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十影

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

「このアルバムは、俺がやりたかったことを具現化できたと思いますね。1stアルバムは『ネ申曲たち』っていうタイトルで、面白い曲とかツボ付いた曲ばっか詰め込んだ感じだったんですけど、今回は『自分の物語』というか、ラッパーっぽい……ラッパーですね、今回は」

 
 LUCK ENDの一員として長年東京シーンを中心にシノギを削ってきて、近年はソロ活動をかなり精力的に行なってきた十影。これまでは自身のレーベルからのリリースが主だったが、今作「ネ申物語」はY'Sや今は亡き十影の盟友:BIG-Tの作品をリリースしてきたFOREFRONT RECORDSからのリリースとなる。
 
 十影というと、今作の宣伝文でも自嘲気味に「ギャグラッパー!!??カスラッパー!!??」と書かれているように、世間一般のイメージはゲスい/下品/ふざけているといったモノが大半かもしれないし、それは今作でもあながち外れてはいないのだが(笑)、その一方で今作後半部の楽曲から滲み出ている、彼の仲間思いだったり誠実な側面は、今作の振れ幅の大きさを考えるとかなりズルいと思ってしまうぐらい、ピュアだしグッと来る。今回は、全曲解説スタイルで、ギャグ/下ネタからマジメな楽曲まで、その真意をガッツリ語ってもらった!
 
 
■ここ1〜2年はアルバムやミックステープ、配信リリースなど活発にリリースしていたよね。
「結構、曲の出し方が『ヘタな鉄砲でも撃ちまくろう』っていうテーマでしたね。『何か当たんねぇかな』みたいな(笑)。模索ってワケでもないんですけど、取り敢えず『何でも出来るよ/偏ってないよ』っていうのを見せようとしてチョコチョコやってました」
 
■今作に入ってない曲で、十影君的に作って手応えを感じた曲は?
「このアルバムに入ってない曲だと、ウンコの歌(“今そこにある危機”)とか」

 
 
■あの曲かよ。
「まあ、アレはそこまで話題にならなかったけど、『コレ、他のヤツ出来ないだろ?』って。でも、MICADELICも同じテーマでやってたんですよね」
 
■偶然にも、MICADELICが10数年前出した曲とタイトル/テーマ共に被るという。人類は進化しないな……。
「あの曲で、起承転結付けて3ヴァース目にオチが付いてるっていう構成で、一番最初に出来た良い曲だな、って。基本、パッションみたいのを感じたり、気が向いたときに録ったりするんですけど、自分、ヤリマンだからやりたいことがコロコロ変わるんですよ」
 
■でも、MVも積極的に作っていたというのも幸いして、十影君のキャラというのが、以前より世間に分かりやすく伝わるようになってきたのかな、って。以前はやはりLUCK ENDの一員ということもあり、ストリートというか、不良というか、コワモテというか武闘派なイメージというか……。
「フフフ、そうなんですよ、よく勘違いされるんです。昔、『マッドマックス』って超ド不良雑誌に載ったんですけど、別に大したこと喋ってないのに、普通に掲載号見たら『文句があるヤツはかかってこい。いつでも相手になるぜ(十影)』って書いてて、『……死んだー!』って(笑)」
 
■一気に賞金首キャラになってしまった、と。
SOY-B(LUCK END)「当時渋谷に住んでたから、気が気じゃなかったよねー」
 
■まあ、とは言え実際LUCK ENDがグループとしてガンガン動いてた頃は、やっぱイケイケな印象は少なからずあったよね。でも、それがソロを出すことで、より十影君の“素”が伝わりやすくなったのかな、って。
「そうですね。最近は(ライヴ会場で)モヒカン触られたりするっす」
 
■客も結構攻めるな。
「でも、俺も結構お茶目だから『やめろやめろ〜』って言いながら触らせてます。俺、許容範囲広いんで。そういえば、こないだ地方ライヴに行ったらスゲェ熱心なヘッズが来て、『いつも聴いてます!CDも全部持ってるし、マジヤバイっす!写真撮って下さい!』とか言ってきて、最後の最後に『これからも応援してます!頑張って下さい、ムカデさん!』って言われました。でも、そのときも取り敢えず『あー、ありがとうありがとう』と対応しましたね(笑)」
 
