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DOTAMA

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「自分はアウトサイダーな感じでずっと来てるから、ラップを続けること以外で、ラッパーとしての説得力を持たせられないんですよ。辞めた時点で『ほら、だからあんなスタイルじゃダメだったじゃん』って言われるのは、悲しいし悔しい。続けること自体が自分の存在の証明になるという。それが自分の活動の根源にはあるんですよね」

 
 UMBを始めとするMCバトルの最前線で戦い続け、同時にリリース・アーティストとしてもコンスタントな制作を続けるDOTAMA。ただし、USKやハハノシキュウなどとのコラボ・アルバムのリリースはあったものの、DOTAMA名義の純粋なソロ作としては2010年リリースの「音楽ワルキューレ」以降、5年に渡ってリリースはされてこなかった。
 
 そして、その決して短くない時間の末に完成した新作「ニューアルバム」は、これまで以上に“DOTAMA”というアーティストを明らかにするものだった。彼の作品は基本的に客観性や物語性が作品のコンセプトになっていたが、今回は“イズム”や“キャリア”といった彼自身の視点を中心線にし、悲観も希望も、怒りも喜びも全ての感情を込めながら、彼自身の輪郭を明らかにする。そして、その内容の充実振りからは、DOTAMAという存在自体が新たなステップを踏み出したことをしっかりと感じ取れる、新たな名刺を切った一枚だ。
 


 
■ソロとしては5年振りのアルバムになるけど、その意味では、純粋なソロ作を作る欲は強くなかったの?
「矛盾してるんですが、“アティテュード”が重要なラップっていう表現方法を使いながら、自分自身のアティテュードを表明することが少し苦手だったんです。じゃあ、なんでアティテュードの極地であるMCバトルに出るんだよって感じなんですが。コンセプトだったりっていうワン・クッションを挟んだ表現の方が、自分にとってやりやすい部分がありました」
 
■ただ、過剰に人見知りとか、閉じた感じなタイプではないよね。映画『TOKYO TRIBE』への出演や、スペースシャワーTV『あいうえお作文RAPプロジェクト』への参加など、外部にアプローチする動きも積極的にやっているし。
「そうですね。10年サラリーマンをやっていたので、コミュニケーション・スキルは少しですが(苦笑)、あります」
 
■「音楽ワルキューレ」をはじめ、DOTAMA君の作品はストーリーテリングだったり、そこまで行かなくても客観的な視点で作られた曲が多かったと思うんだけど、そういう楽曲になっていたのは、今の話の流れで言うと「自分の視点からワン・クッション挟む」故だったのかなって。
「自分はAnticonにも影響を受けてるんですが、昔、2MCを組んでた相方とHIP HOPを聴き漁ってたとき、Anticonレーベルから出た作品の中で、『自分のチンコが大きすぎて女の子に嫌われる』っていうストーリー物の作品があるっていうのを聞いて。しょうもない内容だけどなんて面白いんだ!自分でもそういうのが作りたい!と思って。そういう影響で、コンセプチュアルだったりストーリー的な作品作りに向かったっていうのはあります。それから、HIP HOP的なストリート性だったり、ギャングスタ的なアプローチが、HIP HOPのオーソドックスな部分にはあると思うんですけど、そういうストリート的な部分が自分にはないから、やっぱりラッパーだと認めてもらえない部分もあって。今はバトルなどで『DOTAMAだ』って分かってもらえるけど、バトルで名前を上げるまでは、やっぱり認めてもらいにくかった。そういう部分に対して、自分としてはそこまでコンプレックスを感じてはいないんですけど、それもあって、“逃げ”ではないけども、アティテュードを全面に出すような、オーソドックスなHIP HOPとは違うアプローチに進んでた部分もあります。でも、単純に言えば、一緒にコラボして作りたい人に出会って、そこで作って出してたっていう方が、説明としては正しいのかもしれない」
 
