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キング・ギドラ「空からの力」 20th ANNIVERSARY SPECIAL (PART 1:コラム -- 今こそ振り返るべき「空からの力」の“HIP HOPリリシズム”)

文:伊藤雄介(Amebreak)

 
【PART 1】
【PART 2】
【PART 3】
【PART 4】

 
 
今こそ振り返るべき「空からの力」の“HIP HOPリリシズム”
 
 「日本語ラップ冬の時代」と呼ばれた90年代初頭の厳しい時代を経て、小沢健二とスチャダラパーによる“今夜はブギーバック”やEAST END x YURI“DA・YO・NE”などがリリースされたのは1994年のことだが、それら大ヒット曲が支えたメインストリームでのラップ・ブームのカウンターを為すかのように、アンダーグラウンドの日本語ラップ・シーンが、作品として数多くの成果を残した年として記憶されるべきなのが1995年だ。アルバムというフォーマットで振り返ると、RHYMESTER「EGOTOPIA」、スチャダラパー「5th WHEEL 2 THE COACH」、MICROPHONE PAGER「DON'T TURN OFF YOUR LIGHT」、ECD「HOME SICK」などなど……「冬の時代」を乗り越えた男たちの鬱憤とルサンチマンを解消せんとするかの如く、凄まじい熱量とクリエイティヴィティに満ちた傑作が、この年には数多く産み落とされた。
 
 そんな大きなうねりを、1995年当時にシーンをフォローしていたリスナー/関係者は誰もが感じていた筈だが、その95年も終わろうとしていた年末の12月10日に、ダメ押しの如くリリースされたのが、キング・ギドラの記念すべきデビュー・アルバム「空からの力」だ。
 
 「日本語ラップ史上“最重要のアルバム”は何か?」と問われたら、今だとどんなアルバムが最も票を集めるのか分からないが、筆者はこのアルバムに迷わず一票を投じるだろうし、その思いは20年前のリリース時から変わることがない。だが、果たしてこのアルバムが、その後20年に渡って日本語ラップ・シーンを牽引してきたキング・ギドラのメンバーにとってキャリア最高の成果なのか?と問われると、そこには疑問が残る。Zeebraのヴァーサタイルなラップ巧者振りを堪能するには「THE RHYME ANIMAL」(98年)以降の作品を聴く方が適していると思うし、Kダブシャインの“ライム・サイエンス”が本当の意味で開花するのは「現在時刻」(97年)リリース以降だ。また、DJ OASISがプロデューサーとしてのオリジナリティを確立していくためには、90年代末以降のソロ活動がプロセスとして必要だった筈だ。同時期のUSラップで言うと、NAS「ILLMATIC」やTHE NOTORIOUS B.I.G.「READY TO DIE」のようなアルバムがクラシックとして挙がることが多いが、USシーンのルネッサンス期に当たる時期に産み落とされたこれらの作品と、日本語ラップ・シーンの黎明期から発展期に差し掛かろうとしていた時期に発表された「空からの力」とでは、“クラシック”の意味合いが異なる。
 
 では、2015年に「空からの力」を再評価するとしたら、どんな部分に注目するべきなのだろうか?
 
 
「「俺も、『別に韻踏んでないラップだって全然いいと思うし、英語使いまくったっていいし、ラップなんて何でもいいじゃん!』って一回思ったんだけど、バトルで韻踏んでない子が多かったから、っていうのもあるかもしれないけど、『踏んでねぇラップはラップじゃない』と改めて思ったんだよね。今は『踏んでなくてもOK』みたいな風潮が作品でもあるけど、それは絶対違うと思うんだ。海外のラッパーで踏んでねぇヤツなんて、絶対いないし、『ラップする』じゃなくて『ライムする』って言うじゃん?」
 
 
 上記は昨年末に掲載した、ギドラの“一番弟子”であるUZIのインタビュー内での発言だ。「ラップする」ではなく、「ライムする」。この概念を、日本語ラップにおけるアイデンティティのひとつとして成立させる上で、決定的な影響を与えたのは間違いなく「空からの力」だ。いや、誤解なきように付け加えておくが、もちろん「空からの力」と同時期に発表された日本語ラップ作品でも、当時のラッパーたちは「日本語で如何にUSラップと同様のスムーズさで韻を踏むか」という試行錯誤を繰り返していたし、そのレヴェルは80年代後半〜90年代初頭の日本語ラップのライミング・スキルとは比べ物にならない程進化を遂げていた。
 
 そんな中、何故キング・ギドラは当時の他のラッパーとは更に別次元の“踏韻”を提示できたのか。それは、彼らが持つ“HIP HOPリリシズム”と、“HIP HOPリリシズム”に対するリテラシーの高さが深く影響していると思うし、この点こそが本稿で最も強調しておきたい部分だ。
 
