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LIBRO

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「今年出した3枚で、自分のキャリアをしっかり更新できたかなって思いますね。そして、その3枚で展開したアプローチが、次の作品だけじゃなくて、作品を出すごとにまとまって、統合していければ嬉しいです。それぐらい手応えがあるんで、そこに協力してくれた、これまで客演してもらった人全員に、本当に感謝してますね」

 
 2014年リリースの「COMPLETED TUNING」で本格的な再始動を果たしたLIBRO。そして、2015年はBLACK SWANより「GEAR」、自身のレーベル:AMPED MUSICからは「拓く人」、LIBRO x 嶋野百恵名義によるタッグ作「オトアワセ」と、3枚の作品をリリース。しかも、客演を多く呼び込みトラック・メイカーとしてのアプローチが強かった「GEAR」、トラック・メイカー/ラッパーというマルチな才を前面に押し出した「拓く人」、そしてコラボレーションという化学反応を形にした「オトアワセ」と、その3枚ともにまったく違う構成、そして彼のこれまでのキャリアを再認識させるような三つのアプローチを、リスナーに向けて表現した。そして、どの作品とも、LIBROらしい柔らかで温かみのある、しかし芯のしっかりと強い作品であり、改めて彼の才能をシーンに知らしめる作品となっていた。そういった制作面でのモティヴェーションの高まりなど、2015年のLIBROの動きについて、全般的に伺った。
 
 
■今年は3枚のフィジカル盤のリリースに加え、餓鬼レンジャー“Raindrops (Album Ver.) feat.LIBRO”への参加や、『UMB(KING OF KINGS)』へのバトル・トラックの提供など、かなり活発な一年になりましたね。
「自分が制作者として集中すればどこまでやれるかっていうのと、どれぐらいリリースすれば生活が成り立つのかっていうことに対して、チャレンジしてみたかったんですよね。それに、活動としては止まってた時間もあるので、『COMPLETED TUNING』以降のリリースの勢いを止めてはいけないって思いもあったし、活動が継続できるってことを実証することも必要かなって。それで、今年はとにかく出し続けてみようかなって思ったんですよね。それから、AMPED MUSICを一緒にやってる人からアイディアをもらってる部分も強いですね。おかげでこの制作ペースを保ててる部分もあって」
 
■それは具体的には?
「音の方向性、テーマ、作品の根本の部分からアイディアを出してもらえるんですよね。だから、レーベルのプロデューサー的な立場でもあるし、瞬間としてはそのアイディアに従って、俺がマニュピレーターになるときもある(笑)。特に自分がラップをする作品においては、プロデューサーの視点が本当に必要で。その動きは『COMPLETED TUNING』からそうで、それが今のレーベルの方向性ですね。それもあって、作品がボツにならないんですよね。作るモノは全力で作ってるからというのは当然だけど、自分ひとりで作ってるワケじゃないから、出来上がったモノには自信が持てるんです」
 
■作る上で合議という“社会”があるから、そこで既にOKとNGのラインが生まれて、そこを通って出来たモノは必然的にOKになるという。
「活動を止めた直前は、自分ひとりで作ってたから、作っても自信が持てなかったり、出すことに躊躇してしまって。それでどんどん自分の中に閉じていってしまって、リリースも出来なくなっていった部分があったんですよね」
 
■自家中毒に陥ってたんですか。
「でも、今は信頼できるプロデューサーがいるから、このスピードで作れるんです」
 
■では、「COMPLETED TUNING」をリリースしての反響は如何でしたか?
「待っててくれたり、近くにいた人はすごく喜んでくれたし、それは本当に嬉しかった。周りを見なくても若い頃は作品を作れたけど、今はただ作ってるだけっていうのは、モティヴェーションとして難しくなってて。作ることの喜びをどこで感じるかとか、自分の制作にどう繋がるかと考えたら、やっぱり接してる人の反応だったり、どう伝わるかって部分が強いし、それが制作欲求に繋がるんですよね、今は。でも、その外側の反応に関しては、あんまり分からないですね。ライヴもそんなにやってなかったし、ちょっとエゴサーチもやってしまったんですけど、しんどくて止めました。一時、MPCのパッドが反応しなくなって、内側のボタンを爪楊枝で押してたときがあったんですけど、そのときに感じたのと同じように『この行為はHIP HOPじゃないな』って(笑)」
 
■確かに、爪楊枝でMPCを打つのはHIP HOPじゃないですね(笑)。
「スゲェ早く押せたんですけどね(笑)。同じように、エゴサーチも自分の中ではHIP HOPじゃないと思ったんで、止めました」
 
■2015年のLIBROさんの動きとしては、特に「拓く人」で顕著でしたが、“ラッパー”としての展開が大きなトピックになると思います。
「『COMPLETED TUNING』のときは、自分がラップするアルバムを出すとは思ってもなくて」
 
