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KOHH

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「ラップが面白いというより、自分が今まで出来なかったことや、やったことないことが出来たときが面白いです。リズムの取り方とか歌いまわしとか、『コレ、前やりたかったけど出来なかったヤツだー』って感じるときが面白い。毎回、曲では俺の中で新しいことをやろうとしてるんです。何かしら絶対新しいことをやりたくなっちゃうんですけど、その新しいことをやるために曲を作り続けてる。それを繰り返していったら、どんどん新しい自分になっていくから、楽しい。行ったことがないところに行かないと、書いたことがないリリックは書けないし、そう考えると今後は経験も重要になってくるな、って思いますね」

 大晦日に公開した年末座談会でも、座談会参加者が満場一致で「2014年のMVP」に挙げたKOHHは、実際、これまでの日本語ラップでは考えられなかったスピード/若さで、シーンで最も影響力のあるラッパーのひとりにまでのし上がった。好奇心が旺盛で、新しいスタイルは貪欲に取り込み、リリックは小学生でも歌えるレヴェルでシンプル(小学生に聴かせたらいけなさそうな内容もあるけど)。よく、より広い層にラップの魅力を伝えるには“普遍性”や“シンプルさ”を目指すべきだ(そして、それを達成するのは難しい)、というような発言をラッパーの取材から聞くことが多いのだが、KOHHの場合は、そういったことを無意識に成し遂げてきている印象があるし、だからこそ強い。恐らく今後、より顕著な形で彼のフォロワーが現われてくることは容易に想像できるが、多分、彼と同じことをやろうとしても、大概の場合スベってしまうと思われる。それは、彼ほどピュアな人間性を持ち続けたまま活動できるほど、シーンはシンプルでキレイなモノではないからだと思うし、それ故に彼の立ち位置は“普遍的”なモノを感じる一方、“特異”なモノだ。つくづく、面白いラッパーが出てきたモノだと思う。
 
 2015年も、新しい音楽で更に我々を驚かせてくれることが期待されるKOHHだが、元旦にリリースされたアルバム「梔子」は、昨年7月にリリースされた「MONOCHROME」制作前にほとんど完成していた「1stアルバム」だ。故に、「MONOCHROME」や最近の彼のヴァースと比べると、ラップ面では若干の古臭さも否めないが、1~3年前に作った曲でそう感じさせるというのも、彼の進化のスピードの早さを物語っていると思うし、それ故に興味深い(リリース・スパンがこれだけ短いのに、これだけラップのアプローチが異なるというのは、相当に凄いことだ)。本インタビューでも、遥か昔のことのように本作について思い返すKOHHの姿が印象的だったし、2015年の展望や既に構想が見えつつある次作の話も、かなり興味深い内容になっていると思う。
 
 
■「MONOCHROME」が2014年7月に出て、世間的にも評価の高いアルバムだったと思うし、KOHH君も活発な活動を展開していたと思うけど、2014年を振り返るとどう?
「うーん、特に、俺的には変わらない感じでしたね。でも、ライヴのお客さんとかは、以前は『人いっぱいいるんだろうなー……人がいっぱいいたらああいう感じでライヴして……』みたいに、想像していただけだったのが、最近はその想像通りにお客さんがいっぱいいるライヴが増えました。お客さんが手を上げまくって暴れまくるみたいのを見て、『あ、イメージ通りになってる』って」
 
■「YELLOW T△PE」が出た後ぐらいのライヴと今のライヴを比べても、ビックリするぐらい盛り上がるようになってるし、KOHH君のライヴ・スキルも飛躍的に上がったと思うんだ。それは、場数を踏んできた結果でもあると思うんだけど、KOHH君自身のライヴにおける意識の変化はある?
「意識は特に変わってないんですけど、『新しいことに挑戦しよう』みたいなことはライヴでも思ってますね。それの延長線上で、例えばスタンド・マイクを使うようになったり、前より自分が首とか超振りまくるようになったり、お客さんに触ってみたり、フロアに飛び込んでみたり……そういう、新しいことをやり出したから、成長したのかもしれないですね」
 