 英語が分からないリスナーがUSラップのリリックを理解しようとする場合、まずすることは“対訳”をチェックすることだと思う。もちろん、それは曲の内容を理解するためには極めて重要な行為だが、ラップを深く理解する上で「その曲で“何を”ラップしているのか」を理解するのと同じぐらい重要なのが、「(何を)“どう”ラップしているのか」ということだ。あるテーマについて、如何にライミング/比喩表現/単語やスラングのセレクト、フロウ/デリヴァリーなどのラップの載せ方といった“テクニック”を駆使して語っているのか --それこそがHIP HOPにおける“リリシズム”の醍醐味であり、その点が秀でているからこそ、RAKIM/NAS/EMINEM/KENDRICK LAMARといったラッパーたちは“リリシスト”と評価されているのだ。エモーショナルな言葉や普遍性のある表現のチョイスで幅広い共感を得るというのは、“詩人”として考えるなら優れているのかもしれないが、“HIP HOPリリシスト”としては物足りない。“HIP HOPリリシスト”は、例えば2小節で韻を踏む際のフリとオチの付け方や、一聴しただけでは意味が掴めない(が、噛みしめるとニヤリとする)ような比喩表現、ワン・フレーズで書けば済むような説明を、時には数行を費やしたりするといったテクニックを駆使することで、そのラッパーが伝えたいメッセージや感情を“増幅”させる技に秀でている。「破壊力のあるライム/リリック」は、そういった“増幅機能”が優れているものを指すのだと思う。
 
 キング・ギドラの2MC -- KダブシャインとZeebraは、USラップを“聴こえ”や“内容”だけでなく、“構造”にまで深く踏み込んで理解していたために(彼らがキャリア初期にまず英語でラップを試みていたという経験も大きいだろう)、当時のシーンにおいて段違いの“HIP HOPリリシズム”を提示できたのだと筆者は考える。USラップを如何に日本語に“翻訳”するかを試みていたラッパーは数多いが、当時の彼らほどUSラップを技巧/思想の両面で“直訳”することに成功したラッパーはいない。その“直訳”しようとする姿勢からは生真面目ささえも感じさせるし、彼らが自分たちの作品をもって当時の日本語ラップ・シーンにどうコミットしようとしていたかという“志”の確かさが、今聴き返しても伝わってくる。
 
 
 では、本作でギドラが表現した“HIP HOPリリシズム”は、どのような過程を経て煮詰められ、作品として昇華されていったのだろうか?それは、本特集用に敢行された、計3パート(インタビュー前後編+全曲解説)からなるロング・インタビューでの本人たちの発言を読んで頂く方が早いだろう。マニアックなエピソードも少なくないし、冗長に感じる人もいるかもしれないが、貴重な証言の記録として出来る限り掲載しようと思った結果であることを、予めご了承頂ければと思う。
 


 
 
INFO
「KGDR(ex.キングギドラ) スペシャル・トーク&サイン会: 名盤各務塾(特別編)」
日時:7月4日(土)15:30〜
場所:TOWER RECORDS渋谷店1Fイベントスペース
出演:KGDR(ex. キングギドラ)
司会進行:伊藤雄介(Amebreak)
http://tower.jp/store/event/2015/06/003019
 
 
『ワイルド・スタイル』『Nas/タイム・イズ・イルマティック」DVDリリース記念トーク・セッション
日時:7月5日(日)18:30開場/19:00開演
場所:HMV record shop 渋谷1Fイベントスペース
出演:KGDR(ex. キングギドラ)
http://www.hmv.co.jp/news/article/1506190003/
 
 
KGDR(ex.キングギドラ) 〜「空からの力」20th Anniversary〜 LIVE INFO
7月18日(土)『NAMIMONOGATARI 2015』 @ Zepp Nagoya
http://www.namimonogatari.com/
 
8月15日(土)『SUMMER BOMB produced by Zeebra』 @ Zepp DiverCity TOKYO
http://summer-bomb.com/
 
9月6日(日)『23rd Sunset Live 2015 -Love & Unity-』 @ 福岡県・芥屋海水浴場
http://www.sunsetlive-info.com
 
9月22日(日)『MUSIC TRIBE 2015』 @ 岡山県・岡山武道館
http://musictribe2015.info/

 
 

Pickup Disc

TITLE : 空からの力:20周年記念エディション
ARTIST : キング・ギドラ
LABEL : P-VINE
PRICE : 2,700円(通常盤)/3,240円(デラックス盤)
RELEASE DATE : 6月17日