■そのときのインタビューでも、オフレコ的に「次作はラップ・アルバムになるかは分からない」と仰られてましたね。
「今を10とすると、『GEAR』のときもラップに対しては6分ぐらいのテンションで。今振り返るとそうですね」
 

■その意味でも、「GEAR」はプロデュース・アルバムに近い作品でしたね。“音信”に関しても、「feat. LIBRO」というクレジットで。
「『COMPLETED TUNING』に近い、あの作品の延長をやりたいっていう希望があったんですよね。ただ、BLACK SWANとしては『全曲ラップしてほしい』って思惑もあって、そのせめぎ合いの結果、あの形になったというか」
 
■それが、LIBROさんが一曲だけラップをするという落とし所になったんですか(笑)。
「ただ、そのときは『拓く人』も並行して作ってたんですよ」
 
■「拓く人」はLIBROさんがマイクを多く取られたラップ・アルバムでしたが、その時点では「拓く人」はラップ・アルバムになる前提だったんですか?
「そうですね。ただ、もうちょっと制作に時間がかかると思ってたんですよ。その意味でも、『GEAR』と並行して作ってる段階では、『拓く人』ではラップするっていうイメージはあったけど、その準備や心構えがまだしっかり出来てなくて。だけど、『GEAR』が出来上がって、そこでラップ・アルバムを作る決意がちゃんと出来たんですよね。そのための〆切を切ることが、自分の中で出来たというか(笑)」
 
■「GEAR」はD.OやGOKU GREENなど、9SARI GROUP/BLACK SWANと繋がりの深いメンバーに加えて、PUNPEEが入っていたのも印象的で。おふたり(PUNPEEとLIBRO)とも、HIP HOPがベースにありつつ、そこにポップ・センスや柔らかさがあるのが共通してるようにも思えて。
「ラップもトラックもやるって部分では似てるかなとも思うけど、結果的には全然違うのかなとも思いますね。でも、メガネ繋がりって部分と、携帯がお互いガラケーだったっていうのは、自信を持って似てると言えますね(笑)」


 
■そして繰り返しになりますが、「拓く人」はラップ・アルバム、しかも客演も絞られて、LIBROさんのラップが全面に出る作品でした。
「ラップ・アルバムを作るなら、フィーチャリングはなしぐらいの勢いで作らないといけないかなっていうのは考えてましたね。ソロで、この曲数のラップ・アルバムは実は作ってきてなかったし、そういう、今までにやったことのないことをやらなきゃいけないなって」
 
■「胎動」もラップ曲は5曲ですし、Fuuri「Fuuri」もラップはされていませんからね。
「そうなんですよね。だから、ラップ曲は実は少ない(笑)」
 
■「拓く人」や「オトアワセ」でも顕著ですが、LIBROさんのリリックは内面性や精神性が強いですね。
「ほとんどすべて、そうですね。元々そういう『ケ』があるというか。ラップをスタートさせた時点から、仲間と騒ぐような曲は作ってないし、こういう歌詞が自分の持ち味なんだろうなって。それに、ここまで自分の感情だったり、内面/気持ちを書くラッパーは、他にはあんまりいないから、それを中心に据えれば、ラップが映えるだろうとも思うんですよね。こういうことを書いても、失うことはないし」
 
■どういう結論ですか(笑)。
「このラップを聴いて、どう思ってくれてもいいなって思うし、それを分かってくれる人が少しでもいれば、それでいいかなって」
 
■でも、自分の内面を書き続けるのは辛くないですか?自分の暗闇が見えちゃったりすると、辛くなるときもあるのかなって。
「ラップを書くのは、自分の内面を探る時間という感じですね。それは自分の中の嫌な部分も含めて。でも、それをそのまま表現するんじゃなくて、言い方を変えてポジティヴにしたり、解釈を変えて表現できれば、表現者として自分を高めることが出来るのかなとも思う」
 
■LIBROさんのリリックや言葉には“探求”というフレーズが多いと思うし、それが今の話にも繋がる部分がありますね。
「良い言葉だと思うんですよね。同じことを取り上げても、浅瀬を見るか深い部分を見るかで違うと思うし、自分は深い部分を見たいんですよね。でも、タイプ的に、ラップは日常的に書けるわけでもないんで、リリックには時間はかかりますね」
 
■トラックよりラップの方が大変ですか。
「そうなりますね。だから、ラップ曲を作るとなると、ラップの方に重心がかかるんで、トラックの展開でなんとかしようとするよりも、ラップで展開を作ろうとして、トラックはシンプルになりますね」
 
■「COMPLETED TUNING」以降は、細かく展開したりするよりも、サンプルのフレーズが重要になったトラックが多いですね。
「あんまり刻まない音の方がいいなって。それはいつの時代の音でもそう思いますね。サンプリングの権利云々はあると思うんですが、それを超えたサンプリングの良さを活かしたサウンドを、素直に作りたいなって」
 
