日本を代表するHIPHOPサイト! Amebreak[アメブレイク]
  • INTERVIEW
  • KNOWLEDGE
  • NEWS / REPORT
  • COLUMN
  • RECOMMEND
  • MEDIA
KNOWLEDGE[ナレッジ] RSS

キング・ギドラ「空からの力」 20th ANNIVERSARY SPECIAL (PART 4:「空からの力」全曲解説)

インタビュー:伊藤雄介(Amebreak)

 
【PART 1】
【PART 2】
【PART 3】
【PART 4】

 
 
01.“未確認飛行物体接近中(急接近MIX)”(Pro. by Zeebra)
Zeebra「オリジナル・ヴァージョンは『BEST OF JAPANESE HIP HOP VOL.2』にSAGA OF K.G.名義で入れた方なんだけど、あっちの方は元々サンプリングで作っていたトラックを、(オトナの事情で)弾き直しのトラックに差し替えたヴァージョンなんだ」
Kダブシャイン「まあ、イントロダクション、挨拶って感じの曲だよね」
Zeebra「コッタ君が曲名を思いついて、そこから書いていったんだよね。アルバム一曲目ってことで、キング・ギドラが金星からやって来るイメージをあのイントロで表現して。SAGA OF K.G.の方はもっと仰々しい感じだったのに対して、“急接近MIX”の方はよりスピーディな感じをイメージした。オリジナル・ヴァージョンは、ド頭からキング・ギドラが空を全部覆ってるイメージだけど、コッチの方はどこからかいきなり降り立ってきたイメージ。だから“急接近MIX”なんだ」
Kダブシャイン「ライヴの一曲目で使うことが多い曲だね。サビもお客さんが一緒に歌ってくれるから、やりやすい」
Zeebra「アルバム発売直後のライヴで、あのイントロがかかったら『ハイ来ましたー!ドカーン!』みたいな、“入れ食いチューン”って感じ。イントロをああいう感じに作れたのは良かったな、とテメェでも思っております」
DJ OASIS「いまだにDJとかでかけても反応良いからね」
 
 
 
02.“登場”(Pro. by Zeebra)
Zeebra「西麻布YELLOWで、RIKO主催の『HIP HOP JUNGLE』ってイヴェントがあったんだよ。今も当時のフライヤー持ってるんだけど、他に出てたのはMICROPHONE PAGER、RHYMESTER、MELLOW YELLOW、LAMP EYE、SOUL SCREAMとかだったと思う」
 
■客は入ってたんですか?
Zeebra「結構入ってた。俺らが出たのは、イヴェントの二回目ぐらいだったと思う」
Kダブシャイン「ホウキ持って出たよね」
Zeebra「“大掃除”のときに本気で竹ボウキ持ってやってた(笑)。このルーティンは、当時は他のライヴでも何度かやってたと思う」
 
■RHYMESTERの「RHYMESTERがライヴしにやって来た」みたいな感じですね。
Zeebra「俺らの場合はだいぶ妖しい登場の仕方だけどね(笑)。確か、このときライヴ映像を撮ってて、そのヴィデオから音声を抜き出した気がするね」
 
 
 
03.“見まわそう”(Pro. by Zeebra)
Zeebra「今回のデラックス盤にデモ音源が入ってるから、(結成後)最初の頃に出来た曲だね」
Kダブシャイン「この曲が一番最初に出来たんだよ。まあ、この曲と“空からの力”“コードナンバー0117”は2〜3日の間に出来たから、ほぼ同時期だけどね」
Zeebra「『リリック書いてみよう』って感じで作り始めたのはこの曲が最初か」
DJ OASIS「最初は、ヒデの家でコッタ君のソロを録ろうとしてて、この曲のヴァースを最初に録ってみたんだと思う」
Kダブシャイン「サビが最初に出来たんだけど、コンセプトは、MASTER ACEの“TAKE A LOOK AROUND”とかの影響を受けたんだ。当時の日本/東京を意識して『周りを観察することが大事だ』ってことが言いたかった」
Zeebra「デモ・ヴァージョンは、サビが“連呼系”でちょっと違うんだよね。ULTRAMAGNETIC MC'S“RAISE IT UP”のサビとか意識したんだと思う」
Kダブシャイン「(発音的に)ERIC B. & RAKIMの“I KNOW YOU GOT SOUL”と“見まわそう”が似てるから、そこを意識したっていうのもあるね」
 
