺はたまたま札幌の人間ということもあって当時は新しかったし、般若たちの戦い方もガチだったから印象に残ってるんだと思うけど、HIP HOPとしては‐‐自分自身を知らしめるって意味じゃさ、“ビギナー”の時期なんだ。知ってもらったあと、認知されたあと、同じことはもう出来ない。だから、そういう部分だけで般若を見てはいなかったね。“入門編”があるんだったら、その次のステップは“ミュージック・ビジネス”なんだ。お客さん相手にどうライヴしていくかとか、そういう意識になっていくと思うし、どこそこと戦うだなんてことに構ってらんねぇ。俺らだって、あんなの90年代の終わりの数年間だけだよ。いつまでもダラダラ悪態ついてきたわけじゃない。でも、それが強烈だったから今でも語られるだけで。ただの“ビギナー”だって。“PHASE 1”、そんだけ」
般若「俺は正直、今だから言うけど、BOSS君と同世代の東京の人たちは、あの時点で捲くられたと思ってた、俺の中ではね。『核心突いてるな……でも、誰も何も言わないな……なるほどな……』みたいに思いながら時は経っていったんだけど、BOSS君はBOSS君で独自の動きをしていたし、HIP HOPがまだバブルと呼ばれていた時期だったけど、BOSS君はいち早く『自分で動く』ってことをやっていた人だった。それって、日本においては絶対BOSS君が最初だったと思うんだよね。まずそこっしょ。正直、ジャンルがHIP HOPとかじゃなくて、THA BLUE HERB/ILL-BOSSTINOというジャンルでやってる人だと思うし、だからこそ今もここにいて、俺もここにて、それでふたりがここに一緒にいるっていうのが現段階での答。いろんな人が出て来ては消えていったけど、残ってる人にはやっぱりそれなりの理由があるよ。俺は、ほぼ同世代だったり、残ってる人たちを、大きな意味で“仲間”だと思ってるんだ。そりゃそうでしょ、みんな人生の一番大事な時期にコレやっちゃって、もう潰しきかない人たちばっかだし(笑)」
 
■4〜5年ぐらい前だったと思うんですけど、般若君と話していたとき、何かの話の流れでBOSSさんの話になったんですよね。で、そのとき般若君が「同じエレベーターに乗ったことはあるけど、ちゃんと話したことはない」って言ってて。
般若「10年ぐらい前、当時俺が住んでたマンションのエレベーターで、何故かBOSS君と一緒になったんだ。『えっ!?』ってなって」
tha BOSS「東京でよく行く知り合いの家がそこだったんだ。その人の家で曲作りしてて、下のコンビニに行こうとしたら、般若が乗ってきた(笑)」
般若「俺は、『いや待てよ……えっ!?……絶対そうだ……いやいや違うっしょ』みたいに、ずっと思ってたっていう(笑)」
tha BOSS「俺も、『般若だ、コイツ』って思ったね。多分、二回ぐらいそういう瞬間があったと思うよ」
般若「友達と話しても『いるワケないっしょ』みたいな感じだったんだけど」
tha BOSS「まあ、俺が逆の立場だったらちょっとイヤだよね(笑)。自分の家のエレベーターだしさ、ツッコめないよね」
 
■実際にコミュニケーションを取るようになったのはいつ頃からなんですか?
tha BOSS「LIQUIDROOMじゃないかな?」
般若『THE DREAM MATCH』って、4年前にあったやつ。そのとき話して印象に残ってるのが『“やっちゃった”みたいなテイストの曲も好きだし、スゲェ尊敬してるよ』って言われて、『お……BOSSに言われてるぞ』って。それは嬉しかったな」
tha BOSS「ライヴ論的な話もしたね。『どんくらい練習してるのか?』とか、そういうことを喋ったのを覚えてる。あのとき、俺はZeebraも初めて会ったんだ。SHINGO★西成もあのときが初めて。あの日以降、俺の中で『誰とこの後も関係が続くんだろ?』っていうのを楽しみにしてたんだけど、般若とSHINGO★西成は自分の中で残ったね」
 
