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KUTS DA COYOTE

インタビュー:高木“JET”晋一郎

「カッコ良いことや小難しいことを言ってると、聴き手が勝手に意味を作ってくれるじゃないですか。だから、深そうな言葉を並べて、韻だけ踏んでいく方が実は簡単なんですよ。実際、小難しかったり、こねくり回したような作り方を、25〜6歳のときはやってて、そういう内容で『深い』とか言われたり、自分でもそういうモノを目指したりしてて。でも、そういう流れを変えたのがKREVAとかRHYMESTERみたいな、FGの流れだと思うんですね。彼らのような、『分かりやすいのにカッコ良い』って構成は相当難しいし、書く方としてはそういった方向性が自分のハードルになってますね」

 
 “ラブホなうfeat. T.O.P. (THUGMINATI)”が大きな注目を集め、同曲が収録された1stアルバム「ESCAPE TO PARADISE」もストリートを中心に話題を呼んだKUTS DA COYOTE。彼の2年半振りとなるニュー・アルバム「GLOW IN THE DARK」は、Y'Sや十影も所属するFOREFRONT RECORDSに移籍してのリリースということもあり、新たなKUTS DA COYOTE像を提示する作品と言っていいだろう。軽やかな部分も感じさせられた前作と比すると、夜の歌舞伎町を背景にし、暗闇の中で鈍い光を帯びて浮かび上がるKUTSの姿からも感じさせられるように、シンプルさやダウナーさが強い、ダークな色を帯びたサウンド性がまずは耳に残る。しかし、そこに載るKUTSのラップは、そういったダークな部分も現われるが、同時にファッションや女性といったポップなテーマも歌われ、そういったサウンドをKUTS流の「話芸」で彩っていく。そのバランス感が中毒性を呼ぶアルバムだ。
 
 
■前作から2年半というスパンでの新作ですが。
「時間的にはあっという間でしたね。でも、ライヴで自分の曲をもうやり飽きるほどやったんで、そろそろ次の作品を作ろうかなって思ってたときに、FOREFRONTから声をかけてもらって」
 
■レーベル移籍という環境の変化は影響しましたか?
「Y'Sや十影とは年齢も同じだし、センスや感覚も似てて、現場でも一緒になる場合が多かったから、そういった流れで事務所としても俺の感覚を分かってくれるので、すごく制作がしやすかったですね。だけど、俺が使ってたスタジオをY'Sに紹介したら、そこの使用スケジュールをY'Sにかなり押さえられちゃって、俺が使えなくなるっていう(笑)。だから、俺の方が制作に入ったのは早かったんだけど、結果、Y'Sの『SMALL ASIAN THE MIXTAPE』の方が先に出ちゃって(笑)」
 
■では、今作を作る上でのイメージは?
「前作でやってないこと、間逆なことがひとつのテーマでもありましたね。前作の“ラブホなう”がヒットしてくれたことで、それがコンプレックスになる部分もあったんですよ、正直。『あの曲しかない』と思われるのはイヤだし、他の部分も見せられるっていうのを今回は形にしたかった。その意味では、カウンター的にダークな部分が増えたってことがあるかもしれない。同じことをやりたくないっていうのは常に思ってるんで」
 

■確かに、前作はもう少し明るいトーンが基調としてあったけど、今回は全体的に“夜”のようなムードが強くて。
「前回はドライヴで聴いたり、南国に行きたくなるようなことを意識したんだけど、今回は逆ですね。リリックも夜書くことが多かったし、そのムードが反映されたというか。俺自身、福島の田舎で育ったんで、夜にやることがなかったんですよね。だから、こういう夜に聴けるようなアルバムがあったらよかったな、っていう気持ちも込めて、こういうトーンになりました。展開の少ない、じっくり聴けるような構成というか」
 
■某誌のレビューで、今作でテーマとなることが“ファッション”や“地方妻”だったりすることについて、「悪い意味ではなく、意識の高くない内容が中心なのが良い」って書いたんですよね。いわゆるメッセージ性だったり、良い発言のような「意識の高い」部分よりも、もっとフラットにAIR MAXが好きだから“AIR MAX95”を、タトゥーを入れてるから、“INK ART feat. Sophia”と、身近な話題を捻らずに、テーマと内容を直接的に結びつけて書くというのも、このアルバムのひとつのテーマなのかなって。
「カッコ良いことや小難しいことを言ってると、聴き手が勝手に意味を作ってくれるじゃないですか。だから、深そうな言葉を並べて、韻だけ踏んでいく方が実は簡単なんですよ。実際、小難しかったり、こねくり回したような作り方を、25〜6歳のときはやってて、そういう内容で『深い』とか言われたり、自分でもそういうモノを目指したりしてて。でも、そういう流れを変えたのがKREVAとかRHYMESTERみたいな、FGの流れだと思うんですね。彼らのような、『分かりやすいのにカッコ良い』って構成は相当難しいし、書く方としてはそういった方向性が自分のハードルになってますね」
 