■この曲のリリックで印象的なのは、ジブさんの「フリースタイル信じてたら韻辞典は禁じ手/あくまで参考 俺が先んじて言っとこう」というフレーズで、このラインが生まれた背景みたいのはあるんですか?
Zeebra「『韻を踏みながら日本語でフリースタイルがまだ出来る人がいなかった時代だったけど、それがいつか出来るようになる』って信じてるってことですよ。日本語ラップにおいて、そこ(韻を踏んだフリースタイル)が出来るまでになれるって信じているんだったら、韻辞典なんて使ってたらそのレヴェルには行けねぇよ、って意味なんだ」
 
■はー、だから「先んじて言っとこう」なんだ(笑)!
Zeebra「『今はまだ出来ないから韻辞典に頼りたくなるかもしれないけど、この後出来るようになってきたら、そんなモンは禁じ手だぞ』って話」
Kダブシャイン「そういうことなんだねー。今初めて知ったよ(笑)」
Zeebra「でも、この曲が出来た後ぐらいから、同時多発的に韻を踏んだフリースタイルが出来る人が出て来るからね。キハとかUZIとかKINちゃん(MELLOW YELLOW)とか」
Kダブシャイン「俺はてっきり、歌詞を書く上での姿勢として、『韻辞典は禁じ手』って言ってるんだと思ってた」
 
■でも、「行くぞ 行くぞ 言葉のジグソーパズルの為だったら辞書だって引くぞ」とも言ってるから、リリックを書く上で辞書を活用することは否定してないんですよね。
Zeebra「そう。知識を増やすために辞書を使うならどうぞ、って感じなんだ。だけど、韻辞典は“ズル”だから(笑)」
 
■熟語とか、体言止めとかで難しめの単語をライミングに使うときは、どんなところから仕入れていたんですか?
Zeebra「USラップのリリックの直訳とかはよくしたよね」
 
■「あっちのラッパーが使ってるあの言葉は、日本語だとなんて言うんだろう?」っていうことですね。
Zeebra「うん、それはこのアルバムにスゲェいっぱい入ってたと思う。(JERU THE DAMAJA“YOU CAN'T STOP THE PROPHET”中の)“SUPER SCIENTIFICAL POWER”ってフレーズとかから“超常現象”って言葉を思いついたり」
 
 
 
04.“大掃除 feat. T.A.K. THE RHYMEHEAD”(Pro. by Zeebra)
■所謂、王道の「サッカーMC」モノだと思うのですが、セルアウトしているラッパーを叩いてるとかではなく、「韻が甘いラッパー」に照準を当ててディスしてるというのが、今思うと興味深いな、って。
Zeebra「そう、この曲はポップなラップをディスしてる曲じゃなくて、あくまでも『サッカーMCディス』なんだよね。ダセェというか、ヘタなラッパーをディスってるってことだよね」
 
■でも、アウトロでコッタさんは「何がJ-RAPだよ」って吠えてますよね。95年頃にポップ・チャートを賑わしていたような売れ線ラップ=韻が甘いっていう認識で書いてた部分はあったのかな?って。
Zeebra「いや、それは違うんだよな。このリリックは、出来上がった“時期”が大事なんだよ。この曲は、6曲入りのデモ・テープを作り終わった直後ぐらいに作ったから、俺たちの(シーンへの)『殴り込み』の時期に出来た曲なんだ」
 
■じゃあ、やはり“業界内”の韻が甘いラッパーが対象だったんですね。
Zeebra「もしかしたら、デモ作ってたときにはもう出来てた気がするね。だけど、デモ・テープ配るのにその中にいきなりディスが入ってるのも何だから、『アルバム用に取っとこうぜ』って判断したんだよ。今思うと性格悪ぃなー(笑)」
Kダブシャイン「同業者と面と向かったときに、『俺の方がお前より上だぞ』って、HIP HOP的且つトラディショナルなバトル・スタイルに忠実な曲なんだよ」
 