■ある種、「普通のHIP HOP」からは外れていたという自覚があった、と。
「今は『UMB』や『戦極MC BATTLE』さんの流れでラッパーとして認知してもらえて、HIP HOPのイヴェントに出させてもらってもいますが、2〜3年前まではバンドさんとの対バンの方が多かったし、むしろそっち側のフィールドにいる機会が多かったです。でも、結局バンドではないし、かといって俗に言う『HIP HOPらしい』ラップってわけでもないから、いずれにしても“アウトサイダー”な感じでした。今でも、自分にとってのホームがないと言えばないとも思う。でも、コラボ作品を作ったり、色んな現場で色んな経験や吸収をさせてもらってきた中で、自分のソロ名義で、自分が聴きたい、カッコ良いと思える『ストレートなラップ・アルバムを作ろう』って、このアルバムを作るタイミングで思ったんです。だからこそ今回は、全部の曲が自分を説明する曲にしたいなって」
 
■今回のアルバムの大きな特徴は、「DOTAMAとは何者か」を自己説明している曲が多い部分だと思うんだけど、それは意図的だったんだ。でも、多くのラッパーは1stアルバムでそういう曲を作るよね。
「そうなんです。『俺はレペゼンどこそこ』『どういう仲間がいて』っていう曲は、キャリアの最初の頃に作る。でも、自分は1stアルバムでそういった曲を作らなかったし、それから5年間作ってこなかったんです。“レペゼン”って言葉が象徴的だと思うんですけど、そういう『自分自身をレペゼンする』っていう表現が苦手だった。でも、今回は自分の言いたいこと、自分のこと、自分のイズムを形にしようと。だから、一曲目の“HEAD”みたいな、自分の名前を歌詞に織り込む、非常にラップらしい、ラッパーしか出来ない曲も作りました」
 
■そう「自分をレペゼン」しようと思ったキッカケは?
「ある程度作品を出してきて照れがなくなったのもありますが、『そろそろ』って自然に思ったんですよね。あと、2013年〜14年のMCバトルが大きかったと思います」
 
■良い成績を残したことが、自分自身を表現する上での担保になるというか。
「対外的な成績もあるけれど、むしろ自分の内面への影響が大きいです。大きな戦いで、自分のアティテュードを表現することに強い力を感じました。それに、バトルには2003年ぐらいから出させてもらってますが、10年経つと出場する顔ぶれも変わってきて、僕のことを知らない人も増えてくる。『バトルでは見たことあるけど音源は知らない』と。だから、一回聴いただけでDOTAMAというラッパーが何者かが分かる作品を、そう思った今だからこそ作りたいなって。それもあり、広く聴いてもらえる盤にしなければと思いました」
 
■だから、“栃木のラッパー”であったり、自分のバックグラウンドを表現してる部分も強いよね。
「そうですね。改めてラップを始めた頃から今までの自分の活動を書いてみて」
 
■ただ、“栃木のラッパー”は愛憎相半ばというか、地元に対する愛着とフラストレーションみたいな部分も感じる曲ではあるよね。
「キッカケといえば、2010年のUMB栃木予選の決勝で、僕は負けたんですよ。それがとにかく悔しくて、次の年も栃木予選にエントリーしたら、そのときは一回戦で負けてしまって」
 
■その年は東京予選で優勝してるけど、地元の予選では一回戦負けだったんだ。
「そのときに、地元の先輩に呼び出されて、『DOTAMAさあ、お前は東京の人間だろ』って言われたんですよ」
 
■その部分は“栃木のラッパー”でも言ってるね。
「『術ノ穴』に所属していることもあって、2008年ぐらいから東京や埼玉でライヴをやらせてもらうことが多かったんですよね。そういう流れもあったと思うんですが、『なんで栃木の予選に出るんだ?東京でやれよ』って。その言葉は自分には『なんで地元以外で活動してるお前が、栃木を背負うような意欲を見せてるんだ』って聞こえたし、それは正直、ホントに頭にきて。『東京で活動はしているけど、栃木が好きで、地元でサラリーマンをやりながらラップをしてるのに、なんでそんなこと言われなきゃいけないんだ』って。そういう、自分の気持ちが分かってもらえてない部分を感じることが多かったんですよね。でもそれは一方で、自分の説明不足でもあると思って。だから、自分の作品の強度を増す、自分のラップの説得力を増すために、自分のことを説明する必要があると思ったんです」
 