■そんなこんなを経て、今回2ndアルバム「ネ申物語」が出たワケだけど。
「このアルバムは、俺がやりたかったことを具現化できたと思いますね。1stアルバムは『ネ申曲たち』っていうタイトルで、面白い曲とかツボ付いた曲ばっか詰め込んだ感じだったんですけど、今回は『自分の物語』というか、ラッパーっぽい……ラッパーですね、今回は」
 
■前作は何者だったんだよ。
「前作はラッパー“風”ぐらいな感じでしたね。今回はもっとラッパーぶってみました。ラッパーってやっぱ、自分の生い立ちを歌ったりとか、『俺はこう思ってるよ』とか『俺は今こんな感じだぜ』っていう曲が多いと思うんですよ」
 
■そりゃ、基本は主張が多くなるよね。
「以前は、ハッキリ言ってそういう欲がなかったんですよね(笑)」
 
■まあ、そうだよね。言ったら“ネタ感”のある曲が多かった。
「そうです、ネタだったんですよ。だから、『メッセージ性:ゼロ』みたいな。でも今作は、せっかく聴いてくれる人も増えてきたので、自分がやりたいこと/伝えたいことを全部詰め込んでみようかなと思いました。今作は、ビート集めの段階で(曲調を)3タイプに分けたんです。トラップ・ビート、サンプリング物、弾き系のトラックを、3分の1ずつ分けようと思ったんです」
 
■なんで?
「いや、やっぱ日本語ラップ好きなヤツが好きな自分の曲調は、その3タイプに分かれると思うんですよね。俺はこれまでその3タイプの曲は全部やってきてるんですけど、俺のトラップ・ビートの曲は好きだけど、サンプリング系の曲は好きじゃないってヤツがいたりして、反応が毎回違うんです。『だったら3分の1ずつ入れるし、取り敢えず他の3分の2飛ばしてもいいから、どれか気に入ってくれたらいいよ』って感じですね。でも、『ちゃんと聴いてくれれば全部良いけどね』っていうスタンスも込めて作りましたけど」
 

  
01.“アシダマナダヨ”(Pro. by BERABOW)
「芦田愛菜っぽいじゃないですか、俺とか」
 
■うん……。
「……いや、見てくれが、じゃないですよ。俺が今置かれてる状況を芦田愛菜に喩えて、『自分はこう思ってる』みたいのを伝えたくて。すごい難易度が高い技だったんですけど」
 
■リスナーにとっても難易度高いわ。
「芦田愛菜ちゃんは、今はすごい注目されてるじゃないですか。でも、バーッと売れたけどその後廃れてしまう人も多いから、『芦田愛菜ちゃんも、まさか安達祐実みたいになっちゃうのかな……』みたいに思って」
 
■大人になってヌード写真集出す、みたいな?
「そうそう(笑)。そういうことを思いつつ、俺も1stアルバムを経て、2ndアルバムをFOREFRONT RECORDSから出すということで、自分で言うのも何ですけどちょっと注目されてるタイミングだから、俺の状況と重ね合わせつつ『ちょっと今注目されてるけど、今後はこういう風にやっていきたい』っていうことを書きました。ふざけた歌に聴こえるかもしれないけど、ヴァースとか内容は熱いです」
 
■芦田愛菜は子役だけど、キャリア的に「自分もまだまだです」みたいな想いも重ね合わせてるのかな、って思ったんだけど。
「あー、子役っていうか俺はまだヒヨコっすね。髪型もヒヨコみたいだし。ずっとやり続けてはいたけど、いきなり超高層ビルのエレベーターに乗っちゃった、みたいな盛り上がりは今までないんですよ。取り敢えず、地道にお遍路参りしていたような感じなんで。ラップ始めて14年経つけど、やっとここまで来れた、っていうのは確かにありますね。ここで俺が『アサダマオだよ』って言うのはやっぱ違うな、と」
 
■この曲からは、これからの自分が向かう道への覚悟が感じられる一方、焦りや危機感も正直に綴ってるよね。
「アルバム通して正直者になろうと思ったんですよね。だから、『俺はこれからもやっていくぜ!』だけじゃなくて、『俺はやっていくけど、廃れねぇように頑張らないとな。それは、今までやってきた中で聴いてくれたりライヴ観てくれた人たちのためにも』ということまで言いたかったんです。俺も超ヘッズだったから、超聴いてた好きなラッパーがいつまでも新曲出さないとか、ラップ辞めていくのが結構ショックだったしイヤだったんで、そういう風にはなりたくないな、って自戒も込めました」
 