■「お前らより上なのは、俺らの方がライムがタイトでクレヴァーだからだ」っていうことですね。
Zeebra「向こうのラップを(理解して)聴いていた立場からすると、ライミングの楽しさを知らないのはかわいそうだと思ってたんだよ」
Kダブシャイン「ラップじゃなくても、洋楽は韻を踏んでるのが当たり前じゃん?」
Zeebra「ライミングの楽しさを知らないのはもったいないっていう、その一点に尽きる。だから、その楽しさを広めるということは、ギドラをやる上では大前提中の大前提だったんだ」
Kダブシャイン「曲を作る上で、『韻を踏む』っていうルールがあるとないのとでは、全然違うモノになっていく、っていうのを主張したかった」
 
■そうか、だからジブさんは「お前のライム甘くて」「悲しくなる」んですね(笑)。怒りというより、むしろ悲しいわ!っていう。
Zeebra「で、『あーもうやだ 目の前に広がるのは荒野だ』よ、と。そんなヤツばっかでさー」
 
■韻が甘いラッパーがいるだけで、そんな殺伐とした景色が現われるのは凄いですね(笑)。一方のコッタさんは、「まさかの技にキャプテン翼もイラつく百点のうまさ」とか、その辺りのフレーズにSWAGを感じます(笑)。
Kダブシャイン「『位置に三途の川/誰も死後ろくな名前……』とかみたいに、“1”〜“10”まで同音異義語も使って書いていったことが『まさかの技』で『百点のうまさ』だって自画自賛したかったんだね(笑)」
 
 
 
05.“コードナンバー0117”(Pro. by DJ OASIS)
Kダブシャイン「“117”って言いたかったんだよ。キング・ギドラはイニシャルだと“KG”じゃん?K=11番目で、G=7番目のアルファベットだから」
 
■え!?“117”には“時報”以外にそんな意味もあったんですか(笑)!?
Zeebra「それもある(笑)」
Kダブシャイン「キング・ギドラ=KG=117=時報を聞けば、今何をするべきか=You know what time it isが分かるっていう」
 
■おぉ……。
Kダブシャイン「あと、阪神大震災も1月17日だったりとかするし、そういう要素がいくつか重なってるから、“117”には何か深い暗号的な意味があるんじゃないのか?って若い頃に勝手に思ってたんだよね」
Zeebra「当時、どっかのインタビューでは話していたのかもしれないけどね」
 
■僕はリリック的にはこの曲がアルバムで一番好きなんですよね。一番リリックが狂ってる。ジブさんの「四次元空間と三次元の中間の三.五次元で魔の三週間」とか、今聴いても本当にワケが分からない(笑)。あと、この時期のジブさんの特徴ですけど、「DISした無知の口/暗い内に狙い内/一つ 二つ 三つ 四つ 五つ 六つ/ブツブツ言う奴一人ずつ撃つ」みたいに、結構ネチネチしたキャラなんですよね。
Zeebra「ホラーコアの時代だもん」
Kダブシャイン「暗殺者的な感じなんじゃないの?」
Zeebra「そういう感じもあるね。あと、数字を入れながら韻を踏んで遊ぶっていうのが面白いと思ってやってたんだよね」
 
■曲の後半で、ふたりが掛け合いでラップしていきますよね。意外にも、ここまで2MC的な掛け合いラップが聴けるのって、この曲ぐらいなんですよね。
Kダブシャイン「ライヴでもその掛け合いはやってたよね。デモ・テープを聴くと、それぞれのヴァースでもうひとりが被せとかユニゾンしてる部分が多い。でも、アルバムを作るときはもっとクールなトーンにしようとしてたから、掛け合いが少ないんだと思うね」
Zeebra「この掛け合いは、ELEMENTS OF CHANGE(オークランド時代にギドラと交流のあったUSのラップ・グループ)の影響があるんだよね。彼らのラップは、掛け合いだったりエコー的に被せてみたりを2MCで複雑にやっていくっていう面白いスタイルだったんだ」
 
