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INTERVIEW[インタビュー] RSS

SKY-HI(後編:「カタルシス」全曲解説)

インタビュー:高木“JET”晋一郎

 
【前編はコチラ
 
 
01.“フリージア〜Prologue〜”(Pro. by SHIMI)
■まず、このアルバムは基本的に、作品の根本のメッセージを言葉の裏側に隠していると思うけど、この曲では「愛の無い時代」という非常に明確なテーマを歌詞として表出させてるよね。
「メロの展開や音のミックスでも、その部分の声を浮かび上がらせるようにしていて。それは、このテーマと言葉をアルバム全体に通底させたかったから。このメッセージはどの曲にも通じるし、この言葉をリスナーが認識してくれたまま“アイリスライト”まで辿り着かせて、その上で“カミツレベルベット”から同じ『愛の無い時代』というフレーズの登場する“フリージア〜Epilogue〜”まで到達しないと、アルバム全体のコンセプトが分かりづらくなっちゃうと思ったんですよね。だから、その部分だけはこうやって明確にしようと思って。インタビュー前編でも語った通り、全体を俯瞰する内容だから、その部分としてもこの言葉を明確にすることは必要だったと思います。あと、全ラインがこのアルバムの伏線になってますね。色の話とか、天気とか。例えば、この曲は曇り空で始まって、“スマイルドロップ”で『通り雨』が降るんですけど、そういうアルバム全体での時間軸も意識してます。MV含めて、アルバム全体でひとつの作品であるために」
 
 
 
02.“Ms.Liberty”(Pro. by FIREHORNS, DJ WATARAI)


■曲調やラップはすごく軽やかなんだけど、内容は『自由を求める』という、渇望を感じさせる部分が強いよね。
「大体いつもこんな感じなんですよ(笑)」
 
■それも暗いな(笑)。
「自由って、求めてるときは結局自由じゃないってことですよね」
 
■求めるってことは欠乏してるってことだからね。
「追いかければ追いかけるほど遠のくかもしれないけど、でも『追いかけることにも高揚感があるよな』ってことを表現してるのが“Ms.Liberty”で。『高級車にブランドのバッグなんかじゃ君は気にも留めない』って言ってるんですけど、『物質的な欲求』と『自由』って、やはり相反するものだと思うんですよね」
 
■落語の『水屋の富』じゃないけど、「所有する」ことで欲求は満たされるかもしれないけど、その分“制約”は増えるよね。
「そういう部分も表現できればなって」
 
■SKY-HI君は自信に溢れることも言うと同時に、こういう孤独感や「満たされない思い」みたいな部分がモチーフになる場合が、これまでも多かったよね。
「『自分は音楽シーンのトップに立てる存在である』っていう自信と自負はあるんですよ。だけど、そこに立つまでの難しさだったり、そういうトップ・チームと比べたら現状は負けているっていう認識も、やっぱりあるんですよね。“自信満々”っていうスタンスはあるんだけど、そこに届いてないっていうことも痛烈に感じてるから、こういう孤独さだったりフラストレーションが出るのかなって。僕は『分かる人だけ分かればいい』っていうゲームはやってないし、ずっと『自分はどう戦うべきか』を考えてるから、その意味でも『理想を追いかける孤独』っていうのは、メンタリティとしてあると思いますね」
 
 
 
03.“スマイルドロップ”(Pro. by UTA)
 
「『笑顔の理由が零れ落ちる』っていうのと、『笑みが溢れる』っていうことのダブル・ミーニングになっていて。前編でも話したように、この曲でキッカケが出来たことで次のステップに進めたし、作品としても、このアルバムの物語を紡ぐための入り口になってくれる曲ですね」
 