■ある意味、逆ホームタウン・ディシジョンみたいな目に遭ったら「じゃあ別の場所でやったるわ!」と思っても仕方ないと思うんだけど、それでも栃木をレペゼンしたいと思うのは?
「自分はアウトサイダーな感じでずっと来てるから、ラップを続けること以外で、ラッパーとしての説得力を持たせられないんですよ。辞めた時点で『ほら、だからあんなスタイルじゃダメだったじゃん』って言われるのは、悲しいし悔しい。続けること自体が自分の存在の証明になるという。それが自分の活動の根源にはあるんですよね。もちろん自分でしか出来ない、やりたい表現もある。だから、ラッパーとして認めさせるためにラップを続けなくちゃいけないし、栃木をレペゼンするために、栃木のことを歌わなきゃいけないと思うんです」
 
■加えて“栃木のラッパー”は、素朴なパトリオティズムだとも思ったんだよね。単純に「育った地元だから好き」っていう。でも、そういう理由なく好きな場所から、厳しい視線を当てられても、腐らずにそれでも愛着を形にするのは、強いなって。
「狂ってるのかもしれないですね(笑)。だから、この曲に関しては理由がないんです。執着はしてないけど、誇らしくは思ってるし、やっぱりホームは栃木でありたいなって。自分でも自覚してるんですけど、30歳になって、周りがラップを辞めていったり、現場にも来なくなったりする中で『なんで自分はラップを続けるんだろう?』『なんでバトルに出るんだろう』って考えたら、ミュージック・ジャンキー/ミュージック・ラヴァーだからだと思うし、狂ってるからだと思う。そういう、シンプルだけど一番強い、狂気とも言える部分を出せればなって」
 
■“名曲の作り方”で「1stアルバムを超えられない」って言ってるけど、そうラップした理由は?
「よく『前作を超える傑作!』っていう謳い文句があるじゃないですか。それを聞くと、『じゃあ前作は何だったんだ……』って思っちゃって。大人げないんですけど」
 
■うん、それは大人げないよ(笑)。
「でも、腑に落ちないんですよね(笑)。この曲の場合は、『1stを超えられない』って言うことで、『1stはスゴいんだよ』って逆説的に自分で褒めてる部分もあって」
 
■そういうことだとも思うけど、「1stを超えられない」「名曲を作れない」って大書するのは、アルバム3曲目にしてはペシミスティックすぎないかなって。
「みんな、泣けたり感動したりする“名曲”を作ろうとするじゃないですか。そういう部分へのアンチテーゼって部分があるんですよね。そういう曲作りも、もちろん否定はしないけど、みんながみんなそれをやるのって、“お涙頂戴”をみんながやってるみたいに感じるところがあり。だから、曲の最後で『MC DOTAMAが降臨、私だぜ』っていうのは、『自分は名曲の作り方は知らないけど、この俺、DOTAMAだけしか出来ないカッコ良い曲は作れる』っていう自負として言っていて」
 
■だから、悲観的な部分とレペゼンの部分が共存しているよね。
「今回はアルバムを通して、自分のことを書くとはいえ、自分を曝け出すのはエネルギーが必要だったので、クマさん(KUMA THE SURESHOT)のビートで自分の思いを全部ぶちまけたのが“名曲の作り方”だったし、このアルバムを作るのに必要な曲でしたね」
 
■個人的には“イオンモール”がすごく印象的で。
「地方の疲弊は田我流氏も書いてますけど、地方出身者としてそれを自分の形でやりたいと思ったのが“イオンモール”で。ビートメイカーのセイイチさん(クロダセイイチ)も、もともと茨城の人で、同じ地方出身者としてそういうメッセージ・ソングとして作れればなと思ったんですよね。フィーチャリングにはカクマクシャカに参加してもらったんですけど、彼も沖縄で活動しながら、スタンスを変えずに原発の問題だったり、一貫したメッセージを書いているラッパー。だから、この曲を書くには、カクマクシャカの参加が必要だったんです」
 
■僕としてはホラーというか、この閉塞感はすごく辛く感じたんだよね。地方の大型のショッピング・モールって、地方の疲弊と、資本のスポイルの象徴とも思うんだよね。それは、僕も地方出身だから思ってしまうのかもしれないけど。
「でも、モールって楽しいと思うんですよ」
 