■その後自分がその人と繋がれるかどうか、ってことですね。
tha BOSS「そうそう。それはどっちかが望んでてもしょうがないことだからね。誰がグッドで誰がバッドって話じゃなく、あのイヴェントをきっかけに俺と般若/SHINGO★西成は距離が縮まったし、友達になった」
 
■あのイヴェントは、僕も観に行きましたけど、色々な意味で印象深いイヴェントでしたよね。あの出演者の中でもZeebraとTBHは、同世代且つ一時期はライヴァル意識も多少あっただろうし、あのイヴェントをきっかけにどんな展開を見せるんだろう?と思ってたんですけど、その後BOSSさんとZeebra氏の交流が深まらなかったというのはちょっと残念です。確かあの日、Zeebra氏はライヴ後、楽屋で談笑することもなく帰ってましたよね。
般若「Zeebraという人間を知っている第三者の俺からすると、あのときZeebraはめちゃくちゃ緊張してたよ」
tha BOSS「いや、そう思うよ。逆に言うと、LIQUIDROOMは俺の“ホーム”だったワケよ、あの時代。そこにあの人が出て来て、しかもトリをやって。トリの前にライヴをやることは簡単なんだ。良くても悪くても『どうやろうとこの後Zeebraが骨を拾ってくれや』って感じだし、イヴェントを〆るのはあの人だったから、勝たなきゃダメだし、ねぇ。背負ってるモノが俺とは全然違ったワケさ。だから、あのパフォーマンスを観て俺の中では結構満足したとこがあって、この後この人と知り合ってどうの、っていう気持ちに逆に俺もならなかったんだ。結局、Zeebraは横綱なワケ。横綱は孤独だよ。普通、ライヴ終わったらみんなで呑みてぇじゃん?Zeebra以外は演り終わってみんなで乾杯してる中、ひとりで来て、演って、帰る。俺的にはオッケーって感じ」
 
■なるほど。MC視点からの貴重なコメントだと思います。
般若「あの日はいろいろあったんだよね。SHINGO★西成の昭和レコード加入を発表したのもあの日だし、MSCも出てたよね」
 
■その後はどうだったんですか?お互い住む場所も違うから会う機会はそんなになかったと思いますけど。
般若「今年の1月、札幌でライヴがあったんだけど、自分のライヴに納得いかずホテルに戻ってたら、SHINGO★西成君に『BOSS君が呑みに行かない?って言ってる』って言われて、BOSS君のいるバーに行ったんだ」
tha BOSS「そうだ、それがあったんだ」
般若「で、俺、SHINGO★西成君、BOSS君とBOSS君の奥さんがいて、そこでBOSS君が『ジョージも呼ぼうよ』ってB.I.G. JOE君も来て、これだけでもちょっとおかしいじゃん(笑)。そして、更に『今日TwiGy来てるから前列でライヴ観に行こうぜ』って、全員で観に行ったんだ。クラブの店員も『……えっ?』みたいになってて(笑)。TwiGy君も絶対ステージから見えてるんだけど、見えてないフリしてライヴ続けてて、そのTwiGy君のライヴが素晴らしかった。で、ライヴ最後にTwiGy君が俺らの名前を叫んでくれて。その後、俺は帰るんだけど、そのとき『なんか今日は良い日だったな。ラップやっててよかった。今年は何か起きるかもな』なんて思ってたら、“NEW YEAR'S DAY”で歌われてるような有様だったっていう(笑)。だから、俺はあそこから始まってるんですよ」
tha BOSS「あの日だね。あの日めっちゃ喋ったんだわ。あの日は面白かったよ。ゲスト・リストの名前がズラッと面白いことになってたもんね。俺とジョージが一緒に遊んでクラブに行くってことも最近じゃなかなかないし」
 
■でも、そういう奇跡って地方にいるときの方が起こりやすいんですよね。
tha BOSS「しかも、観たライヴがTwiGyってのが凄くねぇ?しかもTwiGyがまた、ビシっと衣装着て、タイトなライヴやってるのよ。なんか感慨深かったね。確かにあの日はめっちゃ喋ったし、スゲェ呑んで酔っ払ったし、スゲェ楽しかったな」
 