■「できるなら生まれ変わりたい/もしも俺が見てくれSKY-HI/だったら毎日揉んでるぱいぱい/でも俺は俺のままカマしたい」とか、本当にSKY-HIに謝った方がいいと思うけど。というか、見てくれの問題じゃなくて、こういう発想だからSKY-HIになれないんだろ、っていう。
「俺、日高君と同じ容姿だったらマジクソ調子こいてると思いますね、今の容姿の時点で調子こいてるんだから。日高君のことはリスペクトしてますよ。俺のことを客演で呼んでくれるラッパーはみんな神様です(笑)。だから、俺も日高君の名前を使ってチャラつけたらな、と。『日高君?俺トモダチ。俺ん家来る?』っていう……絶対来ねぇ(笑)」
 
 
02.“Independent Man feat. Niyke Rovin & YOUNG HASTLE”(Pro. by KM-MARKIT)
「この曲を出すタイミングでレーベルに所属するという、マジ意味不明なことをやったんですけど」
 
■そうだよね。それ故に不思議に思ったんだけど。
「今まではずっとひとりというか、自分のレーベル(JUICY ENTERTAINMENT)でやってきたんですけど、自分のように自分たちでやってきたYOUNG HASTLEとNiyke Rovinに参加してもらいました。HASTLEのヴァースもすごい内面的で全部曝け出してる感じだけど、俺も結構悔しい思いをしてきたんですよね。若いときからラップやってきて、作品出してもライヴやっても相手にもされなかったし、そういうのでフラストレーションが溜まって『辞めようかな』って思ったことも何回もあるけど、一緒にインディペンデントでやってきた仲間のBIG-Tが亡くなったこともあって、『バカヤロウ、俺たちは自分たちだけでここまでやってきたんだぞ』って気持ちを、キレイ事抜きでリリックに出来たらな、って」
 
■これまでインディペンデントでやってきたのが誇りでもあるんだと思うけど、そんな十影君が何故このタイミングでFOREFRONT RECORDSに所属することになったの?
「元々、自分だけでレーベル運営をやることに限界を感じてたんですよ。裏方の部分も全部やってきたけど、裏方として動いてると曲も作れなくなっちゃうし。そんなときにFOREFRONT RECORDSが立ち上がって、そこにテル(BIG-T)も所属してたじゃないですか。最初は宣伝とかを業務委託でやってもらおうと思って相談したんですけど、『それだったら所属でやろうよ』って言ってくれて、『そうか……こんなスケベなヤツでも囲ってくれるのか……』って」
 
■スケベは関係ないでしょ。
「『こんな変質者を囲うなんて……』って。俺は、FOREFRONT RECORDSのマイナス・プロモーション担当です。表の部分はY'Sセンパイが担当して、それで俺はY'Sの名前を騙って『Y'Sって知ってる?俺なんだけどさ』って」
 
■レーベルにとってこの移籍はメリットあるのかね……?(笑)
 
 
03.“キッズリターン feat. MICKY RICH”(Pro. by yuto.com)
「yuto.comのビートを聴いた瞬間に、こういう曲を作ろうって思い浮かんだんです。少年時代 --小中の頃と今の自分について1ヴァースずつ当時の心境を思い出しながら書きました。『こういう少年時代だったよ』っていうのを、あまりクドくない形で、触り程度に書いていきましたね。一曲で深いとこまで書いちゃうと、この先こういう曲作るときにネタがなくなっちゃうので。俺、小出しスタイルなんですよ(笑)」
 
■十影君って“少年”っぽいなあ、と前々から思ってたんだけど。
「少年ですねぇ……31歳ですけど」
 
■いい加減卒業しろとは思うんだけど。良く言ったら無邪気、悪く言ったら悪ノリが過ぎるというか。ガキっぽい悪ノリな感じがキャラのひとつであり、魅力ではあると思うんだけど。
「悪ノリな感じは素なんですよね。逆に、クラブにはカッコつけようと思って行くんですよ。片隅でバーボンのロックでも飲んで、キメてやろうかな、って思ってるんですけど、一杯飲んだら楽しくなっちゃって結局素に戻っちゃうんです」
 