■アルバムを通して“フリージア”“カミツレ”“アイリス”と、花の名前が多いよね。今回のジャケットでもドライ・フラワーを持ってるし、この曲も当初のタイトルは“カラスウリ”だったと、以前のインタビューで話してたけど。
「カラスウリの花言葉は“誠実”なんですけど、そこからのインスピレーションです。だけど、スタッフとの協議で『流石に“カラスウリ”はダサい』ってことで“スマイルドロップ”になって(笑)花は“生死”のメタファーとして分かりやすいと思ったんです。一番分かりやすいのは、咲いて枯れるってことですよね。それから、野に咲く花もあれば人間に育てられないと咲かない花もあるし、ひとつの花を育てるために他の花は刈られたりする場合もある。しかも、勝手に花言葉を付けられたり、わざわざ枯らせて愛でるドライ・フラワーなんて、人間のエゴの象徴みたいなこともされて。でも、そういう風に、永遠の命を欲しがる人もいますよね」
 
■一方で、桜のようにパッと咲いてパッと散るのが美しいという価値観もあるよね。
「そういう生と死のメタファーとして、花というのは、象徴するものが大きいし、分かりやすいなって。それで、花が今作の表現の中には多く入ってきたと思います」
 
 
 
04.“Count Down”(Pro. by BROKEN HAZE)
■非常に直接的にフラストレーションを表わしてる部分が強いし、同時に「価値は自分で考えるしかない」ということを表わした曲だよね。
「“スマイルドロップ”から“Luce”に繋げてしまうと、メッセージとしてちゃんと表現できなさそうだと思って、“Luce”のメッセージをしっかり伝えるために必要だった曲ですね。だから、“Ms.Liberty”“スマイルドロップ”“Count Down”まで入れて、やっと“Luce”に進めたと思います。生きることは失い続けることでもあると思うんですが、このアルバムの前半ではとことんその喪失感やもどかしさを歌ってますね。ただ、"Ms.Liberty"で話したように、届かないことや失うことをただネガティヴなことだとも捉えてないから、サウンドは暗いものだけじゃなくて振れ幅広くアトラクティヴに持ちたかったというか。そして、それを通過して、どうやっても前向きには受け止められない『喪失の究極系』として、直接的に死を歌った“Luce”に向かいます」
 
 
 
05.“Luce”(Pro. by 夢幻SQUAD)
■“Luce”は明確に“死”のことを歌っているよね。
「“Luce”を、以前は『書いちゃダメだ』と思ってたんですよね」
 
■それは何故?
「悪く言えば、友人の死をネタに曲を書くってことにもなるだろうし、そう捉えられかねない。それはすごくイヤだったんですよね。でも、やっぱり友人が亡くなったということは、当然だけど自分にとってすごく衝撃的だったし、ショッキングなことで。だから、そういった『人が自ら命を絶つ』という事象に対して、俯瞰的だったり社会的な見方じゃなく、自分自身がそのことに対してどう思ったか、それに直面したときにどう思ったかを書きたかったんです。それは、今回のアルバムのテーマに対して大きな影響を与えてるし、いつしか『書くべきだ』というマインドに変化していって」
 
■この曲は「相手がこう思ってただろう」とか、「周りはこう思ってた」みたいな憶測は書かないで、「自分がどう思ったか」「自分はどう見たか」という主体的な視点でしか書いてないよね。
「だからこそ、『自死はダメだ』みたいな、観念的な話にしたくなくて。前編でも言ったように、『死にたい』って感情は比較が出来ないし、年間に3万人が自死する日本で、その中のひとつに直面したときの感情を歌おうと思ったんですよね」
 
■それは、自死者数のような主体が曖昧になりがちな“数”じゃなくて“個”の自死に、個として向き合うということだし、すごく誠実な態度だよね。
「どんなにオーセンティックなHIP HOPを作っても、どんなポップスを作っても、やっぱり“誠実”でありたいんですよね。ナメた態度で作りたくないし、ハードルを下げた表現はしたくないんです。それはこの曲を含め、どの曲もそうだと思うし、このアルバムはその結晶だと思いますね」
 
 
 