■12月26日に『One Mic』が開催されるということで、“NEW YEAR'S DAY”でのコラボも実現したと思うのですが、具体的にどういう経緯でイヴェント/楽曲にまで至ったのですか?
tha BOSS「イヴェントは、普通にLIQUIDROOMからのオファーだね」
般若「俺もいきなりオファーされて『ツー・マン、誰ですか?TBH……絶対やろうよ』って、即答だった」
tha BOSS「即答な上に、『曲作ろう』ってなったしね。年末のイヴェントで、そこから見える景色を想像すると、『今年もなんとかみんな来たね。また来年に行こうぜ』っていう気にして終わってもらいたいし、じゃあそういう曲を作ろう、って」
般若「ホント、良い曲になったし、制作も刺激的だった」
tha BOSS「grooveman Spotのトラックのおかげで、景気良い曲になったというか。grooveman Spotは、般若と曲を作るって話になった時期に佐賀で一緒になったんだ。その後、般若とこの曲の打ち合わせをしてるときに、トラックを誰に頼むかって話になったときにgrooveman Spotを挙げたら『全然いいっすね』って話になったんだ。あいつ、3日ぐらいで作ってきたよ」
般若「俺はまだ会ったことないんだけど、あの人は凄いね」
 
■ここ数年のあの人のトラック、ハズレないですしね。実際の制作ではどんな過程が印象的でしたか?
般若「今はさ、みんなデータ送り合っても作れるワケじゃん?だけど、BOSS君は東京に来てくれた。俺も、『この人を相手にデータのやり取りだけじゃ無理だろ』って思ってたから、ちゃんと会ってやりたかったし、見たかったしね」

■当然、お互いのレコーディングを見るのも初めてですもんね。
般若「そういうこと。俺の中のこだわりで、『フィーチャリング物は必ず2テイク以内で録る』っていうのがあって、そこは自分が納得いくものが出来た。その後にBOSS君の録り方やラップの載せ方とかを見ていたときに『あ、やっぱスゲェなこの人』って思った。理屈じゃないところ、誰が聴いても一言発するだけでBOSS君って分かる、MACCHOとかにも通じるあの感じ。リズムの取り方とかも聴きながら、『これ深いわ。本当に玄人の玄人の玄人目線から見て深い。しかもこうやって言葉が構築されていくのか、頭おかしくなりそう』みたいな(笑)。めちゃくちゃ勉強になったよ。BOSS君に『17年間やってきて、こうしてTBHRのリリースで他人と同じブースに入るのは初めてのことだ』って言われたときに『……マジすか』と。それは嬉しいことだよね」
tha BOSS「俺は、今までの般若のラップは“ライム”だったりMVの面白さだったり、どちらかというとフィジカルな部分で認識してたんだけど、実際に曲を作ってリリック聴くと、かなり深く作りこまれてる。言葉数は違うんだけど、韻の踏み方が俺と結構近いって感じたし、『結構計算されてるな』って思ったんだよね。今回の曲は、個人的な話からスタートして、どうやって普遍的な内容に持って行くかというのが、お互いのテーマだったと思うんだけど、般若のヴァースは最初に自分のことを歌う辺りから、結構“罠”が仕掛けられてる感があって。『え?何のこと?』って思ってる内にどんどん持っていかれちゃう」
 
■どう着地するのかが最初は分からないヴァースですよね。
tha BOSS「そうそう。ああいう作り方って、俺的には面白くてね。全体で見ると、俺のヴァースは般若の個人的な話が着地した後の展開のリリックで共感の幅を拡げる内容にしたから、そういう意味でもマジックだったね」
般若「お互いが異質なんだけど、根っこの部分が似てると思ったね」
tha BOSS「それは作品だけでは絶対分からなかったと思う」
般若「BOSS君の音楽は、俺とかは『持って行かれちゃう』んですよ。だから、あんまり聴きすぎるとヤラれる」
tha BOSS「ラッパーってそうだよね。影響されたくないから、あまり相手のラップを聴こうとしない。負けたくもないだろうし」
般若「でも、BOSS君は俺の中でそれがより強い。だから、もし『One Mic』でBOSS君の方がライヴの順番が先だったら、俺はライヴ観れないかもしれない(笑)」
 