■確かに、最近のKOHH君のライヴはターン・アップしてる感じだけど、前はもっとクールな感じでやってたよね。
「そうですね。別に『クールにしてよう』ってつもりはなかったんですけど、その頃の曲が多分“ターン・アップ系”じゃなかったっていうのもあると思います。でも、『誰よりも一番暴れてやろう。俺が暴れることでみんなに暴れ方を教える』みたいなことは、最近考えるようになりました。で、その結果、お客さんが前より暴れたり、飛び跳ねるようになった気がします」
 
■あと、リリックを一緒に歌ってるお客さんも増えたでしょ?
「そうですね。自分が『(トラックが)聴こえなくて歌いづらい!』って思うぐらいのときもあります。“FUCK SWAG”の最初の『またダッセェ奴らが~』の部分とか、大合唱されて『ズレちゃう!』みたいに思ったこともありましたね」
 
■そういう弊害もあるのか(笑)。KOHH君は、以前より幅広い層に受け入れられてきている気がしてるんだけど、来てるお客さんが変化してるというのは感じたりしない?
「そう言われると、最初の『YELLOW T△PE』の頃は、ベルサーチ/フェンディ/グッチ/シャネルみたいなの着てる人ばっかだったんですよ」
 
■その偏り方も凄いな(笑)。
「もう、派手派手な感じで。でも、最近はそれこそオタクっぽい人とか、普通っぽい人から、オトナっぽい人も子供もいたりするし。今考えると、『おお、いっぱいいろんな人が来てるなー』って思いますね」
 
■前よりカオスになってるよね。ツアーで全国を回って感じたことはある?
「地方の人の方が、“レア感”的な感じで東京の人より盛り上がってくれてる気がします。東京の人たちは慣れてるというか、『いつでも観れるし』みたいな感じも受けるんですけど、地方の人は『滅多に観れないからブチ上がろう!』みたいな感じで」
理貴「自分は、ライヴDJとして一緒に回らせて頂いてるんですけど、地方行くと結構、泣いてる女の子とかいるんですよ」
「泣いてる娘は結構いますね」
 
■どの曲で泣くの?
「もう、登場した瞬間とかに(笑)」
 
■曲の内容とかじゃなくて、ステージに現われた瞬間だ。ロック・スターじゃん!
「だから、泣いてる娘を見つけたら『その娘の前で多めに歌ってあげよっ』ってなりますね(笑)」
 
■ビートルズみたいに、いずれ失神する客が出て来るかもな……。
「出てほしい(笑)。でも、ケガ人は絶対出てると思いますね。出た瞬間にお客さんが前に来て将棋倒しみたいになっちゃうことが、最近ちょくちょくあって」
 
■だから、KOHH君のマインドは変わってないかもしれないけど、周りを取り巻く状況は確実に変わってきてるよね。
「変わってるっぽいっすねー。でも、そういうことは言われないと気づかないっす。泣いてる人がいても『昔は泣いてくれる人なんていなかったのになー』って考えるより、『あ、泣いてくれてる』みたいに思うんで(笑)。『変わったこと』に関してはあまり考えないですね」
 
■今回、取材前に何個かちょっとしたアンケートをKOHH君にお願いしてたんだけど、「2014年上がった出来事」として「1:雑誌の表紙 2:東京コレクション 3:海外(韓国)で初ライヴ」と挙げてたね。1位に挙げてた「雑誌の表紙」というのは、KOHH君の目標だったの?
「でしたね。“I'm Dreamin'”(『MONOCHROME』に収録)で、表紙のことはリリックに書いてたんですけど、その前に、アメリカに1年間行くことになってた友達と約束してたんです。向こうは『英語を覚える』とか、そんな感じの目標だったんですけど、俺の場合は『雑誌に載る』ってことで。で、その後に雑誌によく載れるようになったんです。それで、次の年になって『次は何を目標にしよう』って思ったときに、『今年は雑誌に結構出たから、次は表紙で出たいな』って。そしたら今年、『WOOFIN'』で初めて(ソロで)表紙になれた。だから、目標が叶えられたので上がりました」
 