06.“As A Sugar”(Pro. by KREVA)
■「Get free」という言葉でこの曲も始まるように、全体として自由を求めるアルバムだと思うけど、それは非常に困難であるということも同時に言ってると思うし、その部分はこの曲が象徴してるよね。だからこそ、曲のラストで『何も怖くない』って強くシャウトしてるんだろうし、自分を鼓舞しなければいけないほど、自由と困難は隣り合わせだってことなんだと思う。
「そうですね。自分の力でどうにもならないことの多さを知っていくと、前に進むのって怖くなると思うんですけど、まさにこの“As A Sugar”なんて、“Ms.Liberty”とテーマ的には同じ筈なんですね。なのに、“Luce”を通過した後だとこうなるというか。そこら辺の関連性も含めて、『カタルシス』はここからが第二幕のスタートです。そもそも自由って、『自分で考える』ってことだと思うんですよ。でも、人間は自分で考えてるつもりでも、社会通念や常識とされるもの、教えられる倫理に支配されていて、そう考えるように仕向けさせられてたりする部分も本当に強いんだと思う。その上で自由を求めると、正義とされるモノや社会通念とはやっぱり戦うことになる。それでも自由を求めたいんですよね」
 
■その意味でも、さっきの物質よりも自由を求めるという意志も含めて、本質的にSKY-HIはアナーキストなんだと思うよ(笑)。この曲はKREVAのプロデュースだね。
「こういった内容の作品を、サウンド的にはストリング主体で作りたいってイメージがあったんですよね。そう考えてたときに、偶然KREVAさんが『これはSKY-HIに合うと思うんだよね』って聴かせてくれたのがこのトラックだったんです。だから、自分が求めてたサウンドとKREVAさんがくれたトラックが、自然にシンクロしたのがこの曲で。このトラックを『僕らしいトラック』って思ってくれるのって、僕のことをしっかり見てくれた人だと思うし、KREVAさんは僕のことをよく見てくれてたんだなって。でも、僕のラップは褒めてくれるんだけど、他の部分はあんまり褒めてくれないんですよね。KREVAさんは厳しいんです、僕に(笑)」
 
 
 
07.“F-3”(Pro. by DJ WATARAI)

■SKY-HI自身がその道筋をつけたとは言え、“F-3”をリスナーがTwitter上で謎解きしていったのは非常に興味深いことで。
「“F-3”の読解をみんながしてくれたことで、リスナーとの信頼感が本当に深まったと思うし、“Serial”だったり“Enter The Dungeon”が理解される下地になったと思う。そのアプローチの成功の象徴が“F-3”だったと思いますね。しかも、歌詞の読み取り方が明らかにおかしい発言があったら、『それは違うんじゃない?』ってリスナー同士で修正したり、自浄してくれたのが面白かったし、それはgenius.com的な楽しみ方が日本でも出来るんだってことを、確信させてくれたんですよね」

■それがダブル・ミーニングだったりという、歌詞の重層化に繋がったと。
「KENDRICK LAMARの『TO PIMP A BUTTERFLY』もすごく複雑な構造の作品だけど、それが普通に全米/全世界的に評価されてるじゃないですか。だけど、日本は土壌が違うからそういうアプローチをやらないっていうのはやっぱり違うと思うし、日本人でも日本語でそういう重層的な構成の作品を作るのは全然可能でしょ、と思ったんですよね。2000年代に、フロウの面でSEEDA君が、サウンドの面でBACHLOGIC君が日本語ラップの価値観を変えたように、僕はアルバムの構造や歌詞ヂカラで、価値観を壊したかったんです」
 
■個人的には、USのそういったムーヴメントと並行してる部分と共に、日本の職業作詞家がやってきたことにも近いと思ったんだよね。特に、松本隆の歌詞世界観に近いのかなって。
「作詞家として、すごく松本隆さんを尊敬してるし、ハードルだと思いますね。“スマイルドロップ”のリテイクのときは、『打倒:松本隆』でした(笑)。“はいからはくち”ってフレーズとか、凄いじゃないですか」
 
■はっぴいえんどの曲だね。「ハイカラ白痴」「肺から吐く血」、しかも最近になって、「ぼくはYES(はい)から血を吐きながら 君のNO(脳)にただ夕まぐれ」というトリプル・ミーニングだったことが、松本さんのTwitterの発言で明らかになって。
「物事を表現するときに、例えばAのことを書くときに、普通はAを色んな角度で書きがちじゃないですか」
 
