[EVENT REPORT] |
DATE : 2008/01/23 |
2007年12月29日、ジャパニーズHIP HOPにまた新たな歴史が刻まれた。2006年に引き続き川崎CLUB CITTAにて催された『ULTIMATE MC BATTLE 2007』決勝は、日本におけるHIP HOPの最も進化/深化した部分を見せてくれた素晴らしい大会だった。名勝負の数々を詳細にレポート!
文:浦田 威
2007年も全国各地で開催された熾烈な予選を勝ち抜いた16人のMCを迎え、川崎CLUB CITTAにて開催された『ULTIMATE MC BATTLE』(以下UMB)決勝大会。これまで語られてきたように、カルデラビスタとFORK、2人のチャンプと数々の名場面を生み出した前2回の大会を「ドラマ」だとするならば、更に劇的な名勝負が数多く生まれた今回は、いわば「ミラクル」とでも言うべき伝説的な一夜となった。
筆者は本来、「歴史的」だとか「伝説的」などというキャッチーなフレーズを安易に用いることは好まないが、今回ばかりはご容赦願いたい。このようなイベントを取材することはライター冥利に尽きる事この上ないが、バトル本編に入る前にどうしても触れておきたいのが、前回大会から今回にかけてのいくつかの変更点。まず、ルール上の大きな変化としては、前年よりもターン数が増加したことで攻守が目まぐるしく変化。これまでよく言われてきた「先攻不利」が緩和されると共に、互いのMCがより持ち味を発揮しやすい環境が整えられた筈。その結果、今回の大会では互いの実力が拮抗した際の、過剰ともいえる延長戦の増加にも繋がったわけだが、いちオーディエンスとしては、MCのスキルを存分に堪能できるようになったのだから歓迎すべき変更といった所。更には、今回からMCバトル本編以外でも観衆を楽しませる仕掛けとして、DJ WATARAI、MASH、SHOWによる職人肌のクラブ・プレイ、それに加えてICE BAHN、韻踏合組合、SWANKY SWIPE、サイプレス上野とロベルト吉野らによるライブ・パフォーマンスもタイム・テーブルに組み込まれ、単なる「MCバトル」の枠にとどまらない総合的な「HIP HOPイヴェント」として格段の進化を遂げていた点も見逃せない。
イベント当日は筆者も夕方から会場入りしていたのだが、綿密なリハーサルを終え、23時を過ぎたところでいよいよ開場。ここで早めに会場へと足を運んだオーディエンス達は、昨年に引き続いての大幅なタイム・スケジュールの押しにやきもきしたかも知れないが、個人的には全国の激戦を勝ち抜いた全ての参加MCたちが第1試合から最高のシチュエーションでバトルを行なうためには、こうした待ち時間もやむをえないように感じた。
ともあれ、会場の大半が観衆で埋め尽くされたところで場内が暗転、最早UMB名物となった、『PRIDE』や『K-1 DYNAMITE』でもお馴染み、立木文彦氏による力強いオープニング・アナウンスに引き続き、静かに緞帳が上がるとステージには2人のMCの姿が。一瞬、困惑したかに見えた会場もすぐに大歓声へと変わる。
般若と漢だ。
2002年B BOY PARKでの名勝負以来となる共演、この日のために用意された渾身の一曲を歌い終え、「来年は出ようかな」との般若のリップサービス(?)も会場のテンションを上げたところで司会の太華とSHARLEEが登場、1回戦8試合のスタートだ。
実のところ、筆者は本大会のMC紹介文を作成したこともあり、事前に出場MCの予選での闘い振りをチェックすることができていたのだが、率直な感想として、参加MCの中には明らかな力量不足を感じさせる者がいたのも確かだった。しかしこの日、ステージに立ったMC達は、その殆どが予選で見た姿よりも急激な成長を遂げていて驚かされた。これもこの大会だけが持つマジックなのだろうか。当然、1回戦の中には凡庸な試合もなかったわけではないが、前述のターン数増加による恩恵もあってか、一方的に打ちのめされ、不完全燃焼で敗退するMCは殆どいなかったように感じた。
その中でも、この日最初の山場は千葉代表、イルな言葉を巧みなフロウと共に敷き詰めていく玄人好みの実力者COBA5000と、UMBが産まれる以前から凄腕フリースタイラーとして全国にその名を轟かせてきた、岡山代表YOUTHの対戦。第1回UMBに出場していた過去の経歴を観衆にアピールするCOBA5000に対し、YOUTHも自らのキャリアが『B-BOY PARK』のMCバトルから始まっている事を表明、このくだりは新旧の世代が劇的に交わる大会屈指の名場面だったはずだ。互いに一歩も譲らず、YOUTH本人も「何回やったか思い出せない」と語る、果てしなき延長戦、大会史上最長のバトルは僅差でYOUTHに軍配が上がる結果となったが、押韻とフロウ、大幅にベクトルの異なるスタイルを武器とする実力者が同じ土俵に上がり、互いがベストに近いパフォーマンスを披露すれば、そこに勝敗を付けるのは困難を極める事が、初めてあの舞台で明らかになったような気がする。事実、ここまで熾烈を極めるスタイル・ウォーズは、UMBの歴史上、かつてないものだったはずだ。
後日談になるが、翌日、大阪で偶然YOUTHと出くわした筆者が不躾にも「互いの予選を見た限り、COBA5000には敵わないと思ってたけど岡山でのバトルとは全く違うスタイルで驚いた」と告げると、彼は「ああいう大舞台では地元とはやり方も変える、その場に合わせるのもフリースタイルやから。しかし相手も地味やけど恐ろしく上手かったな」との答えを苦笑いとともに返してくれた。MCバトルの第1世代とでも言うべき時期からバトル巧者として知られるYOUTHのスタイルは、至極オーソドックスな押韻を基礎とするスタイルだが、修羅場を潜ってきたMCはやはり魅せ方を知っている。ともあれこの激戦を目の当たりにして、「今回の大会はなにかが違う」との予兆めいたものを感じ取ったのは筆者だけではなかったはずだ。
そしてその予感は1回戦最後の第8試合で的中する。
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