■あと、2位の「東京コレクション」は、10月の『2015年春夏 東京コレクション』で、モデルとして出演したんだよね。
「FACETASMっていう、ドメスティックのブランドなんですけど、そのデザイナーの人が俺のことを知っててくれたらしく、それでオファーをくれました。心の中では、『いつかモデルもやってみたい』って願望はありましたね。コレクションは、取り敢えずリハが緊張しました。人が少ない中、関係者だけにジロジロ見られて。本番は、もう覚えてないっす。『不機嫌に早歩きしてね』って言われたから、早歩きしましたね(笑)」
 
■3位の「海外で初ライヴ」は?
「数週間前、韓国でライヴやったんです。DEADENDっていうクルーの3rdアニヴァーサリー・イヴェントに呼んでもらいました。あと、THE COHORTってグループと一緒に曲を作ったんで、そのMV撮影もしましたね。ライヴは、なんでみんなあんなに俺の曲を知ってたのか分からなかったけど、メチャ盛り上がってましたね。みんなカタコトだけど歌ってたし。それこそ全部歌ってる人がいて、『KOHHさんの曲で日本語勉強してます』とか言われて、『おー、あざっす』みたいな。韓国の人たちは、日本人より“ターン・アップ”な人なのかな、って思いました。DJ中もブチ上がりの大暴れしまくりなんですよ。英語もそれなりにみんな分かるだろうから、歌いまくってるし。その延長で俺のライヴがあったから、盛り上がりやすかったのかな、とも思いますね」
 


 
■KOHH君のラップが海外にも届いたという意味では、ANDY MILONAKIS(アメリカ人コメディアン/俳優。かつてMTVで『ANDY MILONAKIS SHOW』という番組もやっていて、USではかなり有名)とも曲を作ってたよね。僕、結構彼のファンだったから、アレはマジでビックリしたよ(笑)。
「マジっすか?俺もビックリしましたよ(笑)。あれ、全部一日の出来事なんです。俺は彼のことは知らなかったんですけど、J $TASH(フロリダ出身で、現在はNY在住のラッパー。KOHHと交流が深く、KOHHがNYに滞在していた際も、彼の家に居候していたらしい)が来日したその日に、彼から『ANDYも今日本に来てて、VICEの動画も観てるみたいで、KOHHと遊びたいって言ってる』って言われて、それで遊んだんです。その流れで『曲作らない?』みたいな話になって曲を作って、そのままヴィデオも作ってその日に公開したんです」
 

 
■引き寄せてるな……(笑)。で、そんなめまぐるしかった2014年を経て、「1stアルバム」である「梔子」が出るわけだけど、確認のため、このタイトルはどう読むのか教えてもらっていい?
「“クチナシ”です」
 
■花のクチナシだよね。どういう意図でこのタイトルを付けた?
「最初、1stアルバムのタイトルをギリギリまで全然考えてなくて。で、リョウ君(318)と相談してたんですけど、俺はぶっちゃけ何でもよくて、『1st(アルバム)』ってずっと言ってたから『〈1st〉ってどうっすか?』みたいなことを言ってたら、『それは普通すぎるから、何か漢字使った感じのにしよう』って話になったんです。それで、花の名前を探したりしてたら、『梔子』が意味的にも重なったんですよね。梔子の花言葉は『私は今幸せです』っていう感じらしくて、俺はリリックの中でも『俺は今幸せ』みたいなことを結構言ってるし、“梔子色”って、日本古来の黄色い色なんですけど、俺もKOHH=黄だし、『黄色も繋がったわ』って。あと、普通の花って、最後に実を開いて終わるけど、梔子は実を開かないまま終わるらしいんです。それで『口を開かない/口が堅い』ということで“クチナシ”の名前の由来になったらしいんですけど、俺も普段はあんまりお喋りじゃないから、そこも合ってるな、って」
 