■大人っぽさ=バーボンっていうのもガキっぽい安易さだな……。
「そういうの飲めばなんとかなると思ってます」
 
 
04.“好色女子応援歌”(Pro. byYOSHIDA KAZUHIRO)
「この曲は、こういう思想を持ってらっしゃる知人の女性がいて、その方とオフ会をしたときに……」
 
■オフ会……?
「サシで呑みに行ったんですよ、そういう関係ではないんですけど。良い娘なんですけどハジけてる娘で、結構男遊びをしちゃう娘なんですよね。『こういう男に結構良い感じでイッても、最後にいつもダメになっちゃうんですよ』みたいに、愚痴を俺にスゲェ言ってきたんです。俺、人の話とかあんまり聞かないんですけど、そのときは『おぉ……もっと詳しく』って。そのときに、遊んでる女の子の心境を全部語ってくれて、『ヤベェ、遊んでる娘はそう思ってるんだ!』って思って、『コレは曲にしないとイカンな……』と」
 
■……使命感?
「その娘は俗に言うヤリマンなんだけど、その娘に『アタシはヤリマンとかビッチとか言われるのイヤなんで、呼び方考えました。“ゴッド”です!』って言われました」
 
■自分が神だと。
「『取り敢えず“ゴッド”って呼んでほしい。そしたらなんかカッコ良いじゃないっすか?』って。俺は、遊んでる女の子に偏見とかマジでないんですよ。彼氏がいるのに遊んでる子とかはあんまり好きじゃないけど、彼氏がいないときに撃ちまくってる女の子はマジナフリスペクトなんです。ちなみに曲は、サビも含め全部1時間半ぐらいで書き終わりました」
 
■それを言って何をアピールしたいの?
「いや、そんくらい言霊が溢れてた」
 
■そういう娘は、例えば同性からはすごい嫌われたりするよね。だけど、十影君は「自分が自分であることを誇れ」というエールを彼女たちに送りたいということだな。
「エールを超送りたいんですよ!男って、『女とヤリまくってるぜ!』って言うと結構リスペクトされるじゃないですか。『豪傑だねー』みたいな。でも、女の子が『ヤリまくり〜』みたいに言うと、評価が正反対じゃないですか。だから、俺は逆にそういう女子を“豪傑”と呼びたい」
 
■まあ、でも、そういう風に言っておきながら、結局はこういう女が増えてもっと自分がヤレればいい、って思ってるだけでしょ?
「またまた〜……正解(笑)」
 
 
05.“ゴポガポゲポガポ feat. サイプレス上野”(Pro. by yuto.com)
■さっき話してたように、ちょっとスカした感じでバーボン舐めようとしてた十影君は、結局この曲で歌われてるような状態になってしまうということだね。
「コレはもう、リリックの通りですね。結局、酒を呑むと『次の日の用事が……』とか、飛んじゃうタイプなんですよ。『もう酒呑めないの?』って言われたら『呑めるわい!』って、ムキになっちゃう。結構体力あるから、なかなか死なないし」
 
■よくクラブでゾンビみたいになってるところは見るね。
「1ヴァース目はそういったときの状態のことを歌ってるんですけど、3ヴァース目は、超酒強い女と(張り合って)何十杯も呑んで『この野郎……逆に俺がヤラれるんじゃねぇか?』ってなったけど、結局女の方がグダりだして、俺も瀕死の状態なんだけど『……勝ったぜ……』って。……で、その後チェックインするワケですけど、ナオンのおパンティを……(中略)……そうしたら『オロロロー』って吐いちゃったんですよ」
 