■そう、楽しいんだよね。でも、その楽しさって、すごくディストピアっぽく感じる部分もあって。周辺がどんどん死んでいく中で、モールが中心になっていって、そこに集うっていうのは、収容所のような気にもさせられて。DOTAMA君としては、この曲をどう捉えてほしいと思ったの?
「投げっぱなしってわけじゃないんですけど、曲の意味っていうのはリスナーに任せていいのかなって。ただ、多角的に聴けるようにしたいっていうのはずっと思ってますね。“イオンモール”もそう。地方が疲弊して大変だっていうのもあるけど、同時にそれが出来たことで整った娯楽施設が出来て、みんなが週末はそこで楽しんでる。そういう良いところも悪いところもあるよねっていう。すごく大雑把ですけど、人生もそういうことなのかなって。ただ、曲調は享楽的ではないですよね」
 
■曲調と合わさると、明るくは取れないと思うんだよね。それは“カリカチュア”もそうだと思って。「誰しもが仮面を付けてる」っていう風に悲観的に受け止めることも出来るし、「だからこそ生きていける」ってポジティヴに取ることも出来ると思うんだよね。でも、曲調からすると、寂しい方向を感じざるを得ないというか。
「もちろん、『たくましく生きようよ』っていうメッセージが全ての中心なのですが、そうですね、確かにストレートに明るい曲は作れないかもしれない。同時に、ストレートに暗い曲も作れないんですよ。それが自分の作風でもあるのかなって」
 
■その意味では、自分のアティテュードを出すというのは「自分はこう思う、だからこう分かってほしい」っていう直線的な意識も内包してると思うんだけど、アティテュードを出しながら、多角的な作り方をするということは、DOTAMA君自身が多角的に捉えられたい、掴ませられないようにしたいということなのかなとも思えるんだけど。
「『自分の思いを認めてもらえない/分かってもらえない』っていう気持ちが、自分の精神性の中には厳然とあって、それと常に共存して生きてきたし、それが自分の多角的な視点を養ったと思いますね。それによって多角的に作品を作っていたんで、DOTAMAって人間が見えづらかったと思うんですよ。でも、今回もすごく分かりやすいわけではないけど、自分のストレートな意見も多角的な意見も、両方出せたと思うし、こういうバランスのスタイルでやっていきたいと思いますね。いろんな見方をされながらも、それでもやるしかないっていう」
 
■だから精神論的というか、「でもやるんだよ」精神がDOTAMA君の根本にはあるんだなって、この作品からは感じさせられて。
「それが“こんなぶっ壊れた国で”に繋がるのかもしれないですね。『こんなぶっ壊れた国で何をこれ以上壊すんだ。もう壊すものなんてないんだから、そろそろ次の建設をしなくちゃ』って」
 
■全否定の先に全肯定があるという。
「そういう視点になってほしいって思うんです。だから、精神論というか、発想としてのポジティヴィティがどの曲にもあると思っています」
 
■なるほど。その意味では、自分を作品として出してみて、感じたことは?
「このアルバムは、自分にとっての『HIP HOPアルバム』です。自己紹介をしつつ、自分がやりたい表現やトピックも形に出来たので、名刺になる作品が出来たと思うし、この作品を作れたので、ここから色々と広げられることが出来るのかなって。次作も取り掛からせてもらっているんですが、今回の延長のような部分も強くなると思います。この作品で自分が考えるカッコ良いラップの原型が出来たかなと思えたので。それと、自分のアティテュードを形にした楽曲をもっと作れればと思ってます。9月11日のワンマン・ライヴは自分の集大成にしたいし、ここから楽しんでもらえるものがもっと作れるよう、精進したいですね」
 

 
b>EVENT INFO
DOTAMA「ニューアルバム」発売記念ワンマンLIVE
『ニューワンマン』 
日時:9月11日(金)19:00開場/20:00開演
場所:渋谷O-NEST
料金:前売り 2,000円/当日 2,500円(各ドリンク代別)
(問)O-NEST:03-3462-4420
プレイガイド:
e+(イープラス) http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002162765P0050001P006001P0030001

 
 

Pickup Disc

TITLE : ニューアルバム
ARTIST : DOTAMA
LABEL : 術ノ穴
PRICE : 2,160円
RELEASE DATE : 8月12日