■はー、そう考えると結構絶妙なタイトルだね。
「そうなんですよ。あと、みんなこの字が読めないだろうから、『みんなググれ』っていう、天の邪鬼的な感じでもあります(笑)」
 
■「MONOCHROME」が出た際も、あのアルバムが実は2ndアルバムで、1stアルバムとして今作がある、というのはアナウンスされてたけど、確かにこうして今作を聴くと、聴いたことがある曲が多く収録されているからというのとは違う意味で、「確かに、コレは1stアルバムだな」って思ったんだ。何でかって言うと、まずラップの載せ方が、それこそ「YELLOW T△PE 2」と「MONOCHROME」の間の時期のモノだと思ったからで。
「そうですね、完全に古いっす。今振り返ると、『成長したなぁ』って自分でも思います。昔の日記を読んでる感覚というか、『俺、こんなこと言ってたんだー』みたいな(笑)」
 
■だから、「MONOCHROME」をオフィシャルな1stアルバムと位置づけるとすると、今作は「未発表曲集」みたいな感じだよね。
「でも、このアルバムを出さないっていうことはまったく考えなかったっすね。『いつか出そう』って思ってた。作品の出来に自信があるというのもあるし、出さない理由がないというか、出しといた方がみんなも面白いだろうし、『確かに、コレが出来た後に〈MONOCHROME〉がああなったのも分かるわー』みたいに、もっと『MONOCHROME』が面白くなって聴けるようになるかもしれない」
 
■確かにそうだね。「MONOCHROME」の謎解きになるというか。このアルバムは、いつぐらいに作っていたの?
「いやー、もう……最初の『YELLOW T△PE』の頃から作ってたんで、3年ぐらい前の曲も入ってるんです。1~3年前ぐらいの曲が多いから、どの曲をいつ作ったかとかは思い出せないです(笑)。でも、歌い方によって、大体どの時期に作ったかは分かります。“Where You At”とか“Real Love”とかの“歌系”の曲は、大体同じぐらいに作った気がします」
 

 
■一番最後に作った曲はどれなの?
「“飛行機”です。“飛行機”だけ、3ヶ月ぐらい前に作った曲で、コレだけ後で足した感じです」
 
■そうなんだ!何でこの曲を入れようと思ったの?
「うーん、なんとなく」
 
■「なんとなく」なんだ(笑)。
「ハイ。昔の俺っぽい曲で、3rdアルバムっぽくない曲だし。だから、この曲の内容は、最近の俺目線なんですよ。1stアルバムを作って『MONOCHROME』も経た上での内容だから、『雑誌の表紙に自分がいて笑える』っていうのも最近のことだし」
 
■でも、2ndアルバムを先に出して、その後に出す1stアルバムの冒頭を飾る曲が、2ndアルバムを経た段階での曲って……ややこしいわ!
「ややこしいっすね(笑)。でも、ウケますよね。この曲のラップは、敢えて昔っぽくしました。スキルはあまり出さずに、簡単な感じにして。理貴君からトラックをもらったときに、『飛行機に乗ってるときに浮かんだメロディだ』って訊いて、『じゃあ“飛行機”に喩えて、〈新しいところに行く〉みたいな曲にしよう』と思ったんです。今までの自分を見て、これから新しいところに出発するぞ、みたいな曲ですね」
 