■ヘッズ的視点からの質問なのですが、今回の共演にあたって、ライヴァル意識や対抗心的な意識はありましたか?
般若「うーん、あったような、ないような、って感じだな。『負けねぇぞ』って気持ちは誰に対してもあるけど、それよりも良い作品を作るっていう意識の方が強かった」
 

「俺が最初の頃、東京のHIP HOPに対してああだこうだ言ってたのは、“ビギナー”、最初の入口であって、やっぱ変わっていくよね。いろいろあったし、これからも変わるだろうし、要するに生まれてから死ぬまでの間起こることが全て歌われることの中に入ってくるワケよ。俺も、そういうことに気づいて表現が変わっていったし、般若もそっち側の表現に変わっていったのを見て勇気づけられた。でも、今回の般若のヴァースを聴いてもエッジは今でもあって、尖ってる部分は残されてるから、トータルでバランスが取れててバッチリだよね」--tha BOSS

 
■今回はtha BOSS feat. 般若名義ということは、どちらかというとBOSSさんがイニシアティヴを取っているんですよね?
tha BOSS「今回はね。だから、次は般若のフィールドでやろうって話をしてる」
般若「次は俺のフィールドが待ってるんですよ(笑)」
 
■般若君がBOSSさんの世界観に引きずり込まれそうになったように、BOSSさんも般若君の“闇”に引きずり込まれすぎないといいですね(笑)。で、今回の般若君のヴァースは、今年般若君の身に起こったいろいろな出来事が綴られていますが、“映画のオファー”というのは……?
般若「それに関しては内容はまだ言えないんだけど、来年公開される。ひとつ言えるのは、ただのチョイ役じゃねぇぞ、と。ヴァースで言ってる色々も抱えたまま、アルバム制作もあり、嫁も妊娠中体調を崩したりして、いろんなことがすごい重なってたんだよね」
 
■そういったことを考えてこのヴァースを聴くと、最後の「人生なんてな最低 思ってたオレも 今では愛せる」というラインの深みが増しますね……。
tha BOSS「そうなんだよ。聴いてて、『みんな大変だったって言うけど、俺より大変だったヤツ、いるか?』って世の中の人に問いかけてるように聴こえてくるんだ。俺が作りこまれてると感じたのは正にそこで、淡々と自分に起こったことを言ってるんだけど、ただ時系列に起こったことを言ってるワケじゃなくて、最終的にはポジティヴなんだよね。年末、誰もが『イエーイ!今年もお疲れ!』っていうフィーリングになる中、grooveman Spotのあの音があって、でも、ヴァースには挫折がすごい散りばめられてる。『でも、乾杯しよう!』みたいなことだよね」
般若「俺のヴァースは、一年間ギャグみたいなモンだったから、これ聴いて笑ってもらえればいいや、ぐらいな感じなんだけど(笑)、BOSS君の『俺独り良けりゃじゃねえ ちゃんと連れてく』っていうラインは、自分含め救われる人がめちゃくちゃいると思う」
 
■当然、MCとしてお互いを高く評価しているからこそ、今回のコラボレーションが実現したわけですが、具体的にお互いのどんなところを評価していますか?
般若「さっきも言ったけど、だいぶ初期の頃から自分で全てを動かしてきてたし、ライヴへの姿勢とか、機材リストから何まで物凄いこだわってる。あと、普通、自分のライヴDVDとかではお客さんがいっぱい入ってるようなところしか見せたくないじゃん?でも、BOSS君はそうじゃないところも見せてたりする。みんな、少しでも良く見せたいよ。それこそ客の声が足りなかったら後で足したりとか、今はナンボでも出来る」
 