■……最低だな……じゃあ、このヴァースは実話なのかよ。
「まあ、そういう、誰もが一回は経験あるような『お酒あるある』ですね」
 
■この曲でサイプレス上野を客演に招いた理由は?
「だって、上ちょっぽいじゃないですか〜」
 
■それもサ上に若干失礼な気が。
「いや、酔っ払って良い感じになってるとこをしょっちゅう見るんで。でも、彼がゲロ吐いてるとこを見たことはないので、『上ちょ、ゲロとか吐く?』って訊いたら『もちろんだZE』ってメール返ってきたので『じゃあ、このテーマで……』ってお願いしました(笑)。この曲は、誰かと一緒にやりたかったんだけど、キャパの大きさ的に出来る人が上ちょ以外に思いつかなかったんですよね。俺のヴァースだけ入った音源を送ったら『トカちゃん……ゲロの歌でこういう感じ……最COREだZE……すぐ書くZE』って返事が来て。また居酒屋のゲットー感がリリックに出てるじゃないですか。本当にこの人は望み通りのことやってくれるなー、って」
 
 
06.“Skit feat. SOY-B from LUCK END”(Pro. by DJ Q-BANG)
「OZROSAURUSの1stアルバムで、MASTA SIMONさん(MIGHTY CROWN)がシャウトしてるじゃないですか。ああいうスキットをどうしても入れたくて」
 
■そこからなんだ(笑)。
「で、同じクルーでレゲエやってて、一番近くで俺のことを見てきてくれたヤツだから、そういうメッセージ性強い感じでスキットをやってほしい、って誘ったんですよね」
SOY-B「結構前から『スキット頼むよ』って言われてて、『そんな気が利いたこと言えるかな……』って不安で、俺としては仲間として尊敬してるヤツからもらった話だから、かなりの責務だと思いましたね。色々考えて、正直に思ったことをメッセージに込めた気がします。その言葉の裏には『十影ナメんなよ』って気持ちがありますね」
 
■この曲では、最後の方に十影君のa.k.a.がいくつかシャウトされてるよね。それぞれ、なんでこういう異名が付いたのかの説明をお願いします。まず、なんで“なめたろう”?
「ナメてるし、舐めるの好きだし……」
 
■アダ名って、大体他人に付けられるモンじゃん?
「他人が付けますね」
 
■じゃあ、“なめたろう”も誰かに付けられたんだ?
「いや、自分っすね」
 
■自称かよ。
SOY-B「フザけた会話の中で、ポンっとa.k.a.が出て来るんですよ」
「今回入れなかった以外にも色々あるんですよ。“カリスマ試着室”とか」
 
■“カリスマ試着室”とは?
「俺がクラブでナンパして女をフロアの端に追いやるときに、『ほら見てごらん!パルコPART 3の試着室だよ!』って(覆い被さるように)囲うっていう」
 
■うわっ、キツ!
「そういうときに使う技で、ウチのクルーのCAZINOがマジでa.k.a.付けたがりなヤツで、『いやぁトカちゃんホント、カリスマ試着室だよ〜』って(笑)。それ以外にも“キャンタマエレベーター”っていうのもありますね(以下略)」
 
■“スケベ椅子職人”は?
「某ストリート系雑誌の『BBOY PARK』特集に俺が載ってて、スキンヘッド+バンダナ+迷彩の上下とかだったのに『BBOY PARKで見つけた一番のオシャレさん』とか書いてあって。そのときに、『職業は?』って訊かれたんで酔っ払ってた俺は『俺か?スケベ椅子職人だ(ドヤ)』って答えたら、それが半ページぐらいのデカさで載ってました、『職業:スケベ椅子職人』って。本当は、スケベ椅子は作れません」
 
■もう、いちいちエピソード訊くの疲れたから次の曲行きます。
 

 
07.“TKG”(Pro. by ZOT ON THE WAVE)
「まあ、これもa.k.a.ですね。別名というか、“十影”を英語にするとTKGになる。KOHH“JUNJI TAKADA”のビートジャックをやったときぐらいから言い始めたんですけど、KOHHがあの曲で『ティートゥエーニィー』って言ってるじゃないですか。あそこをなんかパクりてぇな、って思ったら『ティーケージー』ってフレーズが思い浮かびました。で、コレで曲を作ろうと思ったとき、めちゃめちゃ洋モノっぽいことをしたいな、って思ったんです。DRAKEとかTYGA、WIZ KHALIFAみたいなラップを日本語ラップのフロウにしてやってるラッパーって結構多いじゃないですか。でも、WAKA FLOCKA FLAMEっぽいラップをする日本人っていなくないですか?そういう男くさいアッパーなラップをやってみました」
 