 
■今作収録曲で言うと、“Junji Takada”は、今のKOHH君の勢いに繋がるきっかけとなった重要曲だと思うんだけど、この曲はどういう経緯で生まれた?
「“WE GOOD”を作ったときに『高田純次ばりビッチの胸元~』ってラインが浮かんで、その頃から“Junji Takada”って曲を作ろうとしてたんです。で、理貴君の家で曲作ってるときに、『高田純次のこと歌おー。めちゃくちゃ適当なこと歌って、リリックも書き直ししないで、思ったことをそのまま適当に言ってみよう』って作ったんです。だから、30分ぐらいで出来ましたね」
 
■作り方も適当だったんだね(笑)。で、それがヒットしちゃった、っていう。
「ハイ、本当に適当。考えだしたら、『ここのライン微妙だな』とか、書き直しちゃうじゃないですか。でも、この曲は本当に適当に、そのとき浮かんだワードを適当に並べただけなので、何も意味がない(笑)」
 
■2013年の日本語ラップで最も話題を呼んだ曲のひとつは、間違いなくコレだったと思うから、それだけに、その経緯は笑えるな(笑)。
「ホントっす。マジウケますよ」
 
■この曲がきっかけで、以前から知り合いだった理貴君と再会して、また一緒に曲を作るようになったんだっけ?
「理貴君と最初に作った曲は“Where You At”ですね。“Where You At”録った後、その日に作ったのが“Junji Takada”だったと思います」
理貴「僕は、5年ぐらい前からトラックを作ってたんですけど、『友達のラッパーの後輩の友達がラップ始めるって言ってるから、レコーディング手伝ってやってよ』って連絡が来たんです。それで来たのがKOHH君で、レコーディングするようになった、というのがきっかけですね。その後、僕が携帯なくしちゃって、それで連絡が取れなくなってたんですけど、SNSで久々に繋がったんですよね。僕がYouTubeにトラックを上げてたのをKOHH君が聴いて、それで連絡をくれたんです」
「俺はそのとき、フィリピンにいたんですけど、『何だコレ!』って思いましたもん。『理貴君、ここ3~4年会わない間にめちゃくちゃ成長してるじゃん!』って思って、すぐ連絡しました」
理貴「そのときKOHH君が聴いた曲が“Real Love”のトラックでしたね。で、その後KOHH君が『今度ミックステープを出す』って言うから、彼の曲をYouTubeでチェックしてみたら……まあ、喰らいましたね。『何だこの歌詞は!でも、なんか耳に残るな』って」
 
■そうなると、理貴君は、本当に最初の頃のKOHH君を知ってるということだよね。
「初めてレコーディングしたのが理貴君の家だし、初めてのライヴDJも理貴君なんです」
理貴「最初に会ったときの印象は……みんなが想像してる感じに近いと思うんですけど、『チャラそうだな』って(笑)」
「ロン毛のジェリー・カール時代ですね」
理貴「でも、ラップは『フッドをレペゼンする』系の、地元愛を歌ってました(笑)」
「あと、ニュースの歌とか……ニュース番組で観たイヤなこととかを歌ってました」
理貴「結構男らしい感じでしたね(笑)」
 
■理貴君は、KOHH君以外ではこれまでにどんな人の曲を手掛けてきたの?
理貴「一番最初は、19歳のときにJASMINEの曲をアレンジしたのがきっかけです。だから、結構R&B系のトラックが多かったんですよね。シンガーの宏美さんとかMary JaneのLUNAさんとかにもトラックを提供してました。HIP HOPのトラックも並行して作ってたんですけど、たまたまR&Bのトラックが採用されることが多かったんですよね」
 
■今作でも、ほとんどの曲を理貴君が手掛けているけど、プロデューサーから見たKOHH君の魅力は、どんなところにあると思う?
理貴「いつも、こちらの予想を超えて返ってくるんですね。トラックを渡すとき、『この曲ならこういうラップを載せてくるんだろうな』みたいに思ってると、いつもそれが覆されて返ってくる。だから、自分にとっても更に『こういうトラックでやってみない?』って(モティヴェーションの)起爆剤になってますね」
 