■トラックはオアさん作ですね。
DJ OASIS「デモ・テープに入ってた曲だから、リリックは結構前に出来ていたんだけど、このトラックはアルバムの中では最後の方に出来たトラック。このトラックにこのラップを載せようと決めたのは、多分コッタ君だったと思うね」
 
 
 
06.“フリースタイル・ダンジョン”(Pro. by Zeebra)
Zeebra「それこそネチネチした俺が出た一番怖い曲だね。安室ちゃん経由で俺のファンになった女子が聴いたらドン引きするような曲だな(笑)」
Kダブシャイン「“Zeebra The Daddy”になる前は“Zeebra The Ill Skill”だったから、病的なサイコ感は常に出そうとしてたんじゃないの?っていうのが俺の解釈(笑)。初期はずっとそんな感じだった」
Zeebra「今でもたまにその側面は出て来るね。DJ MUNARI x AraabMuzikとやった“BEAST FROM THE EAST”とかはこういう感じだね」
 
■ホラーコア的な要素もありつつ、RPG的な要素もこの曲にはありますよね。
Zeebra「この曲はねぇ、日本からオークランドに行く飛行機の中で書いたんじゃなかったかな。1stヴァースと最後の『又そこの墓地で墓参り/又だれかが死霊の仲間入り』ってフレーズが先に出来た(笑)。“墓参り”と“仲間入り”は韻としてスゲェキレイだな、って思ったんだよね。向こうのラッパーって、当時から結構ゲーム好きが多くて、それこそ『THE SOURCE』とかでゲーム特集やってたりとかしてた。ウチらとちょっと仲良かったHIEROGLYPHICSのDEL THE FUNKEE HOMOSAPIENもゲーマーだったし」
Kダブシャイン「ヒデの家にプリプロしに行くと、大体ゲームやってたからね。『ストリートファイター2』とか『NBA JAM』とか。ゲームとゲームの合間に曲を作ってた」
Zeebra「それは言い過ぎだと思うよ(笑)。あと、この曲の元ネタは、NAS“NEW YORK STATE OF MIND”のイントロの喋り“Straight outta fuckin' dungeons of rap”だね。『ラップのダンジョンで曲を作ろう』って、あの一言でインスパイアされた」
 
 
 
07.“空からの力 〜Interlude”(Pro. by DJ OASIS)
08.“空からの力 Part 2”(Pro. by DJ OASIS)

■デモ・テープに入っていて「空からの力」にも収録された曲は少なくないですが、何故この曲だけ“Part 2”と名付けたんですか?
Zeebra「リリックもオケもデモ・ヴァージョンとは全然違うからだね」
Kダブシャイン「キング・ギドラっていうグループ名は先に決まってて、キング・ギドラ=地球に降り立った超自然的なモノ=空からの力という感じで表現したかったんだ」
 
■CHUCK Dの“Power from the sky”というフレーズをコスリネタで使ってますよね。
Kダブシャイン「トラックが出来たときに、『CHUCK Dのあのフレーズをコスってよ』みたいなことをオアに言ったんだよね。そうしたら上手くハマったから、そこから“Power from the sky”=“空からの力”って訳して作っていったんだよ。アルバム・タイトルにもなってるワケだから、代表曲ですよ」
Zeebra「……とか言いつつ、パート1では俺何も言ってねぇ、みたいな(笑)。ただ韻を踏みたいだけのフリースタイル・ラップだった」
Kダブシャイン「最初に作った1〜2曲目だもんね」
 
■“空からの力”というタイトルありきで、それぞれヴァースを書いたんですか?
Zeebra「いや、違うね。たまたま出来たヴァースを当て込んだって感じだったと思う」
Kダブシャイン「デモ・ヴァージョンはね。そこからパート2にしていく過程で、“空からの力”感を出すためにブラッシュ・アップしていった」
 
■そういった、楽曲が進化していった様が、リスナーにも明らかになるという意味でも、今回のデラックス盤にデモ・ヴァージョンが収録されるのは快挙だと思います。
 
 
 