■普通は“ハイライト”を観せたいと思うところを、『STRAIGHT DAYS / AUTUMN BRIGHTNESS TOUR '08』では、生々しいドキュメントまで収録していましたからね。
般若「そう。その部分って、俺だけじゃなくてコレに携わってる人は絶対にシカトできない部分なんだ。BOSS君は表現者/ラッパーとは何たるかってことを、常にみんなに突き付けてくれてると思う。だから、スゲェ尊敬してる」
tha BOSS「般若は、自分自身の見せ方‐‐それは最終的には“俳優”というところに帰結していくんだけど‐‐MVの見せ方ひとつにしても、俺なんかはMVではカメラ見ながらリップするだけみたいな感じだけど、般若は自分のコミカルな部分やカッコ悪い部分もさらけ出す。笑いと涙って、俺的には両立しないとエンターテインメントにならないって思ってて、そういう意味でも般若はその両方を上手くやってる。だから、最初の頃に“フィジカル”と捉えていたのはそういうことで。俺が最初の頃、東京のHIP HOPに対してああだこうだ言ってたのは、さっき言ったように“ビギナー”、最初の入口であって、やっぱ変わっていくよね。いろいろあったし、これからも変わるだろうし、要するに生まれてから死ぬまでの間起こることが全て歌われることの中に入ってくるワケよ。俺も、そういうことに気づいて表現が変わっていったし、般若もそっち側の表現に変わっていったのを見て勇気づけられた。でも、今回の般若のヴァースを聴いてもエッジは今でもあって、尖ってる部分は残されてるから、トータルでバランスが取れててバッチリだよね」
 
■90年代からこのシーンを見てきた立場からすると、ここ1〜2年は「この人とこの人が組むか!」とか「この人がこの人をディスるか!」みたいに、邂逅という意味でも断絶という意味でも、10数年前だと考えられなかったようなことが数多く起こっていて、今回のおふたりの共演もそう考えて見ると個人的には感慨深いんです。10数年に渡って生き残ってきたおふたりは、最近の流れをどう見てますか?
般若「俺は、昔のことはあんまり考えてない。そういうことを考えると捕らわれるから。動物はそういうことしないじゃん(笑)?今を一生懸命やってるから。でも、変わっていって当たり前なんだよ。変わっていかないといけないし、新しい人がどんどん出て行かなきゃいけないしさ。ANARCHYとも喋ったんだけど、“FUCK SWAG REMIX”のMV撮影のときのKOHHのライヴを観てて、『ぶっちゃけ、俺らが10年ぐらいかかったところをコイツは2年ぐらいで来てる。それってスゲェことじゃん』って。彼のような存在はいなくちゃいけないし、もっと下の子もバンバン出て来ないといけないんだ。でも、恐ろしいことに、俺もBOSS君もまだビックリするぐらい元気なんだ(笑)。俺もまだやりたい曲がたくさんあるし、きっとBOSS君もそうだと思う」
tha BOSS「俺なんかは、俺と同世代の人たちがほとんどいなくなっちゃってるから、そこはちょっと残念だね。なかなか自分の同い歳の人とも現場で会わないし、HIP HOPってのは要するに俺にとってはずっと先輩のいない世界なんだ。札幌には先輩がたくさんいるけど、HIP HOPの先輩ってなったらDJ KRUSHしか俺にとってはいない。そうなると、今は般若や漢、SHINGO★西成、NORIKIYO、SEEDA、田我流、サイプレス上野とか、時代の主流は完全にそこだよね。昔は、そういうシーンになびこうとしなかったけど、今は俺の方からそっちの方に寄っていってるっていうのはある。だって、そういう人たちと遊んだりライヴしたり曲作るのって、面白いんだもん。そこに俺が目を向けていけば、OMSBやKOHHみたいなヤツらにも自然と出会っていくわけで。俺にとっては今はそういうフェーズって感じだね」
 