■結果、過剰説明になったりして、本質が見えづらくなる場合もあるよね。
「でも、松本隆さんの歌詞はAの周りを塗り潰してAを浮かび上がらせる形だったりするし、それがすごく面白いんですよね。その書き方は詩的であると同時に、何を書くにも説得力を持つことが出来ると思って。その構成力を手に入れるために、“スマイルドロップ”は182回、リテイクしたんです」
 
 
 
08.“Young,Gifted and Yellow”(Pro. by Mr. Drunk)
■都市論として読むことも出来る曲だね。その意味でも、自由も孤独も、自己も他者も、やはり「人の関係性」の中で起こるわけだから、そのテーマの中に人の交差する場所である“街”が入ったということになるのかなって。
「この曲はどこの街とは指定はしてないけど、明確に渋谷を匂わせてもいて。それには理由があって、この曲のインスピレーション源である“TO BE YOUNG, GIFTED AND BLACK”(NINA SIMONE)は公民権運動の曲なんですけど、日本でもデモクラシーだったり政治に対するアプローチが増えていますよね。そういう動きも渋谷で起こったりするし、自分が遊んでた渋谷や、レコード/HIP HOPの聖地だった渋谷……とか、色んな側面があると思う。そういう変化に対して、過去の自分に対しての君や“Luce”の君、デモをしてる君、ただ遊んでる君……とか、いろんな角度で書いたんですよね。ただ、大きなテーマとしては“喪失”から来るノスタルジーと、その感情に対する向き合い方ということになると思います。最後にカタルシスを感じてもらうために、アルバム全体を通して人間の感情を誘導するように作る、という点を強く意識していて、メッセージやコンセプトに拘るからこそ、楽曲ごとに矛盾が起きないよう最大限に気を配ったし、だからこそ普通に聴いてたら自然と楽曲が誘う感情に添えるような作り方というか。時系列もちゃんと存在して、曲順通りに進んでいくんですよね。それが、この後の展開に効果的に作用してくる」
 
■この曲はMr. Drunk(Mummy-D)のプロデュースで、90's的な雰囲気も感じるね。DJ WATARAIや蔦谷好位置の参加など、プロデュースでビッグ・ネームの参加も印象的だけど。
「ただ、ネーム・ヴァリューで参加してもらったって部分はまったくないんですね。Dさんは『INSIDE OUT』に一緒に出させてもらったときに、“F-3”を褒めてくれたんです。そのときに『90'sフレイヴァーの強い曲をやりたいんですよね』って相談したら……『あっ!』って(笑)」
 
■「Mr.Drunkがいる!って」(笑)。
「そうそう(笑)。それでDさんにお願いしたんで、結果としてこういった人選になったという部分も強いですね」
 
 
 
09. “朝が来るまで”(Pro. by ist)
■複雑なアルバムの中ですごくシンプルに聴ける曲だから、ある意味では気を抜ける場所になっていて。
「“Young, Gifted and Yellow”からの繋がりとしても聴けるんだけど、同時に“スマイルドロップ”以前の、笑顔の理由が足りなくなる前の、単純に幸せだった世界の曲ですね。この曲があることによって“スマイルドロップ”の深みが更に増すと思って。ここで時間軸に歪みをもたらせたかったんですね、次の曲からの展開の前フリ的に。もうひとつは、R. KELLY的な、ラップに対してまだアレルギーがある人向けのラップ・アプローチというチャレンジですね」
 
■R. KELLY的なモテ感もあるよね。彼のような変態性はないけど(笑)。
「前作の“Blanket”の女子人気が異常で、『こういう男はやっぱりモテるんだ』と思ったし、自分はそういう男だから、それは書かなきゃなって(笑)。そういう『LADIES LOVE SKY-HI』的な」
 
■王子様としてのSKY-HIを。憎たらしいな(笑)。
「フフフ(笑)。女性の恋心を刺激できる自分でもやっぱりいたいなって。複雑なアルバムだけども、こういった部分まで排除してしまうのは、それはカッコ良いとは思えなくて」
 