■今作収録曲で、ヴァース載ってきたのを聴いて理貴君が一番驚いた曲は?
理貴「“Real Love”ですね。『YELLOW T△PE』とかの頃はチャラい印象が強かったですけど、この曲は結構マジメな内容で、純愛を歌ってる曲だから、『あ、そういう歌も歌えるんだ』って思いました(笑)。この曲を作ったぐらいの頃から、結構歌うようにラップをするようになったんですよね。あと、ハモリもサビで出てきたりするようになって。しかも、それがありきたりな感じのハモり方じゃなくて、『どうやってそんなの思いついたの?』っていうぐらいのを載せてきた。だから、歌詞の内容もメロディ・センスもビックリしましたね」
 
■アルバム前半の“ビッチのカバンは重い feat. DUTCH MONTANA”“No Love”“Real Love”は、ギャルネタ3連発という感じだけど、最初の二曲では基本的に「ビッチはいらない」的なことを歌ってる一方、“Real Love”は「真の恋人を見つける」的な内容だよね。だから、いろんな“女性観”が入ってると思うんだけど、KOHH君にとって理想の女性って、どんなタイプの人なの?女性ファンも多いだろうから、敢えて訊いてみたくて(笑)。
「純粋な女性ですね、心が。それ以外は特にないかな……見た目の好みなんか言ってたらメチャクチャあるし、見た目が可愛い子なんていっぱいいるから、そこに拘ってたらキリがないっす。だから、ポジティヴで純粋な子ですね。何をもって“純粋”って言うかはまた難しい話ですけどね……だから、分からないっす(笑)」
 
■どんな女性がイヤな女かというのは、曲を聴くとハッキリしてそうだけどね。
「ハイ、イヤな女はたくさん浮かびますね。見た目から性格まで、たくさん浮かぶんですけど、良い女は……分かんないな」
 

 
■「MONOCHROME」は、ネガティヴなモードでまとまっていったアルバムだと思うけど、今作は全体像ってあったの?
「まったく。ただ作りたい曲を作っただけなんで、何も考えてないですね」
 
■それ故にボーナス・トラックも多いし。だから、「この頃のKOHH」って感じだよね。だから、ビートジャック曲の入ってない「YELLOW T△PE」みたいな位置付けなのかもね。
「ハイ、そんな感じです」
 
■ボーナス・トラックを除くと最後にある“泣かせてごめん”は、アルバムの中で一番悶々としてる曲だけど、この曲が「MONOCHROME」のフリになっているというのはあるの?
「全然関係ないです。でも、確かにそうですね。頭の方の曲ではビッチだなんだとか、女のことを軽く見てる曲が多いのに、ここでひとつオトナになった、みたいな流れは、ウケるなー、って(笑)。このアルバムを作ってた時期は、今思えば成長したんだと思いますね。女性に対しての見方も変わったし」
 
■じゃあ、元々女性に対しては悪いイメージを持ってたの?
「悪いイメージというか、女性を心から大切にしてなかったと思います。ホントに好きじゃなかったからなんですかね……『全員ビッチ!』みたいな感じで思ってたんで」
 
■でも、売れてくるとグルーピー的な人も増えてくるでしょ?
「あ、でもさっき言った『全員ビッチ』っていうのは、良い意味で、ですね。クソチャラい女っていう意味より、ただセックスするだけ、みたいな」
 
■都合の良い女ってことか(笑)。
「そうですね、全員がそう見えてたんですよ」
 
■だから、“ビッチのカバンは重い”と“No Love”で歌われてる“ビッチ”は、それぞれ意味が違うんだよね。
「“Hoe”とかは、悪く聞こえるんですけど、“ビッチ”は『彼女じゃないけど俺のオンナ』みたいなイメージが俺の中で勝手にあるんです。だから、俺が言ってるビッチは、悪い意味じゃないときの方が多いと思います。でも、“ビッチのカバンは重い”のビッチは“Hoe”ですよね」
 