■12月26日のイヴェント名『One Mic』は、実に言い得て妙なタイトルだと思いますが、ワン・マイクのライヴにこだわり続けてきた意義や価値はどんなところにあると思いますか?
般若「俺はコンプレックスの固まりだったんだ。グループでやってたときは長くても16小節ぐらいしか自分の言い分がなかったワケじゃん?『そうじゃない』っていうところから1MCになっていった。余計なモノというか、『自分はもっと言いたいことがあるんだ』って気持ちでずっとやってきて今に至る。グループやタッグでやると、結局誰かのせいに出来ちゃうじゃん?グループやサイドMCがいることが悪いってワケじゃないけど、俺にとっては何かがコケたときに他人のせいにしたくないだけなんだ。自分のケツは自分で拭きたいし、結局自分の言い分は自分にしか分からないよ。だからこそ、こうして時々人と曲を作ると物凄い刺激になる。それに、BOSS君はだいぶ“強い”人じゃん?そういう人と演ることによって、俺も音楽に対する考え方が変わっていく。でも、最終的に人間は“ひとり”だから、ラッパーだったらひとりでやり切れないとダメだと思うよ」
tha BOSS「俺は、基本的にエゴイストだからね。俺っていう人間が思ってることを世の中にぶちまけたくてHIP HOPを始めたから、『他の人間にヴァース渡す気はねぇよ』、って感じでスタートしたんだ。その期間が長かった分、こうして般若とヴァースを分け合うことにも時間がかかった。でも、その期間が長かったおかげで自分のスタイルが出来た。ライヴはもちろんひとりでやり続けるけど、いろんなラッパーと混ざって曲を作ったり、マイク・リレーしたりっていうのが俺にとって残された“挑戦”になってる」
 
■広いステージ上で、後ろにライヴDJがいるだけで、あとは自分ひとりだけという空間は、観客が思っている以上に孤独で緊張感のある場所なのではと察するのですが、おふたりはステージに立った瞬間、どんな気持ち/感情で第一声を発するんですか?
tha BOSS「そこまで考えてねぇと思うな」
 
■“無”になってる?
tha BOSS「“無”だと思うね」
般若「“無”に行けるといいですね。俺はそうなれないこともあって、緊張もする」
tha BOSS「緊張はするよ」
般若「だからこそ、俺は普段あれだけトレーニングをしてるんだ。自分に対して、『いろんなことやれてないとダメだよ。あ、やれてる、じゃあ出来る』って納得できるし、トレーニングは俺がステージに立つための“理由付け”をしてるんだ。コレは俺個人の話だけど」
tha BOSS「でも、分かる。俺もスゲェ練習するのはやっぱそれだもんね。『ここまでやったら、後はもうなるようになるでしょ』っていうとこまで練習するから、ステージに立つときは開き直ってると思う」
般若「長渕剛さんが言ってたけど、『リハーサルは120%でやって、本番は70%ぐらいの気持ちでやれ』と。(力を)“抜く”ことの大切さというか、本番前になると緊張で肉体はどうしても固くなるから、ちょっと力抜けてたぐらいの方が良いライヴが出来るんだ。だけど、そういった意識なしにまったくの“無”の状態に持って行けるのが理想だよね
 
■その境地に辿り着くには、やはり日々の鍛錬が必要ということですね。
tha BOSS「それしかないね、担保は」
 
■『One Mic』は、言ったら対バンみたいな形式で催されますけど、おふたりの中で“勝負”という意識はありますか?
般若「そういう余裕ないかも(笑)。その前後にもライヴがいっぱいあるし、お互いがお互いのライヴを出し切るって感じじゃないかな。勝ち負けはみんなに任せるよ」
tha BOSS「そうだね。いつしか、俺にとっての“バトル”はそういうことになったね。自分の表現をやって、あとはお客がジャッジして下さい、って。般若のお客に対してもそれを乗り越えないとダメだし、般若も俺のお客を乗り越えないとダメだし」
 
■今BOSSさんが仰ったように、おふたりが長年活動してきた中で、それぞれのファン層が確立していますよね。それは良いことなんですけど、スタイルが違うが故に、そういったアーティストが複数同じイヴェントに出演すると、そのファン同士が交わることなく、自分が崇拝するアーティストにしか興味を示さない、という現象を観ることも多いです。それは、先述の『THE DREAM MATCH』でも感じたことだし、それぞれのライヴ自体が素晴らしかったとしても、そういった意味でフロアが融合するのは本当に難しいことだな、と思うんです。野外フェスのような場だとまた違うのですが、特に「HIP HOPイヴェント」のような括りでいろんなスタイルのアーティストが出演するスタイルだと感じることが多い。
tha BOSS「バンドと演るときもそういうことになる。みんなそうだし、俺もいつもそうだよ」
 