■ただ「三昧」やFuuriの頃は結構刻んでましたよね。
「うん。自分で何が出来るのかを考えてた時代だったし、HIP HOPから離れていきたいとも思ってたんで、ああいう展開になっていってて」
 
■且つ、最近のLIBROさんのトラックはBPMは80〜90ぐらいが中心になってますね。
「それぐらいのBPMが絶対急がない、焦らない速さかなって。このBPM帯って、歩くスピードに近いと思うんですよね。それぐらいの速さなら、間違いがないかなって」
 
■生体リズムに近いというか。例えば「今っぽい」とされるビートは興味はありますか。
「正直、好きじゃないですね」
 
■「好きじゃない」までいきますか(笑)。
「全然好きじゃない(笑)。あんまり毒々しい音が好きじゃないんですよね。自分の中での表現として、強くても『ひんやりした音』は好きなんですけど、毒々しい、えげつないモノはやっぱり好きじゃない」
 

■「オトアワセ」も柔らかな作品になってますね。その作品は嶋野百恵さんとのタッグ作として制作されましたが。
「コラボレーションの作品を、このタイミングでリリースしたいなと思ってたんですよね。やっぱり『拓く人』を作ったから、『オトアワセ』が出来たって部分が大きくて。『拓く人』タイプの『ラップもトラックも作れるLIBROというソロ・アーティスト』としての作品を、コラボ作を作る前には出す必要があったと思う。且つ、リスナーの中には、昔のLIBROの記憶がある人もいると思うけど、このタイミングでソロとして仕切り直して、その記憶を書き換えたかったんですよね。その意志で『拓く人』が出来たと思うし、そこに自信が持てたから、その次は誰かの力を含めた、コラボっていう作品に進めたと思うんです。それで、コラボするのに相応しい相手は誰かと考えたら、しっかりタッグを組めて、縁がある嶋野さんかなって」
 
■古くは「胎動」の“対話 feat. Momoe Shimano aka MOE'T”、「COMPLETED TUNING」で“One by one feat. 嶋野百恵”、「拓く人」では“フィーリンググッド feat. 嶋野百恵”と、LIBROさんの作品には欠かせない存在となっていますね。
「その流れもあって、今回は曲中では共演してないんですよね」
 
■その構成は驚きました。しかも、もちろんヴォーカルや歌詞を前面に出した曲もありますが、スキャットに近いアプローチや、声の位相が後ろの方にある曲もあって。だから、ヴォーカリストを迎えるというよりは、もっと楽器寄りの、存在感として抽象性の高い起用になってますね。
「そうですね。そういった作品にしたいっていうイメージがあったんで、それを嶋野さんに伝えて、そのアプローチでコラボしてもらって。だから、彼女のリリックが出っ張ったり、歌が前に来た部分は、削らせてもらった部分も実はあるんですよね。そういう風に『オトアワセ』はライトな空気感にしたくて。嶋野さんのヴォーカルも良い加減でふわっとした、言葉があまり入ってこなくてもいいっていう温度にしたかった。だけど、僕のラップがスマートに加減できなくて暴走しちゃって、結果的にラップはしっかりしたモノになったんですね」
 

■音の質感も、「GEAR」や「拓く人」よりも抜けが良いし、音の配置も細かく感じて、その意味では同じくコラボであったFuuriのときのモードにも近い感じがして。
「サンプリングはサンプリングだけど、音重視の作品にしたいと思って、こうなっていきましたね。その意味では、今年出した3枚で、自分のキャリアをしっかり更新できたかなって思いますね。そして、その3枚で展開したアプローチが、次の作品だけじゃなくて、作品を出すごとにまとまって、統合していければ嬉しいです。それぐらい手応えがあるんで、そこに協力してくれた、これまで客演してもらった人全員に、本当に感謝してますね。特に、MC漢には2曲も参加してもらって、スゴい追い風をもらいました」
 
■その意味では、今後の作品もすぐ出そうですか?
「ペースはもうちょっと落ちると思いますけど、面白いことは考えているし、もう作り始めてはいますね」
 
■イメージとしてはどんな作品になりそうですか?
「まだハッキリとは決まってないですが、フィーチャリング・アルバムというか、『COMPLETED TUNING』のような構成に、もっと自分のラップが載る、ラップをメインにした作品になるのかなって。ただ、この3枚のリリースでちょっと一区切りがついた感じがあるので、もうちょっと冷静にリリースしていければなと思ってますね」
 
 

Pickup Disc

TITLE : GEAR
ARTIST : LIBRO
LABEL : BLACK SWAN
PRICE : 1,512円
RELEASE DATE : 1月14日

TITLE : 拓く人
ARTIST : LIBRO
LABEL : AMPED MUSIC
PRICE : 2,800円
RELEASE DATE : 4月2日

TITLE : オトアワセ
ARTIST : LIBRO x 嶋野百恵
LABEL : AMPED MUSIC
PRICE : 2,800円
RELEASE DATE : 10月7日