09.“星の死阻止”(Pro. by DJ OASIS)
Zeebra「まあ、“エコ物”だね」
 
■“エコ物”ってアッサリ言いますけど、そのカテゴライズは何か凄いですね(笑)。
Kダブシャイン「エコ・ラップだね」
Zeebra「まあ、環境ネタの曲が一個必要だよね、って話になって」
Kダブシャイン「『空からの力』ってところで、“地球”“環境”というものを俺たち人間はないがしろにしてるんじゃないか?って。文明とか、人間が生み出した元々地球に存在していなかったモノが、地球を破壊してるんじゃないか?ってことをオレたちは当時感じてたんじゃないかな。で、キング・ギドラはそこに警鐘を鳴らしに来たというか、『自分たちが人間だということを忘れてない?』みたいなことを、いろんな角度で表現した中のひとつだね」
Zeebra「UZIがゴミ拾いに行かされたって話、知らない?UZIは昔ヒドいヤツでさ、俺のクルマに乗ってたとき、ヤツが後ろの席でビール飲んでたんだけど、いきなり窓開けて缶捨てやがったから、俺は速攻クルマを停めて『誰がその後掃除すると思ってんだよ、拾って来い!』って、拾いに行かせた(笑)」
 
■モラリストですね(笑)。
Kダブシャイン「オレらがブラック・ミュージックやレゲエから教わった“リスペクト”というモノを、ちゃんと音楽を通して表現するというのは『空からの力』の源流だよね」
 
■エコロジー的視点は、「空からの力」を作る上でマストな要素だったということですね。
Kダブシャイン「そう、だからすごいコンセプチュアルなアルバムなんだよ……って今更自分で言うのもアレだけど(笑)」
 
 
 
10.“地下鉄”(Pro. by DJ OASIS)
DJ OASIS「“コードナンバー0117”のデモ・ヴァージョンで使っていたオケは、この“地下鉄”のオケで使われてるんだよね」
Zeebra「確か、“コードネーム0117”は、オアがトラックを別のにしたいって言ったんだよな」
Kダブシャイン「だけど、こっちのビートを使わないのももったいないから、スキットって形で使ったんだ」
 
 
 
11.“スタア誕生”(Pro. by Zeebra)
■ジブさんのソロ曲“フリースタイル・ダンジョン”はファンタジックな内容だったのに対して、コッタさんの“スタア誕生”はリアリズム重視と、この時点で両者のソロMCとしての立ち位置の違いがハッキリ表われてるのが興味深いんですよね。
Zeebra「俺は『ラップ界のスピルバーグ』って言い張ってたぐらいだから、エンターテインメント方面で書いてたよね」
Kダブシャイン「じゃあ、俺はオリヴァー・ストーンなのかな(笑)」
Zeebra「言うなればそういうことだよね」
 
■今、30代前半ぐらいのラッパーに取材で話を訊くと、結構な確率でこの曲に影響を受けたという人がいるんですよね。
Kダブシャイン「ふーん、でも、そんなにその人たちは悲しいストーリー物とか書いてないでしょ?」
 
■内容というより、ストーリーテラー/ヴィジュアライザー振りに感銘を受けたんだと思うんですが。
Kダブシャイン「当時、この曲を作る上でインスパイアされたのはDIAMOND D “SALLY GOT A ONE TRACK MIND”とかBIZ MARKIE “YOUNG GIRL BLUEZ”とかで、ひとりの悲しい少女についての物語を書いてみよう、って思ったんだ。『どんなのが出来るかな?』って書き始めたら、結構アッサリ書き上がったから、苦労して出来上がった感じの曲ではないんだよね。で、書き上がったリリックをいろんなトラックに載せてみて、ふたりには聴かせたりして。『コレでいこう』って決めてたトラックがあったんだけど、スタジオに入ったときに『ちょっと変えよう』ってなって、その場にあったレコードでサンプリングした新しいトラックに載せて録った」
Zeebra「最初は、こんなに悲しい感じのトラックじゃなかったんだよね」
 
■ここで歌われている内容は、完全にフィクションなんですか?例えば、周りの人の話とかからインスパイアされた部分は?
Kダブシャイン「いやあ、周りにはいないね。典型的な、実際にありそうな感じの話を色々並べてみたってだけ」
 