■そういった観客の趣味嗜好を超えることが、『One Mic』でのおふたりにとっての“勝負”なのかな、と思ったんです。
tha BOSS「どうなんだろうね?伊藤が思ってるほど、TBHのお客さんはそれほど固くないし、随分入れ替わってるよ。でも、いつどこででも目の前のヤマを乗り越えるって意味ではそうかもね」
 
■BOSSさんが、いろんなラッパーと関わるようになって以降のファンが多いということですかね。ある種TBHを唯一神と捉えてそこだけに心酔する人だけではない、と。
tha BOSS「そうそう。そりゃそうだよ、俺ひとりで全ての人間を満足させられるような音楽なんて、出来ないよ。他にも良い音楽があるし、『そっちも聴きな』って思ってるタイプだしね。もちろん、『あなたがオンリー・ワン』って言われたらありがたいし、頑張るけどね。ありがたいことに、俺にもそういう時代はあったけど、今はそういう感じじゃなく、壁がなくなって浸透してきてると思うけどね」
 
■今回の『One Mic』の何が重要かというと、TBHと般若が競演するということ以上に、1MC同士が演ることが重要だと思ってるんです。ステージという土俵も同じだし、マイク一本という条件も同じ。それ故に、観る側にとってもふたりが同じ条件/状況でライヴを演るというのが伝わりやすいと思うし、そこから共通する音楽性以上の“何か”を感じやすいんじゃないかな、って。
tha BOSS「そうだね。違いも感じてほしいし、同じところも感じてほしいね。それに、12月26日だよ。俺らもワン・マイクで辿り着いたし、こうしてもう一発乗り越えていくから、ちょっと観といてくれ、って感じだよ」
 
■この日はふたりともライヴ納めなんですか?
tha BOSS「俺はそうだね」
般若「それ、訊きたい?このライヴが終わった後、HARLEMのDJ RYOWリリース・パーティに“孤独”を歌いに行く(笑)。そして、その次の日はRYOWと一緒に名古屋なんだ……LIQUIDROOMで見る客とHARLEMで見る客のあまりの違いに自分でビックリすると思う(笑)」
tha BOSS「でも、それを両方出来るのが般若だよ。俺は出来ないもん」
 
■2015年のおふたりのプランは?
般若「昭和レコードとしていろいろ動いていくと思う。1月14日には日比谷野音ワンマンのライヴDVDが出て、5月にさっき言った映画も公開される。9枚目のアルバムも出そうと思ってる」
 
■BOSSさんは、tha BOSS名義でソロ作を出すんですよね?
tha BOSS「そうだね、今はそれをやりたいと思ってる」
 
■名前を変えた理由はあるんですか?
tha BOSS「ない、ノリ」
 
■最後に、読者へ何かメッセージがあれば。
tha BOSS「ラッパーもそうだし、一般の人もみんな、『お疲れさん』って感じだね。難しい時代だけどさ、こうしてみんなが楽しめる場所を俺らが提供するし、『なんとかここまで来た』って想いをみんなで共有できてハッピーに笑って乾杯できたらいいと思ってる。そのために俺も般若も自分の時間を乗り越えるし、みんなも俺と般若の違いを乗り越えて、最後そこまで辿り着きたいね」
般若「ライヴは一生懸命やるだけなんで。2015年は、2014年よりみんなが良い年になれるようになればいいかな、って思ってます」
 
 

EVENT INFO
LIQUID ROOM 10th ANNIVERSARY
『One Mic』
 
日時:12月26日(金)18:30開場/19:30開演
場所:恵比寿LIQUIDROOM
料金:前売り 3,500円(ドリンク代別)
出演:THA BLUE HERB/般若
(問)LIQUIDROOM:03-5464-0800
プレイガイド/前売りチケット販売:
チケットぴあ http://t.pia.jp/(Pコード:246-382)
ローソンチケット http://l-tike.com/(Lコード:78481)
e+(イープラス)http://eplus.jp/
DISK UNION(渋谷クラブミュージックショップ/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ/吉祥寺店/池袋店/北浦和店/柏店)

 
 

Pickup Disc

TITLE : NEW YEAR'S DAY
ARTIST : tha BOSS feat. 般若
LABEL : THA BLUE HERB RECORDINGS
PRICE : 540円
RELEASE DATE : 12月10日