■そう。このアプローチをやらないと、サービス精神云々の前にSKY-HIの魅力が弱くなるよね。だからこそ重要な曲だと思って。
「そうですね。ファン・サービスとも違うけど、こういう部分も自分の特性だと思うし、やり続けたいなって」
 
 
 
10.“Seaside Bound”(Pro. by SONPUB)


■シングルとしても強さのある作品だったけど、アルバムの構造として重要な曲になってるね。
「『不安と安堵 逆さまの Sand』って、砂時計のレトリックを使ってるんですけど、ここから時間軸が変わるんですね。この楽曲の後半と共に、アルバム全体の時間軸が遡っていく」
 
■ただ、その構造は分かりやすくはないよね。
「うん。だから、それが分からなくても楽しめる音楽的強度は担保しなきゃなって。こちら側の使ってるメタファーやギミック、レトリックが押し付けになったらエンターテインメントにならないし、理解が出来ない人は付いてこれないっていう作りのアルバムには絶対にしたくなかった。そういう敷居の上げ方はあんまり意味がないと思うから。もっと言うと、この曲に限らずレトリックやダブル/トリプル・ミーニングを多用する以上、意図した仕掛けが全て捉えられるなんてことはほとんどないし、逆に意図してない捉えられ方をされてどうこう言われて苦しむこともあるんだけど、その解釈を強制したり聴く人をこちらから選んだりするのはアートじゃないし、それは小説家も映画監督もみんなが味わう軋轢だから、どんな解釈も受け入れようと心に決めています。古文や和歌なんて、発表から何百年〜何千年と経ってもいまだに『これはこういう意図だ』『いや、こういう意味だ』とか繰り広げられてるわけだし、僕の場合は、そのおかげで“フリージア”みたいにメッセージを言い切ったときの浮かび上がり方も、強くしてると思う。あとは、生きてる間にステージの上で作品の力とメッセージの強さを証明し続けるだけっていうか」
 
■この曲については、リリースの時に公開インタビューをさせてもらったので、そのインタビューも併せてどうぞ。
 
 
 
11.“アイリスライト”(Pro. by Nao'ymt)

■「君がただ『幸せ』って言う/一秒が作れたら/それだけで/いつも僕は僕になれる」という歌詞が象徴するように、この曲は相互補完的な肯定感であったり、他者との相対としての自己肯定という部分が強いよね。
「“スマイルドロップ”や“Luce”が、孤独や虚無、絶望が前提としてあって、それを“フリージア”では『愛の無い時代』って言ってて。でも、そういう愛のない時代という認識の上で『生きてる意味』を探したときに、それをどう見つける/どう感じるかっていったら、こういった、お互いに補完するような自己肯定なのかなって」

■だから、“朝が来るまで”や“Seaside Bound”といったラヴ・ソングの後にこの曲が来るのは、意味があるよね。
「『他者がいないと自分は成り立たない』っていうのは、ラヴ・ソングがずっと表現してきたことですよね。だから、そういう名曲はたくさんあったと思うし、この曲も主題が2ndヴァースで歌っているようなこととかにあるからこそ、ラヴ・ソングとして強くなることも重要だなって。“自己”は他者の存在によって確立すると思うから、自分の確立には他者が欠かせないし、必然的に他者との関係は書かざるを得ないんですよね。例えば、僕を“歌うたい”たらしめる証明は、歌を聴いてくれるリスナーがしてくれてると思ってるし。だからこそ、僕とリスナーとの関係は一対多数じゃなくて、一対一がそこにいる人の数生まれている、という認識で。そうやって、日頃から他者と自己の関わりについては強く感じていたから、ラヴ・ソングとしての強度が高まるのは自然なことでもありました」
 
■だから、“自意識”や“エゴイズム”に取り込まれた作品ではないし、「他者へ持つべき優しさ」という部分も表現されていて。この曲は“君”と“僕”という、すごミクロな関係から始まって、視点がどんどん広がって「白黒黄色流す血の赤/混ぜるアイはまだ足りないのかな」と、マクロな視点になっていくよね。でも、「せめて君だけはそこにいてよ」と、視点がまた最小の関係性に戻る構成も興味深かった。
「派閥争いや戦争みたいな、『多数vs.多数』みたいなものも、突き詰めたら一対一の連鎖でもあると思うし、正にいま引用してもらった言葉に大きなテーマを置いてるんだけど、世界が5原色で構成されてるのに、白人、黒人、黄色人種、流す血の赤だけで、青色=藍色(アイリス)はないですよね。だから、人間は“アイ”っていうピースが最初から欠けてる存在とも言えると思うんです。だからこそ“アイ”を探すのかなって」
 