■当時の世相は影響してないんですか?例えば95年当時だと、コギャル・ブームだったりブルセラだったり、ティーンエイジャーの女性に関連した報道が激増した時期だったと思います。
Kダブシャイン「アメリカの黒人コミュニティだと、性にユルい女に『ヘイ!シスター、しっかりしなさい!』って言うQUEEN LATIFAHとかMC LYTEみたいな女性MCがいたりして、割とありがちな話じゃない?日本だとあまりそういうことがないな、って思ったから、自分のことを粗末に扱ってしまう女の子に対して、何か言えることがあるんじゃないか?って感じぐらいだったと思うよ。だから、世相を反映したとか、そういうことではなく。あと、当時はAVメチャメチャ観てたんじゃない(笑)?『こういう子がスゲェ増えてきたな……』って感じたっていうのは影響してるかもしれない。それこそ、『しょっちゅう深夜番組に登場』って言ってるくだりとかは、飯島愛とかを彷彿とさせるよね。結局その後、彼女も死んじゃったし、今聴き返すと自分でもゾッとしたりするね」
 
 
 
12.“行方不明”(Pro. by Kダブシャイン)
Kダブシャイン「コレも、アルバムを作る上では入れておかなきゃいけない要素としてバック・イン・ザ・デイ物があったから、作ったんだと思う」
 
■当然、当時のUSラップにもバック・イン・ザ・デイ物が多かったというのも影響してるわけですよね。
Kダブシャイン「そうだね、NAS“MEMORY LANE”とかあったし。あと、俺的にはAHMAD“BACK IN THE DAY”とかLEVERT“GOOD OL' DAYS”とかが好きだったね」
Zeebra「SWEET SABLE“OLD TIMES' SAKE”とかもあったね」
 
■意外とR&Bからもインスパイアされたんですね(笑)。
Kダブシャイン「他の曲よりエモーショナル且つハートフルな曲を作りたかったんだよね」 
 
■でも、ヴァースはラップ聴き始めの頃を振り返るという、バック・イン・ザ・デイ物としては王道な内容ですが、サビはそういう感じではないですよね。そもそも何故バック・イン・ザ・デイ物の曲を“行方不明”というタイトルにしたんですか?
Zeebra「……分かんない、なんでだろう(笑)」
Kダブシャイン「バック・イン・ザ・デイ物を、ちょっとヒネった感じでやろうとしたんじゃない?昔、同じ思い出を共有してたようなヤツらに対して、『夢や希望を諦めたらそこで終わりなんだから、もっと自分のやりたいことをやれ』ってことが言いたかったんだと思う。『俺らは昔を思い出して、それをやり続けたから今こうなってる』っていう。だから、他の人を蔑みたいわけではなく、ただ『諦めるな』ってことを言いたかったんだ。でも、そんなことデビュー・アルバムで言うことじゃない気もするよね(笑)」
Zeebra「まあ、タイミング的にもただのバック・イン・ザ・デイ物を作っても面白くない、って思ったっていうのはあるかもな」
 
 
 
13.“真実の弾丸”(Pro. by DJ OASIS)
■後に、ギドラは“社会派”だったり“ポリティカル”という視点でも注目されることになりますが。
Kダブシャイン「でも、このアルバムで明らかにそういう視点で書いてる曲って、コレと“星の死阻止”ぐらいなんだよね。この曲は、簡単に言うとメディア批判だよ。『洗脳されるな!』みたいな」
 
■PUBLIC ENEMY“DON'T BELIEVE THE HYPE”的なイズムがやはり影響しているんですよね?
Kダブシャイン「そうだね。『本当のことを知ると人間は考え方が変わってくるぞ』っていうコンセプトを、なんとなくここで入れたかったのかなあ……」
 
■なんとなく(笑)。
Kダブシャイン「いや、その当時のことだから、パッと思い出せない(笑)。当時もロジカルに考えてたというより、思いつきで作っていった部分があるからね。アルバムの全体像は最初からイメージしてたけど、曲を作り進めながら辻褄を合わせていった部分はある」
Zeebra「俺のヴァースとか、超分かりやすいよね。『元々持っている間違った価値観を変えろ』というか。世の中は今までもこれからも変わっていくモノだけど、『今あるモノが全てだ』みたいに思わせるシステムがある。そういうことに対して『何が正しいか/間違っているかということは自分たちで見極めないといけない』って」
Kダブシャイン「この曲も最初に作ったデモ・テープに入っているから、“空からの力”“見まわそう”“コードネーム0117”と同時期に出来た曲だよ」
  