■その意味でも、今回のアルバムは展開や構成としては、“話芸”として聴かせる部分が強いのかなって。且つ、こういう話芸な感じは、昔の日本語ラップの影響も感じたり。
「そうですね、日本語ラップめっちゃ聴いてたんで、その影響はあると思います。『これは何言ってるんだろう?』って表現も中にはあるとは思うんですけど、確かに基本的にはシンプルな部分はシンプルに書きましたね。自分の中で分かりやすいと思って書いても、相手には伝わらなかったりすると、もっと分かりやすく書かなきゃダメかって思うし、その結実が“POLO -ZOT on the WAVE REMIX-”みたいな曲だったり」
 
■今回のテーマはどのように立てたんですか?
「まず、『このテーマは誰も書いてないだろうな』とか『誰も使ってない言葉だから使おう』って部分が最初に来ますね。誰かと被る部分があったらそれを排除していくんで、その見極めで制作に時間がかかるって部分はあります。でも、焦ってないから、それが出来るまで、自分の納得がいくテーマが降りるまで、作らなくてもいいやって思ってますね」
Amebreak伊藤「世代的にはミックステープ世代だから、いっぱい曲作るってイメージがあるんだけど」
「そういうのは20代でやっちゃったんで」
 
■では、今焦らないのは?
「妻子持ちだし、昼間は普通に働いてるのも大きいと思いますね。だから、ラップは趣味の延長線上って部分があるので、焦る必要もないかなって。昔は『ラップでこのゲームを支配するぜ』とか思ってたけど、今は正直ないですね。それよりも、まずは自分の気に入ったこと、面白いことをやるっていう方に制作意欲が向いてます」
 
■ただ、“ラブホなう”的な、パブリック・イメージとしての「KUTS DA COYOTEっぽい曲」も求められる場合もあると思うんですが。
「“ラブホなう”的な内容を求める声もあるだろうし、ライヴでは求められるからそれはやりますね、当然。そこはケチる必要がないので。でも、その何番目のドジョウを狙わないのは、焦ってないっていうのが一番大きいかなって。売れたいっていうよりは、好きなことをやりたいし、っていう。“ラブホなう”はウケを狙った曲がたまたま当たったってだけだし、それだけじゃないって部分も出したいなって」
 
■とは言え、“地方妻”みたいな曲があるっていう(笑)。
「まあ、そういうのを求めてる人がいるだろうから、そこもサービスはしておこうかなって(笑)。俺はHIDE(X JAPAN)が好きなんですけど、彼が『ファンは置いていかない』ってことを言ってたんで、その言葉は意識してますね」
 
■前作よりも一曲一曲ごとに注力した感じと、もっと肩の力が抜けた感じを受けました。
「アルバムだと作り込み過ぎちゃうんで、それよりもミクステ寄りの感じに、気楽な感じにしようって。だから、その時々に作りたいって思ったものを形にしていくっていう方向性が強かったですね」
 
■ビート的にもシンプルな音像が強いと思いますが。
「『これは書きたいな』って自然に選んだビートがこういう雰囲気だって感じですね。だから、アルバムとしてまとめたときに『これ系が好きなんだな、今の俺は』、って自分でも思って。あと、情報の多いトラックは書きづらいんですよね。『泣いてください!』みたいなシンセ・リフが入ってたりすると、あんまり食指が伸びない。ラッパー側で感情を全部載せたいし、そこで情感を出したいんで、トラックはひたすらシンプルなのがいいんです」
 
■“AIR MAX95”や“POLO”のような、KUTS君が偏愛するファッション・アイテムをテーマにした理由は?
「“AIR MAX95”は、昨年発売から20周年だったんで、コレは書いておこうって。AIR MAX95はまず姉ちゃんが履いてて、それを見たとき、小学生だったんですけどホントに衝撃が走ったし、ひとつのファッション・アイテムが20年経ってもフレッシュって本当に凄いことだと思うんですよね。今観ても凄いデザインだと思うし、リスペクトとしてもいまだに愛してるってことを書こうかなって。“POLO”もそれぐらいの時期からずっと好きで。姉ちゃんが7歳上だったんですけど、東京のラルフ・ローレンで働いてたんで、それで上京するときに姉ちゃんの店で社割で買ったり(笑)」
 