■故に、LEX LUGERっぽいビートも使ってる、と。韻のところを女の子に歌わせてるのが、個人的にはジワジワ来て、それが曲のキャッチーさにも繋がってると思うんだけど。
「韻を踏むとこだけフロウを固定させてるじゃないですか。その部分を自分の声でやっても意味ないかな、って。最初は自分の声を変えてやろうと思ったんですけど、それも違うな、って思って、女の子にやってもらったら逆に『言わせてる感』も出るし、キャッチーになっていいかな、って思ったんですよね」
 
■「誰もがビビるタフな陰茎」とか、完全に言わせたいだけだもんね。
「その部分とかレコーディングのときに、『……あ、今のとこちょっとキーがズレてるから、もう一回いいかな?』ってもう一回頼んでみたり」
 
■本当にクズですね。まったくプロフェッショナリズムを感じないエピソードだ。
 
 
08.“The End Of The World feat. RAW-T”(Pro. by Saburo Beats)
■で、この曲で一転マジメな曲調になるって、何考えてるんだよ。アルバム中でも異色な曲だと思うけど。
「やっぱりBIG-Tがいなくなってから“死”というモノが近い存在というか、意識するようになったんです。『死んだらどうなるんだろう?』とか。死んだら世界は終わるし、世界が終わったら死ぬんだな、みたいなことを考えたとき、『明日世界が終わってもいいように動かないとダメだな』って思うようになったんです。明日世界が終わって死ぬってときに、仲間とわだかまりが残ってたり好きな女とセックスしてなかったらイヤじゃないですか。死ぬときにしこりを残さないように生きていきたいという意思表明なんですよね。アルバム作ってるときに思ってたんですよ、『6〜7曲録れたけど、明日死んだらヤベェな。録り終わるまでは死にたくねぇ』とか、スゲェ思った。BIG-Tが、まだやりたいことがあってこれからやっていくぞ、ってときに死んじゃったから、アイツの気持ちを考えると俺は『明日死んでもいいように頑張っていこう』って思ったんですよね。アイツの分もやっていきたいって気持ちも強いし。で、(客演で参加した)RAW-TもICE DYNASTYの初期メンバーのMIRAを亡くしてるから、境遇もグループ内で置かれてる立場も似てると思うんですよ。だから、この曲はRAW-Tにしか頼めねぇな、って誘ったらスゲェ良いヴァースを蹴ってもらえましたね」
 

 
09.“伝えたい事がある”(Pro. by Pentaxx.B.F)
■で、この曲では正にそのBIG-Tに向けて歌っている曲だけど、今作を作る上で、やっぱりこういう曲は外せないという思いがあった?
「この曲はアレですね、“経過報告”ですね。『今、こんな感じなんだぜ。でも、お前がいたときはこんな感じだったな』みたいな感じで。この曲を墓前で聴かせてあげたかったんです。彼の命日にこの曲をYouTubeで公開したんですけど、テルのお兄さんがこれを墓の前で流してくれたらしいんですよね。……彼がいなくなってから『自分もやらないと』って思うのは遅かったし、本当にダメだなって思いますね。ヤツがいたらもっと出来たことがいっぱいあっただろうな、って想いもあるし、でもいなくなってからそれを言ってもどうにもならない。せめて、アイツが思っていたことを少しでも叶えてやりたいな、って思います。アイツが死んだ日から、アイツの五体になったつもりで動いていきたいってずっと思ってるんですよね。だから、彼に『アルバム出来たし、取り敢えずちゃんとやってるからよ』って……ちゃんとやってるかは分からないですけど(笑)、そういうことをテルにまず聴いてほしかったんです」
 
■十影君から見て、BIG-Tはどんなヤツだった?
「台風みたいな男でしたね。身内ではしゃいでるときは俺と一緒で、本当に子供だったし、結構ギャグやくだらない話も好きなヤツでした。楽しいことを常に求めていて、それがいろんな方向に行っちゃうようなヤツでしたね」
SOY-B「いなくなっちゃったからこそ、台風みたいなヤツだった気がするよね」
「そういう風に考えると、すごい速度で生きてきたヤツだな、って。戦国武将みたいな感じ」
SOY-B「頭も良いヤツだったし、戦国時代だったら結構良い地位まで行けるヤツだったでしょうね」
 