 
 
14.“コネクション 〜Outro”(Pro. by Zeebra)
■このアルバムの翌年に出たYOU THE ROCK「SOUNDTRACK '96」でも“BIG SHOUT OUT”で、一曲丸ごとシャウトアウトという構成の曲がありましたが、アウトロをシャウトアウトにしようと思った理由は?
Kダブシャイン「BRAND NUBIANが『ONE FOR ALL』(90年)の中の“DEDICATION”って曲でやってるんだよね。まあ、コレは曲というよりスキットっぽい感じ。当時、オレらを応援してくれてたヤツらにシャウトアウトを送りたかった。……俺は当時、キング・ギドラには初期のBRAND NUBIANとULTRAMAGNETIC MC'Sがミックスされたようなイメージを持っていたんだよね。BRAND NUBIANの5パーセンターズ的要素と、ULTRAMAGNETIC MC'Sの宇宙的ファンクやイルな感じをミックスさせた感じ」
 
■……めっちゃややこしいですね、その音楽(笑)。
Kダブシャイン「俺の中のギドラ像を人に説明すると、そういうことになるのかなって。でも、PUBLIC ENEMYが『俺たちはRUN DMCとTHE CLASHのミックスだ』みたいなことを言ってたから、それをギドラに置き換えるとそうなるのかな、って」
 
■まだ日本語ラップのアルバムがそんなに出ていなかった時代だっただけに、「他の人より先にこういうトピックもやっちゃいたい!」という貪欲さが出てるアルバムですよね。
Zeebra「それはちょっとあるかもね」
 
■ラヴ・ソングぐらいですよね、分かりやすいトピックでこのアルバムに入ってないのって。
Zeebra「それは、敢えてやらないって感じだったもんね」
Kダブシャイン「別にラヴ・ソングをやるとリアルじゃない、ってワケじゃないんだけどね。この頃は、『渋谷や六本木のストリートから出て来た若いヤツらが、ラップで思い切り世間に対してモノを言う』っていうのを見せたかったから、こういう構成になった……んだと思うよ(笑)」
 
 
INFO
「KGDR(ex.キングギドラ) スペシャル・トーク&サイン会: 名盤各務塾(特別編)」
日時:7月4日(土)15:30〜
場所:TOWER RECORDS渋谷店1Fイベントスペース
出演:KGDR(ex. キングギドラ)
司会進行:伊藤雄介(Amebreak)
http://tower.jp/store/event/2015/06/003019
 
 
『ワイルド・スタイル』『Nas/タイム・イズ・イルマティック」DVDリリース記念トーク・セッション
日時:7月5日(日)18:30開場/19:00開演
場所:HMV record shop 渋谷1Fイベントスペース
出演:KGDR(ex. キングギドラ)
http://www.hmv.co.jp/news/article/1506190003/
 
 
KGDR(ex.キングギドラ) 〜「空からの力」20th Anniversary〜 LIVE INFO
7月18日(土)『NAMIMONOGATARI 2015』 @ Zepp Nagoya
http://www.namimonogatari.com/
 
8月15日(土)『SUMMER BOMB produced by Zeebra』 @ Zepp DiverCity TOKYO
http://summer-bomb.com/
 
9月6日(日)『23rd Sunset Live 2015 -Love & Unity-』 @ 福岡県・芥屋海水浴場
http://www.sunsetlive-info.com
 
9月22日(日)『MUSIC TRIBE 2015』 @ 岡山県・岡山武道館
http://musictribe2015.info/

 
 

Pickup Disc

TITLE : 空からの力:20周年記念エディション
ARTIST : キング・ギドラ
LABEL : P-VINE
PRICE : 2,700円(通常盤)/3,240円(デラックス盤)
RELEASE DATE : 6月17日