■且つ、今回のラヴ・ソングは、ジェンダーやセクシャリティを男女には固定してない部分も素晴らしいなと。
「そうしましたね。男女でも、親子でも、友達でも、兄弟でも、姉妹でも成り立つ愛の形っていうか」
 
■同性同士でも成り立つよね。
「そういう切り口を多く持たせたかったんですよね。“フリージア〜Epilogue〜”に出てくる『愛、夢、優しさに正しさ』は、不確かなものの象徴なんですけど、不確かな故に、その受け取り方は広くしたかったんです」
 
 
 
12.“カミツレベルベット”(Pro. by 蔦谷好位置)

■この曲は、本当にポップに振り切った曲だよね。シングルの段階から本当に軽やかで素晴らしい曲だったけど、このアルバムの流れにあることで、本当にカタルシスを感じさせる曲になってるなって。
「自分としても、本当にポップに振り切れたと言う手応えがあったし、この曲を作ることが出来た自分にも感動したんですよね。“スマイルドロップ”の182テイクを超えた後に作った曲だったし、本当に勝負の一曲でした。でも、シングル・チャートとしては、200枚差でトップ10入りを逃してしまって、それは本当に悔しかったし、その悔しさはこのアルバムのクオリティを上げる要因になったと思います。ライヴやこのアルバムを通して人気曲になることで、やっとこの曲の素晴らしさがちゃんと伝わって、形になればと思いますね」

■本当に強さと希望を感じる曲だけど、でも、歌詞としては、それは苦闘の果てにあるという構成だよね。だから、この曲も無闇に明るさを歌うわけではない。
「愛とか自由を歌ったときに、無条件に明るいことには僕の場合はやっぱりならないんだと思う。かと言って、愛とか自由は過剰に重かったり、大変なモノでもないってことも、同時に言いたいですね。ある種、アルバムを通しての結論が一回ここで言えるというか。話は変わりますが、MVも逆再生で撮ってるんですが、それは当時から“Seaside Bound”でのレトリックみたいなものをアルバムで取り入れようと思って作っていたが故の伏線で。この曲のMVの最後で逆再生から本再生になって、額縁を取って“画”であった青空が現実のものになるシーンは、今見ても我が事ながら……こめかみに来ます(笑)」

13.“フリージア〜Epilogue〜”(Pro. by SHIMI)
■エピローグでもう一回、プロローグと同じ主題や言葉を歌うけど、違った意味合いを生み出しているよね。
「“カミツレベルベット”のPVが逆回転で作られてたり、“Seaside Bound”で砂時計を逆さまにしたり、って部分で表現してるんですけど、アルバムの内容が『遡る』んですよね。だから、遡った上での“二周目”の“フリージア”だから、同じ言葉でも意味がまったく変わるという」
 
■観念的というか、SFチックな構成だよね。リスナーとしては“フリージア〜Prologue〜”から始まり、その間の曲での“成長”を経た上で“フリージア〜Epilogue〜”に繋がるから、同じ言葉であっても、経験を経た上での言葉に変わってると思うし、経験によって「強さ」を獲得したことによって言葉の意味が変わったんだなって。だから、このアルバムはひとつの成長物語なんだと思った。且つ、その強さというのは「自己の確立」ということなのかなって。しかも、「話をしよう」というのは、確立した個同士で話をしようということだよね。
「そうですね。やっぱり依存するのは違うと思うんで。その辺り、同じ『話をしよう』でも、“フリージア〜Prologue〜”とは聴こえ方が全然違ってくるのも感じてもらえると思います」
 