 
10.“My Way”(Pro. by KM-MARKIT)
「この曲はもう、仲間に向かって歌ってる曲ですね。LUCK ENDでは自分がリーダーみたいな感じでやってきてたけど、イヤな思いもいっぱいしてきて結構投げやりになってたりしたときもあるんです。でも、仲間がなんかあったらすぐ消えるようなラッパーとか超多いじゃないですか。LUCK ENDのヤツらはそんなときでも絶対に逃げ出さないでいてくれたんですよね。俺、ヤカラに六本木で軟禁されて3時間ぐらいシバかれたときがあって、携帯なんかいじれない状態だったけど、なんとかポケットの中の携帯から、着信履歴の最初に残ってたテルに電話したんです。俺は何も喋れる状態じゃなかったけど、バンバン詰められてる声がテルに聞こえてて、『この声はアイツのとこか』って気づいた彼らがすぐ向かいに来て解放してくれたんです」
 
■スゲェ、映画か不良マンガみたいな話だ(笑)。
「携帯鳴らした15分後ぐらいに来てくれましたね。そのとき、俺は顔パンパンだったんですけど、解放された瞬間にみんな笑ってて、テルに『口ん中とか切れてるっしょ?刺身パーティしようぜ!』って言われて、みんなで築地行って死ぬ程マグロ買ってアジトで顔冷やしながら刺身食ってました。アレは良い思い出ですね。LUCK ENDは『帰る場所』なんですよね。何かイヤなことがあったらブレたり投げ出したくなるけど、そんなときに帰れる場所がある中でやれてる俺は幸せだな、って。この曲はアルバムが完成してからメンバーに聴かせたかったから、(取材時)まだ誰にも聴かせてないんですよ」
SOY-B「まだ聴いてないですね(笑)」
 
■そういう粋なことするんだ……いやらしいなあ……(笑)。
 
 
11.“ネ申曲2”(Pro. by shirakabe sick)
「自分、結構ニュースとか超観るし、社会情勢や時事ネタとか詳しいんですよ。今、日本と世界でどういうことが起きてるか知っていたいし、知ってないとダメだと思うんです、狭い世界で生きていたくないから。最近だと“イスラム国”の問題とか、川崎の少年が殺された事件とか、色々考えさせられましたね。日本や世界で『なんかおかしいな』って思うようなこと、結構あるじゃないですか。でも、日本人って無関心すぎると思うんですよね。この曲では、『こういうことがあって』っていうことを掻い摘んで言ってるから、そこまで突っ込んだ内容にはなってないですけど、知らないリスナーがいたらここから興味持って色々知っていってもらいたいな、って思いますね」
 
■さっき言ったけど、僕の中での十影君のイメージって無邪気だったり少年っぽい感じだったんだけど、この曲含め今作の後半部分って、ちょっと大人への階段を上がろうとしてる感じがあるな、って。今作を作ったことによって、自分自身が成長できたという意識はある?
「あー、それはすごいあるっすね。このアルバムは『作ろう』っていう感じじゃなくて、『作らなきゃいけない』と思って作ったんです。今まで生きてきた経緯や、仲間にあった色々なことを踏まえたら、コレは世に出さないといけないミッションだ、っていう気持ちが強かったです。だから今作はマジメな曲も多いけど、作るのに苦戦した曲とかも結構ありましたね。頭プシューってなってきたんで、次のミックスCDでは『身になる曲:ゼロ』みたいな内容にしたいですね(笑)。今回のアルバムは自分の中では良い感じに出来たしすごい自信がある一枚なんで、反動で『良いの出来たから、取り敢えず次はまたフザけんべ』ってなるんだと思います。カメレオンみたいな人間なんで、そのときの気分ですね」
 
■具体的に、次作りたいアイディアとかあるの?
「いろいろあるっすね。それは出たらのお楽しみって感じですけど、マンガで言う“ネーム”はいっぱいあるんですよ。10分の1ぐらいしか出来上がってないですけど、そういうアイディアが溜まってる内はどんどん具現化していかないとダメだな、って」
 
 

Pickup Disc

TITLE : ネ申物語
ARTIST : 十影
LABEL : THE FOREFRONT RECORDS
PRICE : 2,376円
RELEASE DATE : 6月3日