■“CML&D”は途中から目線が変わっていく構成が興味深くて。
「『クラッシュ』(2004年/ポール・ハギス監督)って映画が好きで、それはいろんな視点が交差する映画なんですけど、それを音楽でも出来ないかなって。だから、ふたつの視点を書いて最終的にクロスするっていう構造にしたかった」
 

■アルバムに先行してPVが発表された“脳ミソくれ feat. MARIA from SIMI LAB”は、実はアルバムの中でも異色な部分の強い曲ですね。
「“ラブホなう”の次が“脳ミソくれ”ってどんなラッパーなんだっていう(笑)。そういう驚かしはちょっとしたかったかもしれない」
 
■この曲にMARIAを迎えたのは?
「『俺ひとりでゾンビの曲をやってもなぁ』っていうのと、そこに女性の声が入るのが面白いかなってことでMARIAに依頼したんです。でも、MARIAも『そんなテーマ書いたことない』って言ってましたね」
 
■その後が“緊箍児 feat. LADY KEIKEI”だから、頭に関わる曲が続く構成だと思うんですが、偏頭痛持ちとか?
「よく分かりましたね(笑)。ホントにそうですね。偏頭痛が出ると『これは何かの戒めなのかな?』って思います。だから、孫悟空の頭にはめられた輪をイメージして」
 
■MARIAにMARIN、Sophia、LILHONEYPRINCE、LADY KEIKEIと、女性の参加が多いのも今作の特徴ですね。
「まず、女の子の声が大好きだし(笑)、自分の作品には女の子の声が必要な要素だと思うんですよね。且つ、そんなに名前が世に出てない人も多いと思うんですけど、そこでリスナーに『誰なんだろう?』って驚きも与えたい。あと、結婚してるから女の子とデートとかないじゃないですか。だから、レコーディングのときに待ち合わせてスタジオまでエスコートするのが楽しいんですよ(笑)」
 
■ハハハ。その割には“地方妻 feat. KOWICHI, Niyke Rovin & LILHONEYPRINCE”という,
なかなかドギツイ内容もありますが。

「……あの曲は、奥さんが歌詞カード読んで、捨ててましたね(笑)。でも、ああいう曲を作ったり、MVに女の子を出したりしても理解してくれるのは嬉しいですね。ちゃんとそれがビジネスだってことを分かってくれてるんで」
 
■“深く考えなくていいよ feat. J-REXXX”は、渋いカラーのこのアルバムの中で、一際明るい曲ですね。
「ダークのまま終わるより、最終的には明るく終わったり、なんちゃって感を出したくて。J-REXXXはAKASHINGO(EMERALD)がやってたイヴェントに一緒に出てた縁で、10年以上の知り合いなんです。それで、彼のアルバム『M.U.S.I.C』が出たときに、CASTLE RECORDSの特典で俺を客演に迎えてくれたんで(J-REXXX & KUTS DA COYOTE & G.O“Oh My Sweet Ganja”)、今回は俺が迎えて、と」
 
■“深く考えなくていいよ”からブランク・トラックが続いて、隠しトラックが入ってるという構成もちょっと懐かしい感じで。
「でも、隠しトラックの作り方って、無音が長くて途中で曲が入ってる方法もあるじゃないですか。そっちの方がiTunes時代向けだったかなって」
 
■確かに、ブランク・トラックの方法はCD世代のやり方かも。そのボーナス・トラックにEMERALDが参加してますが、EMERALDの動きはどうですか?
「正直、分かんないっす(笑)。1stで“エエエエエエエメラ! feat. EMERALD”を作って以来、次に作ったのがこの曲だったし、クルーなんだけど、クルーとして制作に入るかはちょっと分からないですね」
 
■最後に、これからのKUTS DA COYOTEの動きは?
「ライヴで地方を回りながら、音源は早めに出したいと思いますね、今度は。書きたいテーマも浮かんでるんで、それを形にしながら、という感じです」
 

 
 

Pickup Disc

TITLE : GLOW IN THE DARK
ARTIST : KUTS DA COYOTE
LABEL : THE FOREFRONT RECORDS
PRICE : 2,592円
RELEASE DATE : 1月20日