■最終的に、「その答えは」という言葉で終わるよね。“フリージア〜Prologue〜”の「その答えは」がリスナーへの“謎かけ”だとしたら、“フリージア〜Epilogue〜”での同じ言葉は、リスナーへの“問いかけ”になってると思うんだけど。
「“答え”を出した方向に正しい道があるのかは誰にも分からないし、極端に言えば、『生と死』のふたつで“生”を選んだ結果、幸せかどうかは分からない。そうやって、“幸せ”っていうイメージ自体、不確かで曖昧なモノだと思うし、それについてどう思うかの答えは、言いたくなかった」
 
■その答えこそ、究極に人それぞれだよね。
「だけど、このアルバムを聴いて自分を確立できた/確立したいと思った人は、その答えを自分で探すことが出来ると思うんですよね。当然、いろんな答えがあっていいと思う。でも、その答えを出す自分を確立してほしいし、僕はその答えを尊重したい。そして、リスナーにそれを促せる人であり続けたい」
 
 
 
 
■以上、全曲解説ありがとうございました。最後に、これからのSKY-HIの動きは?
「メジャー2年目だった去年の公約が『めっちゃやる』で、実際めっちゃやったんですよね。そこで手応えもあったけど、同時にいろんな辛さや軋轢もあったし、大変な思いもして。だけど、そこで撒いた種を今年は花にしたいですね。だから、3年目の今年の公約は『結果出す』。具体的には、事実としてひとりでも多くの人がCDを手に取ってくれれば、それがチャートっていう結果に反映されるわけですよね。『数字に拘るのはダサい』っていう意識は僕にはないし、その部分ももっと貪欲にいきたい。その意味では、“アイリスライト”がiTunes総合チャート1位になったり、オリコン・ウィークリーで2位になったことはすごく嬉しかった。だけど同時に、もっと届かせることが出来るなって。そういう称号を獲ったことで更に先に行けるって思えた。更に言えば、もっと『売れたい』って。例えばミスチルとかPerfumeみたいな、誰もがNo.1だって思うところまでは、ランキングの1位を獲ったとしてもまだ遠いし、そのスケールの違いを1位を獲ったことで更に感じさせられて。だから、売り上げも動員も、もっともっと拘っていきたい。大幅に伸ばしていきたい。それは、数字にすると無機質に見えるものだけど、そこには確かに俺を応援してくれる人の姿があるわけだし、その結晶だとも思うから。そのためには良い曲を作って、良いライヴをやって、今のファンをとことんまで満足させながら、新しいファンの数ももっと増やしていく。それが目標でもあるし、“国民的”になるために唯一にして絶対に必要なステップなのだと思います。……そう、本当にそれが一番大事だと思いますね。類似したアーティストや、替わりになるような人のいない存在であり、SKY-HIのライヴを観に来た人に、他のライヴでは味わえない満足をさせるライヴをしたいんです。それが出来れば、結果は自ずとついてくる筈だし、実際に現状そう出来ているから一年でワンマンの動員が2倍以上になった。それをありがたく受け止めつつ、だからこそ、その結果に甘えないで常に最高を更新していこうと、強くそう思ってます」
 
 
TOUR INFO
SKY-HI TOUR 2016 〜Ms. Libertyを探せ

2月14日(日) @金沢市文化ホール
2月18日(木)@福岡国際会議場メインホール
2月19日(金)@広島JMSアステールプラザ 大ホール
2月28日(日)@仙台電力ホール
3月5日(土)@愛知県芸術劇場 大ホール
3月11日(金)@大阪オリックス劇場
3月13日(日)@TOKYO DOME CITY HALL

 
 

Pickup Disc

TITLE : カタルシス(CD+DVD1)
ARTIST : SKY-HI
LABEL : avex trax
PRICE : 3,700円+税
RELEASE DATE : 1月20日

TITLE : カタルシス(CD+DVD2)
ARTIST : SKY-HI
LABEL : avex trax
PRICE : 4,500円+税
RELEASE DATE : 1月20日

TITLE : カタルシス(CD)
ARTIST : SKY-HI
LABEL : avex trax
PRICE : 3,000円+税
RELEASE DATE : 1月20日