■なんでビッチのカバンは重いの?
「分かんないっす。このタイトルはDUTCH MONTANAが考えたんですよね」
 
■そうなんだ(笑)……「梔子」と「MONOCHROME」を作ったことで、ラップに関して改めて気づいたことや、面白いと改めて感じたことはある?
「ラップが面白いというより、自分が今まで出来なかったことや、やったことないことが出来たときが面白いです。リズムの取り方とか歌いまわしとか、『コレ、前やりたかったけど出来なかったヤツだー』って感じるときが面白い。毎回、曲では俺の中で新しいことをやろうとしてるんです。何かしら絶対新しいことをやりたくなっちゃうんですけど、その新しいことをやるために曲を作り続けてる。それを繰り返していったら、どんどん新しい自分になっていくから、楽しい。行ったことがないところに行かないと、書いたことがないリリックは書けないし、そう考えると今後は経験も重要になってくるな、って思いますね」
 
■アンケートで、「2014年よく聴いたUSラップ・ベスト3」として「1:“COCO”/O.T. GENASIS 2:“U GUESSED IT”/OG MACO 3:“SKYFALL feat. YOUNG THUG”/TRAVIS SCOTT」を挙げていたよね。この辺りの曲は、KOHH君のラップにどのぐらい影響を与えた?
「めっちゃ影響受けました。フロウもリズムも乗り方もそうだし、声の強弱の付け方とか出し方……この人たちって、『新しいこと』をした人たちだと思うんですよ」
 
■まあ、ヘンだよね(笑)。
「ハイ、ヘンなんです。まあ、『よく聴いてた』ってワケじゃないんですけどね。よく聴いてたのはTHE BLUE HEARTSでした。ラップは普段はそんなに聴かないです。たまに聴いて『ヤベェ!』って思ったのをもう一回聴き直すぐらいで。で、挙げたのは『コイツらヤベェ!』って思った人たちです。“COCO”は、トラックが“ビッチのカバンは重い”に似てると思ったから、『どんなラップしてくるんだろ?』って思ったらあのフロウで『えー!そう来る?』って感じだったし、OG MACOも、トラックは超シンプルなのにラップは叫びまくる感じだったから、ヤラれました。TRAVIS SCOTTは、間の取り方がヤバイし、フィーチャリングのYOUNG THUGも声の出し方が気持ち悪くて、スゲェと思いましたね」
 
■KOHH君の中で、「気持ち悪いラップ」って、上がるポイントなの?
「気持ち悪いというより、誰もやってないラップをしてるヤツのに引っ掛かりますね。そのひとつの要素が気持ち悪さだったのかもしれない。可愛さとかイカツさにヤラれることもあるし。“COCO”とか、結構フロウは可愛いじゃないですか」
 
■可愛いのかな、コレ……(笑)。でも、そういった部分からの影響は、今作の曲は結構前に作っていた曲だから、あまり感じないよね。
「そうですね。むしろ、キレイさを意識したというか。歌うことだったり、音程で遊ぶやり方を覚えて、それが楽しくてやってた時期なんですよね。3rdアルバムを聴けば、今挙げたところの影響は分かるようになると思います」
 
■前、ライヴ後にまだリリースされてない新曲を流していたけど、それも良い意味でかなり気持ち悪いラップになってて、ヤラれたんだよなあ。
「3rdアルバムを早く出したいっす……俺の頭の中はもう3rdアルバムのことばっかになってますね。入ることが決まっている曲は、5~6曲あります」
 
■1stはポジティヴ寄り、2ndはネガティヴ寄りと、“ムード”が統一されていたけど、3rdはどんな雰囲気になりそう?
「ぶち壊し、です。誰もやってないラップをやってると思うし、『みんな、コレに付いてこれるかな?』って思ってます。リズムの取り方とかもイカれてるんで」
 
■だから、“飛行機”みたいなポップな感じとは真逆ということだよね。
「真逆です。これまでの俺の曲は、マネしようと思えば出来るようなラップだったと思うんですけど、3rdの曲はマネ出来るかな?誰もマネ出来ないぐらい、新しいことをやってると思ってます」
理貴「リリックも新しいんですけど、とにかくリズムの取り方が変態的になってます」
 
■じゃあ、リスナーにとっては「全然分からねぇ!」ってなる可能性もある?
「ああ、ありますね。リズムがおかしいから、歌えないかもしれない」
 
■そして、アンケートで「2015年の抱負」を三つ挙げてもらったんだけど、「1:楽しく生きる 2:良い曲を作る 3:車を買う」と、これまたKOHH君らしい回答で。でも、「良い曲」って、世間的には“飛行機”みたいな感じの曲になるかもしれないけど、今KOHH君が作ってるのは「良い曲」っていう意識なの?
「あー、良い曲の基準は人によって違うと思いますけど、俺の場合は『良い曲=俺が満足した曲』ですね。だから、『良い曲』というより、『俺が今まで出来なかった/作ったことがないような曲を作る』って感じですね。『良い曲(自分にとって)』って感じです(笑)」
 
■「楽しく生きる」というのは、KOHH君の中ではどういう状態?
「ネガティヴなことをまったく考えてないときですかね。基本、ポジティヴでいるとき。『今、超楽しい!』っていうよりは、イヤなことやストレスを考えずに普通にいれるときというか」
 
■「車を買う」って答えてくれたけど、でも、来年は車を買うどころじゃないんでしょ?
「来年は、1月中旬からアメリカに行って、向こうで3rdアルバムを完成させて、適当なタイミングで日本に戻ってこようと思ってます」
 
■アメリカに住むってこと?
「そういう感じですね。でも、そんな長期間じゃないと思うけど」
 
■アルバムが完成するまで、ってことは、2~3ヶ月で帰ってくる可能性もある?
「あります。だから、みんなスゲェ騒いでるんですけど『なんでそんな騒ぐんだろ?』って思ってます。まあ、でも、『俺がどんだけいてもいいじゃん』って感じっす(笑)。取り敢えずNYに行って、アトランタにも行ってみたいですね。アトランタとかは、『行けたら行きたいな』ぐらいの感じなんですけど、『行きたいな』って思ってたら勝手に行く流れになるだろうな、みたいな」
 
■自由だな……(笑)。じゃあ、日本でしばらくライヴ/ツアーをやることはないってことだね。
「そうですね。でも、渡航費が出てタイミングが合えばライヴは全然出れると思いますけど」
 
■まあ、騒いでる人はKOHH君が活動休止する、みたいに受け取ったってことじゃないかな。
「あー、はいはい。全然そんなことはないです。曲も作り続けてるし、日本で撮ったMVも何本かあるし」
 
■3rd用の曲で、MVを撮ったのがあるんだ。
「ハイ、4曲ぐらい」
 
■もうそんなに出来てるんだ(笑)。日本でもアルバムを作ることは出来るのに、なんでアメリカで作ろうと思った?
「リョウ君に『アメリカに行けば?』って言われたっていうのもありますし、ずっと同じとこにいても同じようなリリックになっちゃうと思って。“原宿”とか“渋谷”ってワードがよく出てきたり、服のブランドも最近着てるブランドばっかりリリックに出てきたりして、自分でもよく『最近この言葉、よく使ってるな』って思うんですよね。アメリカに行ったら、全然違う環境で、しかもアウェイで言葉も通じないから、そういうのを経験した方がいい……んだと思います(笑)」
 
 

Pickup Disc

TITLE : 梔子
ARTIST : KOHH
LABEL : GUNSMITH PRODUCTION
PRICE : 2,700円
RELEASE DATE : 1月1日